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後日譚
後日譚9.事なかれ主義者はすぐに帰るつもり
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邪神の騒動があって三カ月ほどが経った。
あんな事があったなんて信じられないくらい平和な時間を過ごしている。
明たちとは大きなトラブルはない。冒険者として力をつけるためにドランの方で活動しているらしいのでそもそも会わない。
トラブルはなかったんだけど、おめでたい事が重なった。
ここ数カ月でランチェッタさんとドーラさん、エミリーとパメラ、それからノエルの五人が妊娠した。
そりゃ毎日あれだけすればできても不思議ではない。
不思議ではないけど、こうとんとん拍子に子を授かるとなると何かしら神様の影響があるのではないか、なんて事を考えてしまう。
神様とはもう縁を切ってしまったので違うとは思うけど、一度死んだ体をこっちに来る時に適合するように作り直したとか何とか言っていたような気もする。子どもができやすくなるとかおまけでつけてそう。
……実際どうなのかは分からないしどうでもいいか。
セシリアさんとディアーヌさんは侍女としての考えがあるのか、避妊をしながら僕と夜の営みをしている。
主人二人は気にせずに子どもを作ればいいのに、なんて事を言っていたし僕に同意を求めてきたけど、僕はコメントを差し控えさせていただいた。口は禍の元っていうし。
ジューンさんは「エルフだからできにくいってだけだと思いますぅ」との事だった。
エルフは長命であるが、子どもはできにくいらしい。逆に獣人は子どもができやすい種もいるんだとか。
僕たち人間はというと、他のヒト種とも子ができやすいという特徴があるとかないとか……。あとこれだけ人間の国が多い事を考えると、他の種族よりも子ができやすいとかもあるのかもしれない。
それこそ、勇者の子孫も子どもができやすい形質が引き継がれているとしたら、これだけ増えててもおかしくはないかも?
「シズトちゃん、どうしたんですかぁ? 何か考え事ですかぁ?」
僕の顔を覗き込んで来たのは、奥さんの中で唯一のエルフであるジューンさんだ。
彼女はすでに寝巻きを着ていたが、そのエルフらしからぬグラマラスなボディのせいでやっぱり視線のやり場に困る。
最近の夜の相手は基本的にジューンさんだ。それにレヴィさんに送り出されたセシリアさんと、気まぐれで来るディアーヌさんが加わる事もある。
ジューンさんと一夜を共にした次の日は穏やかな朝なのでとても助かる。いや、朝からするのが嫌というわけではないんだけど。
「今日も寝癖がついてますよぉ」
精霊魔法を使ったジューンさんによって寝癖は綺麗に治ったけど、朝の日課である朝風呂はやめられない。
ジューンさんと一度別れてお風呂に向かう。
のんびりと入浴を楽しんだ後、食堂に向かうとみんなすでに揃っていた。
レヴィさんとモニカ、ラオさん、ルウさん、シンシーラはパッと見ただけでもお腹が膨らんでいることがわかるくらいになっている。胎動ももう感じるそうだ。
みんなにまとめて挨拶を返したのち、それぞれのお腹の中にいる子に向けても挨拶を済ませてから食事になる。
給仕をするのはジューンさんだ。今日も世界樹の使徒の代理人として話し合いがあるのか真っ白な布地に金色の刺繍を施されたワンピースを着ている。
みんなの前に食事が並べられてから食事前の挨拶を唱和するとみんな食べ始めた。
「……皆なんともなさそうだね」
「だな。もしかしたらもしかするかもしれねぇな」
僕がパンにレモンで作ったマーマレードを塗っている間に食事を終えたラオさんがシンシーラを見ながら頷いた。
同時期に妊娠をしているので大体どのくらいの状況かわかるから一つの指標にしているらしいけど、シンシーラも特に悪阻などの症状は出ていなかった。
「三柱の加護ですわ?」
「んー、タイミング的に違うんじゃないかなぁ。子どもに加護は授けられなくなるって言われたし。ただそれは一時的な物で次の代になる頃には授けられるようになるらしいけど」
仕組みは分からないけど、ファマ様たちが言っていた事だし間違いないだろう。
「じゃあ別の加護の可能性があるのですわね」
レヴィさんはゆっくりと食事をしながら考えているようだ。
「勇者の子は良く加護を授かりやすいって話もあったし、可能性はゼロではないわよね。それに、元々加護を授かっている者もいるし」
ランチェッタさんの言う通り、ルウさんやドーラさんは元々加護を授かっている。特にドーラさんは加護を二つ授かっているので子どもに受け継がれる可能性も単純に考えると二倍だ。
僕の視線を感じたのか、モリモリと食事をしていたドーラさんの手が止まってボクの方を見た。
「なんでもないよ」
僕がそう言うとドーラさんは端的に「ん」と返事をしてまた食事を再開した。
あの小さな体のどこに入るのか不思議だけど、今はもう一人分の栄養を取る必要があるからか、今まで以上にモリモリ食べている気がする。
なんにせよ悪阻とかのせいで食事が楽しめなくなる、なんて事にならなくてよかったよかった。
そんな事を思いながらお嫁さんたちの加護に関する話を何となく聞いていると、食堂に仮面をつけたエルフがやってきた。
そして、ジュリウスに何やら耳打ちをしている。
何だか嫌な予感がするなぁ、と思っていたら仮面をつけたエルフが出て言ってからジュリウスが口を開いた。
「シズト様にお会いしたいという者がクレストラ大陸にいるようです」
