【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
上 下
796 / 1,094
第25章 片手間にサポートしながら生きていこう

533.事なかれ主義者は変わるまでは会いたくない

しおりを挟む
 ビデオ通話ができる魔道具を作って数日が経った。
 この数日間は世界樹イルミンスールのお世話を終えたらこっちの大陸の安全が確保できた他国の街を観光して過ごした。
 ウィズダム魔法王国には特にこれと言って困りごとはなかった。シグニール大陸にある魔法の研究が盛んな国ドタウィッチのように魔法が使えるものと使えないものの間に確執があるかも? とか思っていたけど、そういうのはないらしい。
 国ではなく、国教となっている知識の神様を信奉している教会には邪教徒狩りに関する問題があるみたいだけど、それは年が経つにつれて解決していく事だろう。……たぶん。
 ドワーフの国ルンベルクでは予想通りドーラさんが大人気だった。
 ドワーフの女性のように小柄で華奢な体格をしているからドワーフの男性から見たら魅力的に見えるのだろう。顔立ちは人形のように整っているし、綺麗な白い肌に金髪碧眼だからドワーフじゃなくても魅力に感じるけど。
 中にはドーラさんにいいところを見せようとしてか、僕にどっちがたくさんお酒を飲めるかとか大食い勝負とか仕掛けてくる人もいたけど、そういう人はドーラさんが率先して潰していた。
 全身鎧を身に着けていないから人形のような可愛らしい見た目の彼女だったけど、筋骨隆々のドワーフに腕相撲を挑まれても問題なく勝っていた。

「勝負、したかった?」
「いや、避けられるなら避けたいかな」
「そう。よかった」

 絡まれるのは煩わしかったけど、ドワーフたちのおかげでドーラさんの口数が増えた一日だった。
 ダークエルフの国ノルマノンでは特に大きなトラブルはなかった。
 ノルマノンは平野が大部分を占めているそうだ。大樹海から流れている大河が他国との国境線となっているらしい。
 西の方に魔物たちの領域である大樹海があるし、大樹海から川を下ってくる魔物もいるため魔物対策が課題となっているらしい。
 人族の国は母数が多いから人海戦術で対応できるそうだけど、ダークエルフは長命種故に出生率が低く、育つのも時間がかかるため人材が貴重だから人族のような対応は難しいんだとか。
 ただその代わり、人族よりも魔力が多く、扱いにもたけているので一人ひとりの戦闘力が高いからある程度は抑えられているらしい。

「ただぁ、年々大樹海が広がっていてぇ、国土が徐々に減って行ってるそうですぅ。大樹海から溢れた魔物たちに大樹海の植物の種子がついていたりぃ、糞に含まれているからだと考えられていますぅ。植物の成長が他の物よりも早いのでぇ開拓地が森にのまれてしまう事もあるそうですよぉ」
「どこも大変なんだねぇ」
「そうですねぇ」

 ノルマノンの観光にもついて来ていたジューンさんがキラリーさんから聞いた事を教えてくれた。
 観光をするだけだったので、ジューンさんはエルフの正装ではなく、ニットのワンピースを着ていた。
 ダークエルフはエルフと違って豊満な体型の人も普通にいるので奇異な視線を向けられる事はないけど、別の視線はたくさんジューンさんに向いていた。
 パメラやドーラさんにはそういう視線が向いていなかったのは個人の好みの問題なのか、子どもに見えたからなのか……。たぶん子どもに見えたんだろうな。パメラもドーラさんもどこかの店で買い物をする度におまけを貰ってたし。
 子どもが少ないからこそ、子どもに優しい国民性なのだろう。



 そんな感じで観光していたけど、それぞれの国の観光をするときにビデオ通話ができる魔道具を常に使っていたので新しい魔道具を作る余力はそこまでなかった。
 まあ、明たちは無事にフロアボスを倒して三十六階層以降で採掘に専念しているらしいから特に必要となる魔道具は多くなかったからいいんだけど。
 ああ、でも毒ガス対策で嗅覚遮断マスクをアップグレードはしたか。
 マスクを通過した空気を無毒化する魔法を【付与】したのでガスに気をつける必要は無くなったらしい。
 落とし穴や落盤などの他のトラップは生体が通過したら発動するタイプのトラップらしいので魔道具を試作して様子を見てもらっている段階だけど、うまく行くかは分からない。
 でも、うまくいかなくても誰も困る事はないから別にいいか。
 そんな事を思いつつ、転移門が設置されていない他国からの使節団を出迎え、対応していたらあっという間に日が暮れた。

「こっちの魚人族とは友好的に関われそうで良かったね」
「そうですねぇ。特に他種族を見下している様子もありませんでしたしぃ、仲良くやっていけそうで良かったですぅ。クレストラ大陸周辺の魚人族も友好的らしいですからぁ、そこまで心配してなかったですけどぉ」
「他種族を見下す傾向にあるのは魚人族の文化っていう訳じゃないって事だね」

 他の大陸の魚人族がまともであればまともであるほど、シグニール大陸にある魚人族の国アトランティアの評価が落ちてしまうけど、未だに態度を改める様子はないらしいから仕方がないだろう。
 まあ、今までの関係性とか諸々あるから一気にがらりと変わる事はないだろうけど、時代が変わってしまったと諦めて、アトランティアの人たちが変わる事を祈っておこう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果  異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。  実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。  異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。  そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。  だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。  最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!

林檎茶
ファンタジー
 俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?  俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。  成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。  そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。  ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。  明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。  俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。  そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。  魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。  そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。  リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。  その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。  挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...