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第24章 異大陸を観光しながら生きていこう

498.事なかれ主義者は自由に食べたい

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 メニューに値段が書かれていない高級レストランっぽい所での食事が終わり、会計をしようと思ったら既に貰っているとの事だった。
 ただ、僕とドーラさんはずっと一緒だったはずだ。もりもりと食べ続けたドーラさんを眺めていたので間違いない。

「……ドーラさん支払いしてないよね?」
「ん。ジュリウスかムサシだと思う」

 なるほど。ドーラさんは事前にどこの店に行く予定なのか、ジュリウスとムサシには伝えていたらしい。
 確かにジュリウスならやりそうだな。ムサシが根回ししていた可能性もある。
 まあ、支払いをしなくていいなら楽でいいんだけど、そうなると事前にムサシからもらったお金が余るんだよなぁ。なんか手土産でも買っていこうかな?
 そう思ったけどメインストリート沿いには露店なんて一つもなく、マーケットと呼ばれる商業ギルドが管理している場所はここから離れた場所にしかないようだ。
 ドーラさんが広げている地図を見せてもらったから間違いない。

「次はどこのお店に行くの?」
「ここ」

 そう言ってドーラさんが指差したお店は、どうやらデザートが有名な三ツ星のお店だった。
 そこに向かうまでにそこそこの距離があるから、少しでもお腹を空かせて置かないと、と思いつつもドーラさんの歩調に合わせて歩いた。

「ここもすごく並んでるね。予約してあるの?」
「まあ、そんな感じ」

 そんな感じとは? と思いつつ、並んでいる人たちの視線を気にした様子もなくドーラさんはお店の扉を開いて中に入っていった。その後に僕も続く。
 店員さんが怪訝そうな表情で近づいてきたら、ドーラさんがどこからか取り出した紙を見せた。

「………予約されていたドーラ様とシズト様ですね。こちらへどうぞ」

 そう言って通されたのは三階の個室だった。
 こういうお店でも個室なんてあるんだ、と思いつつ注文を済ませたら窓から見える景色をぼけーっと眺める。
 ドーラさんは特に何か言う事もなく、僕と一緒に窓の外の景色を見ていた。
 どのくらい待っただろうか? そこまで時間は立ってないと思うけど、扉がノックされた後に開いた。
 店員さんがワゴンに乗せて運んできた料理は二種類のパフェだった。
 一つ目は僕の前に置かれる。ちょっとこの後も他のお店に行くとの事だったので一番小さい物を選んでもらったけど、それでも立派なパフェだった。
 こっちの世界でもアイスは作る事ができるようだ。何種類ものアイスが乗っけられている。

「……そっちのすごいね」
「そう?」
「うん、すごい」

 ドーラさん的にはそこまで驚きはないみたいだけど、僕は驚いた。
 パフェってこんなにも大きな物もあるんだなぁ、とか、この背の高い大きなグラスは特注品なんだろうか、とか思ったけど、なによりこれってどうやって食べていくんだろう?
 そんな事を思いつつドーラさんの前に置かれた巨大なパフェを見ていると、店員さんが砂時計を片手にドーラさんの方を見た。

「準備はよろしいですか?」

 ドーラさんは巨大なパフェを色々な角度から見ていたけど、姿勢を正して店員さんの方を見るとゆっくりと頷いた。

「それでは、ルールを説明させていただきます。このフルーツマシマシデンジャラスメガモリパフェを制限時間内に完食していただきます。ただ、完食するだけでは誰でもできますので、条件が二つあります」

 いや、誰でもは無理なんじゃないかな。少なくとも僕は無理だと思う。
 ただ、説明の途中なのでふと思った事はアイスと共に飲み込んだ。イチゴ味のアイスのようだ。普通に美味しい。

「一つ目は、上から順番に食べていく事。かき混ぜて食事をされるのは美しくありませんので、上の物が残っているのに下の方の物を掬って食べるのはおやめください。また、かき混ぜて食べてもその時点で失格です」

 かき混ぜちゃったけど、パフェってかき混ぜない方が良いのかな。
 ………まあ、この場には店員さんとドーラさんしかいないから気にしなくてもいいか。

「二つ目は、具材を落とさない事。パフェが崩れないように注意してください。説明は以上です。準備はよろしいですね?」

 こくりと頷くドーラさんを確認したら店員さんは「それでは、スタート!」という掛け声と共に、砂時計をひっくり返した。
 ドーラさんが長いスプーンを駆使して上に乗っているケーキみたいな物や果物をもりもりと食べていく。っていうか、パフェの上にケーキが乗っている物とか初めて見たわ。
 もぐもぐと咀嚼をしながらも手を止めずに次々に口の中に食材を放り込んでいくドーラさんと、それを見ながらちびちびと食べ進めていく僕。それを店員さんは数歩離れた所から見守っていた。
 そうして砂時計が半分以上落ちた頃、ドーラさんは食べ終えた。
 何回か崩れて具材が落ちそうになった時があったけど、それを乗り越えて、グラスの中にしかパフェがなくなってからはさらに食事のスピードが上がっていたから時間が余るのも当然と言えば当然なのかもしれない。
 店員さんもグラスの上に乗っていた部分が全て食べられた後は、食べ終えてドーラさんの様子を黙って見ていた僕に乗っていた材料などの説明をするくらいには暇そうだった。

「シズトもする?」
「いや、遠慮しとく」

 落とす自信しかないし、好きなように食べたい。
 ドーラさんは僕の返答に特に気にする事もなく、賞金を店員さんから受け取ると次の店に僕を案内するために地図を片手に再び歩き出すのだった。
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