久しぶりの大陸間移動になりそうだ。
妊娠している人たちの事が心配だし、さっさと終わらせてすぐに戻りたいなぁ。
あんな事があったなんて信じられないくらい平和な時間を過ごしている。
明たちとは大きなトラブルはない。冒険者として力をつけるためにドランの方で活動しているらしいのでそもそも会わない。
トラブルはなかったんだけど、おめでたい事が重なった。
ここ数カ月でランチェッタさんとドーラさん、エミリーとパメラ、それからノエルの五人が妊娠した。
そりゃ毎日あれだけすればできても不思議ではない。
不思議ではないけど、こうとんとん拍子に子を授かるとなると何かしら神様の影響があるのではないか、なんて事を考えてしまう。
神様とはもう縁を切ってしまったので違うとは思うけど、一度死んだ体をこっちに来る時に適合するように作り直したとか何とか言っていたような気もする。子どもができやすくなるとかおまけでつけてそう。
……実際どうなのかは分からないしどうでもいいか。
セシリアさんとディアーヌさんは侍女としての考えがあるのか、避妊をしながら僕と夜の営みをしている。
主人二人は気にせずに子どもを作ればいいのに、なんて事を言っていたし僕に同意を求めてきたけど、僕はコメントを差し控えさせていただいた。口は禍の元っていうし。
ジューンさんは「エルフだからできにくいってだけだと思いますぅ」との事だった。
エルフは長命であるが、子どもはできにくいらしい。逆に獣人は子どもができやすい種もいるんだとか。
僕たち人間はというと、他のヒト種とも子ができやすいという特徴があるとかないとか……。あとこれだけ人間の国が多い事を考えると、他の種族よりも子ができやすいとかもあるのかもしれない。
それこそ、勇者の子孫も子どもができやすい形質が引き継がれているとしたら、これだけ増えててもおかしくはないかも?
「シズトちゃん、どうしたんですかぁ? 何か考え事ですかぁ?」
僕の顔を覗き込んで来たのは、奥さんの中で唯一のエルフであるジューンさんだ。
彼女はすでに寝巻きを着ていたが、そのエルフらしからぬグラマラスなボディのせいでやっぱり視線のやり場に困る。
最近の夜の相手は基本的にジューンさんだ。それにレヴィさんに送り出されたセシリアさんと、気まぐれで来るディアーヌさんが加わる事もある。
ジューンさんと一夜を共にした次の日は穏やかな朝なのでとても助かる。いや、朝からするのが嫌というわけではないんだけど。
「今日も寝癖がついてますよぉ」
精霊魔法を使ったジューンさんによって寝癖は綺麗に治ったけど、朝の日課である朝風呂はやめられない。
ジューンさんと一度別れてお風呂に向かう。
のんびりと入浴を楽しんだ後、食堂に向かうとみんなすでに揃っていた。
レヴィさんとモニカ、ラオさん、ルウさん、シンシーラはパッと見ただけでもお腹が膨らんでいることがわかるくらいになっている。胎動ももう感じるそうだ。
みんなにまとめて挨拶を返したのち、それぞれのお腹の中にいる子に向けても挨拶を済ませてから食事になる。
給仕をするのはジューンさんだ。今日も世界樹の使徒の代理人として話し合いがあるのか真っ白な布地に金色の刺繍を施されたワンピースを着ている。
みんなの前に食事が並べられてから食事前の挨拶を唱和するとみんな食べ始めた。
「……皆なんともなさそうだね」
「だな。もしかしたらもしかするかもしれねぇな」
僕がパンにレモンで作ったマーマレードを塗っている間に食事を終えたラオさんがシンシーラを見ながら頷いた。
同時期に妊娠をしているので大体どのくらいの状況かわかるから一つの指標にしているらしいけど、シンシーラも特に悪阻などの症状は出ていなかった。
「三柱の加護ですわ?」
「んー、タイミング的に違うんじゃないかなぁ。子どもに加護は授けられなくなるって言われたし。ただそれは一時的な物で次の代になる頃には授けられるようになるらしいけど」
仕組みは分からないけど、ファマ様たちが言っていた事だし間違いないだろう。
「じゃあ別の加護の可能性があるのですわね」
レヴィさんはゆっくりと食事をしながら考えているようだ。
「勇者の子は良く加護を授かりやすいって話もあったし、可能性はゼロではないわよね。それに、元々加護を授かっている者もいるし」
ランチェッタさんの言う通り、ルウさんやドーラさんは元々加護を授かっている。特にドーラさんは加護を二つ授かっているので子どもに受け継がれる可能性も単純に考えると二倍だ。
僕の視線を感じたのか、モリモリと食事をしていたドーラさんの手が止まってボクの方を見た。
「なんでもないよ」
僕がそう言うとドーラさんは端的に「ん」と返事をしてまた食事を再開した。
あの小さな体のどこに入るのか不思議だけど、今はもう一人分の栄養を取る必要があるからか、今まで以上にモリモリ食べている気がする。
なんにせよ悪阻とかのせいで食事が楽しめなくなる、なんて事にならなくてよかったよかった。
そんな事を思いながらお嫁さんたちの加護に関する話を何となく聞いていると、食堂に仮面をつけたエルフがやってきた。
そして、ジュリウスに何やら耳打ちをしている。
何だか嫌な予感がするなぁ、と思っていたら仮面をつけたエルフが出て言ってからジュリウスが口を開いた。
「シズト様にお会いしたいという者がクレストラ大陸にいるようです」
久しぶりの大陸間移動になりそうだ。
妊娠している人たちの事が心配だし、さっさと終わらせてすぐに戻りたいなぁ。
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