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第23章 呪いの対策をしながら生きていこう
482.事なかれ主義者はサインをもらってみたい
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お昼ご飯をのんびりと食べている間に、ジュリウスが続報として入ってきた情報をまとめてくれていたので、食後の紅茶を飲みながらそれを聞く。
「今までの邪神の信奉者たちは皆、捕えられたら自害していたので情報を得る事ができていなかったのですが、今回は自害する様子もないようです」
「信仰心が篤くなかったのかな」
「そうかもしれません。そもそも、今回の邪神の信奉者は信仰心と呼べるものは持ち合わせておらず、気に入らない者を呪う事しか頭にないようです。今も、拘束を外さないと呪うぞと喚いているそうです。まあ、『加護封じの手枷』を着けているそうなのでその様な事は出来ないのですが」
魔道具『加護封じの手枷』は万が一邪神の信奉者を捕らえる事ができた時用に作った代物だ。
加護封じの流星錘で縛っておくのもいいんじゃないかと思ったけど、武器がなくなるし、拘束専用の物を作ってくれとの事だったので作った。
「ウィズダム魔法王国に護送中との事で、本格的な尋問はまだ先になるとの事でしたが、その場に同席されますか?」
「いや、しないよ? するように見える?」
「見えませんね。では代わりに何か聞いてもらいたい事などございますか?」
「んー……特にないし、そういうのは取り調べる専門家的な人がいるんでしょ?」
「はい。拷問官もいるでしょうし、ウィズダム魔法王国であれば、間諜の中に思考を読み取る魔法を習得している者も複数抱えているでしょう」
「ご、拷問はともかく……レヴィさんみたいな人がいるんだったら任せちゃえば大丈夫でしょ。まあ、タカノリさん経由で何か必要な物があれば作るけど」
「かしこまりました。では、そのように手紙に記載し、知の勇者タカノリに送ります」
ジュリウスは一礼すると食堂から出て行った。
そのタイミングで、僕のお茶菓子として用意されていた焼き菓子を盗み食いしていたパメラが、すべて食べ終えたようだ。
脱兎のごとく駆け出して、窓を開けて飛び立っていった。翼人族である彼女の背中には黒い翼が生えていて、それをバサバサと羽ばたかせながら「美味しかったデース!」と高らかに叫んでいる。
パメラは飛び立った後、エミリーからすぐに逃げるために窓を閉める事はない。
開けっ放しの窓からひょこッとドライアドたちが顔を覗かせているけど、いつの間にか移動していたセシリアさんが、ドライアドたちにブーイングされながらそっと窓を閉めた。
「シズト様、追加のお菓子です」
「いつもありがとね」
「いえ、大丈夫ですよ。パメラには後から罰を与えておきます。まあ、明日も懲りずに同じ事をするでしょうけど」
エミリーが給仕せずに取っておいたお茶菓子をもう一度出してくれた。
その際にモフッと彼女のチャームポイントである白い尻尾が僕の体に当たるのはわざとだろう。
「それにしても、邪神の信奉者を捕らえる事ができたなんて歴史的に見てもない事だったと思うのですわ」
「そうなの?」
「だいたい捕まる前に自死する事が殆どですわ」
「そもそも、捕まえるっていう発想にならねぇよ」
「冒険者ギルドだと、見つけたら逃げるか、殺すかのどちらかを強く推奨されているものね」
食後のデザートをぺろりと平らげたラオさんとルウさんが、魔力マシマシ飴を舐めながら話に加わってきた。
一緒に昼食を食べたノエルはもうすでにここにはおらず、部屋に戻ってノルマを達成しようと頑張っている。マネキンゴーレムの廉価版を作る事は出来そうだ、という事で他の魔道具より優先して作っているはずだ。
「なんで逃げるか殺すかの二択なの……って、能力が厄介だからか」
「そうね。普通は相手がどんな力を持っているか分からないのよ。討伐依頼じゃない限りはね」
「相手の能力が分かっていても、討伐する際にパーティーに甚大な被害が出る事もあるしな。『呪躰』の加護だけだったら遠距離攻撃に専念すればいいって思っても、思わぬ攻撃の仕方とかしてくる時あるしな」
「体の一部を吹き飛ばしてぶつけて来たりね」
「異常に治癒能力高いからな、『呪躰』の加護持ちは」
スプラッタ映画もビックリな攻撃方法だった。絶対会いたくない。
でも、今回の騒動が収まったら観光もしたいんだよなぁ。クレストラ国際連合の各国からは一度来て欲しいって打診が来てるみたいだし、ミスティア大陸はウィズダム魔法王国以外ほとんど知らないし。
「捕らえる事ができた知の勇者タカノリは後世に名前が残りそうですわ」
「すごいねぇ。今のうちにサイン貰って置いたら後で高値で売れるかな」
使い切れないほどのお金は今後も定期的に入ってくるだろうけど、有名人になるって分かっていたらサインをもらっておきたい気持ちが湧いて来る。
