【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
上 下
815 / 1,097
後日譚

後日譚3.事なかれ主義者はまだ自分からは無理

しおりを挟む
 ジュリウスに話をしたらファマリアにある学校……というか研修所に話を通しておいてくれるらしい。
 数日後には選抜された子たちと鍛錬をすることになるだろう。
 選ぶだけなら今日にでも終わるらしいけど、場所の安全確保のために時間がかかるんだとか。
 そんなわけで日が暮れるまで遊びながら魔道具『パワースーツ』を使い続けたんだけど、魔力が有り余っていて困る。
 どうしたものかなぁ、と考えながら夕食を食べているとのんびりと食事をしていた褐色肌の女性が「そういえば」と思い出したかのように口を開いた。
 海洋国家ガレオールの女王であり、僕のお嫁さんのうちの一人であるランチェッタさんだ。
 レヴィさんに匹敵するほどの豊かな胸は天然物で、その背丈には不釣り合いなほど大きい。視線がそこに向かってしまわないように気をつけつつランチェッタさんの方を見るけど、彼女の口元が綻んでいるところを見ると、つい視線が下に下がってしまっているのに気づいているのだろう。

「シグニール連合の会合の時に、シズトは追加で側室を設ける気はないのかと遠回しに聞かれたんだけど、その予定はないって回答でよかったかしら? 状況が変わったから念のため聞いておこうかと思ったのだけれど」
「お断りでお願いします~。っていうか、神様との繋がりも無くなったのに、まだ縁談の申し込みなんて来るんだね。今後、僕の子どもに三柱の加護を授かる事はないって言われたって伝えたのに」

 神様たちとお別れの際に今後起こりうる事を色々と最高神様から聞いた。その中には子どもの加護についても話があった。
 元々加護を授かっていた神様であるファマ様、エント様、プロス様の三柱は僕との繋がりが完全に切れてしまうので、これからは僕との子どもに加護を授ける事はできないらしい。
 孫以降には授けられるらしいけど、それは伝えると面倒そうだからお嫁さんたちにしか言っていない。
 他の神々の加護であれば子どもが授かる可能性もあるらしいけど、そこら辺の仕組みについては詳しく教えてくれなかった。
 まあ、末代まで神から見放される、みたいな事にならなくてよかった、と思っておこう。

「婚姻関係を結ぶ事で、連合内での影響力を増やしたい、とかそういう思惑があるんじゃないかしら。まあ、とりあえず全てお断りしておくわ」
「ファマリーに来ている縁談も断っておきますねぇ」

 ランチェッタさんに続いてそう言ったのはエルフらしからぬ体型のエルフ、ジューンさんだ。
 エルフの正装である真っ白な布地に金色の糸で蔦のようなものが刺繍された服を着ている。
 今日も僕の代わりとしてエルフたちの国に訪れた人々の相手をしてきてくれたのだろう。

「もうこれ以上は本当にいいから。そういう話は全部断っていいからね」

 神様の加護を返還したし、そういう話とは無縁だと思っていたから明言していなかったけど改めて釘を刺しておこう。
 気付かない内に増えていた、って事はないだろうけど一応、ね。



 食後、今日のお世話係であるレヴィさん、セシリアさんの二人と一緒にお風呂に入った。
 セシリアさんからしっかりと学んだレヴィさんは、一人でも僕の頭と背中をしっかりと洗う事が出来るようになっている。

「王女様はされる方なんじゃないかなぁ」
「シズトが望むなら洗ってくれてもいいのですわ?」
「いや、そういう事じゃなくてね?」
「シズト様がお望みであれば、レヴィア様に他の部分の洗い方も実演を交えて指導しますよ」
「そういう話はそもそもしてないから」

 油断するとセシリアさんやディアーヌさんは許可していない所もしれっと洗おうとするので気が抜けない。
 今日は何のお風呂に入ろうか、としばし考えてからいつも通り魔道具『入浴魔石』を入れられたお風呂に浸かる。
 のんびりと浸かっている間は流石に仕掛けてくる事はないので、基本的には雑談タイムになる事が多い。
 レヴィさんの話は、ドライアドたちの様子や、彼女たちをスケッチするために来ているラピスさんの話がメインだ。

「ドライアドたちはまだラピスさんの真似をする事はないの?」
「そうですわね。ラピスにも農作業を手伝わせてみようかと思ったのですけれど、『近衛兵の動作を真似する様子も見受けられないから無駄だと思います』と断られてしまったのですわ」
「あー……そう、かな? なんかあんまりしっかり見た事がないから分かんないけど……」
「ラピスが言うならそうだと思うのですわ」
「別に何か大きな問題があるわけじゃないけど、そこら辺の生態とかも解明されるといいね」

 今後のラピスさんに期待だ。
 のぼせてしまう前にお風呂から上がって甚兵衛に着替えを済ませると自室へと移動する。

「私は出て行った方が良いのですわ?」
「いえ、今日も特にする予定はありませんからその必要は御座いません」
「たまにはしてもいいと思うのですわ」
「レヴィア様の出産が終わるまではそういう訳にはいきません」

 この表情の時のセシリアさんは頑なだ。
 僕以上にセシリアさんとの付き合いの長いレヴィさんがそれに気づいていないわけがないけれど、それをあえて無視してお世話係の日になる度にこういう話が出る。
 僕としてはお休みの日ができるから嬉しい事だけど、平等に愛するって誓った手前、セシリアさんがレヴィさんに気を使って妊娠をしないように夫婦の営みをしないのはどうなのかと思う時もある。
 ただ、侍女のセシリアさん的にはそこは譲れない所なんだろう。こればっかりは仕方がない。

「シズトから仕掛けたらするんじゃないかと思うのですわ」
「…………」
「…………」

 とても難しい事を仰る。
 結局、その日は特に何かをする事もなく、魔力切れになるまで魔力を使うにはどうすればいいか相談に乗ってもらった。
 これ以上魔力を増やしてどうするつもりなのか、と呆れられたような気もするけど、これ以外取り柄がないのでとりあえず後の事は考えず、魔力を増やし続けるつもりだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...