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後日譚
後日譚71.お嫁さんたちはしばらく様子見する事にした
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シズトがエンジェリア帝国の第四王女であるオクタビア・デ・エンジェリアと婚約の件について合意した夜、シズトの現配偶者である者たちは談話室に集まっていた。
集まっている理由はもちろん新しく婚約者となった者について話し合うためだ。
シズトに余計な心配をかけないために、シズトが魔道具『安眠カバー』によって熟睡する頃に集まった彼女たちのリーダー的存在は、正室のレヴィア・フォン・ドラゴニアだ。
寝間着姿に着替え終わった彼女だったが、トレードマークでもある金色のツインドリルは健在で、その髪の先の方を指で弄っている。
そんな彼女の近くに立って話し合いの報告をまとめた者を朗読しているのはレヴィアの専属侍女であるセシリアだ。夜遅くなのにいつものメイド服をしっかりと着こなして、眠気を感じさせない声で報告をスラスラと読み上げていた。
「以上が会談の内容だったようです」
「ありがとうですわ。当初の予定通り、シズトは婚約をしたようですわね」
「てっきり今回も何だかんだと理由をつけては逃げるかと思っていたけど意外ね。シズトのタイプの女性だったのかしら?」
褐色肌の女性が驚いた様子で目を丸くしていた。
彼女の名はランチェッタ・ディ・ガレオール。小柄な体格で侮られがちだが、ガレオールの女王だ。
熱がりな彼女は薄手で尚且つ布面積が少ないトップスとボトムを身に着けていた。普段は身に着けていない丸眼鏡をかけているのは書類を読むため、というのもあったが室内にいる者たちを信用しているからだろう。
「そこら辺は分かりかねます。ただ、ジュリウスの報告によるシズト様としては三年間の期間限定の婚約だと捉えている節があるようです。後ろ盾が必要なくなったら双方の合意の元、婚約を白紙に戻せばいい、と。断り辛かったからそうしたんじゃないでしょうか?」
「あまあまですわ~。エンジェリア側は婚約解消に合意する可能性なんてほとんどゼロな気がするのですわ。シズトが望まなくても、これじゃあどんどんお嫁さんが増えてしまうのですわぁ」
「レヴィちゃんはそれでいいの?」
そう問いかけたのは大柄で優しそうな雰囲気のある女性だ。
彼女の名はルウ。姉のラオと一緒に冒険者をしていたが、出産を機に一時的に活動を休止している。
タレ目がちな赤い目と、腰ぐらいまで伸びた赤い髪以外はラオと似ている所が多い。その他の違いを強いてあげるとすれば、戦闘スタイルの関係で彼女の方が少し足が太く、お尻が大きいくらいだろうか。
ラオとお揃いのタンクトップにホットパンツ姿の彼女は、今回の対応方法について数少ない反対派の一人だった。
「シズトくんはやっぱり断り切れないだろうし、今後は今まで通りレヴィちゃんが管理した方が良いんじゃ……」
「身分を考えたら時期女王の提案を断るのは難しいのですわ~。国力なども含めて考えたらこちらの方が立場が上になるかもしれないのですわ。ただ余計な火種になりかねないのですわ~」
「女王であるわたくしが動けるのが一番いいけれど、ガレオールの状況や、相手国との関係性によっては断り辛い時もあるから今後も増えていくのは仕方がないと思うわ」
レヴィアの話に続けて話したランチェッタは「例えばアトランティアとか」とボソッと付け足した。
最近関係が回復しつつあるが、現在アトランティアとガレオールの関係性は微妙な状態だった。
今回の話が広まれば次期国王に王女を考えているから、両国の融和の象徴としてシズトとの婚約を、と言われる可能性もある。
だが、話は悪い事ばかりじゃない、とランチェッタは言葉を続けた。
