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後日譚
後日譚11.事なかれ主義者は慣れている
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世界樹フソーの根元にある屋敷は、もうほとんど使われていない。ムサシはドライアドたち用に作った建物で暮らしているそうだ。
ただ、今回みたいにこっちに用事がある時の拠点になる可能性があるので、引き続きドライアドたちは立ち入り禁止だ。
「そういう訳だから、レモンちゃんはここで大人しく待っててね」
「れも~~~ん…………」
「そんな顔してもダメ。ここの子たちと仲良くしてるんだよ」
「知らない子ですね」
「肌が白いです!」
「れもんっ!」
「まだお話できないのですか?」
「お話できない子たちはあっちの方にいますよ」
「れもん!」
レモンちゃんはドライアドハウスの方に連れていかれた。
大丈夫かちょっと不安だけど、ここの世界樹の番人たちにドライアドたちを見張っておいてもらおう。
ムサシの後に続いて屋敷の中を歩いていると、応接室として使われている場所に通された。
扉が開くと、縦にも横にも大きい男性が出迎えてくれた。
「急な訪問で申し訳ないです」
「大丈夫です」
会って早々謝罪を口にしたのはギュスタン様だ。
ファルニルという農業が盛んな国の侯爵家に生まれた人だけど、家督争いとかそっちのけで食事を楽しんでいたらこんな体型になってしまったらしい。
こっちの世界では肥満体型の人への風当たりは強いらしい。
基本的に貴族は「いつでも戦えるように」という考え方があるようで、シュッとしている人が多い。平民もそうだ。太っている人はごく少数の商人とかくらいだろうか。
道楽息子なんて言われていたらしいけど、食事を通して生産する事に興味が湧いて農業を始めたらしい。それなのに、いつの間にか僕たちと関わる外交官になっていたんだとか。
最近はクレストラ連合と僕たちの橋渡し役的な役割を期待されているからかちょっと痩せた様な気がする。
「最近もお忙しいんですか?」
ソファーに腰かけながら尋ねると、彼は座ろうかどうしようか迷っている様子だった。おかけください、とジェスチャーで促したら彼は「失礼します」と言って着席した。
「だいぶ落ち着いてきましたけど、シズト様が加護を失った影響はとても大きかったようです。市場が一部荒れました」
「元々荒らしちゃってましたけどね」
邪神の信奉者対策でエリクサーやら上級ポーションやらを大量生産したし、魔道具に必要な魔石もひたすら集め続けたのでそこら辺の関係する物の値段が高騰していたらしい。
僕が加護を失ってからは世界樹の素材やら、僕が作ったオリジナルの魔道具の価値が上がって値段が跳ね上がったとも聞いている。
ただ、それも一過性のもので、三カ月くらい経てばある程度落ち着いている様だった。
神様たちの神力が溜まったらまた加護持ちは現れるからね。
「今回はどうされたんですか?」
「もうお聞きしているかもしれないんですが、その……生育の加護をいつの間にか授かってまして……」
ドライアドたちから聞いてます。
「そうなんですね。いつ授かったんですか」
「たぶん今日だと思います。ここ三カ月ほどは僕も父と一緒に連合の会議に出席するために転移門を使ってましたから。その際に、『鑑定眼鏡』をつけたエルフの方に止められて、ここに連れて来られたという訳です。最初は周りに人がいたから理由も言われなかったので、シズト様が呼んでるのかなと思ったんですけど、加護を授かっていると言われてびっくりしました」
頬をかきながらギュスタンさんは困った様に眉を下げた。
「神様から授けたよ、的な事は言われなかったんですか?」
「はい。神託はありませんでした」
「そうなんですね。……神力を貯めるために話しかけなかったのかな」
「神の声を聞く事ができる者は加護持ちの中でもごくわずかと聞いています」
「そうなの、ジュリウス?」
「はい。神託を授かるのは勇者が一番多く、時点で勇者の子孫と言われています。シズト様のように、その姿を見る事ができる者はほんの一握りです」
「神様の姿を見る事ができると言われているのは僕が知っている中だとアマテラスの女王陛下とかですね。僕の家も一応勇者の血を取り込んでいるので勇者の子孫ともいえるんでしょうけど、勇者の血は薄いと思います」
……なるほど?
