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後日譚
後日譚3.事なかれ主義者はまだ自分からは無理
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ジュリウスに話をしたらファマリアにある学校……というか研修所に話を通しておいてくれるらしい。
数日後には選抜された子たちと鍛錬をすることになるだろう。
選ぶだけなら今日にでも終わるらしいけど、場所の安全確保のために時間がかかるんだとか。
そんなわけで日が暮れるまで遊びながら魔道具『パワースーツ』を使い続けたんだけど、魔力が有り余っていて困る。
どうしたものかなぁ、と考えながら夕食を食べているとのんびりと食事をしていた褐色肌の女性が「そういえば」と思い出したかのように口を開いた。
海洋国家ガレオールの女王であり、僕のお嫁さんのうちの一人であるランチェッタさんだ。
レヴィさんに匹敵するほどの豊かな胸は天然物で、その背丈には不釣り合いなほど大きい。視線がそこに向かってしまわないように気をつけつつランチェッタさんの方を見るけど、彼女の口元が綻んでいるところを見ると、つい視線が下に下がってしまっているのに気づいているのだろう。
「シグニール連合の会合の時に、シズトは追加で側室を設ける気はないのかと遠回しに聞かれたんだけど、その予定はないって回答でよかったかしら? 状況が変わったから念のため聞いておこうかと思ったのだけれど」
「お断りでお願いします~。っていうか、神様との繋がりも無くなったのに、まだ縁談の申し込みなんて来るんだね。今後、僕の子どもに三柱の加護を授かる事はないって言われたって伝えたのに」
神様たちとお別れの際に今後起こりうる事を色々と最高神様から聞いた。その中には子どもの加護についても話があった。
元々加護を授かっていた神様であるファマ様、エント様、プロス様の三柱は僕との繋がりが完全に切れてしまうので、これからは僕との子どもに加護を授ける事はできないらしい。
孫以降には授けられるらしいけど、それは伝えると面倒そうだからお嫁さんたちにしか言っていない。
他の神々の加護であれば子どもが授かる可能性もあるらしいけど、そこら辺の仕組みについては詳しく教えてくれなかった。
まあ、末代まで神から見放される、みたいな事にならなくてよかった、と思っておこう。
「婚姻関係を結ぶ事で、連合内での影響力を増やしたい、とかそういう思惑があるんじゃないかしら。まあ、とりあえず全てお断りしておくわ」
「ファマリーに来ている縁談も断っておきますねぇ」
ランチェッタさんに続いてそう言ったのはエルフらしからぬ体型のエルフ、ジューンさんだ。
エルフの正装である真っ白な布地に金色の糸で蔦のようなものが刺繍された服を着ている。
今日も僕の代わりとしてエルフたちの国に訪れた人々の相手をしてきてくれたのだろう。
「もうこれ以上は本当にいいから。そういう話は全部断っていいからね」
神様の加護を返還したし、そういう話とは無縁だと思っていたから明言していなかったけど改めて釘を刺しておこう。
気付かない内に増えていた、って事はないだろうけど一応、ね。
食後、今日のお世話係であるレヴィさん、セシリアさんの二人と一緒にお風呂に入った。
セシリアさんからしっかりと学んだレヴィさんは、一人でも僕の頭と背中をしっかりと洗う事が出来るようになっている。
「王女様はされる方なんじゃないかなぁ」
「シズトが望むなら洗ってくれてもいいのですわ?」
「いや、そういう事じゃなくてね?」
「シズト様がお望みであれば、レヴィア様に他の部分の洗い方も実演を交えて指導しますよ」
「そういう話はそもそもしてないから」
油断するとセシリアさんやディアーヌさんは許可していない所もしれっと洗おうとするので気が抜けない。
今日は何のお風呂に入ろうか、としばし考えてからいつも通り魔道具『入浴魔石』を入れられたお風呂に浸かる。
