795 / 1,094
第25章 片手間にサポートしながら生きていこう
532.事なかれ主義者は次善策を提案した
しおりを挟む
ノエルとジュリウスに実験してもらって問題なく使える事が分かったので、いろいろな型の魔道具を作ってどれがいいか考えてみたけど、結局手軽に使う事ができるように、手のひらからちょっとはみ出るくらいの大きさの水晶玉を魔道具化する事にした。
出来上がった魔道具はひとまず『水晶型ビデオ通話機』と名付けた。
僕にネーミングセンスがないのはもう分かっているので安直な名前にした。
その二つの水晶玉型の魔道具の片方は明に届けるためにアイテムバッグの中に入れておいたけど、夕方頃になると無事に彼らの手に渡ったようだ。
観察を続けていたノエルから水晶型ビデオ通話機を回収し、明滅を繰り返すそれに魔力を込めると景色が映った。
『ほんとにビデオ通話できるなんて……何でもありですね。何で今まで作らなかったんですか?』
水晶玉に映っている中性的な顔立ちのその少年の問いかけに僕は首を傾げてしばし考える。
「別にいらなかったから、かな。前にUFO型のドローンを作ったからできるだろうなって思ってたんだけど使うタイミングなかったし……」
『UFO……』
「ランチェッタにプレゼントすれば異大陸にいる間も気軽に話せると思うのですわ」
僕たちの会話に突如入ってきた女性の名はレヴィア・フォン・ドラゴニア。
ドラゴニア王家の血が流れている証である青い目で水晶玉を凝視している。
ガレオールの女王であるランチェッタさんは多忙なため、今でも会えない時は文通をしていたけど、確かに彼女の言う通り直接顔を見せ合って話ができるならそれが良い。
「あと、レヴィア様も含めた妊娠している方々が、シズト様が観光する際に見ている景色を一緒に楽しむことが出来ますね」
レヴィアさんの言葉に付け足したのは彼女の専属侍女であり、僕のお嫁さんの一人でもあるセシリアさんだ。
彼女もレヴィさんと同じく魔道具が気になるのか、それともレヴィさんを監視しているだけなのかは分からないけど、ジッと水晶玉の方を見ていた。
「あー、なるほど。あんまりビデオ通話なんてした事なかったけど、そういう使い方もありなのか」
そうなるとやっぱり大画面で見る事ができた方が良い様な気もする。
アイテムバッグの中で眠る事になりそうだったあの大型魔道具の活躍チャンスかもしれない。
「……あの、今日の報告をしてもいいですか」
「ああ、ごめん。報告よろしく」
『今日は昨日よりもさらに下の階層に進みました。やはり取りすぎるとある程度のインターバルが必要なようです』
「無限に取れるわけじゃないんだね」
『まあ、予想の範囲だったので問題ありません。ドラン軍に迷惑をかけないためにも三十六階層に行きたいですね』
「今はまだ三十四までしか言ってないんだっけ?」
『ある程度のミスリルを採るだけなら必要ないですからね』
「確か五階層ごとにボスの部屋みたいなのあったよね?」
『そうですね。このダンジョンは五階層ごとにあるので、三十五階層はフロアボスがいる階層だと思われます』
「昔の記録では確かジャイアントスケルトンキングが複数と、それ以下のランクのスケルトン系の魔物がわらわら出るはずですわ!」
『そのようですね。姫花もいる事ですし、負ける事はないでしょうけど、危なかったらレンタルしている脱出の指輪を使わせていただきます。その時の様子などはまた夕方頃に報告でよろしかったですか?』
『まどろっこしいな。この魔道具を持ってダンジョンに行って、それで見てもらえばいいだろ』
返事をする前に話しに割り込んできたのは金田陽太。明たちの冒険者パーティーの名目上のリーダーだ。
実質、活動方針とかは明が決めているけど、ギルドに登録する際には陽太がリーダーという事になっているらしい。
だからと言って何か権限があるわけではないらしいけど。
「んー……無理だと思うけど、とりあえず明日試してみてくれる?」
