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第24章 異大陸を観光しながら生きていこう
500.事なかれ主義者はモデルにはなりたくない
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ジューンさんとノーブリーの首都の観光名所を見て回った。
途中でお昼休憩をしたけど、食事は普通というかなんというか……インテリアや食器などに力が入れられていた気がする。
「『加工』の加護を授かっているし、僕ももうちょっと芸術とかに興味持った方が良いかなぁ」
「シズトちゃんが作る物はどれもシンプルで私は好きですよぉ? 使いやすさは大事だと思いますぅ」
「でも観賞用だったらシンプルよりもなんかこう……すげー、って感じの方がよくない?」
「それは好みの問題だと思いますぅ。私は慣れてないのでぇ、シンプルな物が好きですぅ」
……確かにジューンさんが着る服は大体シンプルというか、ワンピースが多いな。後はローブか。時々ズボンとニットのトップスを着ている事もあったけど、そういう事だったのか。
昼食の後も街の中を移動している時はジューンさん目当ての芸術家たちがぞろぞろとついて来てのんびりできなかった。ただ、建物の中に入ると流石に入ってくる事はなかった。
ノーブリーから帰る際にたくさんスケッチしていた画家っぽい女性にお金を支払って何枚か出来の良い物を貰ったので、まあ良しとしよう。
「そんなものどうするんですかぁ?」
「え? あー、あんまり考えてなかったけど……ファイリングして保管するとか、額に入れて飾るとか?」
でも、平等に愛するって決めたし、そうなると他の皆の分のスケッチも買わないといけない気がしてきた。
「あのお姉さんの名前、聞いとけばよかったね」
「絵の端っこの方にサインとかされてませんかぁ? それか、裏側とかぁ」
「んー、入ってなさそう……。ジュリウス、いる?」
「はい」
どこからともなく現れたジュリウスに、先程の女性の事を聞いてみたけどジュリウスも名前は知らないそうだ。
「まあ、そうだよね」
「今なら転移門の付近にいると思いますが、調べますか?」
「そうだね。できれば同じ人に描いてもらいたいし、聞いて来てもらってもいい?」
「もちろんです」
ジュリウスが視線を僕から僕の後ろの方へと向けた。
そっちを見ると既にエルフらしき人物の姿は見えない。
「他に何かございましたか?」
「いや、特にはないよ」
「かしこまりました。また御用がありましたらお呼びください」
そう言うとジュリウスはその場から消えた。
転移魔法とか使ってないけど、動きが速すぎるのか、目の前からいなくなったような錯覚すらする。
まあ、すぐ駆けつける場所にはいるんだろうけど。
とにかくこの場所で立ち尽くしていると邪魔なので、ジューンさんの手を取って町の中心地――世界樹の根元へと向かった。
禁足地を抜け、世界樹フソーの根元に広がる開かれた場所に到着すると畑仕事をしていたレヴィさんとモニカが出迎えてくれた。
フソーのドライアドたちはまだレヴィさんよりもムサシを身近に感じているのか、レヴィさんたちが作業を中断して近づいて来ても釣られて集まってくる子は少なかった。
「よく描けているのですわ!」
「魔道具で記録する『映像』や『写真』にはない良さがありますね」
「ラフなのが勿体ないですわ」
「エルフたちに名前を聞いておいてもらってるから、後日改めて清書してもらおうかなって思うけどこれも良くない? 何が良いかって言われたら説明ができないけど、あれもこれもいいなって思ったからたくさん買っちゃった」
ラフスケッチだからお金は受け取れない、なんて言ってたけど対価はしっかりと払わないと。
昨日貰ったお金が余っててどうしようかと思ってたところだったし、丁度良かった。
