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第22章 安全第一で生きていこう
473.事なかれ主義者はヒントを貰って察する事ができた
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昼間に眠りすぎたとしても、決まった時間に眠る事ができる『安眠カバー』があるし、最悪魔力切れで気絶するように眠れば何も問題ない。という事で、お昼寝をし過ぎた翌朝も時間通りにパチッと目が覚めた。
僕用のテントの中には誰もいない。一人用にしては大きい敷布団から這い出て、近くに置いておいた服に着替える。
今日は朝食の前にイルミンスールのお世話を済ませ、ご飯を食べている間のキラリーさんやジュリウスの報告で特に問題がなければシグニール大陸に戻る予定だから、普段着でいいはずだ。
着替え終わったところで、テントの外から声がかけられた。
「お目覚めでしょうか、マスター」
「早く出て来ないと入るよ、ご主人様」
ホムラとユキの声だ。服に変な所はないか確認した後、テントから出ると黒い髪を真っすぐに下ろしたホムラと、白い髪を短く切り揃えたユキが綺麗な姿勢で立って待っていた。
髪の色や肌の色だけではなく、無表情と表情豊かという正反対な二人だが、今の所、喧嘩する事なく過ごしている。作成者が同じだからか、それとも起動したのがホムラだからだろうか。単純に性格が違いすぎて逆に馬が合っているだけなのかもしれない。
「ホムラ、ユキ、おはよう」
「おはようございます、マスター」
「おはよう、ご主人様。今日もいい天気よ」
「そうなんだ。やっぱり世界樹周辺だから天気も安定しているのかな?」
「世界樹周辺それぞれの気候の記録は取ってないからわからないわ、ご主人様」
「天候の記録も取らせますか、マスター?」
「いや、別に必要ないよ」
疑問に思った程度だし、わざわざ何かをする必要はない。
大きなテントに敷かれたふわふわの絨毯の上を歩き、出入り口に向かうと外側から開かれた。
警備のエルフにお礼を言って、用意された靴に履き替え、食卓を囲んでいる皆に「おはよう」と挨拶をした後、世界樹の方に向かう。
今まで見たどの魔物よりも巨体だからつい目が行ってしまうけど、目を瞑っているドラゴンさんに対して恐怖心とかは無くなってしまった。
ドライアドたちがドラゴンの上に載って日向ぼっこをしているし、もしかしたら陽当たりが良くて気持ちいいのかもしれない。今度お願いしてみるのもありかな……?
そんな事を考えながら、今日のお世話を無事に終わらせた。
世界樹を見上げると、目視でも分かる高さの枝にも葉っぱが芽吹きつつある。元通りになるまでもうしばらくの辛抱だろう。
僕たちの食事の後に行われるドラゴンさんの食事を、紅茶を飲みながらのんびり眺めているとドラゴンさんとバチッと目が合った。
ドラゴンさんの口と比較すると小さく感じる肉塊を、ドラゴンさんは口の中に入れられるともぐもぐと咀嚼をしている。
『シズトは次、いつ来る予定なんじゃ?』
「特に決めてないけど、クレストラ大陸の世話もあるので一週間から二週間くらいは来る予定はないよ。向日葵ちゃんから、今なら二週間くらいならぎりぎり大丈夫って言われてるし、ちょっと遅れても枯れる事はないって聞いてるから」
『そうか……では、しばらくないと考えてしっかり味わっておくべきじゃのう』
いつもの倍くらいもぐもぐと咀嚼しているドラゴンさんは口を動かす事なく意思疎通ができる『念話』と呼ばれる魔法を使っている。以前、念話ができる魔道具を作った記憶があったけど、あれはまだアイテムバッグの肥やしになっているのかな。ちょっと暇だし探してみよう。
ジュリウスから差し出されたアイテムバッグの口の中に手を突っ込んでごそごそと中を漁っていると、ラオさんがジト目で見てきたけどよそ見をしてスルーする。
逸らした視線の先には、クッキーを食べているルウさんがいた。
