【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第24章 異大陸を観光しながら生きていこう

492.事なかれ主義者は空を自由に飛びたい

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 ファマ様たちに久しぶりに呼び出されてから一週間ほど経った。
 神様たちの像はお手本を【加工】でササッと作って、ドワーフやエルフに依頼を出した。
 各地に点在している教会に設置するための像はそれぞれの大陸で作ってもらって、世界樹の根元に建てた祠には僕が作った神像を飾ってもらった。
 あれからファマ様たちから話しかけられる事もないから出来栄えには満足してもらえているようだ。
 もう一つのお願いの方は食事の時に皆に伝えた。
 ラオさんとドーラさんは最近お世話係になる事を辞退する事もあったけど、再開する事になった。
 夫婦の営みについてはタイミング次第な所もあるので、順番通りじゃなかったり、複数人だったりする時もあるけど、何とか枯れずに生活する事ができている。
 今日も日課となっている朝風呂を済ませた後、脱衣所から出ると、ランチェッタさんとディアーヌさんが待っていた。
 二人とも海洋国家ガレオール出身だからか、肌は黒い。
 髪と目の色が同じなのは遠縁にあたるかららしいけど、スタイルは全く違う。
 ランチェッタさんは小柄で顔立ちもどこか幼さが残っているけど、ビックリするくらい胸が大きい。魔道具『育乳ブラ』を使って大きくなったレヴィさんに匹敵するくらいの大きさだ。
 ディアーヌさんはすらりとした長身の女性だ。ランチェッタさんと比べて小さいと卑下する時があるけど、十分だと思う。
 ランチェッタさんが可愛い系だとするなら、ディアーヌさんはカッコいい系だろう。メイド服も似合ってるけど、男装したら僕よりもモテるんじゃないかなぁ。

「二人ともおはよう」
「おはよう、シズト」
「おはようございます、シズト様」
「わざわざ待ってなくてもいいのに」
「入ってもよろしかったのですか?」
「いや、食堂に向かってって意味なんだけどね?」

 悪戯っぽい笑みを浮かべたディアーヌさんにツッコミを入れつつ食堂へと向かう。
 ランチェッタさんは僕の隣に並んで見上げてきた。

「お世話係だから待ってたのよ。今日は仕事を全部任せてきたからずっと一緒にいる事ができるわ!」
「ああ、だから今日は普段着ているドレスを着てないんだね」

 ランチェッタさんは最近は露出の少ないドレスを好んで着ていた。
 謁見する相手にじろじろと見られるのが不快だかららしい。
 少しでも背を高く見せようとヒールの高い靴もよく履いているし、今かけている丸眼鏡も基本的にかけてない。目が悪いから睨むような感じで相手を見る事になってしまうけど、それはそれでいいんじゃないかしら、なんて言ってたな。
 ただ今日は僕と一緒に過ごすという事で動きやすくするために靴にヒールはないし、丸眼鏡もかけている。眼鏡をかけているから大きな目がぱっちりと開かれていた。いつもこの方が良いんじゃないかな。

「あの仕事中毒だったランチェッタ様が他の者たちに任せる事ができるようになるなんて……感無量です」
「うるさいわよ、ディアーヌ!」
「まあ、ディアーヌさんの気持ちも分からなくもないかなぁ。朝から晩まで仕事漬けで、食事も簡単に食べられる物しか食べなかったって、料理長さんが言ってたよ」
「いつの間に彼と話をしたの!?」
「ランチェッタ様をお待ちになられている間にお話しされてましたよ」
「貴女の差し金ね!」
「何の事かさっぱりでございます」

 ランチェッタさんがディアーヌさんを再度睨んだけど、ディアーヌさんはそっぽを向いて素知らぬ顔をしていた。



 朝食を済ませたらクレストラ大陸へと転移した。
 お薬の素材を大量に納品したからか、ここ一週間でだいぶ呪われた人が減ってきていたし、なによりプロス様から神託が下った、とお嫁さんたちが張り切ってしまっているので、今回は皆もついて来た。クーは別館で暮らしている人たちと一緒にお留守番だけど、今回は特に文句は言ってこなかった。
 皆はムサシに案内してもらいながら世界樹フソーの根元に新しく建てられた建物を見に行っている。
 屋敷の中にたくさんあるドライアドたちが好き勝手置いて行った植物がどうなるのかちょっと心配だけど、レヴィさんたちに任せて、僕は世界樹の世話をするために別行動をしていた。

「ランチェッタさんたち、本当についてきちゃって大丈夫だったの? しばらく転移陣は使わないけど」
「大丈夫よ。明日、ガレオールと繋がっている転移門が開く日だから、それを使って帰るわ」
「私としては、敵対派閥だった公爵派も最近大人しくしていますし、少しくらい長居してもいいんじゃないかと思うんですけどね」
「ただでさえ呪い関係で混乱しているんだから、これ以上混乱の種を蒔く必要はないわ。予定通り、明日帰るから」
「うん、分かった」
「シズト様は本日、やる事を済ませたらどう過ごされるのですか?」
「特には決めてないけど……あっちの手伝いになるかもしれないね」

 屋敷の方に視線を向けると植木鉢を外に出す作業をラオさんたちがしていたけど、ドライアドたちは出された植木鉢を中に移動させようとしている。交渉は上手くいっていないようだ。
 もうドライアドたち用の建物を作った方が良いんじゃないかなぁ、なんて思いながらフソーに【生育】の加護を使った。
 魔力はだいぶ余ったので、呪い対策用の上級ポーションやらエリクサーの素材を今日も量産できそうだ。ただ、ドライアドたちがいればの話だけど。
 事前に用意しておいてもらった急成長用の畑の広さを考えると、僕たち四人だけじゃ到底回らない。
 とりあえず、フクちゃんと一緒に高みの見物をしているお菊ちゃんを呼んでもらおうかな。

「ジュリウス、お菊ちゃん連れてきて」
「かしこまりました」

 それまで気配を殺していたジュリウスがすぐに返事をすると、(たぶん)精霊魔法を使ってフクちゃんとお菊ちゃんがいる枝まで飛んでいく。
 その姿をランチェッタさんたちと一緒に見送った。
 ……やっぱり自由に空を飛べるっていいよなぁ。
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