のんびりと浸かっている間は流石に仕掛けてくる事はないので、基本的には雑談タイムになる事が多い。
レヴィさんの話は、ドライアドたちの様子や、彼女たちをスケッチするために来ているラピスさんの話がメインだ。
「ドライアドたちはまだラピスさんの真似をする事はないの?」
「そうですわね。ラピスにも農作業を手伝わせてみようかと思ったのですけれど、『近衛兵の動作を真似する様子も見受けられないから無駄だと思います』と断られてしまったのですわ」
「あー……そう、かな? なんかあんまりしっかり見た事がないから分かんないけど……」
「ラピスが言うならそうだと思うのですわ」
「別に何か大きな問題があるわけじゃないけど、そこら辺の生態とかも解明されるといいね」
今後のラピスさんに期待だ。
のぼせてしまう前にお風呂から上がって甚兵衛に着替えを済ませると自室へと移動する。
「私は出て行った方が良いのですわ?」
「いえ、今日も特にする予定はありませんからその必要は御座いません」
「たまにはしてもいいと思うのですわ」
「レヴィア様の出産が終わるまではそういう訳にはいきません」
この表情の時のセシリアさんは頑なだ。
僕以上にセシリアさんとの付き合いの長いレヴィさんがそれに気づいていないわけがないけれど、それをあえて無視してお世話係の日になる度にこういう話が出る。
僕としてはお休みの日ができるから嬉しい事だけど、平等に愛するって誓った手前、セシリアさんがレヴィさんに気を使って妊娠をしないように夫婦の営みをしないのはどうなのかと思う時もある。
ただ、侍女のセシリアさん的にはそこは譲れない所なんだろう。こればっかりは仕方がない。
「シズトから仕掛けたらするんじゃないかと思うのですわ」
「…………」
「…………」
とても難しい事を仰る。
結局、その日は特に何かをする事もなく、魔力切れになるまで魔力を使うにはどうすればいいか相談に乗ってもらった。
これ以上魔力を増やしてどうするつもりなのか、と呆れられたような気もするけど、これ以外取り柄がないのでとりあえず後の事は考えず、魔力を増やし続けるつもりだ。
数日後には選抜された子たちと鍛錬をすることになるだろう。
選ぶだけなら今日にでも終わるらしいけど、場所の安全確保のために時間がかかるんだとか。
そんなわけで日が暮れるまで遊びながら魔道具『パワースーツ』を使い続けたんだけど、魔力が有り余っていて困る。
どうしたものかなぁ、と考えながら夕食を食べているとのんびりと食事をしていた褐色肌の女性が「そういえば」と思い出したかのように口を開いた。
海洋国家ガレオールの女王であり、僕のお嫁さんのうちの一人であるランチェッタさんだ。
レヴィさんに匹敵するほどの豊かな胸は天然物で、その背丈には不釣り合いなほど大きい。視線がそこに向かってしまわないように気をつけつつランチェッタさんの方を見るけど、彼女の口元が綻んでいるところを見ると、つい視線が下に下がってしまっているのに気づいているのだろう。
「シグニール連合の会合の時に、シズトは追加で側室を設ける気はないのかと遠回しに聞かれたんだけど、その予定はないって回答でよかったかしら? 状況が変わったから念のため聞いておこうかと思ったのだけれど」
「お断りでお願いします~。っていうか、神様との繋がりも無くなったのに、まだ縁談の申し込みなんて来るんだね。今後、僕の子どもに三柱の加護を授かる事はないって言われたって伝えたのに」
神様たちとお別れの際に今後起こりうる事を色々と最高神様から聞いた。その中には子どもの加護についても話があった。
元々加護を授かっていた神様であるファマ様、エント様、プロス様の三柱は僕との繋がりが完全に切れてしまうので、これからは僕との子どもに加護を授ける事はできないらしい。
孫以降には授けられるらしいけど、それは伝えると面倒そうだからお嫁さんたちにしか言っていない。
他の神々の加護であれば子どもが授かる可能性もあるらしいけど、そこら辺の仕組みについては詳しく教えてくれなかった。