『分かりました。朝食後くらいの時間にこれを起動しますがよろしいですか?』
「うん、それでいいよ。後は話す事はない?」
『はい。相も変わらずミスリルを含めた金属を採掘し続けただけでしたから』
「それじゃ、また明日ね」
『失礼します』
明の返答を待ってから魔道具に魔力を流すのをやめた。
ずっと魔力を流し続ける必要があるから、ダンジョン内にいる人と通話ができたとしても使う人は気を付けてもらわないといけないだろう。
そんな事を思いながら、夕食の準備が整ったと言われたので皆が待っている所に向かった。
翌朝、朝食を食べ終えてドラちゃんが焼かれた肉をゆっくりと味わうかのように咀嚼している様子を眺めていると明から着信があった。
『今からダンジョンに入りま………後ろに移ってるの、ドラゴンですか?』
「え? うん、そうだけど?」
『……そうですか』
何か言いたげな明だったけど特に何も言わずにダンジョンに向かい始めた。
水晶型ビデオ通話機を持ち直したからか、明たちが向かっている方が映されたので明の姿が消えた。
どんどんとダンジョンの入り口が近づいていて、陽太が意気揚々と歩いているのが見える。
だが、明が一歩ダンジョンに踏み込んだ瞬間、何も映らなくなった。が、すぐにまた向こうの映像が映る。どうやらダンジョンから出たようだ。空を背景にした明の顔が映った。
『やはりだめでしたね』
「だよね、知ってた」
空間転移系の魔道具でダンジョン内から一気にダンジョン外に出られないから想定していたけど、やっぱり駄目だったようだ。
その後、明たちには二度手間になってしまったけど一度ファマリーに戻ってもらって、アンジェラから同様の魔道具を受け取ってもらい、ダンジョン内同士だったら通話ができるか試してもらったけど問題なくできたらしい。
また、魔道具を受け取ってもらう際に魔動カメラも貸し出して、映像を撮ってきてもらう事にした。
リアルタイムで何か作る事は出来ないけど、危ない時はいつでも逃げられるだろうし、サポートするならこれで十分だろう。
出来上がった魔道具はひとまず『水晶型ビデオ通話機』と名付けた。
僕にネーミングセンスがないのはもう分かっているので安直な名前にした。
その二つの水晶玉型の魔道具の片方は明に届けるためにアイテムバッグの中に入れておいたけど、夕方頃になると無事に彼らの手に渡ったようだ。
観察を続けていたノエルから水晶型ビデオ通話機を回収し、明滅を繰り返すそれに魔力を込めると景色が映った。
『ほんとにビデオ通話できるなんて……何でもありですね。何で今まで作らなかったんですか?』
水晶玉に映っている中性的な顔立ちのその少年の問いかけに僕は首を傾げてしばし考える。
「別にいらなかったから、かな。前にUFO型のドローンを作ったからできるだろうなって思ってたんだけど使うタイミングなかったし……」
『UFO……』
「ランチェッタにプレゼントすれば異大陸にいる間も気軽に話せると思うのですわ」
僕たちの会話に突如入ってきた女性の名はレヴィア・フォン・ドラゴニア。
ドラゴニア王家の血が流れている証である青い目で水晶玉を凝視している。
ガレオールの女王であるランチェッタさんは多忙なため、今でも会えない時は文通をしていたけど、確かに彼女の言う通り直接顔を見せ合って話ができるならそれが良い。
「あと、レヴィア様も含めた妊娠している方々が、シズト様が観光する際に見ている景色を一緒に楽しむことが出来ますね」
レヴィアさんの言葉に付け足したのは彼女の専属侍女であり、僕のお嫁さんの一人でもあるセシリアさんだ。
彼女もレヴィさんと同じく魔道具が気になるのか、それともレヴィさんを監視しているだけなのかは分からないけど、ジッと水晶玉の方を見ていた。
「あー、なるほど。あんまりビデオ通話なんてした事なかったけど、そういう使い方もありなのか」
そうなるとやっぱり大画面で見る事ができた方が良い様な気もする。
