【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
上 下
780 / 1,094
第24章 異大陸を観光しながら生きていこう

幕間の物語257.『ドライアド観察記録 その2』 著者.ラピス・フォン・ドラゴニア

しおりを挟む
 世界樹周辺に生息していると判明したドライアドは、未だに謎が多い種族だ。
 前回の記録で推測した事柄は経過観察中だが、私一人では解明できない事も多々あるだろう。
 それでも記録を取り、後世の研究者たちにこの記録が何かしらの役に立てばと思い、筆を執る。
 これ以降はその記録である。



 観察記録を発表した際に質問があった内容をいくつか聞く事にした。
 まず最大の疑問は彼女たちがどうやって増えているのか、という点だ。
 彼女たち、と書いている通り、ドライアドたちは女性しかいない。見た目的に女性、というよりも女児な気もするが、今回はそれはどうでもいい事なので置いておく。
 ドライアドたちは人族でいうと大体五歳ぐらいの見た目をしている。
 もちろん、中にはもっと幼いドライアドもいたが、その子たちはまだ生まれたばかりで成長中らしく、会話らしい会話もできない。
 どのくらい経てば成長するのか分からないが、少なくとも一年で一気に成長する人族と比べると成長は遅いだろう。
 話はそれてしまったが、見た目的に女性しかいないドライアドたちがどうやって増えているのか、いろいろな説があった。
 精霊と同じく自然発生する説が現在の主流派だ。
 他種族の異性を捕らえたり、頭に咲いている花に他の植物から飛んできた花粉を受粉させたりしている、という説もあるがそれらは少数派だろう。
 結論から述べると、主流派が合っていたらしい。
 これは、ドライアドたちの中でも『古株』と呼ばれるリーダー格の子たちに聞いたので間違いないだろう。

「私たちは、ユグちゃんから生まれたんだよ」と頭の上に咲いた青いバラが特徴的なドライアドが言えば「私たちはリコちゃんから!」と負けじと教えてくれたのはジャスミンの花を咲かせた褐色肌のドライアドだ。
「私たちはフソーちゃんからです」と最後に教えてくれたのは菊の花を咲かせたドライアドだった。
 どうやら、ドライアドたちは世界樹の近くに生えていた植物に、世界樹から漏れ出る濃度の高い魔力が影響して生まれるようだ。
 ドライアドがお気に入りの植物以外の世話をする理由はその中からゆくゆくは、新たなドライアドが生まれるかもしれないからだそうだ。
 この事実を知るのに聞き取るのに時間がかかるだろう、と覚悟をしていたが、クレストラ大陸にある世界樹フソーで暮らしていた古株のジャスミンちゃんと、彼女に協力を依頼してくれたシズト様、ランチェッタ様には感謝しかない。

「……世界樹ユグドラシルでは白色の肌のドライアドである青バラちゃんたちが、世界樹トネリコでは褐色肌のドライアドであるジャスミンちゃんたちが生まれたという事であってますか?」
「そうだよ~」
「異議なし!」
「世界樹フソーでは勇者様たちの肌と似た色のお菊ちゃんたちが生まれた、と」
「はい、そうです。それが何か?」
「では、世界樹ファマリーでもドライアドは生まれているのでしょうか? であれば、この後にシズト様に聞き取りを依頼する必要があるのですが……」
「まだ生まれてないよ~」
「ファマちゃんはまだ自我が薄いから。ね~」
「そうですね。もう少し自我がはっきりしてから生まれるでしょう」
「なるほど……ちなみに、ファマちゃんというのは世界樹ファマリーの事であっていますか? 神様の名と同じで紛らわしいのですが……」
「じゃあリーちゃんにする?」
「異議なーし」
「私たちは今のところリーちゃんのところに赴いた事はないので、呼び方にこだわりはありません」

 呼び方に関する問いをするんじゃなかった。
 自由に話があっちこっち飛んでしまった。
 軌道修正するのは大変らしいので、しばらく自由に話をしてもらっている間に私は新たに分かったことをまとめておく。
 ドライアドたちは世界樹の周辺に生えている植物が、世界樹の魔力の影響で生まれる。
 多くの精霊と呼ばれる存在と同じく、ドライアド同士や、異種族と交わって生まれるという説や、受粉によって生まれるという事はないようだ。
 では、どうして我々人間のような見た目をしているのか、生殖機能は存在しないのか、世界樹ファマリーから生まれるドライアドはどんな姿形をしているのかなど気になることが新たに生まれたが、私だけで解明するのは難しいだろう。
 今はとにかく、観察を通して推測した事柄を確認するだけに留めようと思う。
 私が挙手をすると、話が落ち着き始めたドライアドたちが話を止めてこちらを注視してくれた。これは我が姉であるレヴィア・フォン・ドラゴニアがドライアドたちに指示をする前によくしている仕草だった。

「次の質問に移ってもよろしいでしょうか?」
「いいよ~」
「どんとこい!」
「構いません」

 三者三様の返事を頂いたので、次の問いに移る。
 彼女たちは食事をする必要があるのか、という点だ。
 精霊であるのであれば食事を必要としないはずだが、時折彼女たちは収穫物を食べているのを見る事がある。
 排泄をしている様子を見た事がないので、その食べた物がどこに消えているのかも気になるのだが、あまりデリケートな質問は避けたい。まだ関係構築ができていないからだ。

「んー、美味しそうだから食べてるだけだよ?」
「食べなくても平気!」
「でも魔力が薄い所だと食べる必要があります」
「食事をする事で魔力の変換をしている、という事でしょうか?」
「そう!」
「食べなくても平気だけど、お菓子は美味しい!」
「同意します。魔法生物さんからお裾分けを貰いましたが、あれはとても美味でした」

 ドライアドには味覚があるようだ。
 食べ物の好みもあるようだが、甘い物でも酸っぱい物でも、苦い物でも好きな子は好きなようだ。
 育てられている作物を丸かじりをしている様子を見ると、よく食べている物の味が特に好み、という事なのかもしれない。
 ただ、やはり食事自体はしなくてもいいようだ。そこは魔力から生まれたと言われている精霊や魔物と同じようだ。
 世界樹から漏れ出る魔力さえあれば生きていられるらしい。
 そうなると、世界樹周辺と比べると魔力濃度が低い街や村、森などで生活していないのにも頷ける。
 私がメモをしている間にどんなお菓子が美味しかったかプレゼン大会が始まってしまっていたが、議論が過熱して収拾がつかなくなり、時間となってしまった。
 次回開催時期は未定だが、今回の聞き取りで関係ない話を自由気ままにし始めてしまう事が改めて分かったので、手際よく質問をする事ができるように質問の流れも含めて考えておこうと思う。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!

林檎茶
ファンタジー
 俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?  俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。  成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。  そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。  ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。  明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。  俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。  そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。  魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。  そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。  リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。  その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。  挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果  異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。  実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。  異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。  そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。  だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。  最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

処理中です...