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第23章 呪いの対策をしながら生きていこう

477.事なかれ主義者は食べきれなかった

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 シグニール大陸にある世界樹の世話をするために戻ってきて一週間が経った。
 今日からクレストラ大陸にある世界樹フソーの世話を数日間する予定だ。
 僕について来るのはジュリウスだけで、それ以外はレヴィさんとモニカの護衛としてこっちに残る。
 レヴィさんもモニカも今の所つわりなどの体調不良は訴えてないけど、何があってもいいように産婆さんとか治癒魔法の使い手にはファマリーで寝泊まりしてもらう事になっていた。
 呪いが蔓延していようと夫婦の営みは続けていたんだけど、向こうに行っている間は夜は短くなりそうだ。
 朝食を食べ終えたらそのまま皆に見送られつつクレストラ大陸へと向かう。

「ジュリウスの言う事、しっかりと聞くんだぞ」

 僕を見下ろしながら釘を刺したのは、付き合いが一番長いラオさんだ。
 背丈が二メートルほどある彼女を見上げながら「分かっているよ」と返す。
 本当はついてきたいんだろうけど、向こうにはムサシもいるからこれ以上護衛は不要、との事でレヴィさんの護衛を妹のルウさんと一緒にしてもらう事になっている。

「こっちの事はお姉ちゃんたちに任せて! しっかり見守っているから!」

 そう言って大きく膨らんだ胸を叩いたのは、ラオさんの妹のルウさんだ。
 背丈はラオさんと同様二メートルほどあるけど、赤い目は若干たれ目がちだったり、赤髪が長かったりするから見間違える事はない。
 いってらっしゃいのハグをされるがままにしていると延々と離してくれないので背中をタップした。

「あ、ごめんね、シズトくん。他の皆ともしたいよね」
「え、いや別にそう言う訳じゃないんだけど……」

 そういう訳ではなかったんだけど、流れ的に見送りに来てくれた皆とギュッとする事になってしまった。
 最後になんか列に混じっていたドライアドたちもギュッとしつつひょいっと持ち上げて高い高いをした。

「それじゃ、何かあったら知らせてね」

 転移陣の上で皆に向かって手を振っていると、足元の光が強くなり、次の瞬間には別の場所へと転移していた。
 ファマリーよりも遥かに大きな世界樹が目の前に聳え立ち、上の方の枝には巨大なフクロウがとまっている。

「主殿、よく来たでござるな。元気にしていたでござるか?」
「うん、元気にしてたよ。ムサシは? 呪われた人たちの様子を定期的に見に行ってるんでしょ?」
「元気にしているでござるよ。今の所、『身代わりのお守り』が作動した形跡も全くないでござる」

 汚れが一つもない『身代わりのお守り』を掲げて見せてくれた大男は、こっちの大陸で主に僕が不在時の代行として働いてくれているムサシだ。
 彼もまた、ホムラたちと同じくホムンクルス――魔法生物だ。
 Sランクの魔石を用いて作られた彼は、ジュリウスが認めるほどの力を持っているらしい。
 黒い髪に黒い瞳、肌も黄色人種っぽい色をしているけど、背丈は日本人の男性の平均を大きく上回っている。
 お相撲さんをイメージして作られたライデンというホムンクルスとはまた違った意味で大きい。
 筋肉質な体は、ドライアドが数人体に纏わりついていても平気っぽい。こっちのドライアドたちが小柄だから、というのもあるかもしれないけど、あの人数が纏わりついたら僕には支えきれない気がする。

「ドライアドたちとも仲良くやっているようで良かったよ」
「隣人とは仲良くした方がいいでござるからな」

 僕以外の人に纏わりついているのは新鮮だからじっと見ていたら、ひとりのドライアドがムサシから降りて、僕の体によじ登ってきた。
 それを合図に、周囲で様子を見ていたドライアドたちも僕の体によじ登ってきて――。

「ジュリウス……ムサシ………助けて…………」

 ムサシと同じ人数は背丈的にも無理だった。



 ムサシとジュリウスに数人のドライアドを剥がしてもらった後、ドライアド数人を抱っこと肩車をしながら世界樹フソーのお世話を終わらせた。
 ジュリウスにドライアドを引っ付けようとしてもすぐに離れて行ってしまうのは、やっぱり何かしら理由があるんだろう。
 ムサシと僕に共通していてジュリウスにはない物って何だろう?
 見た目が日本人っぽくないとか?
 でも、『離れ小島のダンジョン』に向かうために毎日ドライアドたちのテリトリーに入ってくる明には引っ付いて行かないしなぁ。むしろ、町の子たちと同じように超警戒されているし。
 うーん、と考え事をしながらせっせと魔道具を作っていく。
 世界樹フソーは安定しているため、消耗する魔力も他の世界樹と比べたら少ないから『身代わりのお守り』だけじゃなくて他の魔道具を作る余裕もあった。
 タカノリさんから依頼されている『加護無しの流星錘』や専用化した『鑑定眼鏡』も作った。
 作った物はムサシとムサシの真似をしているドライアドたちがアイテムバッグの中に入れてくれた。
 気配を限りなく消しているジュリウスはというと、周辺の警戒をしているはずだ。
 魔力がなくなってきたので食事をしよう、と世界樹の根元付近に建てられた建物の中に入ると、中にもドライアドたちがいて好き勝手過ごしていた。

「賑やかで楽しいでござるよ」

 普段、一人でこっちに留守居役をしてくれているムサシが何も問題ないというのならまあいいけど、レヴィさんたちを連れてこっちに来た時は一時的に出て行ってもらう事も考えないとな。
 清潔に保たれている廊下を進み、食堂の扉を開けると、中にいたドライアドたちの視線が集中した。
 彼女たちも食事はするようだ。テーブルの上にはたくさんの収穫物が並んでいる。

「お裾分けしてもらって助かっているでござる」
「食べきれないんじゃない?」
「そういう時は正直に言って、一緒に食べているでござるよ。主殿も一緒に食べるでござるか?」
「いや、エミリーたちが作ってくれたお昼ご飯があるから」

 席に着くと、ジュリウスが目の前にアイテムバッグから取り出した料理を並べてくれた。
 食前の挨拶を済ませて、ムサシやドライアドたちと机を囲んで食事をしたんだけど……なぜかいつの間にかデザートが増えていた。
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