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第24章 異大陸を観光しながら生きていこう
512.事なかれ主義者は占ってみたい
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勇者が興した国アマテラスは、今も神託の巫女と呼ばれている勇者の末裔が国を治めている。
実際は投票によって選ばれた大臣たちが、神託の巫女の代わりに政治を行っているらしいけど、一部の例外を除いて神託の巫女が占って出た結果が重視されるらしい。
「その一部の例外というのが、侵略戦争に関する物だそうです」
「へぇ~~」
「国を興した勇者が、これ以上の領土は必要なく、専守防衛に努めると占いの神ディヴィネ様に誓ったそうです。その誓いを守る代わりに、勇者様の子孫に勇者様と同等の加護を授け続けて欲しいと願ったそうですよ。その結果、今代も勇者様と同じ加護を授かっているそうです」
「………なるほど?」
「勇者の子孫は勇者と同じ加護を授かったとしても出せる力が限定されてしまうんです。神と直接会ったからではないか、とか、この世界に適応できるように神が勇者の体を作り直したからではないか、とか言われています。国を興した勇者は、子孫の加護が弱いと国を守れないと判断したんでしょうね」
「なるほどなぁ」
アマテラスの首都ラクルのメインストリートを歩きながらエミリーがこの国について解説してくれている。
彼女の右手にはムサシから預かった資料の束があるけど、彼女は先程からそれを一瞥する事もなく僕の方を見て解説していた。……その資料の束、いる?
彼女の左手は僕の右手をがっしりと掴んでいた。柔らかくて温かい手だった。獣人は耳と尻尾はあるけど、肉球はないんだよなぁ。
彼女の白いもふもふの尻尾は先程からぶんぶんと機嫌よく振られていて、僕のお尻やら背中やらに当たっている。
エミリー曰く、手を繋いで歩いているのはこの国にいる獣人の女性から僕を守るためらしい。
先程からちょくちょく獣人の女性が視界に映るけど、その度に彼女は警戒モードで尻尾を膨らませて僕をジッと見ていた。今もそうだった。
「い、威嚇するなら向こうじゃないかな?」
「威嚇はしてません。見守っているんです。これ以上お嫁さんが増えると困ると言ったのはシズト様ですよね? 私たちとしては身内になってしまえばマーキングされても我慢できるんですけど、シズト様は身内にする気はないんですよね?」
「まあ、そうだね」
「じゃあ、隣にいる私で我慢してください。ほら、シズト様の大好きな耳と尻尾ですよ」
ズイッと頭を差し出してくるエミリーだったけど、彼女の顔は真っ赤だった。
優しく頭を撫で、すりすりと体にこすりつけられる尻尾を無視して前を行くパメラとジューンさんの後を追う。
「お腹空いたデス! あっちから良い匂いがするデス!」
パメラはいつの間に買ってもらったのか、右手に肉串が数本握られていた。
その肉串を買ってあげたのはパメラと手を繋いでいるジューンさんだろう。
今日は僕の代理人としての仕事はないからエルフの正装は着ていない。ただ、ワンピースで過ごすのに慣れてしまったのか、今日もワンピースを着ていた。
腰のあたりをギュッとベルトで絞られているので、エルフらしからぬ大きな胸の膨らみからキュッと絞られた細い腰がよく分かる。
パメラはというと、背中部分が大きく開いた独特なトップスを着ている。一時期ネットに出回った童貞を殺すセーターみたいな感じだ。サイズがちょっと大きいのか、お尻まで隠しているトップスの下にはちゃんと短パンを履いている事は知っている。知っているけど、パッと見履いてないように見えてハラハラする。
「……シズト様の好きそうな匂いですね。この国の人たちは味が濃い物が好きなんでしょうか」
気持ちは既に切り替わったのか、エミリーは難しい顔をして何か考えているようだ。
ただ、まだちょっと顔が赤いのは言わない方が良い気がしたので口を噤んでおいた。
彼女は普段のメイド服ではなく、なぜか巫女服を着ていた。赤い袴には尻尾が出せるように細工をされている。その隙間から下着が見えないように尻尾の付け根にはシュシュのようなものが着けられていた。
似合っているけど、周囲からの視線がすごく集中している。
町の人たちも和服っぽい服装だったけど、巫女服を着ているのはごくわずかだった。
以前作った魔道具『タブー帖』には巫女服を着てはいけない、なんて書かれていなかったので大丈夫だとは思うけど、トラブルにならないかちょっと心配だ。
「お昼にはまだ早いでしょうし……とりあえず甘味処で小腹を満たしますか? そうすればパメラもある程度落ち着いてジューンも楽ができると思いますが……」
「私はどこでもいいですよぉ」
ぐいぐいと進もうとするパメラを抑えつつ、ジューンさんが振り返って答えた。パメラは話を聞いていないようだ。
「じゃあ、どこかお店に入って甘い物を軽く食べよっか。ついでにそこで今日どう過ごすか決めればいいし」
占いで有名な国だからか、路上で占いをしている人が多い。
人気な所はたくさん並んでいるみたいだけど、一回くらいは占ってみたいし、後で並んでみよう。
実際は投票によって選ばれた大臣たちが、神託の巫女の代わりに政治を行っているらしいけど、一部の例外を除いて神託の巫女が占って出た結果が重視されるらしい。
「その一部の例外というのが、侵略戦争に関する物だそうです」
「へぇ~~」
「国を興した勇者が、これ以上の領土は必要なく、専守防衛に努めると占いの神ディヴィネ様に誓ったそうです。その誓いを守る代わりに、勇者様の子孫に勇者様と同等の加護を授け続けて欲しいと願ったそうですよ。その結果、今代も勇者様と同じ加護を授かっているそうです」
「………なるほど?」
「勇者の子孫は勇者と同じ加護を授かったとしても出せる力が限定されてしまうんです。神と直接会ったからではないか、とか、この世界に適応できるように神が勇者の体を作り直したからではないか、とか言われています。国を興した勇者は、子孫の加護が弱いと国を守れないと判断したんでしょうね」
「なるほどなぁ」
アマテラスの首都ラクルのメインストリートを歩きながらエミリーがこの国について解説してくれている。
彼女の右手にはムサシから預かった資料の束があるけど、彼女は先程からそれを一瞥する事もなく僕の方を見て解説していた。……その資料の束、いる?