まあ、末代まで神から見放される、みたいな事にならなくてよかった、と思っておこう。
「婚姻関係を結ぶ事で、連合内での影響力を増やしたい、とかそういう思惑があるんじゃないかしら。まあ、とりあえず全てお断りしておくわ」
「ファマリーに来ている縁談も断っておきますねぇ」
ランチェッタさんに続いてそう言ったのはエルフらしからぬ体型のエルフ、ジューンさんだ。
エルフの正装である真っ白な布地に金色の糸で蔦のようなものが刺繍された服を着ている。
今日も僕の代わりとしてエルフたちの国に訪れた人々の相手をしてきてくれたのだろう。
「もうこれ以上は本当にいいから。そういう話は全部断っていいからね」
神様の加護を返還したし、そういう話とは無縁だと思っていたから明言していなかったけど改めて釘を刺しておこう。
気付かない内に増えていた、って事はないだろうけど一応、ね。
食後、今日のお世話係であるレヴィさん、セシリアさんの二人と一緒にお風呂に入った。
セシリアさんからしっかりと学んだレヴィさんは、一人でも僕の頭と背中をしっかりと洗う事が出来るようになっている。
「王女様はされる方なんじゃないかなぁ」
「シズトが望むなら洗ってくれてもいいのですわ?」
「いや、そういう事じゃなくてね?」
「シズト様がお望みであれば、レヴィア様に他の部分の洗い方も実演を交えて指導しますよ」
「そういう話はそもそもしてないから」
油断するとセシリアさんやディアーヌさんは許可していない所もしれっと洗おうとするので気が抜けない。
今日は何のお風呂に入ろうか、としばし考えてからいつも通り魔道具『入浴魔石』を入れられたお風呂に浸かる。
のんびりと浸かっている間は流石に仕掛けてくる事はないので、基本的には雑談タイムになる事が多い。
レヴィさんの話は、ドライアドたちの様子や、彼女たちをスケッチするために来ているラピスさんの話がメインだ。
「ドライアドたちはまだラピスさんの真似をする事はないの?」
「そうですわね。ラピスにも農作業を手伝わせてみようかと思ったのですけれど、『近衛兵の動作を真似する様子も見受けられないから無駄だと思います』と断られてしまったのですわ」
「あー……そう、かな? なんかあんまりしっかり見た事がないから分かんないけど……」
「ラピスが言うならそうだと思うのですわ」
「別に何か大きな問題があるわけじゃないけど、そこら辺の生態とかも解明されるといいね」
今後のラピスさんに期待だ。
のぼせてしまう前にお風呂から上がって甚兵衛に着替えを済ませると自室へと移動する。
「私は出て行った方が良いのですわ?」
「いえ、今日も特にする予定はありませんからその必要は御座いません」
「たまにはしてもいいと思うのですわ」
「レヴィア様の出産が終わるまではそういう訳にはいきません」
この表情の時のセシリアさんは頑なだ。
僕以上にセシリアさんとの付き合いの長いレヴィさんがそれに気づいていないわけがないけれど、それをあえて無視してお世話係の日になる度にこういう話が出る。
僕としてはお休みの日ができるから嬉しい事だけど、平等に愛するって誓った手前、セシリアさんがレヴィさんに気を使って妊娠をしないように夫婦の営みをしないのはどうなのかと思う時もある。
ただ、侍女のセシリアさん的にはそこは譲れない所なんだろう。こればっかりは仕方がない。
「シズトから仕掛けたらするんじゃないかと思うのですわ」
「…………」
「…………」
とても難しい事を仰る。
結局、その日は特に何かをする事もなく、魔力切れになるまで魔力を使うにはどうすればいいか相談に乗ってもらった。
これ以上魔力を増やしてどうするつもりなのか、と呆れられたような気もするけど、これ以外取り柄がないのでとりあえず後の事は考えず、魔力を増やし続けるつもりだ。
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