「だから、もう一人くらい女王の身分を持った側室が欲しいな、とは思っていたのよ。エンジェリアである必要はないけれどね。ただ、今回のシズトの対応はそう悪いものではないと思うわ」
「そうかしら?」
「ええ。成人までは結婚しない、という前例を作れたから産まれたばかりの赤子を玉座につかせて、後ろから今まで通りになるように操ろうとする輩は防げるでしょう? そんな事をすればシズトは黙っていてもわたくしたちが黙っていないわ」
「それに、成人までで相手がどういう人物か見極める時間にもなるのですわ! 相手によくない所があればそれを口実に断ってしまうのもありだと思うのですわ~」
「まあ、それはそれで新たな火種になる可能性はあるけれど、その場で断ってもどうせトラブルにはなっていたからそれが早いか遅いかの違いね。遅い方が備える事ができるでしょうし、こちらの時間稼ぎって言う意味合いもあると思うわ」
「……なるほど。二人は婚約期間中に相手や国の動きを見極めよう、と考えているって事ね?」
「シズトと順調に交際を重ねて相思相愛になればそれでよし、ですわ」
「それを怠ってシズトが愛想をつかしていたら、わたくしたちが動けばいいわ。三年も猶予があれば根回しは十分できるし、二人目の子を妊娠する時期さえ気をつければ対応可能だと思うわ」
ルウはしばし考えこんだが、もう一人の消極的反対派である狐人族の女性エミリーに視線を向けた。
エミリーは視線を向けられると白い尻尾がボワッと膨らんだ。
「エミリーちゃんはどう思う?」
「私は……国の事は口出しするような身分ではないので……」
「でも、シズトくんとの時間が減っちゃうのは嫌でしょ?」
「…………そうですね」
「そこはシズトに頑張ってもらうしかないのですわ~」
「最近は魔道具作りとか世界樹の世話とかする事がないから時間は有り余っているんじゃないかしら?」
「上に立つ者の風格を身に着けるために特訓をしているからそこまで暇じゃないのですわ」
結局、ランチェッタやレヴィアが積極的に動けない間はシズトに頑張ってもらうしかない、という事になった。
エミリーやルウも、シズトの立場的に多くの女性を娶る事は当然の事だと頭では理解しているため、それ以上強く反対する事はなかった。
集まっている理由はもちろん新しく婚約者となった者について話し合うためだ。
シズトに余計な心配をかけないために、シズトが魔道具『安眠カバー』によって熟睡する頃に集まった彼女たちのリーダー的存在は、正室のレヴィア・フォン・ドラゴニアだ。
寝間着姿に着替え終わった彼女だったが、トレードマークでもある金色のツインドリルは健在で、その髪の先の方を指で弄っている。
そんな彼女の近くに立って話し合いの報告をまとめた者を朗読しているのはレヴィアの専属侍女であるセシリアだ。夜遅くなのにいつものメイド服をしっかりと着こなして、眠気を感じさせない声で報告をスラスラと読み上げていた。
「以上が会談の内容だったようです」
「ありがとうですわ。当初の予定通り、シズトは婚約をしたようですわね」
「てっきり今回も何だかんだと理由をつけては逃げるかと思っていたけど意外ね。シズトのタイプの女性だったのかしら?」
褐色肌の女性が驚いた様子で目を丸くしていた。
彼女の名はランチェッタ・ディ・ガレオール。小柄な体格で侮られがちだが、ガレオールの女王だ。
熱がりな彼女は薄手で尚且つ布面積が少ないトップスとボトムを身に着けていた。普段は身に着けていない丸眼鏡をかけているのは書類を読むため、というのもあったが室内にいる者たちを信用しているからだろう。
「そこら辺は分かりかねます。ただ、ジュリウスの報告によるシズト様としては三年間の期間限定の婚約だと捉えている節があるようです。後ろ盾が必要なくなったら双方の合意の元、婚約を白紙に戻せばいい、と。断り辛かったからそうしたんじゃないでしょうか?」
「あまあまですわ~。エンジェリア側は婚約解消に合意する可能性なんてほとんどゼロな気がするのですわ。シズトが望まなくても、これじゃあどんどんお嫁さんが増えてしまうのですわぁ」
