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第22章 安全第一で生きていこう
472.事なかれ主義者は眠りすぎた
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そこからさらに数日が過ぎた。
ホムラとユキは新しくできた魔道具店サイレンス・イルミンスール支店の出かける機会が増え、忙しなく働いている様だったけど、昨日の夜ご飯の際に新しく店員を雇ったと報告があった。
「これで放っておいても大丈夫です、マスター」
「店長として雇ったの?」
「いいえ、普通の店員として雇ったわ、ご主人様。流石に一カ月に一回は様子を見に行くつもりだけど、基本的には雇った店員たちで店を回してもらうわ」
店員はイルミンスールの住人から募り、ジュリウスとキラリーさんの厳正なる審査を経て、ホムラとユキの面接に通った一握りのエルフたちだけで構成されているそうだ。
今日一日丸投げしてみて問題が無かったら明日、ホムラもユキも僕と一緒にシグニール大陸に帰る予定だ。
留守番を任せる用にホムンクルスを新しく起動しても良かったけど、国が滅びているわけでもないし、周囲に攻め込まれているわけでもないからやめておいた。……ホムラに言われるがまま作り続けたからどんな子ができているか分からないし。
「冒険者ギルドに行くのは、今日はルウさんとパメラだっけ?」
「そうデス! 依頼が溜まっているみたいデスし、どんどん魔物やっつけるデスよ!」
「魔石集め、頑張ってくるわ!」
イルミンスールの冒険者ギルドでは納品依頼や街の外の魔物の討伐依頼が溜まっていて大変な状況のようだ。
ただ、魔物のランクはそこまで高くないという事で、連携の強化のための練習として、普段組む人とは違う人と組んで冒険をしていた。
昨日はラオさんとシンシーラが行っていたけど、二人とも特に何も言わなかったので問題なかったのだろう。
ただ、今日はルウさんとパメラだ。ルウさんは問題ないような気もするけど、パメラの方がすごく心配だ。
「ルウさんの言う事しっかり聞くんだよ?」
「分かってるデスよ! ランクが上の者に従うのデス!」
「数歩歩いたら忘れてそうじゃん……」
「パメラは飛んで移動するから忘れないデスよ」
「ほんとかなぁ……」
一抹の不安を覚えるけど、実戦に勝る練習はない、とラオさんに言われてしまうと口出しできないので、これ以上は何も言わないようにしよう。
ラオさんとシンシーラは今回は僕の護衛としてイルミンスールの根元に残る事になった。
この二人なら、やる事が終わったらのんびり過ごせそうだ。
朝食を済ませた後、街に向かう皆を見送り、世界樹のお世話をサクッと済ませた。
その後、魔道具作りも魔力切れギリギリまで粘った結果、倦怠感をすごく感じている。
ドライアドたちが気持ちよさそうに日向ぼっこをしているのを見て、僕も日当たりのいい場所でお昼寝をする事にした。
そう思ったらジュリウスが寝転がっても汚れないように地面に絨毯を敷いてくれた。靴を脱いで絨毯の上に立つと、ふわふわとした感触を足の裏に感じる。
「良い感じに眠れそう。ありがと、ジュリウス」
ジュリウスはアイテムバッグの中から新たに枕を取り出すと僕に差し出してきたので再び「ありがと」というと静かに頭を下げてから離れて行った。
ドライアドたちが何事だ? と寄ってきているので足の踏み場があるうちに寝転がっておく。
案の定、目をつぶって十分後くらいには僕の周囲にドライアドたちが集まって日向ぼっこタイムになっていた。
ただ、想定外だったのはラオさんとシンシーラの行動だった。
「……何してるの?」
「何って、膝枕じゃん。ダメじゃん?」
「いや、ダメじゃないけれど……」
目を瞑っていい感じに微睡んでいた時に誰かに頭を持ち上げられる感覚があったので目を覚ますと、僕の頭の下にはシンシーラの太ももがあった。
夫婦だからこのくらいはいいか、と思ったけど、シンシーラの尻尾はブンブン振られていて、ドライアドたちが迷惑そうにしていたので捕まえておく。
再び目を瞑って微睡んでいたけど、何やらまた頭を持ち上げられる感覚があったので目を開けると、今度はラオさんの太ももが僕の頭の下にあった。
バチッとラオさんと目が合う。
シンシーラにもしてもらったし、ラオさんにしてもらうのは別にいいんだけど、昼間にこういう事をしてくるとは思わなかったなぁ。ルウさんがいないからだろうか? そういえば夜もルウさんと一緒の時はいつもと違う感じがしたような気がする。
ラオさんは頬を赤く染めつつも膝枕を止めようとはしない。彼女は視線を外して別の所を眺めている様子だったけど、チラチラと僕の方を見てくる。
「………んだよ」
「いや、別に」
「ジロジロ見んな」
ラオさんの手の平が僕の両眼を塞いだ。
シンシーラはまあ、しそうだなと思ったけどラオさんも同じ事をするとは思わなかったなぁ、とか、二人とも膝枕をするためにわざわざ足の防具を外したのか、とかどうでもいい事を考えている間に再び微睡んできたので昼寝を続行した。
