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後日譚
後日譚62.事なかれ主義者は気を引き締めた
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馬車で移動した先の迎賓館の一室でのんびりと待っていると、ドラゴニアの使節団が到着した、と部屋の外で見張りをしていたエルフが教えてくれた。
まあ、窓の外を見ていたから到着したのは分かってたんだけどね。
ドラゴニアの使節団は文字通り飛んでやってきたようだ。
ファマリアの町をぐるりと囲む壁の向こう側に着陸した十数匹のワイバーンは再び飛び立ち、北の空に消えてしまった。
丁度見えなくなったタイミングで、使節団が迎賓館に到着したそうなので、町もどんどん大きくなっているんだな、と実感した。
エルフの案内について行き、迎賓館を出ると大柄な男性が両手を広げて僕を出迎えた。
「シズト殿、此度は無事に子が生まれたそうじゃないか」
「まだ他のお嫁さんたちは出産を終えていない人もいますけどね」
僕も両手を広げてハグに応じ、改めて彼を見る。
今回は公式訪問なので王冠を頭に載せいているだけではなく、ミスリル製っぽい鎧を身にまとっていた。
ただ真っすぐに立っているだけなのに、洗練された立ち姿がそこにはある。
金色の髪は風に揺らめき、青い瞳はまっすぐに僕を見ていた。
「祝いの品を用意した。受け取ってもらえると嬉しい」
「ありがとうございます。立ち話も何ですし、移動しましょう」
今回はリヴァイさんはドラゴニア国王としてこの場に来ている。
そして僕はというと、エルフたちの王……みたいなものである世界樹の使徒としてこの場にいた。
ただ、現世界樹の使徒ではなく先代なんだけど。
会談用に用意された部屋に到着して、席に座ったリヴァイさんは開口一番「もういいよな? いつも通りで」と尋ねてきた。
「良いんでしょうか……?」
「大丈夫だろう。堅苦しいのは好きじゃないからな」
迎賓館の中にさえ入ってしまえば外側から中の様子はあまり見る事ができない。
だから、神聖エンジェリア帝国対策に彼らよりも先に祝いの品を届けた、という状況にする事ができたので、これ以上何かを求める必要はない。
「ただまあ、ドタウィッチの者が着たらそうもいかんだろうがな」
「……ドタウィッチが来るまで残るつもりなんですか?」
「当たり前だろう。彼らには一番最初にドラゴニアが来たと証言をしてもらう必要があるし、我々は二番目がドタウィッチだったという事を望まれているだろうからなぁ。そんな事より…………彼女たちは何をしているんだ?」
リヴァイさんが指を差した先は壁際の方だった。
そこにはメイド服姿のエルフの女性と一緒に、ドライアドたちが澄ました顔で立っていた。
「えっと……部屋の中に入れるのは侍女か護衛くらいだよって言ったら『分かった~』って言ってああなったので、侍女のつもり……何だと思います」
「……確かに、成り切ってるつもりのようだな」
メイドさんがぺこりと会釈をすると、ドライアドたちもぺこりと頭を下げ、給仕を始めるとその後をわらわらとついて行く。
エルフの女性はそんなドライアドたちを気にした様子もなく、僕とリヴァイさんの前に紅茶とお茶菓子を並べた。
ドライアドたちはというと、思い思いの作物を机の上に置いて行き、エルフの女性と一緒に再び壁際へと戻っていく。
………リンゴとかはともかく、レモンの丸かじりは無理だよ?
「多分メイドさんを部屋の外で待機させたらついて行くと思いますけど、どうしますか?」
「重要な話であれば人払いはするが、聞かれて困るような話はないから問題ない」
リヴァイさんがそう言った通り、実際リヴァイさんと話した内容はそこまで重要な事じゃなかった。
育生の日々の様子を事細かに聞かれたり、マナーを教わる相手の交代を提案されたり、レヴィさんの容体は安定しているのかとかも聞かれたりしたけど子どもと母親以外の話題は全く出なかった。
まあ、出産祝いだったらそういうものなのかもしれない、なんて事を思いながら談笑をしている間、メイドさんがカットしてくれた果物を食べた。
「なるほど。おむつ替えは俺もできた方がよさそうだな」
「王様がするような仕事じゃないと思いますよ」
「確かにそうかもしれんが、平民の間だと家族が代わりに世話をする事もあるんだろう? まだしっくりこないが、俺はもうお爺ちゃんだからそういう事をしてもおかしくないはずだ」
「どうなんでしょう……」
パールさんもおむつ替えはまだしてないからなぁ。
なんて事を思いながら育児の話をしていると時間はあっという間に過ぎていて、ドタウィッチ王国の使節団が到着したと報せが届いた。
僕は一度で迎えるために席を立った。
「俺も行こう」
リヴァイさんもついてくる気満々のようで、席を立ったので一緒に部屋を後にする。
侍女の真似をしているつもりだったドライアドたちを部屋に残して廊下を歩き始めると、後ろから扉が開く音がした。
「おそとでるの?」
「お話終わった~?」
「れもん!」
「もういい?」
思い思いの事を話しながら追いかけてくるドライアドたちは彼女たちの後を追いかけてきたエルフの侍女や護衛たちに回収されて部屋に連れ戻されていた。
「……すみません」
「なに、生態が不明なドライアドのする事だ。目くじらを立てるような者はわざわざ祝いに来ないだろう。それよりも、早く外に出るぞ。待たせるつもりであるのならばそれでも構わんがな」
