【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
上 下
740 / 1,094
第24章 異大陸を観光しながら生きていこう

495.事なかれ主義者は信頼している

しおりを挟む
 朝、目が覚めるとモニカがベッドの近くに椅子を持ってきて、僕が起きるのを待っていたようだ。

「お腹だいじょうぶだった?」
「何も問題ありませんでしたよ。安眠カバーを使っている時はシズト様は寝相が良いですから」
「それならいいんだけど……」

 寝ている間にお腹を叩いちゃったら大変だからベッドの端っこで寝ようとしたんだけど、結局ベッドの真ん中で眠らされていた。
 昨日の記憶が途中からないのはモニカに『安眠カバー』が付いた枕を押し付けられたからかもしれない。

「先程エミリーがやってきて、朝食の準備が終わったとの事でしたがいかがなさいますか? 入浴されるのであればすぐに準備します」
「いや、今日は別にいいや」

 昨日の夜も今もする事をしていないから汚れてないし。
 モニカは既にすでにオーバーオールに着替えていた。
 僕も着替えるためにベッドから抜けだそうとしたら既にベッドの上に着替えが準備されていた。

「それでは、扉の向こうでお待ちしておりますね」

 僕が何も言わずともモニカは部屋から出て行った。
 一部の人たちは着替えも手伝おうとしようとしてくるけど、モニカはそういう事をしてこないので安心できる。
 僕は用意された服に袖を通して、寝間着としていた甚兵衛はベッドの上に置いておいた。
 どこに置いておいても気が付いたら回収されていて、新しい寝間着が用意されているのでもうベッドの上に置いておく事にしている。
 部屋から出ると、モニカが立って待っていた。

「お腹だいじょうぶ?」
「はい。問題ありません」
「そっか。それならよかった」

 お腹に手を当てていたので何かあったのかと一瞬焦ったけど、ただ撫でていただけだった。
 昨日の夜にちょっと触らせてもらったけど、膨らんでいるような、そうでないような感じだった。
 お腹が出てくるのはいつからだったかなぁ、なんて思いながらモニカと一緒に並んで食堂へと向かう。
 世界樹フソーの根元に作られたこの屋敷は、僕のお嫁さんたちそれぞれの個室と、僕の部屋がすべて同じ階にある。
 部屋の広さも僕以外全員同じなので、元々奴隷だったエミリーやシンシーラは持て余しているそうだ。
 ラオさんとルウさんなど元平民組はファマリーの方の屋敷と同じ広さなので、もう特に気にする事はなくなったらしい。
 階段をゆっくりと下りたモニカと僕は、そのまま一階にある食堂へと向かった。
 食堂にはランチェッタさんとディアーヌさん以外揃っていた。二人は別の大陸で仕事中なのでしばらく同席出来ない。

「おはよう、みんな」

 それぞれ挨拶をしてきたみんなにまとめて挨拶を返して、空いていたお誕生日席のようなところに座ると、エミリーとジューンさんが給仕をし始めた。
 エミリーは昨日着てもらった巫女服ではなく、いつも通りのメイド服を着ている。
 ジューンさんはこちらでは世界樹の代理人としての仕事がないので、真っ白な服を着ていなかった。
 エルフらしからぬ女性らしい体のラインがよく分かるニットのワンピースを着ていた。
 食卓に料理を並べ終えたらジューンさんは自分の席に着いたけど、エミリーは座らずに壁際に控えた。
 そこにはシンシーラやパメラもいた。やっぱりこっちでも一緒に食事をしないらしい。
 命令すれば一緒に食べてくれるだろうけど、そういうのはなんか違う気がするし、こればっかりは仕方がない、と諦めて食前の挨拶を唱和した。
 いつものごとく、ラオさんとルウさんは食事をすぐに終えるし、ノエルは口の中に一杯詰め込めるだけ詰め込むと嵐のように食堂から出ていく。
 ホムラとユキはわざと口の周りを汚しているので、僕も食事をしながら彼女たちの口周りを近くに置かれている布で拭う。
 みんなと他愛もない話をしながら食事を進め、食後のティータイムに入った頃にホムラが思い出したかのように口を開いた。

「本日、ヤマトへ向かいます、マスター」
「ヤマトへ? なんかあったの?」
「いえ、特には何もありません、マスター。この目で見て有用なものがないか見てこようかと」
「……ホムラだけだとちょっと心配なんだけど、一人で行くの?」
「私も行くわ、ご主人様」

 ホムラだけじゃ心配だけど、ユキが加わった所であまりストッパーになりそうにないんだよなぁ。
 そう思ってラオさんの方を見たら、彼女もまた僕の方を見ていた。

「ラオさん、今日何か予定ある?」
「特にねぇよけど、あんまり行きたくねぇな」
「私も行くから一緒に行きましょ、ラオちゃん!」
「だがなぁ」

 いつもだったら了承してくれるラオさんだけど、今日は何だか歯切れが悪い。
 喧嘩をしているわけでもなさそうだし、ヤマトに行く事に何か問題でもあるのだろうか。

「私はいなくても問題ありません、マスター」
「ホムラにとってはそうなんだろうね」
「ラオちゃんラオちゃん」
「あんだよ」
「一緒について行った方が良いと思うわ」
「なんでだよ」
「それは……」

 ルウさんが僕の方に視線を向けた後に口籠った。
 それから彼女は席を立つと机を回り込んでラオさんのすぐ隣に行き、何やらこそこそと耳打ちしている。
 ラオさんは難しい顔をした後「まあ、そうだな」とため息交じりに言った。
 どうやらホムラたちについていってくれるようだ。
 ヤマトで何が起こるか分からないけど、まあラオさんがいるなら大丈夫でしょ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果  異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。  実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。  異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。  そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。  だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。  最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!

林檎茶
ファンタジー
 俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?  俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。  成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。  そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。  ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。  明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。  俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。  そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。  魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。  そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。  リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。  その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。  挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

処理中です...