その後、がっつり夕方頃まで寝て過ごした僕は、帰ってきたルウさんに見られてルウさんの膝を借りる事になったのは言うまでもない事だった。
ホムラとユキは新しくできた魔道具店サイレンス・イルミンスール支店の出かける機会が増え、忙しなく働いている様だったけど、昨日の夜ご飯の際に新しく店員を雇ったと報告があった。
「これで放っておいても大丈夫です、マスター」
「店長として雇ったの?」
「いいえ、普通の店員として雇ったわ、ご主人様。流石に一カ月に一回は様子を見に行くつもりだけど、基本的には雇った店員たちで店を回してもらうわ」
店員はイルミンスールの住人から募り、ジュリウスとキラリーさんの厳正なる審査を経て、ホムラとユキの面接に通った一握りのエルフたちだけで構成されているそうだ。
今日一日丸投げしてみて問題が無かったら明日、ホムラもユキも僕と一緒にシグニール大陸に帰る予定だ。
留守番を任せる用にホムンクルスを新しく起動しても良かったけど、国が滅びているわけでもないし、周囲に攻め込まれているわけでもないからやめておいた。……ホムラに言われるがまま作り続けたからどんな子ができているか分からないし。
「冒険者ギルドに行くのは、今日はルウさんとパメラだっけ?」
「そうデス! 依頼が溜まっているみたいデスし、どんどん魔物やっつけるデスよ!」
「魔石集め、頑張ってくるわ!」
イルミンスールの冒険者ギルドでは納品依頼や街の外の魔物の討伐依頼が溜まっていて大変な状況のようだ。
ただ、魔物のランクはそこまで高くないという事で、連携の強化のための練習として、普段組む人とは違う人と組んで冒険をしていた。
昨日はラオさんとシンシーラが行っていたけど、二人とも特に何も言わなかったので問題なかったのだろう。
ただ、今日はルウさんとパメラだ。ルウさんは問題ないような気もするけど、パメラの方がすごく心配だ。
「ルウさんの言う事しっかり聞くんだよ?」
「分かってるデスよ! ランクが上の者に従うのデス!」
「数歩歩いたら忘れてそうじゃん……」
「パメラは飛んで移動するから忘れないデスよ」
「ほんとかなぁ……」
一抹の不安を覚えるけど、実戦に勝る練習はない、とラオさんに言われてしまうと口出しできないので、これ以上は何も言わないようにしよう。
ラオさんとシンシーラは今回は僕の護衛としてイルミンスールの根元に残る事になった。
この二人なら、やる事が終わったらのんびり過ごせそうだ。
朝食を済ませた後、街に向かう皆を見送り、世界樹のお世話をサクッと済ませた。
その後、魔道具作りも魔力切れギリギリまで粘った結果、倦怠感をすごく感じている。
ドライアドたちが気持ちよさそうに日向ぼっこをしているのを見て、僕も日当たりのいい場所でお昼寝をする事にした。
そう思ったらジュリウスが寝転がっても汚れないように地面に絨毯を敷いてくれた。靴を脱いで絨毯の上に立つと、ふわふわとした感触を足の裏に感じる。
「良い感じに眠れそう。ありがと、ジュリウス」
ジュリウスはアイテムバッグの中から新たに枕を取り出すと僕に差し出してきたので再び「ありがと」というと静かに頭を下げてから離れて行った。
ドライアドたちが何事だ? と寄ってきているので足の踏み場があるうちに寝転がっておく。
案の定、目をつぶって十分後くらいには僕の周囲にドライアドたちが集まって日向ぼっこタイムになっていた。
ただ、想定外だったのはラオさんとシンシーラの行動だった。
「……何してるの?」
「何って、膝枕じゃん。ダメじゃん?」
「いや、ダメじゃないけれど……」
目を瞑っていい感じに微睡んでいた時に誰かに頭を持ち上げられる感覚があったので目を覚ますと、僕の頭の下にはシンシーラの太ももがあった。
夫婦だからこのくらいはいいか、と思ったけど、シンシーラの尻尾はブンブン振られていて、ドライアドたちが迷惑そうにしていたので捕まえておく。
再び目を瞑って微睡んでいたけど、何やらまた頭を持ち上げられる感覚があったので目を開けると、今度はラオさんの太ももが僕の頭の下にあった。
バチッとラオさんと目が合う。
シンシーラにもしてもらったし、ラオさんにしてもらうのは別にいいんだけど、昼間にこういう事をしてくるとは思わなかったなぁ。ルウさんがいないからだろうか? そういえば夜もルウさんと一緒の時はいつもと違う感じがしたような気がする。
ラオさんは頬を赤く染めつつも膝枕を止めようとはしない。彼女は視線を外して別の所を眺めている様子だったけど、チラチラと僕の方を見てくる。
「………んだよ」
「いや、別に」
「ジロジロ見んな」
ラオさんの手の平が僕の両眼を塞いだ。
シンシーラはまあ、しそうだなと思ったけどラオさんも同じ事をするとは思わなかったなぁ、とか、二人とも膝枕をするためにわざわざ足の防具を外したのか、とかどうでもいい事を考えている間に再び微睡んできたので昼寝を続行した。
その後、がっつり夕方頃まで寝て過ごした僕は、帰ってきたルウさんに見られてルウさんの膝を借りる事になったのは言うまでもない事だった。
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