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第25章 片手間にサポートしながら生きていこう

535.事なかれ主義者は一先ず作る事にした

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 ファマリーの世話を終えて、今日は何をして過ごそうかと考えながらドライアドたちと戯れていると、探索をしていたはずの明たちから連絡が入ったとジュリウスが報せてくれた。
 その内容に驚いたけど、とりあえず明たちを出迎えるために転移陣の方へとぞろぞろと移動する。
 衣服などについた臭いを消臭するとかいろいろとやる事があったからちょっと時間がかかったけど、彼らは六人そろってファマリーに戻ってきた。
 一先ず一安心、と言った所か。

「ダンジョン内で邪神の信奉者が見つかったって?」
「邪神の信奉者かは分かりません。が、全員もれなく呪われていました」

 淡々と報告してきた明は、自身が身に着けていた『身代わりのお守り』を差し出した。
 他の皆も同様に見せてくれたけど、確かに端っこの方がちょっと変色している。

「記録映像をお見せする事も出来ますが、音によって呪われた可能性が高い事を考慮するとあまりお勧めできません」

 カレンさんが身に着けていた首飾りを外して僕に渡そうとしたけど、それはジュリウスが回収した。

「『身代わりのお守り』をつけた状態で確認してきます。少々お待ちください」

 そう言ってどこかへ消えたジュリウスを待っている間に、四十一階層の様子を詳しく聞く。
 ただ、分かっている事はあまり多くないようだ。
 自動探知地図を使ったおかげで地形は把握できたけど、階層内は明かりがなくて真っ暗だったらしい。
 光魔法を使ったが、普段よりも効果が少なく、何かしらの魔法で妨害されている事も考えられるそうだ。
 空間に広がっている暗闇のせいか、魔力反応もはっきりと分からないため、どこから歌のような声が発せられているのかわからないらしい。
 明から状況説明されている間にジュリウスは戻ってきた。

「特に問題ありませんでした」
「そっか、よかった」

 もしも録音されているものを聞いたり、録画されているものを見ただけで呪われるんだったら安易に映像を記録できる魔道具とか広められないしね。
 ……もしもできたら呪いのビデオできるじゃん、とか思ったけど、様子を見に来ていたラオさんにジト目で見られたのでそっと視線を逸らす。

「陽太、とりあえず屋敷に戻っていてもらえますか?」
「なんでだよ。一緒に報告したほうがいいだろ?」
「そう言うのなら集まってきたシズトのお嫁さんたちに不躾な視線を向けるのはやめてください」
「こっちの印象まで悪くなるでしょ!」

 明と姫花が言うように、先程から陽太は集まってきたラオさんたちの胸やらお尻やらをジロジロと見ていた。

「見るぐらいだったらいいだろ、減るもんじゃないし」
「その発言はどうかと思うなぁ……」

 いやまあ、こっちの世界に向こうの世界の常識を持ち込むのはどうかと思うし、それを持ち込んだら真っ先にいろんな女性を娶っている僕が糾弾される事になりそうなんだけど、人妻を狙うのはどうかと思う。

「シズトが嫌がっているので視線を向けるのをやめてください。それが無理なら帰っていただいて結構です。報告は全体を見ていた僕だけでも十分ですから」

 そういうわけで陽太はラックさんに引きづられる形でドランに転移していった。
 僕たちは映像を見よう、という事になったので屋敷に移動する。
 陽太がいないならまあ我慢できるし、何より妊娠組には座って見てほしい。
 外でもよかったんだけど、ドライアドたちが我先にと座っている僕の膝の上に乗るから落ち着いて見れないし仕方ない。
 そのドライアドたちは屋敷に入る許可をもらっていないので、窓の外からこっちの様子を窺っている。
 視線を向けると頭を引っ込めるけど、色とりどりの花が窓の外で揺れていて隠れ切る事ができていなかった。

「それでは、投影開始します」

 ジュリウスが準備してくれたので座って記録の内容を見るが、映像に移っているのは光によって照らされた陽太たちくらいで、魔物の姿は見えない。

「ほら、この歌のような声のような音です。これを聞いた時にラックが腰に着けてた『身代わりのお守り』に異変がありました」

 カレンさんの解説付きで映像を見ないと気づかないぞ、これ。

「音を遮断する耳栓みたいなのを着けてれば呪われないかな?」
「どうでしょう。試してみない事には分かりませんが……冒険中に意思疎通ができないのはだいぶきついですね」
「じゃあヘッドセットみたいな感じにしてお互いの声以外は聞こえないようにするとか?」

 僕が明に提案していると、ジュリウスに巻き戻して繰り返し見ていたラオさんが「音は光魔法を使ってから聞こえ始めてるな」と呟いた。
 それに対してルウさんが「じゃあ使わずに探検すると良いのかしら?」なんて事を言っている。

「明かりがないと無理なんじゃないの? 真っ暗だったんでしょ?」
「魔力探知で十分」

 そう言ったのはラオさんとルウさんの間に挟まれる形で映像を見ていたドーラさんだ。
 魔力探知、やっぱり便利だなぁ。停電の時とかに重宝しそう。

「常に魔力探知しながら行動する必要が出てきますね。できなくはないですが、魔力消費は抑えたいですし……」
「そりゃそうか。明は魔法使いだもんね。とりあえず、レンタルしている魔道具は全部魔石タイプにしようか」
「かしこまりました、マスター。貸出料金が変更になりますので差額分をお支払いください」

 ホムラが明に向けて金をよこせと手を差し出している。
 それにちょっと待ったをかけた。

「今回に関しては料金は同じ価格帯でいいよ。邪神の信奉者が潜り込んでるならできればさっさと捕まえて欲しいし」
「仰せの通りに、マスター」
「あと、『加護無しの流星錘』を渡しておいて」
「それもいいけどよ。魔物が呪いの魔法を使うタイプだったら効かないかもしれねぇし、気づかれない事に重点を置いてもいいんじゃねぇか?」
「魔物も呪いを使うの?」
「分からん。可能性があるってだけだ。むしろダンジョンでの出来事だったら魔物の仕業と考えるのが普通だと思うぞ? 神様から授かる加護は、実在する魔法が殆どだ。シズトが授かった加護の能力も、もしかしたら魔法で代用できる物があるが、発見されていないのか、遥か昔に失われた物かもしれん。それと同じく、邪神の加護として有名な相手を呪う力も魔法としてあっても不思議じゃねぇ」
「……なるほど?」
「とりあえず、シズトくんは思いつく限りの対策を作ればいいんじゃないかしら」
「それもそうだね。とりあえず見てて気づいた事話して。まとめるのは……」
「私にお任せください」
「よろしくジュリウス」

 そうと決まれば僕は早速『防音ヘッドセット』を作った。
 その他に何が必要なのか皆の話し合いを見ながら、特に思いつかない間はせっせと『身代わりのお守り』の量産に励む。

「公爵に話をつけてくる」
「私はお父様に伝えるのですわ!」

 そう言ってドーラさんとレヴィさんは部屋を出て行った。
 ……これを理由に二人が来そうな気がするのは僕だけだろうか。
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