上 下
771 / 1,014
第24章 異大陸を観光しながら生きていこう

516.事なかれ主義者はよく話しかけられる

しおりを挟む
「種まきだ~」
「これ植えていいかなぁ」
「いいんじゃない?」
「関係ない物は植えちゃダメですわ」
「水やりだ~」
「気持ちいい!」
「美味しいねぇ」
「水遊びしちゃ駄目なのですわ」
「収穫だ~」
「たくさんあるねぇ」
「レモ~ン!」
「レモンはないのですわ」
「堆肥作るよ~」
「箱にどんどん入れるの~」
「土も入れるの~」
「頑張るのですわ~」

 レヴィさんの指揮のもと、黒と白のドライアドたちが入り乱れつつもせっせと作業を効率的に進めていくおかげで僕は【生育】の加護を使う事に専念する事ができた。
 世界樹の葉っぱも落ちてくる物だけじゃ足りない可能性もあるのでドライアドたちに選んでもらって取りに行ってもらっている。
 あとどのくらいこれを続ければいいのか分からないけど、シグニール大陸の二倍くらいの面積があるクレストラ大陸がもうそろそろ落ち着きそうだから割とすぐかもしれない。

「クレストラ大陸のようにすんなりと行かない気がするのですわ。向こうは一つにまとまってくれていたから楽だったのですけれど、こっちは大陸の東側にある小国家群の関係で一つにまとまる事が出来ていないのですわ」

 魔道具『加護無しの指輪』を着けていなかったレヴィさんが僕の心を読んでこっちの大陸の事情を教えてくれた。

「でも、そこら辺には転移門は設置してないし、あんまり広がってないんじゃないかな」
「……それもそうですわね」

 転移門のせいで伝播する呪いが広がってしまった、っていう感じだったから根回しをして全力で対応しているけど、転移門を設置していない所は言っちゃ悪いけど僕のせいじゃないと思うし自分たちで何とかしてほしい。
 それに、薬師ギルドや各国の有力な商人たちにも転移門があるところだけだから、と言って了承してもらっているし、それ以外の所をしたら恨まれる可能性もあるからな。

「小国家群が転移門を設置する状況になったら手を貸すとは思うけどね」
「侵略戦争をしない、という条件に引っかかってしまうから難しそうですわ」
「だよねぇ」

 まあ、転移門の影響がない所について考えても仕方がないし、と気持ちを切り替えて魔力が切れないように残量に気を付けつつ【生育】の加護を使い、希少な薬草を量産するのを再開した。



 昼食の時間になるとランチェッタさんがディアーヌさんと共にやってきた。

「ある程度仕事を任せられる者が増えてきたわ」
「シズト様と一緒に過ごす時間が増やせますね」

 ニマニマとしながら言ったディアーヌさんをキッと睨んだけど、今のランチェッタさんは丸眼鏡をかけていたので普段よりも迫力はないようだ。
 目の下のクマもほとんどない。お化粧で隠しているのかもしれないけど、ディアーヌさんの愚痴というか告げ口がないので健康的な生活になりつつあるようだ。
 魔力がもう切れる寸前になっていたので作業を切り上げ、屋敷に戻る。
 レヴィさんの後をぞろぞろとドライアドたちがついて来るけど、彼女たちは屋敷には入れてもらえなかった。ひょこっと窓の向こうに色とりどりの花が並んでいるのはドライアドたちが隠れているからだろう。頭隠して花隠さず、的な感じだ。
 食堂にはほとんどみんな揃っていた。ノエルもその内来るだろう。
 ホムラとユキはそれぞれ魔道具店の状況の確認をしに行っているのでいないため、席を詰めて座る。普段ホムラとユキが座っている席にはランチェッタさんとレヴィさんが座った。

「一気に三人も妊娠するなんて驚いたわ。手紙で読んだけど、『加工』の加護を授かったのはラオのお腹の中にいる子なのよね? ルウとシンシーラは大丈夫なの?」
「極力安静に過ごすようにしているわ。でも、特に今のところこれと言って何かあるわけじゃないのよね。シンシーラちゃんは?」

 ランチェッタさんの隣に座っていたルウさんは、お腹を大事そうにさすりながらシンシーラに話を振った。シンシーラもまたお腹を優しく撫でている。

「私もそうじゃん。でも、何かあったら困るから安定期になるまではとりあえず大人しくしておくじゃん」
「そういうものなのね」
「もしかしたら私と同じ加護を授かっている可能性もあるけど、こればっかりは時間が経たないと分からないわ」
「神様は教えてくれないの?」

 僕が尋ねると、レヴィさんが「神託はよっぽどの事がない限りはないのですわ」と教えてくれた。
 妊娠はよっぽどの事じゃないらしい。
 ………あれ? でも、割とどうでもいい事でも結構話しかけられることあるような気がする。
 異世界転移者だからだろうか?
 それとも信者がそれほどいないから?
 ……まあ、どっちでもいいか。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます! って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。 ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。 転移初日からゴブリンの群れが襲来する。 和也はどうやって生き残るのだろうか。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。 小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。 本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。 お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。 その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。 次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。 本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

処理中です...