遠路はるばる来た人を待たせるつもりはない。
僕は先に進んでいたリヴァイさんの後を追った。
まあ、窓の外を見ていたから到着したのは分かってたんだけどね。
ドラゴニアの使節団は文字通り飛んでやってきたようだ。
ファマリアの町をぐるりと囲む壁の向こう側に着陸した十数匹のワイバーンは再び飛び立ち、北の空に消えてしまった。
丁度見えなくなったタイミングで、使節団が迎賓館に到着したそうなので、町もどんどん大きくなっているんだな、と実感した。
エルフの案内について行き、迎賓館を出ると大柄な男性が両手を広げて僕を出迎えた。
「シズト殿、此度は無事に子が生まれたそうじゃないか」
「まだ他のお嫁さんたちは出産を終えていない人もいますけどね」
僕も両手を広げてハグに応じ、改めて彼を見る。
今回は公式訪問なので王冠を頭に載せいているだけではなく、ミスリル製っぽい鎧を身にまとっていた。
ただ真っすぐに立っているだけなのに、洗練された立ち姿がそこにはある。
金色の髪は風に揺らめき、青い瞳はまっすぐに僕を見ていた。
「祝いの品を用意した。受け取ってもらえると嬉しい」
「ありがとうございます。立ち話も何ですし、移動しましょう」
今回はリヴァイさんはドラゴニア国王としてこの場に来ている。
そして僕はというと、エルフたちの王……みたいなものである世界樹の使徒としてこの場にいた。
ただ、現世界樹の使徒ではなく先代なんだけど。
会談用に用意された部屋に到着して、席に座ったリヴァイさんは開口一番「もういいよな? いつも通りで」と尋ねてきた。
「良いんでしょうか……?」
「大丈夫だろう。堅苦しいのは好きじゃないからな」
迎賓館の中にさえ入ってしまえば外側から中の様子はあまり見る事ができない。
だから、神聖エンジェリア帝国対策に彼らよりも先に祝いの品を届けた、という状況にする事ができたので、これ以上何かを求める必要はない。
「ただまあ、ドタウィッチの者が着たらそうもいかんだろうがな」
「……ドタウィッチが来るまで残るつもりなんですか?」
「当たり前だろう。彼らには一番最初にドラゴニアが来たと証言をしてもらう必要があるし、我々は二番目がドタウィッチだったという事を望まれているだろうからなぁ。そんな事より…………彼女たちは何をしているんだ?」
リヴァイさんが指を差した先は壁際の方だった。
そこにはメイド服姿のエルフの女性と一緒に、ドライアドたちが澄ました顔で立っていた。
「えっと……部屋の中に入れるのは侍女か護衛くらいだよって言ったら『分かった~』って言ってああなったので、侍女のつもり……何だと思います」
「……確かに、成り切ってるつもりのようだな」
メイドさんがぺこりと会釈をすると、ドライアドたちもぺこりと頭を下げ、給仕を始めるとその後をわらわらとついて行く。
エルフの女性はそんなドライアドたちを気にした様子もなく、僕とリヴァイさんの前に紅茶とお茶菓子を並べた。
ドライアドたちはというと、思い思いの作物を机の上に置いて行き、エルフの女性と一緒に再び壁際へと戻っていく。
………リンゴとかはともかく、レモンの丸かじりは無理だよ?
「多分メイドさんを部屋の外で待機させたらついて行くと思いますけど、どうしますか?」
「重要な話であれば人払いはするが、聞かれて困るような話はないから問題ない」
リヴァイさんがそう言った通り、実際リヴァイさんと話した内容はそこまで重要な事じゃなかった。
育生の日々の様子を事細かに聞かれたり、マナーを教わる相手の交代を提案されたり、レヴィさんの容体は安定しているのかとかも聞かれたりしたけど子どもと母親以外の話題は全く出なかった。
まあ、出産祝いだったらそういうものなのかもしれない、なんて事を思いながら談笑をしている間、メイドさんがカットしてくれた果物を食べた。
「なるほど。おむつ替えは俺もできた方がよさそうだな」
「王様がするような仕事じゃないと思いますよ」
「確かにそうかもしれんが、平民の間だと家族が代わりに世話をする事もあるんだろう? まだしっくりこないが、俺はもうお爺ちゃんだからそういう事をしてもおかしくないはずだ」
「どうなんでしょう……」
パールさんもおむつ替えはまだしてないからなぁ。
なんて事を思いながら育児の話をしていると時間はあっという間に過ぎていて、ドタウィッチ王国の使節団が到着したと報せが届いた。
僕は一度で迎えるために席を立った。
「俺も行こう」
リヴァイさんもついてくる気満々のようで、席を立ったので一緒に部屋を後にする。
侍女の真似をしているつもりだったドライアドたちを部屋に残して廊下を歩き始めると、後ろから扉が開く音がした。
「おそとでるの?」
「お話終わった~?」
「れもん!」
「もういい?」
思い思いの事を話しながら追いかけてくるドライアドたちは彼女たちの後を追いかけてきたエルフの侍女や護衛たちに回収されて部屋に連れ戻されていた。
「……すみません」
「なに、生態が不明なドライアドのする事だ。目くじらを立てるような者はわざわざ祝いに来ないだろう。それよりも、早く外に出るぞ。待たせるつもりであるのならばそれでも構わんがな」
遠路はるばる来た人を待たせるつもりはない。
僕は先に進んでいたリヴァイさんの後を追った。
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