「レヴィちゃんはそれでいいの?」
そう問いかけたのは大柄で優しそうな雰囲気のある女性だ。
彼女の名はルウ。姉のラオと一緒に冒険者をしていたが、出産を機に一時的に活動を休止している。
タレ目がちな赤い目と、腰ぐらいまで伸びた赤い髪以外はラオと似ている所が多い。その他の違いを強いてあげるとすれば、戦闘スタイルの関係で彼女の方が少し足が太く、お尻が大きいくらいだろうか。
ラオとお揃いのタンクトップにホットパンツ姿の彼女は、今回の対応方法について数少ない反対派の一人だった。
「シズトくんはやっぱり断り切れないだろうし、今後は今まで通りレヴィちゃんが管理した方が良いんじゃ……」
「身分を考えたら時期女王の提案を断るのは難しいのですわ~。国力なども含めて考えたらこちらの方が立場が上になるかもしれないのですわ。ただ余計な火種になりかねないのですわ~」
「女王であるわたくしが動けるのが一番いいけれど、ガレオールの状況や、相手国との関係性によっては断り辛い時もあるから今後も増えていくのは仕方がないと思うわ」
レヴィアの話に続けて話したランチェッタは「例えばアトランティアとか」とボソッと付け足した。
最近関係が回復しつつあるが、現在アトランティアとガレオールの関係性は微妙な状態だった。
今回の話が広まれば次期国王に王女を考えているから、両国の融和の象徴としてシズトとの婚約を、と言われる可能性もある。
だが、話は悪い事ばかりじゃない、とランチェッタは言葉を続けた。
「だから、もう一人くらい女王の身分を持った側室が欲しいな、とは思っていたのよ。エンジェリアである必要はないけれどね。ただ、今回のシズトの対応はそう悪いものではないと思うわ」
「そうかしら?」
「ええ。成人までは結婚しない、という前例を作れたから産まれたばかりの赤子を玉座につかせて、後ろから今まで通りになるように操ろうとする輩は防げるでしょう? そんな事をすればシズトは黙っていてもわたくしたちが黙っていないわ」
「それに、成人までで相手がどういう人物か見極める時間にもなるのですわ! 相手によくない所があればそれを口実に断ってしまうのもありだと思うのですわ~」
「まあ、それはそれで新たな火種になる可能性はあるけれど、その場で断ってもどうせトラブルにはなっていたからそれが早いか遅いかの違いね。遅い方が備える事ができるでしょうし、こちらの時間稼ぎって言う意味合いもあると思うわ」
「……なるほど。二人は婚約期間中に相手や国の動きを見極めよう、と考えているって事ね?」
「シズトと順調に交際を重ねて相思相愛になればそれでよし、ですわ」
「それを怠ってシズトが愛想をつかしていたら、わたくしたちが動けばいいわ。三年も猶予があれば根回しは十分できるし、二人目の子を妊娠する時期さえ気をつければ対応可能だと思うわ」
ルウはしばし考えこんだが、もう一人の消極的反対派である狐人族の女性エミリーに視線を向けた。
エミリーは視線を向けられると白い尻尾がボワッと膨らんだ。
「エミリーちゃんはどう思う?」
「私は……国の事は口出しするような身分ではないので……」
「でも、シズトくんとの時間が減っちゃうのは嫌でしょ?」
「…………そうですね」
「そこはシズトに頑張ってもらうしかないのですわ~」
「最近は魔道具作りとか世界樹の世話とかする事がないから時間は有り余っているんじゃないかしら?」
「上に立つ者の風格を身に着けるために特訓をしているからそこまで暇じゃないのですわ」
結局、ランチェッタやレヴィアが積極的に動けない間はシズトに頑張ってもらうしかない、という事になった。
エミリーやルウも、シズトの立場的に多くの女性を娶る事は当然の事だと頭では理解しているため、それ以上強く反対する事はなかった。
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