そんな僕の心を見透かしてか、皆に変な顔で見られたけど、今度会った時にお願いしてみよう。
そのために、いい感じの色紙とか探しておかないとなぁ。
「今までの邪神の信奉者たちは皆、捕えられたら自害していたので情報を得る事ができていなかったのですが、今回は自害する様子もないようです」
「信仰心が篤くなかったのかな」
「そうかもしれません。そもそも、今回の邪神の信奉者は信仰心と呼べるものは持ち合わせておらず、気に入らない者を呪う事しか頭にないようです。今も、拘束を外さないと呪うぞと喚いているそうです。まあ、『加護封じの手枷』を着けているそうなのでその様な事は出来ないのですが」
魔道具『加護封じの手枷』は万が一邪神の信奉者を捕らえる事ができた時用に作った代物だ。
加護封じの流星錘で縛っておくのもいいんじゃないかと思ったけど、武器がなくなるし、拘束専用の物を作ってくれとの事だったので作った。
「ウィズダム魔法王国に護送中との事で、本格的な尋問はまだ先になるとの事でしたが、その場に同席されますか?」
「いや、しないよ? するように見える?」
「見えませんね。では代わりに何か聞いてもらいたい事などございますか?」
「んー……特にないし、そういうのは取り調べる専門家的な人がいるんでしょ?」
「はい。拷問官もいるでしょうし、ウィズダム魔法王国であれば、間諜の中に思考を読み取る魔法を習得している者も複数抱えているでしょう」
「ご、拷問はともかく……レヴィさんみたいな人がいるんだったら任せちゃえば大丈夫でしょ。まあ、タカノリさん経由で何か必要な物があれば作るけど」
「かしこまりました。では、そのように手紙に記載し、知の勇者タカノリに送ります」
ジュリウスは一礼すると食堂から出て行った。
そのタイミングで、僕のお茶菓子として用意されていた焼き菓子を盗み食いしていたパメラが、すべて食べ終えたようだ。
脱兎のごとく駆け出して、窓を開けて飛び立っていった。翼人族である彼女の背中には黒い翼が生えていて、それをバサバサと羽ばたかせながら「美味しかったデース!」と高らかに叫んでいる。
パメラは飛び立った後、エミリーからすぐに逃げるために窓を閉める事はない。
開けっ放しの窓からひょこッとドライアドたちが顔を覗かせているけど、いつの間にか移動していたセシリアさんが、ドライアドたちにブーイングされながらそっと窓を閉めた。
「シズト様、追加のお菓子です」
「いつもありがとね」
「いえ、大丈夫ですよ。パメラには後から罰を与えておきます。まあ、明日も懲りずに同じ事をするでしょうけど」
エミリーが給仕せずに取っておいたお茶菓子をもう一度出してくれた。
その際にモフッと彼女のチャームポイントである白い尻尾が僕の体に当たるのはわざとだろう。
「それにしても、邪神の信奉者を捕らえる事ができたなんて歴史的に見てもない事だったと思うのですわ」
「そうなの?」
「だいたい捕まる前に自死する事が殆どですわ」
「そもそも、捕まえるっていう発想にならねぇよ」
「冒険者ギルドだと、見つけたら逃げるか、殺すかのどちらかを強く推奨されているものね」
食後のデザートをぺろりと平らげたラオさんとルウさんが、魔力マシマシ飴を舐めながら話に加わってきた。
一緒に昼食を食べたノエルはもうすでにここにはおらず、部屋に戻ってノルマを達成しようと頑張っている。マネキンゴーレムの廉価版を作る事は出来そうだ、という事で他の魔道具より優先して作っているはずだ。
「なんで逃げるか殺すかの二択なの……って、能力が厄介だからか」
「そうね。普通は相手がどんな力を持っているか分からないのよ。討伐依頼じゃない限りはね」
「相手の能力が分かっていても、討伐する際にパーティーに甚大な被害が出る事もあるしな。『呪躰』の加護だけだったら遠距離攻撃に専念すればいいって思っても、思わぬ攻撃の仕方とかしてくる時あるしな」
「体の一部を吹き飛ばしてぶつけて来たりね」
「異常に治癒能力高いからな、『呪躰』の加護持ちは」
スプラッタ映画もビックリな攻撃方法だった。絶対会いたくない。
でも、今回の騒動が収まったら観光もしたいんだよなぁ。クレストラ国際連合の各国からは一度来て欲しいって打診が来てるみたいだし、ミスティア大陸はウィズダム魔法王国以外ほとんど知らないし。
「捕らえる事ができた知の勇者タカノリは後世に名前が残りそうですわ」
「すごいねぇ。今のうちにサイン貰って置いたら後で高値で売れるかな」
使い切れないほどのお金は今後も定期的に入ってくるだろうけど、有名人になるって分かっていたらサインをもらっておきたい気持ちが湧いて来る。
そんな僕の心を見透かしてか、皆に変な顔で見られたけど、今度会った時にお願いしてみよう。
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