【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第25章 片手間にサポートしながら生きていこう

532.事なかれ主義者は次善策を提案した

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 ノエルとジュリウスに実験してもらって問題なく使える事が分かったので、いろいろな型の魔道具を作ってどれがいいか考えてみたけど、結局手軽に使う事ができるように、手のひらからちょっとはみ出るくらいの大きさの水晶玉を魔道具化する事にした。
 出来上がった魔道具はひとまず『水晶型ビデオ通話機』と名付けた。
 僕にネーミングセンスがないのはもう分かっているので安直な名前にした。
 その二つの水晶玉型の魔道具の片方は明に届けるためにアイテムバッグの中に入れておいたけど、夕方頃になると無事に彼らの手に渡ったようだ。
 観察を続けていたノエルから水晶型ビデオ通話機を回収し、明滅を繰り返すそれに魔力を込めると景色が映った。

『ほんとにビデオ通話できるなんて……何でもありですね。何で今まで作らなかったんですか?』

 水晶玉に映っている中性的な顔立ちのその少年の問いかけに僕は首を傾げてしばし考える。

「別にいらなかったから、かな。前にUFO型のドローンを作ったからできるだろうなって思ってたんだけど使うタイミングなかったし……」
『UFO……』
「ランチェッタにプレゼントすれば異大陸にいる間も気軽に話せると思うのですわ」

 僕たちの会話に突如入ってきた女性の名はレヴィア・フォン・ドラゴニア。
 ドラゴニア王家の血が流れている証である青い目で水晶玉を凝視している。
 ガレオールの女王であるランチェッタさんは多忙なため、今でも会えない時は文通をしていたけど、確かに彼女の言う通り直接顔を見せ合って話ができるならそれが良い。

「あと、レヴィア様も含めた妊娠している方々が、シズト様が観光する際に見ている景色を一緒に楽しむことが出来ますね」

 レヴィアさんの言葉に付け足したのは彼女の専属侍女であり、僕のお嫁さんの一人でもあるセシリアさんだ。
 彼女もレヴィさんと同じく魔道具が気になるのか、それともレヴィさんを監視しているだけなのかは分からないけど、ジッと水晶玉の方を見ていた。

「あー、なるほど。あんまりビデオ通話なんてした事なかったけど、そういう使い方もありなのか」

 そうなるとやっぱり大画面で見る事ができた方が良い様な気もする。
 アイテムバッグの中で眠る事になりそうだったあの大型魔道具の活躍チャンスかもしれない。

「……あの、今日の報告をしてもいいですか」
「ああ、ごめん。報告よろしく」
『今日は昨日よりもさらに下の階層に進みました。やはり取りすぎるとある程度のインターバルが必要なようです』
「無限に取れるわけじゃないんだね」
『まあ、予想の範囲だったので問題ありません。ドラン軍に迷惑をかけないためにも三十六階層に行きたいですね』
「今はまだ三十四までしか言ってないんだっけ?」
『ある程度のミスリルを採るだけなら必要ないですからね』
「確か五階層ごとにボスの部屋みたいなのあったよね?」
『そうですね。このダンジョンは五階層ごとにあるので、三十五階層はフロアボスがいる階層だと思われます』
「昔の記録では確かジャイアントスケルトンキングが複数と、それ以下のランクのスケルトン系の魔物がわらわら出るはずですわ!」
『そのようですね。姫花もいる事ですし、負ける事はないでしょうけど、危なかったらレンタルしている脱出の指輪を使わせていただきます。その時の様子などはまた夕方頃に報告でよろしかったですか?』
『まどろっこしいな。この魔道具を持ってダンジョンに行って、それで見てもらえばいいだろ』

 返事をする前に話しに割り込んできたのは金田陽太。明たちの冒険者パーティーの名目上のリーダーだ。
 実質、活動方針とかは明が決めているけど、ギルドに登録する際には陽太がリーダーという事になっているらしい。
 だからと言って何か権限があるわけではないらしいけど。

「んー……無理だと思うけど、とりあえず明日試してみてくれる?」
『分かりました。朝食後くらいの時間にこれを起動しますがよろしいですか?』
「うん、それでいいよ。後は話す事はない?」
『はい。相も変わらずミスリルを含めた金属を採掘し続けただけでしたから』
「それじゃ、また明日ね」
『失礼します』

 明の返答を待ってから魔道具に魔力を流すのをやめた。
 ずっと魔力を流し続ける必要があるから、ダンジョン内にいる人と通話ができたとしても使う人は気を付けてもらわないといけないだろう。
 そんな事を思いながら、夕食の準備が整ったと言われたので皆が待っている所に向かった。



 翌朝、朝食を食べ終えてドラちゃんが焼かれた肉をゆっくりと味わうかのように咀嚼している様子を眺めていると明から着信があった。

『今からダンジョンに入りま………後ろに移ってるの、ドラゴンですか?』
「え? うん、そうだけど?」
『……そうですか』

 何か言いたげな明だったけど特に何も言わずにダンジョンに向かい始めた。
 水晶型ビデオ通話機を持ち直したからか、明たちが向かっている方が映されたので明の姿が消えた。
 どんどんとダンジョンの入り口が近づいていて、陽太が意気揚々と歩いているのが見える。
 だが、明が一歩ダンジョンに踏み込んだ瞬間、何も映らなくなった。が、すぐにまた向こうの映像が映る。どうやらダンジョンから出たようだ。空を背景にした明の顔が映った。

『やはりだめでしたね』
「だよね、知ってた」

 空間転移系の魔道具でダンジョン内から一気にダンジョン外に出られないから想定していたけど、やっぱり駄目だったようだ。
 その後、明たちには二度手間になってしまったけど一度ファマリーに戻ってもらって、アンジェラから同様の魔道具を受け取ってもらい、ダンジョン内同士だったら通話ができるか試してもらったけど問題なくできたらしい。
 また、魔道具を受け取ってもらう際に魔動カメラも貸し出して、映像を撮ってきてもらう事にした。
 リアルタイムで何か作る事は出来ないけど、危ない時はいつでも逃げられるだろうし、サポートするならこれで十分だろう。
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