「んー、私はやっぱり色がある方が好きですわ。シズトを描いてもらう時はしっかりと色も塗ってもらうのですわ」
「え、僕もモデルになるの?」
「当たり前ですわ」
「私はぁ、こっちの方が好きですぅ。こっちで描いてもらおうかと思いますぅ」
「あれ、二回分モデルにならなくちゃいけない感じ?」
「二回じゃ足らないと思いますよぉ?」
「モニカはどうなのですわ?」
「私ですか? 私はそうですね……。やっぱり絵と言ったらこういうラフではなく、しっかりと描かれた方をイメージするのでそっちでしょうか。ラフもいいような気がするんですけど……」
「悩むなら両方貰って飾ればいいのですわ」
「屋敷の中に僕の絵が大量にあるのはちょっと……」
自分の家に自分の絵を飾るのはなぁ。
写真ですらアルバムに入れて保管するくらいだったしなぁ。
なんて事を考えながら三人の話の行く末を、レヴィさんたちについて来ていたドライアドたちと一緒に見守っているとバサバサという音と共にパメラが慌てた様子で飛んできた。
「大変デス! 大変デスよ!」
「なんかあったの?」
「大変デース!」
「だから、何があったのさ」
僕たちの前に着地したパメラは慌てて飛んできたのに内容を全然言わない。
こういう時って、大体「大変な事が起こった」っていう事を伝えようと考えすぎて、内容を忘れてるんだよなぁ。パメラを使って伝えてくるって事はそこまで緊急な事ではないと思うけど……。
ギャーギャー騒ぐパメラを捕まえて背中をポンポンと叩いて落ち着かせてから「それで、何があったの?」と尋ねると案の定きょとんとした表情でしばし沈黙があった。
「………大変な事があったデスよ」
「そっか。とりあえず手紙かなんか持たされてない?」
パメラはポケットをいくつかまさぐり始めた。
お腹が空いた時にすぐに食べられるようにポケットの中には携帯食料やら飴やら入っていたけど、お尻のポケットに一枚の紙きれがあった。
どうやら依頼の途中でシンシーラの妊娠が発覚したらしい。
「……確かにこれは大変な事だわ」
「デス!」
だから言っただろう、と言いたげなパメラの頭を撫でつつ、迎えに行くべきか待つべきかしばし考えるのだった。
途中でお昼休憩をしたけど、食事は普通というかなんというか……インテリアや食器などに力が入れられていた気がする。
「『加工』の加護を授かっているし、僕ももうちょっと芸術とかに興味持った方が良いかなぁ」
「シズトちゃんが作る物はどれもシンプルで私は好きですよぉ? 使いやすさは大事だと思いますぅ」
「でも観賞用だったらシンプルよりもなんかこう……すげー、って感じの方がよくない?」
「それは好みの問題だと思いますぅ。私は慣れてないのでぇ、シンプルな物が好きですぅ」
……確かにジューンさんが着る服は大体シンプルというか、ワンピースが多いな。後はローブか。時々ズボンとニットのトップスを着ている事もあったけど、そういう事だったのか。
昼食の後も街の中を移動している時はジューンさん目当ての芸術家たちがぞろぞろとついて来てのんびりできなかった。ただ、建物の中に入ると流石に入ってくる事はなかった。
ノーブリーから帰る際にたくさんスケッチしていた画家っぽい女性にお金を支払って何枚か出来の良い物を貰ったので、まあ良しとしよう。
「そんなものどうするんですかぁ?」
「え? あー、あんまり考えてなかったけど……ファイリングして保管するとか、額に入れて飾るとか?」
でも、平等に愛するって決めたし、そうなると他の皆の分のスケッチも買わないといけない気がしてきた。
「あのお姉さんの名前、聞いとけばよかったね」
「絵の端っこの方にサインとかされてませんかぁ? それか、裏側とかぁ」
「んー、入ってなさそう……。ジュリウス、いる?」
「はい」
どこからともなく現れたジュリウスに、先程の女性の事を聞いてみたけどジュリウスも名前は知らないそうだ。
「まあ、そうだよね」