「後天的に加護を授かった者も一定数います。その者たちの中には神託を授かった者もいるようですが、母数が少ないので何とも言えないです」
「加護に関する研究はクロトーネ王国にある学校でされてるかもしれません。今度聞いてみましょうか?」
「ん~………別に大丈夫です。それより、ファマ様にお祈りする時に、僕は元気にやってるって伝えてもらった方が嬉しいです」
「分かりました。今度伝えておきます」
僕の祈りは神様たちに届いていないだろうし、奥さんたちにもお願いはしてるけどギュスタン様にお願いした方が届きやすそうだ。なんて言ったって加護持ちだし。
「話を戻しますが、今後僕はどういう扱いになるんでしょうか?」
「どういう、とは?」
「世界樹の世話をする事ができる『生育』の加護を授かったのですが、僕は世界樹の使徒となるのでしょうか? 正直力不足だと思うのですが……今日もドライアドたちに言われるがまま加護を使っていたら魔力切れ寸前にすぐなっちゃって気持ち悪いですし……」
ギュスタン様の質問に答えたのはジュリウスだ。
「その点に関しては既にそれぞれの国で法律として定まっています。詳しい事は後程ムサシ様からお伝えして頂く形になると思いますが、簡単に言うと雇われという形になると思います」
ここら辺の話は僕がいない間にジューンさんや世界樹の番人たちで法整備をしていたらしい。
僕が口出しをする事はないので、ジュリウスがいつの間にか用意してくれていたハーブティーを飲みながら焼き菓子を食べる。
ジュリウスとギュスタン様の話はすぐに終わったので、その後は堅苦しい話し方を止めて、『生育』の加護を使う時の注意点とドライアドたちと関わる時のコツなどを話したり、最近ギュスタン様が育てている作物の状況について聞いたりして時間が過ぎて行った。
その間、窓の外からたくさんの視線を感じたのは言うまでもない事だった。
「なんか監視されているみたいで緊張するなぁ」
「そのうち慣れるよ」
「…………なるほど」
ただ、今回みたいにこっちに用事がある時の拠点になる可能性があるので、引き続きドライアドたちは立ち入り禁止だ。
「そういう訳だから、レモンちゃんはここで大人しく待っててね」
「れも~~~ん…………」
「そんな顔してもダメ。ここの子たちと仲良くしてるんだよ」
「知らない子ですね」
「肌が白いです!」
「れもんっ!」
「まだお話できないのですか?」
「お話できない子たちはあっちの方にいますよ」
「れもん!」
レモンちゃんはドライアドハウスの方に連れていかれた。
大丈夫かちょっと不安だけど、ここの世界樹の番人たちにドライアドたちを見張っておいてもらおう。
ムサシの後に続いて屋敷の中を歩いていると、応接室として使われている場所に通された。
扉が開くと、縦にも横にも大きい男性が出迎えてくれた。
「急な訪問で申し訳ないです」
「大丈夫です」
会って早々謝罪を口にしたのはギュスタン様だ。
ファルニルという農業が盛んな国の侯爵家に生まれた人だけど、家督争いとかそっちのけで食事を楽しんでいたらこんな体型になってしまったらしい。
こっちの世界では肥満体型の人への風当たりは強いらしい。
基本的に貴族は「いつでも戦えるように」という考え方があるようで、シュッとしている人が多い。平民もそうだ。太っている人はごく少数の商人とかくらいだろうか。
道楽息子なんて言われていたらしいけど、食事を通して生産する事に興味が湧いて農業を始めたらしい。それなのに、いつの間にか僕たちと関わる外交官になっていたんだとか。
最近はクレストラ連合と僕たちの橋渡し役的な役割を期待されているからかちょっと痩せた様な気がする。
「最近もお忙しいんですか?」
ソファーに腰かけながら尋ねると、彼は座ろうかどうしようか迷っている様子だった。おかけください、とジェスチャーで促したら彼は「失礼します」と言って着席した。
「だいぶ落ち着いてきましたけど、シズト様が加護を失った影響はとても大きかったようです。市場が一部荒れました」
「元々荒らしちゃってましたけどね」
