上 下
734 / 1,023
第24章 異大陸を観光しながら生きていこう

491.事なかれ主義者は神託を授かった

しおりを挟む
 久しぶりに会った神様たちからのお願いは二つあった。
 一つ目は、神様たちもそこそこ外見が変わったので像を作り直す事。
 ファマ様は身長がさらに伸びて縦に大きくなったけど、横にも大きくなった。エント様もプロス様も身長は伸びているけど、一番大きくなっているのは間違いなくファマ様だろう。まだ僕の方が高いけど、その内抜かされそうだ。

「じゅ、順調に信仰されているからなんだなぁ」

 ニコーッと嬉しそうに笑っているファマ様は大きささえ変えれば何とかなりそうだった。
 エント様はというと、大きくなってより女の子っぽくなった。以前も子どもというより女の子っぽい体型になったなぁ、とは思ったけどいろいろな所がさらに成長したようだ。
 また余計な事を考えると恥ずかしがってしまうから、無心で眺めた。……っていうか、そもそもそういう趣味はない。
 プロス様は三人の中で一番小さい。それでも、成長はしている。

「当たり前でしょ! ちゃんと見て作ってね!」
「はいはい」
「はいは一回!」
「はい」

 元気いっぱいなプロス様はむしろしっかり見て欲しい、という事ですごく近づいてきた。
 そんなに近いと見辛いんですけど……。

「細かい所もしっかり作って!」
「はい」

 大きく丸い瞳と、肩まで伸びた焦げ茶色の髪は変わっていないし、顔立ちもまだまだ幼さが残っている。
 このまま成長してもこういう感じなんじゃないだろうか?
 なんて事を考えていたら「エントに負けないくらい素敵な女神になるもん!」と怒らせてしまった。
 荒ぶる神様をファマ様がひょいっと持ち上げて僕から遠ざけた。

「つ、伝える事がまだあるんだな」
「そのために呼んだんだよ……?」
「そうだった! 神力溜まったから子ども作っていいよ!」

 神様からのお願いの二つ目は、プロス様の加護を授けるために子どもを作って欲しいとの事だった。
 ……女の子の見た目の子に子どもを作れと言われると何とも言えない気持ちになるなぁ。
 っていうか、そんなホイホイ作れる物じゃないし。
 僕の心を読んだのか、エント様が可愛らしく首を傾げた。

「毎日してればその内できるんじゃないかな……?」

 ちょっと女神様たちには子どもを作る作らないの話に入って来ないで欲しい気がしてきた。
 今までも姿が子どもだったから「子どもを作って」とか言われるの何だかなぁ、なんて後から思う時もあったけど、その時は子ども姿の神様たちの必死の訴えだったし気にならなかったんだろう。
 ただ、今は可愛らしい女の子の見た目だし……うん。なんというか、ませてる子たちから言われているような感覚というか……。言語化が難しい。
 うーん、と考え込んでいる心の声もすべて駄々洩れなので、三柱がそれぞれの顔を見て、それからファマ様が挙手をした。

「じゃ、じゃあオイラから言えばいいんだな?」
「んー……まあ、プロス様やエント様からよりはまだいい、ですかね?」
「わ、分かったんだなぁ。じゃ、じゃあ頑張って伝えるんだなぁ」

 プロス様が精一杯背伸びをして、ファマ様の耳に顔を近づけて何やら耳打ちを始めた。
 それをファマ様がうんうんと頷きながら聞いている。

「プ、プロスもシズトの子どもに加護を授けるくらいには溜まったらしいんだなぁ。マ、マネキンゴーレムの効果もあって、着々と認知が広がっているんだなぁ」

 僕が作ったマネキンゴーレムには、プロス様の名前と似顔絵を胸のあたりと背中に刻印してある。信仰を広めるためには

まずは認知してもらう必要があるだろう、という事でそういう風にしていたんだけど、それを元にエルフたちが量産しているマネキンゴーレムにもそれぞれプロス様の名前と似顔絵が刻まれていた。
 想定外の事だったけど、それが功を奏したようだ。
 今のところは看護者の対応しかしてないけど、今後は危険な仕事とかにも活用されるからもっともっと広まっていくだろう。
 プロス様が再びファマ様に耳打ちをしている。それをふんふんと頷きながら聞いていたファマ様が、口を開いた。

「だ、だから子どもを作っていいって事なんだなぁ。プ、プロスの教会で式を挙げた者たちの誰かが妊娠したらすぐに授けるから、しっかり守るんだなぁ。も、もちろんオイラの加護を授けた子を宿した者も守るんだな!」

 子どもを宿していようがいなかろうが守るのは変わらないですよ。
 まあ、どっちかって言うと守られてばかりですけど、なんて事を考えていると今度はエント様がファマ様に耳打ちをしている。身長が伸びた事もあって背伸びを少しする程度で十分なようだ。

「も、もちろんシズト自身も身を守るんだな、ってエントが言ってるんだな」
「そうですね。……あと、性に関する事じゃなければ別に普通に話してもらっていいですよ」
「は、判断が難しいんだなぁ」
「その都度言いますね。とりあえず、子どもを作る事とか男女の仲の事とかはファマ様が話してくださると助かります」
「わ、分かったんだなぁ」
「話はもう終わりですか?」
「と、特にもうないんだなぁ。む、むしろ、シズトの方から何かあるんだな? こ、これからまたしばらく神力を貯めるからこうして呼び出して話すのはしばらくないと思うんだなぁ」
「そうですね……。特にないです」

 僕がそう答えると「そ、それじゃあ向こうに戻すんだなぁ」とファマ様が言った。
 三柱に手を振られて見送られる中、視界が真っ暗になっていき、目を開いたら元の場所に戻っていた。
 教わってすぐに呼ばれなかったし『神降ろし』の事じゃないと分かっていたけど、本当に何も言われなかったなぁ。
 そんな事を思いつつ、静かに傍で待ってくれていたジュリウスに協力してもらって、集まって僕の体によじ登っていたドライアドたちを地面に下ろしていった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

処理中です...