視線が合うとルウさんはにこっと笑みを浮かべて首を傾げた。
「向こうに戻ったら何をするの?」
「とりあえずは魔道具の量産かなぁ。イルミンスール支店で売る用の魔道具はしばらく大丈夫だと思うけど、タカノリさん……というか知識神の教会の方と取引する魔道具は毎日作らないと数が足りないから。もし作りすぎて余っちゃったら街の子たち用に回せばいいし。まだまだ増えてるんだよね?」
「はい、マスター。魔道具や世界樹の素材の売買で得た利益をそのまま流用しています」
一カ所にお金が集まると良くないと聞いたことがあるからどんどん使わせているけど、今回のイルミンスールの件でたくさんの金銀財宝が手に入ってしまった。アイテムバッグの中の整理が面倒になるから、とりあえずアダマンタイト以外の物は宝物庫に放置してある。
「じゃあ、お姉ちゃんもシズトくんと一緒にいるわ!」
「今日は冒険者ギルドに行くからまた今度にしろ」
「ギルドに何か用事あるの?」
「いや、情報収集がてら、イザベラの様子を見に行くだけだ。特に問題はねぇだろうけど、面倒な冒険者が滞在していたり、ファマリーに向かってきていたりしたら対策が必要だろ?」
「……なるほど?」
二人で行く必要はあるのだろうか、と疑問に思っていたけどラオさんはパメラとシンシーラも連れて行くつもりらしい。声をかけられたシンシーラは「なるほどじゃん」と何かを察したようだったけど、パメラは「遊びたいから嫌デス!」と拒否した。
「お前、小遣いもうないんだろ? ついてきたら何か奢ってやるよ」
「んー……外縁区に行くデスか?」
「あ? まあ、行きたいならついて行ってもいいぞ」
「そうね、夕方までは街でのんびり散策しときましょう」
ルウさんもシンシーラと同じく何やら察したらしい。
察する事ができていないのは僕とパメラくらいだろうか。
ジュリウスに視線を向けると彼はただ一言「平等にしたいんでしょう」とだけ言った。
なるほど………?
僕用のテントの中には誰もいない。一人用にしては大きい敷布団から這い出て、近くに置いておいた服に着替える。
今日は朝食の前にイルミンスールのお世話を済ませ、ご飯を食べている間のキラリーさんやジュリウスの報告で特に問題がなければシグニール大陸に戻る予定だから、普段着でいいはずだ。
着替え終わったところで、テントの外から声がかけられた。
「お目覚めでしょうか、マスター」
「早く出て来ないと入るよ、ご主人様」
ホムラとユキの声だ。服に変な所はないか確認した後、テントから出ると黒い髪を真っすぐに下ろしたホムラと、白い髪を短く切り揃えたユキが綺麗な姿勢で立って待っていた。
髪の色や肌の色だけではなく、無表情と表情豊かという正反対な二人だが、今の所、喧嘩する事なく過ごしている。作成者が同じだからか、それとも起動したのがホムラだからだろうか。単純に性格が違いすぎて逆に馬が合っているだけなのかもしれない。
「ホムラ、ユキ、おはよう」
「おはようございます、マスター」
「おはよう、ご主人様。今日もいい天気よ」
「そうなんだ。やっぱり世界樹周辺だから天気も安定しているのかな?」
「世界樹周辺それぞれの気候の記録は取ってないからわからないわ、ご主人様」
「天候の記録も取らせますか、マスター?」
「いや、別に必要ないよ」
疑問に思った程度だし、わざわざ何かをする必要はない。
大きなテントに敷かれたふわふわの絨毯の上を歩き、出入り口に向かうと外側から開かれた。
警備のエルフにお礼を言って、用意された靴に履き替え、食卓を囲んでいる皆に「おはよう」と挨拶をした後、世界樹の方に向かう。
今まで見たどの魔物よりも巨体だからつい目が行ってしまうけど、目を瞑っているドラゴンさんに対して恐怖心とかは無くなってしまった。
ドライアドたちがドラゴンの上に載って日向ぼっこをしているし、もしかしたら陽当たりが良くて気持ちいいのかもしれない。今度お願いしてみるのもありかな……?