彼女の左手は僕の右手をがっしりと掴んでいた。柔らかくて温かい手だった。獣人は耳と尻尾はあるけど、肉球はないんだよなぁ。
彼女の白いもふもふの尻尾は先程からぶんぶんと機嫌よく振られていて、僕のお尻やら背中やらに当たっている。
エミリー曰く、手を繋いで歩いているのはこの国にいる獣人の女性から僕を守るためらしい。
先程からちょくちょく獣人の女性が視界に映るけど、その度に彼女は警戒モードで尻尾を膨らませて僕をジッと見ていた。今もそうだった。
「い、威嚇するなら向こうじゃないかな?」
「威嚇はしてません。見守っているんです。これ以上お嫁さんが増えると困ると言ったのはシズト様ですよね? 私たちとしては身内になってしまえばマーキングされても我慢できるんですけど、シズト様は身内にする気はないんですよね?」
「まあ、そうだね」
「じゃあ、隣にいる私で我慢してください。ほら、シズト様の大好きな耳と尻尾ですよ」
ズイッと頭を差し出してくるエミリーだったけど、彼女の顔は真っ赤だった。
優しく頭を撫で、すりすりと体にこすりつけられる尻尾を無視して前を行くパメラとジューンさんの後を追う。
「お腹空いたデス! あっちから良い匂いがするデス!」
パメラはいつの間に買ってもらったのか、右手に肉串が数本握られていた。
その肉串を買ってあげたのはパメラと手を繋いでいるジューンさんだろう。
今日は僕の代理人としての仕事はないからエルフの正装は着ていない。ただ、ワンピースで過ごすのに慣れてしまったのか、今日もワンピースを着ていた。
腰のあたりをギュッとベルトで絞られているので、エルフらしからぬ大きな胸の膨らみからキュッと絞られた細い腰がよく分かる。
パメラはというと、背中部分が大きく開いた独特なトップスを着ている。一時期ネットに出回った童貞を殺すセーターみたいな感じだ。サイズがちょっと大きいのか、お尻まで隠しているトップスの下にはちゃんと短パンを履いている事は知っている。知っているけど、パッと見履いてないように見えてハラハラする。
「……シズト様の好きそうな匂いですね。この国の人たちは味が濃い物が好きなんでしょうか」
気持ちは既に切り替わったのか、エミリーは難しい顔をして何か考えているようだ。
ただ、まだちょっと顔が赤いのは言わない方が良い気がしたので口を噤んでおいた。
彼女は普段のメイド服ではなく、なぜか巫女服を着ていた。赤い袴には尻尾が出せるように細工をされている。その隙間から下着が見えないように尻尾の付け根にはシュシュのようなものが着けられていた。
似合っているけど、周囲からの視線がすごく集中している。
町の人たちも和服っぽい服装だったけど、巫女服を着ているのはごくわずかだった。
以前作った魔道具『タブー帖』には巫女服を着てはいけない、なんて書かれていなかったので大丈夫だとは思うけど、トラブルにならないかちょっと心配だ。
「お昼にはまだ早いでしょうし……とりあえず甘味処で小腹を満たしますか? そうすればパメラもある程度落ち着いてジューンも楽ができると思いますが……」
「私はどこでもいいですよぉ」
ぐいぐいと進もうとするパメラを抑えつつ、ジューンさんが振り返って答えた。パメラは話を聞いていないようだ。
「じゃあ、どこかお店に入って甘い物を軽く食べよっか。ついでにそこで今日どう過ごすか決めればいいし」
占いで有名な国だからか、路上で占いをしている人が多い。
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