「今なら転移門の付近にいると思いますが、調べますか?」
「そうだね。できれば同じ人に描いてもらいたいし、聞いて来てもらってもいい?」
「もちろんです」
ジュリウスが視線を僕から僕の後ろの方へと向けた。
そっちを見ると既にエルフらしき人物の姿は見えない。
「他に何かございましたか?」
「いや、特にはないよ」
「かしこまりました。また御用がありましたらお呼びください」
そう言うとジュリウスはその場から消えた。
転移魔法とか使ってないけど、動きが速すぎるのか、目の前からいなくなったような錯覚すらする。
まあ、すぐ駆けつける場所にはいるんだろうけど。
とにかくこの場所で立ち尽くしていると邪魔なので、ジューンさんの手を取って町の中心地――世界樹の根元へと向かった。
禁足地を抜け、世界樹フソーの根元に広がる開かれた場所に到着すると畑仕事をしていたレヴィさんとモニカが出迎えてくれた。
フソーのドライアドたちはまだレヴィさんよりもムサシを身近に感じているのか、レヴィさんたちが作業を中断して近づいて来ても釣られて集まってくる子は少なかった。
「よく描けているのですわ!」
「魔道具で記録する『映像』や『写真』にはない良さがありますね」
「ラフなのが勿体ないですわ」
「エルフたちに名前を聞いておいてもらってるから、後日改めて清書してもらおうかなって思うけどこれも良くない? 何が良いかって言われたら説明ができないけど、あれもこれもいいなって思ったからたくさん買っちゃった」
ラフスケッチだからお金は受け取れない、なんて言ってたけど対価はしっかりと払わないと。
昨日貰ったお金が余っててどうしようかと思ってたところだったし、丁度良かった。
「んー、私はやっぱり色がある方が好きですわ。シズトを描いてもらう時はしっかりと色も塗ってもらうのですわ」
「え、僕もモデルになるの?」
「当たり前ですわ」
「私はぁ、こっちの方が好きですぅ。こっちで描いてもらおうかと思いますぅ」
「あれ、二回分モデルにならなくちゃいけない感じ?」
「二回じゃ足らないと思いますよぉ?」
「モニカはどうなのですわ?」
「私ですか? 私はそうですね……。やっぱり絵と言ったらこういうラフではなく、しっかりと描かれた方をイメージするのでそっちでしょうか。ラフもいいような気がするんですけど……」
「悩むなら両方貰って飾ればいいのですわ」
「屋敷の中に僕の絵が大量にあるのはちょっと……」
自分の家に自分の絵を飾るのはなぁ。
写真ですらアルバムに入れて保管するくらいだったしなぁ。
なんて事を考えながら三人の話の行く末を、レヴィさんたちについて来ていたドライアドたちと一緒に見守っているとバサバサという音と共にパメラが慌てた様子で飛んできた。
「大変デス! 大変デスよ!」
「なんかあったの?」
「大変デース!」
「だから、何があったのさ」
僕たちの前に着地したパメラは慌てて飛んできたのに内容を全然言わない。
こういう時って、大体「大変な事が起こった」っていう事を伝えようと考えすぎて、内容を忘れてるんだよなぁ。パメラを使って伝えてくるって事はそこまで緊急な事ではないと思うけど……。
ギャーギャー騒ぐパメラを捕まえて背中をポンポンと叩いて落ち着かせてから「それで、何があったの?」と尋ねると案の定きょとんとした表情でしばし沈黙があった。
「………大変な事があったデスよ」
「そっか。とりあえず手紙かなんか持たされてない?」
パメラはポケットをいくつかまさぐり始めた。
お腹が空いた時にすぐに食べられるようにポケットの中には携帯食料やら飴やら入っていたけど、お尻のポケットに一枚の紙きれがあった。
どうやら依頼の途中でシンシーラの妊娠が発覚したらしい。
「……確かにこれは大変な事だわ」
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