上 下
746 / 1,014
第24章 異大陸を観光しながら生きていこう

499.事なかれ主義者は綺麗なものは分かる

しおりを挟む
 ドーラさんと美食の国ティエールの首都にあるお店をいくつか巡った翌日、僕はジューンさんとノーブリ―という国を訪れていた。
 ノーブリーでは芸術が盛んで、過去の勇者が作ったとされている観光名所がいくつもあるらしい。
 美術館など過去の勇者や芸術家たちが作ったとされている物を展示している物もいくつかあった。
 美食の国ティエールとは国境が接していないにも関わらず以前から関係は悪かったらしいんだけど、ティエールとノーブリーのどちらに先に訪れるかでだいぶ議論が交わされたとムサシが言っていた。
 最終的に決めるのは僕だと言って双方を抑えたらしいんだけど、出来れば日を開けずにもう片方の国に言って欲しいとムサシからお願いされたので、芸術とかあんまり興味ないけどやってきた。
 ラオさんは芸術に興味はないからと冒険者組を連れて依頼を受けに出かけた。夕方前には帰れる日帰りの仕事を探して腕が鈍らないようにするらしい。
 ホムラとユキはなにやらする事があるらしい。詳しい事は教えてくれなかったし、聞かない方がなんかいい気がしたので黙って見送った。
 なぜか今日はセシリアさんがついて行った。レヴィさんと基本的に別行動をしようとしない彼女だからビックリしたけど、レヴィさんは「私の分もお願いするのですわ!」と見送っていたので話は通っているのだろう。
 モニカとレヴィさんは妊娠中なので世界樹フソーの根元に待機だ。今日も一日農作業をしつつ日向ぼっこをして過ごすらしい。
 エミリーは屋敷の警備をするそうだ。
 エミリーって戦えたっけ? って思ったけど、警備と言っても窓から入ってこようとするドライアドを窓越しに監視したり、玄関から堂々と入ってきたドライアドたちにお帰りを願ったりと忙しいらしい。
 あと単純に芸術はよく分からないそうだ。

「私も芸術はよく分からないんですけどねぇ」
「僕もだよ。まあ、適当に見て回ろうよ。観光名所って芸術品ばかりじゃないんでしょ、きっと」

 そんな事を思いつつノーブリーの街を歩く。
 道には等間隔で誰かが作った何かの像が置かれていて、建物もなんだか奇抜な物もある。
 道を歩いている人たちが着ている服も二度見、三度見するくらい奇抜な物もあったけど、僕たち……というよりジューンさんはもっと注目されていた。

「ぜひモデルになって頂きたい! アトリエはすぐそこだから!」

 そう言って誘ってきた青年は何人目だろうか。
 たぶん彼はアトリエ? というか自分の仕事場で集中して作るタイプの人なんだろう。

「ごめんなさい~。デート中なんですぅ」
「お相手の人も一緒にいていいですから! ほら、こっちに来てください!」
「でもぉ」
「お触り禁止!」

 ジューンさんの白くてほっそりとした手首を強引に握った男の人の手をチョップする。
 当然邪魔した僕はギロリと睨まれる事になるんだけど、何かを言われる前にどこからともなく現れたエルフの集団が彼を連れ去っていく。
 何度目になるか分かんないけど、一応「すぐに解放してあげてね」と言ってジュリウスたちを見送った。

「……それじゃ、また話しかけられる前に行こっか」
「ご迷惑をおかけしてごめんなさぁい」
「ジューンさんが綺麗って事だから仕方ないよ」
「そうでしょうかぁ?」
「そうだと思うよ。さっきから僕たちの周りをついて来ている人たちを見て見なよ。ジューンさんが綺麗だからスケッチしてるんでしょ?」

 話しかけてこない人たちはずっと僕たち……というかジューンさんを追いかけてスケッチしている。
 まあ、ジューンさんはエルフらしからぬ体つきをしていてとても目立つのは分かるし、エルフだから容姿は整っているから猶更人の目を引くのだろう。
 腰まである髪は緩く波打っていて、歩く度にキラキラと輝いているように見えるし、歩く度に揺れる大きな膨らみは露出されてないのにどうしても目が行ってしまうのは分かる。
 だからと言って、さっきみたいに強引に連れて行こうとするのは困るけど、ジューンさんが嫌がらない限りは見る分には諦めよう。多分この街にいる以上、どれだけ追い払っても湧いて来るだろうから。

「それでぇ、今度はどこに行きますかぁ?」
「そうだねぇ。ステンドグラスが綺麗っていってたし、参考にしたいから教会を見に行こうかな」
「ステンドグラスですかぁ。ではぁ、ちょっと歩く事になりますけどぉ、創造神様の教会はどうでしょうかぁ。一神教の国じゃない限りはぁ、創造神様の教会が一番力を入れて作られますからぁ」
「そうだね。じゃあ、そこにしようか」

 創造神様の教会までは目に入る物についてお喋りをしながらゆっくりと歩いた。
 道中も何度か強引なアプローチはあったけど、ジュリウスたちのおかげで何事もなく、教会に辿り着く事ができた。
 ちょっとドキドキしながらお祈りをしたけど、何事もなかったのでステンドグラスを二人で鑑賞した。

「……もしも作るなら誰かに頼まないと。せっかく作るなら立派な物が良いだろうし」
「どうでしょうかぁ。シズトちゃんが頑張って作った物なら神様たちも喜ぶと思いますけどぉ」
「そうかなぁ」
「そうですよぉ」

 長椅子に二人並んで座りながらのんびりと話をしている間は邪魔が入る事はなかった。っていうか、教会の中にはスケッチをしている人たちも流石に追いかけて来なかった。
 ……もうずっと教会にいようかな。
 そんな事を思うくらいには、嫌だなぁ、って思ってたんだと自覚した。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界転移の……説明なし!

サイカ
ファンタジー
 神木冬華(かみきとうか)28才OL。動物大好き、ネコ大好き。 仕事帰りいつもの道を歩いているといつの間にか周りが真っ暗闇。 しばらくすると突然視界が開け辺りを見渡すとそこはお城の屋根の上!? 無慈悲にも頭からまっ逆さまに落ちていく。 落ちていく途中で王子っぽいイケメンと目が合ったけれど落ちていく。そして………… 聞いたことのない国の名前に見たこともない草花。そして魔獣化してしまう動物達。 ここは異世界かな? 異世界だと思うけれど……どうやってここにきたのかわからない。 召喚されたわけでもないみたいだし、神様にも会っていない。元の世界で私がどうなっているのかもわからない。 私も異世界モノは好きでいろいろ読んできたから多少の知識はあると思い目立たないように慎重に行動していたつもりなのに……王族やら騎士団長やら関わらない方がよさそうな人達とばかりそうとは知らずに知り合ってしまう。 ピンチになったら大剣の勇者が現れ…………ない! 教会に行って祈ると神様と話せたり…………しない! 森で一緒になった相棒の三毛猫さんと共に、何の説明もなく異世界での生活を始めることになったお話。 ※小説家になろうでも投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます! って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。 ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。 転移初日からゴブリンの群れが襲来する。 和也はどうやって生き残るのだろうか。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

処理中です...