邪神の信奉者対策でエリクサーやら上級ポーションやらを大量生産したし、魔道具に必要な魔石もひたすら集め続けたのでそこら辺の関係する物の値段が高騰していたらしい。
僕が加護を失ってからは世界樹の素材やら、僕が作ったオリジナルの魔道具の価値が上がって値段が跳ね上がったとも聞いている。
ただ、それも一過性のもので、三カ月くらい経てばある程度落ち着いている様だった。
神様たちの神力が溜まったらまた加護持ちは現れるからね。
「今回はどうされたんですか?」
「もうお聞きしているかもしれないんですが、その……生育の加護をいつの間にか授かってまして……」
ドライアドたちから聞いてます。
「そうなんですね。いつ授かったんですか」
「たぶん今日だと思います。ここ三カ月ほどは僕も父と一緒に連合の会議に出席するために転移門を使ってましたから。その際に、『鑑定眼鏡』をつけたエルフの方に止められて、ここに連れて来られたという訳です。最初は周りに人がいたから理由も言われなかったので、シズト様が呼んでるのかなと思ったんですけど、加護を授かっていると言われてびっくりしました」
頬をかきながらギュスタンさんは困った様に眉を下げた。
「神様から授けたよ、的な事は言われなかったんですか?」
「はい。神託はありませんでした」
「そうなんですね。……神力を貯めるために話しかけなかったのかな」
「神の声を聞く事ができる者は加護持ちの中でもごくわずかと聞いています」
「そうなの、ジュリウス?」
「はい。神託を授かるのは勇者が一番多く、時点で勇者の子孫と言われています。シズト様のように、その姿を見る事ができる者はほんの一握りです」
「神様の姿を見る事ができると言われているのは僕が知っている中だとアマテラスの女王陛下とかですね。僕の家も一応勇者の血を取り込んでいるので勇者の子孫ともいえるんでしょうけど、勇者の血は薄いと思います」
……なるほど?
「後天的に加護を授かった者も一定数います。その者たちの中には神託を授かった者もいるようですが、母数が少ないので何とも言えないです」
「加護に関する研究はクロトーネ王国にある学校でされてるかもしれません。今度聞いてみましょうか?」
「ん~………別に大丈夫です。それより、ファマ様にお祈りする時に、僕は元気にやってるって伝えてもらった方が嬉しいです」
「分かりました。今度伝えておきます」
僕の祈りは神様たちに届いていないだろうし、奥さんたちにもお願いはしてるけどギュスタン様にお願いした方が届きやすそうだ。なんて言ったって加護持ちだし。
「話を戻しますが、今後僕はどういう扱いになるんでしょうか?」
「どういう、とは?」
「世界樹の世話をする事ができる『生育』の加護を授かったのですが、僕は世界樹の使徒となるのでしょうか? 正直力不足だと思うのですが……今日もドライアドたちに言われるがまま加護を使っていたら魔力切れ寸前にすぐなっちゃって気持ち悪いですし……」
ギュスタン様の質問に答えたのはジュリウスだ。
「その点に関しては既にそれぞれの国で法律として定まっています。詳しい事は後程ムサシ様からお伝えして頂く形になると思いますが、簡単に言うと雇われという形になると思います」
ここら辺の話は僕がいない間にジューンさんや世界樹の番人たちで法整備をしていたらしい。
僕が口出しをする事はないので、ジュリウスがいつの間にか用意してくれていたハーブティーを飲みながら焼き菓子を食べる。
ジュリウスとギュスタン様の話はすぐに終わったので、その後は堅苦しい話し方を止めて、『生育』の加護を使う時の注意点とドライアドたちと関わる時のコツなどを話したり、最近ギュスタン様が育てている作物の状況について聞いたりして時間が過ぎて行った。
その間、窓の外からたくさんの視線を感じたのは言うまでもない事だった。
「なんか監視されているみたいで緊張するなぁ」
「そのうち慣れるよ」
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