アイテムバッグの中で眠る事になりそうだったあの大型魔道具の活躍チャンスかもしれない。
「……あの、今日の報告をしてもいいですか」
「ああ、ごめん。報告よろしく」
『今日は昨日よりもさらに下の階層に進みました。やはり取りすぎるとある程度のインターバルが必要なようです』
「無限に取れるわけじゃないんだね」
『まあ、予想の範囲だったので問題ありません。ドラン軍に迷惑をかけないためにも三十六階層に行きたいですね』
「今はまだ三十四までしか言ってないんだっけ?」
『ある程度のミスリルを採るだけなら必要ないですからね』
「確か五階層ごとにボスの部屋みたいなのあったよね?」
『そうですね。このダンジョンは五階層ごとにあるので、三十五階層はフロアボスがいる階層だと思われます』
「昔の記録では確かジャイアントスケルトンキングが複数と、それ以下のランクのスケルトン系の魔物がわらわら出るはずですわ!」
『そのようですね。姫花もいる事ですし、負ける事はないでしょうけど、危なかったらレンタルしている脱出の指輪を使わせていただきます。その時の様子などはまた夕方頃に報告でよろしかったですか?』
『まどろっこしいな。この魔道具を持ってダンジョンに行って、それで見てもらえばいいだろ』
返事をする前に話しに割り込んできたのは金田陽太。明たちの冒険者パーティーの名目上のリーダーだ。
実質、活動方針とかは明が決めているけど、ギルドに登録する際には陽太がリーダーという事になっているらしい。
だからと言って何か権限があるわけではないらしいけど。
「んー……無理だと思うけど、とりあえず明日試してみてくれる?」
『分かりました。朝食後くらいの時間にこれを起動しますがよろしいですか?』
「うん、それでいいよ。後は話す事はない?」
『はい。相も変わらずミスリルを含めた金属を採掘し続けただけでしたから』
「それじゃ、また明日ね」
『失礼します』
明の返答を待ってから魔道具に魔力を流すのをやめた。
ずっと魔力を流し続ける必要があるから、ダンジョン内にいる人と通話ができたとしても使う人は気を付けてもらわないといけないだろう。
そんな事を思いながら、夕食の準備が整ったと言われたので皆が待っている所に向かった。
翌朝、朝食を食べ終えてドラちゃんが焼かれた肉をゆっくりと味わうかのように咀嚼している様子を眺めていると明から着信があった。
『今からダンジョンに入りま………後ろに移ってるの、ドラゴンですか?』
「え? うん、そうだけど?」
『……そうですか』
何か言いたげな明だったけど特に何も言わずにダンジョンに向かい始めた。
水晶型ビデオ通話機を持ち直したからか、明たちが向かっている方が映されたので明の姿が消えた。
どんどんとダンジョンの入り口が近づいていて、陽太が意気揚々と歩いているのが見える。
だが、明が一歩ダンジョンに踏み込んだ瞬間、何も映らなくなった。が、すぐにまた向こうの映像が映る。どうやらダンジョンから出たようだ。空を背景にした明の顔が映った。
『やはりだめでしたね』
「だよね、知ってた」
空間転移系の魔道具でダンジョン内から一気にダンジョン外に出られないから想定していたけど、やっぱり駄目だったようだ。
その後、明たちには二度手間になってしまったけど一度ファマリーに戻ってもらって、アンジェラから同様の魔道具を受け取ってもらい、ダンジョン内同士だったら通話ができるか試してもらったけど問題なくできたらしい。
また、魔道具を受け取ってもらう際に魔動カメラも貸し出して、映像を撮ってきてもらう事にした。
リアルタイムで何か作る事は出来ないけど、危ない時はいつでも逃げられるだろうし、サポートするならこれで十分だろう。
53
お気に入りに追加
454
あなたにおすすめの小説
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる