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第24章 異大陸を観光しながら生きていこう
497.事なかれ主義者は値段が気になった
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ティエールの首都に転移すると、周囲を警護していたエルフたちが離れて行った。ジュリウスもまた、その場から消えたので、夫婦二人でデートを満喫すればいいという感じのようだ。
一先ず転移門が設置されていたメインストリートをざっと見渡してみたけど、ただひたすら真っすぐと王城らしき場所へと続いている大通りの両脇にずらりと建物が並んでいる。そのほとんどが飲食店の様だった。
「こんなに飲食店ばっかりいるのかな?」
「ん、この通りに集められてるだけ。それ以外もちゃんとある」
ムサシから事前に貰っていた観光用の地図を片手で開きながらドーラさんは歩き続けるので、彼女の歩調に合わせつつ人にぶつからないように気を付ける。
ヤマトを観光した時はなぜか注目を集めていたけど、こっちではあまり顔が知られていないのか、僕をじろじろと見る人はほとんどいない。
ドーラさんに注目が集まるのは彼女の容姿が整っているからだろう。
胸の膨らみ等の女性らしさはほとんどないけど、小柄で人形のような可愛らしさがある。表情がほとんど表に出ないからよりそう思うのかもしれない。
「今日はどうするの? 飲食店をはしごするの? これだけあるとどこに行くかすごく悩ましいけど……」
「ん。いくつか目星をつけてある」
「そっか。混んでないといいね」
「問題ない」
隠れた名店とかに行くんだろうか?
ドーラさんはそれ以上説明する事なくマップを見ながら歩き続けた。
そうして辿り着いた一軒目だけど、結構並んでいる人がいた。
「って、ドーラさん、ちょっと待って! 並ばないの?」
「問題ない。予約してある」
なるほど。よくよく考えたらこんなに並んでいる人気店に予約も無しに当日いきなり行けるわけないか。
そんな事を思いつつ店の入り口から入っていくドーラさんの後に続く。
落ち着いた雰囲気のお店で、ウェイターの人がすぐに僕たちに気付いて近づいてきた。
「勝手に入られては困ります。お呼びするまで外で……これは?」
ドーラさんが無言でウェイターさんにどこからか取り出した紙を突きつけると、彼は怪訝そうにしつつも受け取った。
しばしその紙に書かれた物を見ていたようだったけど、紙を懐にしまうと「大変失礼いたしました」と深々と頭を下げた。
「ご予約をされていたドーラ様とシズト様ですね。お席にご案内いたしますのでこちらへどうぞ」
「ん、行こ」
「良いのかな? なんか、並んでる人たちがめちゃくちゃ睨んできてるんだけど……」
「問題ない。店員が対応する。そうでしょ?」
「はい、何も問題ございません」
ウェイターさんが僕たちのやり取りを見ていたウェイトレスさんに目配せをすると、数人の店員が外に出て行った。
ウェイターさんはそれを見届ける事もなく「こちらへどうぞ」と歩き始めた。
ドーラさんも気にした様子もなく僕の手を握ったまま歩き始めたので、その後について行く。
通されたのは奥まったところにあった席だった。ここならテーブルマナーとかあまり気にしなくてもいいかもしれない。
注文が決まったらベルを鳴らしてください、とウェイターはそれだけ言うと離れて行った。
「なんか、他の人が食べている料理、見た目がすごい物が多かったね」
「ん、美食の国だから」
「……もしかして、美食って美味しいって意味じゃなくて見た目が美しい食べ物とかそんな感じ?」
「ん。もちろん味も美味しいらしい。そう書かれてる」
ドーラさんが紙の束を取り出した。どうやらそこに店の名前やら特長やらがまとめられているようだ。
見せてもらったけど、説明文と共におすすめ料理の絵が描かれていた。どれもこれも見た目にインパクトのある料理が多い。行った事ないけど高級フレンチ的な?
「この店の名前の横についている★マークって何? 評価?」
「ん。ティエール国内に専門の評価機関がある。一つ星から五つ星まであって、首都に店を出す事ができるのは三ツ星から」
「……なんか勇者が関わってそうな感じの制度だね」
「そう。過去の勇者がこの制度のもととなった物を作った。当時は厳正な審査を元に三ツ星まで選ばれていたらしい。ただ、今は貴族の買収などで星を得る店もあって、レベルが低下したから星が五つまで増やされた背景があるってムサシが言ってた」
「そんな話どこから拾ってくるんだろうね」
「芸術の国ノーブリーの人が言ってたって」
そういえば、ヤマトが同盟に加わる前に顔合わせをした時にそれぞれの国の人が言い争いのような事をしていたなぁ。馬が合わなかっただけかなって思ったけど、そもそも国同士が仲が悪いのか。
それならそういう各国の悪い部分もチクられても不思議ではない……のか?
