【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第26章 他力本願で生きていこう

542.事なかれ主義者は告げられた

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 神様たちに祈りを捧げたらすぐに誰かに抱き着かれた感覚がした。
 目を開けると真っ白な空間にいて、縦にも横にも成長中のファマ様が僕に抱き着いていた。
 女性らしい丸みを帯びた体つきになりつつあるエント様も、成長しているのに無防備に近づいて来てぺたぺたと僕の体を触っている。
 他の二人と比べると背の伸びが少ないプロス様はというと、両手を腰に当てて頬を膨らませている。

「ぶ、無事でよかったんだなぁ!」
「すっごーく心配してたんだよ!」
「なんともなくてよかったね……?」
「アレってそんなにやばい相手だったんですか?」
「あの子は元々、神界にいた子なんだよ……?」
「ルールを破って下界に下りちゃった子なの。神じゃなくなっちゃっても、それでも力はとっても強いから危なかったんだからね!」
「げ、下界だと邪神と呼ばれている存在なんだなぁ」

 ……なるほど。邪神の信奉者だと思っていたら邪神だった、と。

「最高神様はあそこにいるって知ってたの……?」
「可能性の一つではあったが、確証はなかったのう」

 ……なんでここに最高神様がいらっしゃるんだ?
 普段だったらファマ様たちしかしかいないのに。
 最高神様は創造神とも呼ばれているこの世界を作り上げた神様とも言われている存在だ。
 見た目は真っ白な髭をモジャモジャと生やした優し気なご老人、という感じだけど、今日は何だか雰囲気が違う。

「元々、チャムの事は探していたんじゃよ。まさか、お主が見つける事になるとは思わなかったがのう」
「見てたんだったら助けてくれませんか? 魔法も効かないし、拘束はできたけど呪いっぽいのは広がり続けてたし、なんか外に出られないし……」
「儂が直接手を出す事もできるが、そうすると非常にまずい事が起こるからのう」
「まずい事?」
「神格が高すぎるがゆえに、直接力を行使するとチャムだけではなく周囲一帯は消えてなくなる。それこそ、お主がせっせと作り上げたもの諸共な」
「……………ほんとに?」
「ほんとじゃとも。最高神、嘘つかない。それに加えて、その余波で世界各地に天災が起きるじゃろう。人間たちの世界には遥か昔の事として記録されているかもしれんが、神罰と言われるものじゃな。実際は神の力を直接下界に振るった事によって生じた歪みが直る時に起こる事じゃから神の罰というわけではないんじゃが……それでも儂が手を下しても良いのか?」
「ご遠慮ください」
「そうじゃろうな」

 呪いから守りたくて神に縋ったら守る者が無くなってました、とか笑い話にもならないし、他の人たちにも迷惑はかけたくない。

「それに、儂もチャムを殺してそれでおしまいにはしたくないんじゃよ。あの子も、下界の者たちの被害者と言えば被害者じゃからのう」

 ……これは、話を聞いた方が良い流れだろうか。
 なんて思っている事も最高神様だけでなく、神様たちにも筒抜けだった。
 三柱の何とも言えない視線が僕に向けられる。
 いや、でもこうしている間にも大地の変色が広がっているわけだし、少しでも早く何とかして欲しいですし……。
 心の中でいい訳を並べていると、三柱にため息を吐かれた。

「まあ、儂の話は長いとよく言われるからのう。また後でにしよう。それで、チャム……下界では邪神と呼ばれているあの者を何とかする方法はある」
「ほんとですか!?」
「ほんとじゃとも。じゃが、あれほどの存在を止めるにはそれ相応の代償を払う必要があるんじゃよ。堕ちたとはいえ、神じゃからの。普通の人間の魔法は殆ど効かんじゃろうし、物理攻撃も通り辛いじゃろう。周辺一帯はチャムの神域になるように結界が張られておるから生半可な攻撃をしてもすぐに直ってしまうじゃろうし、そもそもお主らが立て籠もっている所から出た瞬間にあらゆる呪いがお主たちを襲うじゃろう。推測していた通り、大地の変色も触れた者を呪う恐ろしい御業じゃ。空気を吸うだけでも多大な影響があるし、魔力に触れるだけでもアウトじゃ。チャムを閉じ込めた後、加護を使って外への通路を作るんじゃないかとハラハラしたのう」

 ……外に出る前に神様に祈っといてよかった。
 やろうと思えばシェルターと邪神を閉じ込めている構造物を繋げて、トンネルのようにする事も出来たんだけど、ギリギリで命拾いをしていたようだ。

「そ、その時は止めてたんだな!」
「ちゃんと見守ってたんだよ!」
「いつでも声をかける準備はしてたんだよ……?」
「祈りを介さなくても声を掛けられるんですか? それだったらすぐに話しかけてくれればよかったのに……」
「し、神力をとっても使うんだな」
「すぐに使うかもしれないから取っておいたの!」
「シズトくんのおかげで、だいぶ溜まってるんだけどね……?」

 話がそれ始めたところで、最高神様が咳払いをした。
 騒がしかった三柱がそれだけで静かになって最高神様を見ている。

「お主は『神降ろし』という御業のやり方は、知っておるな?」
「……はい」
「それを使えば、何とでもなるじゃろう。ただその代わり――」
「今後、加護を使えない……ですよね?」

 最高神様はゆっくりと頷いた。
 三柱は神妙な面持ちで僕の方を見てくる。

「でもその代償は、加護と神様の縁が無くなると聞きましたが……」
「そうじゃな。今後一切の神と話す事ができなくなるし、加護も使えなくなる。加護を頼りに生きている者にとっては死活問題じゃろうな」
「必要な加護だけを返還するっていうのはできないんですか?」
「無理じゃ。それに、出来たとしても状況を考えるとこの子たち全員の力が必要になるじゃろう」
「そうですか……。……まあ、お金は十分すぎるほどありますし、生きていく事はできると思います」

 これが陽太とかだったらほんとに今後どうするか問題になったかもしれないけど。
 その事も踏まえてもやっぱり『神降ろし』をする適任は僕なんだろう。

「逆に儂らからもお主に干渉する事は出来なくなる。今までのように様子を見る事も、話しかける事も出来ぬ。『神降ろし』をした後は今生の別れというわけじゃ」
「だ、だから直接呼んだんだな!」
「しっかり顔見てバイバイしたいもんね!」
「今までのお礼もしっかりと伝えたいんだよ……?」
「刻一刻とチャムの影響は広がっておる。が、多少話す時間くらいはあるじゃろう。これで最後じゃ。悔いのないよう、しっかりと話しなさい」

 最高神の言葉に三柱はそれぞれ返事をした。
 これで最後だし、時間の許す限り三柱の話に付き合おう。
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