そんな事を考えながら、今日のお世話を無事に終わらせた。
世界樹を見上げると、目視でも分かる高さの枝にも葉っぱが芽吹きつつある。元通りになるまでもうしばらくの辛抱だろう。
僕たちの食事の後に行われるドラゴンさんの食事を、紅茶を飲みながらのんびり眺めているとドラゴンさんとバチッと目が合った。
ドラゴンさんの口と比較すると小さく感じる肉塊を、ドラゴンさんは口の中に入れられるともぐもぐと咀嚼をしている。
『シズトは次、いつ来る予定なんじゃ?』
「特に決めてないけど、クレストラ大陸の世話もあるので一週間から二週間くらいは来る予定はないよ。向日葵ちゃんから、今なら二週間くらいならぎりぎり大丈夫って言われてるし、ちょっと遅れても枯れる事はないって聞いてるから」
『そうか……では、しばらくないと考えてしっかり味わっておくべきじゃのう』
いつもの倍くらいもぐもぐと咀嚼しているドラゴンさんは口を動かす事なく意思疎通ができる『念話』と呼ばれる魔法を使っている。以前、念話ができる魔道具を作った記憶があったけど、あれはまだアイテムバッグの肥やしになっているのかな。ちょっと暇だし探してみよう。
ジュリウスから差し出されたアイテムバッグの口の中に手を突っ込んでごそごそと中を漁っていると、ラオさんがジト目で見てきたけどよそ見をしてスルーする。
逸らした視線の先には、クッキーを食べているルウさんがいた。
視線が合うとルウさんはにこっと笑みを浮かべて首を傾げた。
「向こうに戻ったら何をするの?」
「とりあえずは魔道具の量産かなぁ。イルミンスール支店で売る用の魔道具はしばらく大丈夫だと思うけど、タカノリさん……というか知識神の教会の方と取引する魔道具は毎日作らないと数が足りないから。もし作りすぎて余っちゃったら街の子たち用に回せばいいし。まだまだ増えてるんだよね?」
「はい、マスター。魔道具や世界樹の素材の売買で得た利益をそのまま流用しています」
一カ所にお金が集まると良くないと聞いたことがあるからどんどん使わせているけど、今回のイルミンスールの件でたくさんの金銀財宝が手に入ってしまった。アイテムバッグの中の整理が面倒になるから、とりあえずアダマンタイト以外の物は宝物庫に放置してある。
「じゃあ、お姉ちゃんもシズトくんと一緒にいるわ!」
「今日は冒険者ギルドに行くからまた今度にしろ」
「ギルドに何か用事あるの?」
「いや、情報収集がてら、イザベラの様子を見に行くだけだ。特に問題はねぇだろうけど、面倒な冒険者が滞在していたり、ファマリーに向かってきていたりしたら対策が必要だろ?」
「……なるほど?」
二人で行く必要はあるのだろうか、と疑問に思っていたけどラオさんはパメラとシンシーラも連れて行くつもりらしい。声をかけられたシンシーラは「なるほどじゃん」と何かを察したようだったけど、パメラは「遊びたいから嫌デス!」と拒否した。
「お前、小遣いもうないんだろ? ついてきたら何か奢ってやるよ」
「んー……外縁区に行くデスか?」
「あ? まあ、行きたいならついて行ってもいいぞ」
「そうね、夕方までは街でのんびり散策しときましょう」
ルウさんもシンシーラと同じく何やら察したらしい。
察する事ができていないのは僕とパメラくらいだろうか。
ジュリウスに視線を向けると彼はただ一言「平等にしたいんでしょう」とだけ言った。
なるほど………?
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