うーん、と首を傾げている間にドーラさんはメニューを見て料理を決めてしまったようだ。
スッと僕の前に出されたメニュー表に視線を向ける。
「……料金とか書いてないんだけど?」
「そういうお店」
「なるほど……?」
お金の心配はないだろうけど、ちょっと敷居がさらに高くなった気がする。
料理名を見ても正直何かわからないし、ドーラさんにお肉系の物を選んでもらった。
いくつか頼んでいて大丈夫かなと思ったけど、見栄え重視だからか一つ一つの量はそこまでなかったので問題なかった。
一先ず転移門が設置されていたメインストリートをざっと見渡してみたけど、ただひたすら真っすぐと王城らしき場所へと続いている大通りの両脇にずらりと建物が並んでいる。そのほとんどが飲食店の様だった。
「こんなに飲食店ばっかりいるのかな?」
「ん、この通りに集められてるだけ。それ以外もちゃんとある」
ムサシから事前に貰っていた観光用の地図を片手で開きながらドーラさんは歩き続けるので、彼女の歩調に合わせつつ人にぶつからないように気を付ける。
ヤマトを観光した時はなぜか注目を集めていたけど、こっちではあまり顔が知られていないのか、僕をじろじろと見る人はほとんどいない。
ドーラさんに注目が集まるのは彼女の容姿が整っているからだろう。
胸の膨らみ等の女性らしさはほとんどないけど、小柄で人形のような可愛らしさがある。表情がほとんど表に出ないからよりそう思うのかもしれない。
「今日はどうするの? 飲食店をはしごするの? これだけあるとどこに行くかすごく悩ましいけど……」
「ん。いくつか目星をつけてある」
「そっか。混んでないといいね」
「問題ない」
隠れた名店とかに行くんだろうか?
ドーラさんはそれ以上説明する事なくマップを見ながら歩き続けた。
そうして辿り着いた一軒目だけど、結構並んでいる人がいた。
「って、ドーラさん、ちょっと待って! 並ばないの?」
「問題ない。予約してある」
なるほど。よくよく考えたらこんなに並んでいる人気店に予約も無しに当日いきなり行けるわけないか。
そんな事を思いつつ店の入り口から入っていくドーラさんの後に続く。
落ち着いた雰囲気のお店で、ウェイターの人がすぐに僕たちに気付いて近づいてきた。
「勝手に入られては困ります。お呼びするまで外で……これは?」
ドーラさんが無言でウェイターさんにどこからか取り出した紙を突きつけると、彼は怪訝そうにしつつも受け取った。
しばしその紙に書かれた物を見ていたようだったけど、紙を懐にしまうと「大変失礼いたしました」と深々と頭を下げた。
「ご予約をされていたドーラ様とシズト様ですね。お席にご案内いたしますのでこちらへどうぞ」
「ん、行こ」
「良いのかな? なんか、並んでる人たちがめちゃくちゃ睨んできてるんだけど……」
「問題ない。店員が対応する。そうでしょ?」
「はい、何も問題ございません」
ウェイターさんが僕たちのやり取りを見ていたウェイトレスさんに目配せをすると、数人の店員が外に出て行った。
ウェイターさんはそれを見届ける事もなく「こちらへどうぞ」と歩き始めた。
ドーラさんも気にした様子もなく僕の手を握ったまま歩き始めたので、その後について行く。
通されたのは奥まったところにあった席だった。ここならテーブルマナーとかあまり気にしなくてもいいかもしれない。
注文が決まったらベルを鳴らしてください、とウェイターはそれだけ言うと離れて行った。
「なんか、他の人が食べている料理、見た目がすごい物が多かったね」
「ん、美食の国だから」
「……もしかして、美食って美味しいって意味じゃなくて見た目が美しい食べ物とかそんな感じ?」
「ん。もちろん味も美味しいらしい。そう書かれてる」
ドーラさんが紙の束を取り出した。どうやらそこに店の名前やら特長やらがまとめられているようだ。
見せてもらったけど、説明文と共におすすめ料理の絵が描かれていた。どれもこれも見た目にインパクトのある料理が多い。行った事ないけど高級フレンチ的な?
「この店の名前の横についている★マークって何? 評価?」
「ん。ティエール国内に専門の評価機関がある。一つ星から五つ星まであって、首都に店を出す事ができるのは三ツ星から」
「……なんか勇者が関わってそうな感じの制度だね」
「そう。過去の勇者がこの制度のもととなった物を作った。当時は厳正な審査を元に三ツ星まで選ばれていたらしい。ただ、今は貴族の買収などで星を得る店もあって、レベルが低下したから星が五つまで増やされた背景があるってムサシが言ってた」
「そんな話どこから拾ってくるんだろうね」
「芸術の国ノーブリーの人が言ってたって」
そういえば、ヤマトが同盟に加わる前に顔合わせをした時にそれぞれの国の人が言い争いのような事をしていたなぁ。馬が合わなかっただけかなって思ったけど、そもそも国同士が仲が悪いのか。
それならそういう各国の悪い部分もチクられても不思議ではない……のか?
うーん、と首を傾げている間にドーラさんはメニューを見て料理を決めてしまったようだ。
スッと僕の前に出されたメニュー表に視線を向ける。
「……料金とか書いてないんだけど?」
「そういうお店」
「なるほど……?」
お金の心配はないだろうけど、ちょっと敷居がさらに高くなった気がする。
料理名を見ても正直何かわからないし、ドーラさんにお肉系の物を選んでもらった。
いくつか頼んでいて大丈夫かなと思ったけど、見栄え重視だからか一つ一つの量はそこまでなかったので問題なかった。
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