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第22章 安全第一で生きていこう
458.事なかれ主義者は会談する事にした
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イルミンスールで初めての夜を過ごした翌朝。
安眠カバー付きの枕のおかげで今日もいつも通りの時間にバッチリ目が覚めた。
テントで寝泊まり、と聞いて大丈夫か不安だったけど、幾重にも敷かれたふかふかの敷物の上に布団を敷いたので特に問題はなかった。
着替えを済ませて自室と化している小さなテントから出ると、ジュリウスが既にテントの前で待っていた。
「何か変わった事は?」
「特に何もありませんでした。エンシェントツリードラゴンも、この地のドライアドたちも大人しく寝ています。ああ、ドライアドたちは日の出とともに既に起きて活動は始めていますが、連れてきたドライアドとやり取りをしているようでした」
「喧嘩にはなってない?」
「問題ないかと」
じゃあいいか。
青バラちゃんは気が済んだら向こうに帰るって言ってたし、放っておいても大丈夫だろう。
……っていうか、大陸間を渡る事ができる精霊の道ってチートじゃね?
クーが寝ているテントまで出迎えに行き、背中に負ぶさってきたクーを背負って外に出ると、既に皆揃っていた。
「とりあえず、朝ごはん食べようか」
「エミリーちゃんがすでに準備してくれていると思うわ」
「早速並べるじゃん」
ルウさんとシンシーラが昨夜も使った机の上に料理を並べていく。
パメラは手伝っているふりをしつつ、つまみ食いをしていた。注意する者がいないから調子に乗っていろいろつまんでいる。
僕たちについて来たジュリーニやジュリエッタさんなどの世界樹の使徒の面々は周辺の警戒をしつつ、グリルで大きな肉塊を焼いてはドラゴンに与えていた。万が一の時のために友好関係を築いておきたいらしい。
『ふむ。………………塩が一番美味だな』
大きな肉塊のはずなのに、ドラゴンの口の中に入ると小さく感じる不思議。
朝から分厚い肉を食べる気は湧かなかったので、僕たちはエミリーとジューンさんが用意してくれたであろう朝食に舌鼓を打った。
「今日はどうするつもりなんだ?」
すぐに自分の分の食事を終えてしまったラオさんが、僕の方を見て問いかけてきた。
今日も魔物の素材を利用して作ったであろう黒い防具を身に着け、拳にはグローブが嵌められていた。
「そうだね。世界樹の世話を済ませたら特にやる事もないしな……」
「一つ、よろしいでしょうか?」
考え込んでいる時に、控えめに話しかけてきたのはイルミンスールのエルフであるキラリーさんだ。
彼女は一通の手紙を僕に差し出してきたが、それを受け取ったのはジュリウスだ。
何やら封筒を確認した彼は、問題ないと判断したようで僕の方を見た。
「確認しちゃっていいよ」
「かしこまりました」
「差出人は誰だったの?」
ジュリウスが手紙を読んでいる間にキラリーさんに問いかけると、彼女は「知の勇者、タカノリ様です」と答えた。
勇者からの手紙か。面倒事な予感しかしないな。
僕の嫌そうな表情を見て慌てた様子のキラリーさんだったけど、ラオさんが「気にすんな」と言った後は落ち着いた様子で僕をジッと見てくる。
手紙を読み終えたであろうジュリウスに視線を向けると、彼は話し始めた。
「一度ご挨拶をしたい、という事でした」
「それだけで終わる気がしないなぁ」
「街の方にはまだ邪神の信奉者が潜んでいる可能性があります。その事を理由に、断るのも可能だと思います」
「なるほど?」
勇者と会うため、って言う理由がなくても街に行きたくないかもしれない。
何をするにしても、まずは周辺の安全確保が第一だ。
「邪神の信奉者の件については、知の勇者様が協力してくださっているのですが、どうしても機動力に欠けるので見つける前に逃げられてしまっているのだと思います。街のエルフたちは未だに呪われる時があるので、少なくとも一人は潜んでいると思うのですが……」
キラリーさんの様子からしてうまくいっていないのだろう。
「人海戦術をすればいいんじゃない?」
提案してみたけど、彼女はゆっくりと首を横に振った。
「邪神の加護を授かっているかどうか見極める事ができる知の勇者様は、一人しかいらっしゃってません。街のエルフたちも疑心暗鬼の状態で協力をするつもりもないようです。シズト様から協力するように伝えて欲しい、というのが話の内容かもしれません」
なるほどなぁ。世界樹を育てる事ができるから、エルフたちからしてみれば僕が世界樹の使徒……つまり王様になるから、その王様の命令だったら言う事を聞かせられるんじゃないかって事か。
そうすれば一カ所に集まるように指示を出す事だってできるし、効率よく探す事もできるかも……って感じかな。
ただ、そんな事をしなくてもやっぱり人海戦術でいいような気もする。
「ねぇ、ジュリウス」
「なんでしょうか」
「『鑑定眼鏡』を使って邪神の信奉者を炙り出したら知の勇者様とやらに睨まれるかな? アイデンティティを奪われた、的な」
「何とも言えませんね。知識の神を祀っている教会からは睨まれる可能性はありますが、現場で仕事をしている鑑定の加護持ちには感謝されるかもしれません。邪神の信奉者を探すという事は、それだけ危険が伴う事ですから」
「事前に聞いたらどうかしら? 丁度お呼ばれしてるんでしょう?」
「それが無難だろうな」
確かにこっちが勝手にこうだろう、と思ってするよりはルウさんの言う通りお伺いを立てた方が面倒事にはなり辛いだろう。
ただ、今代の勇者って今の所あんまりいい印象がないんだよなぁ。
知の勇者であるタカノリさんが友好的な人である事を祈ろう。
安眠カバー付きの枕のおかげで今日もいつも通りの時間にバッチリ目が覚めた。
テントで寝泊まり、と聞いて大丈夫か不安だったけど、幾重にも敷かれたふかふかの敷物の上に布団を敷いたので特に問題はなかった。
着替えを済ませて自室と化している小さなテントから出ると、ジュリウスが既にテントの前で待っていた。
「何か変わった事は?」
「特に何もありませんでした。エンシェントツリードラゴンも、この地のドライアドたちも大人しく寝ています。ああ、ドライアドたちは日の出とともに既に起きて活動は始めていますが、連れてきたドライアドとやり取りをしているようでした」
「喧嘩にはなってない?」
「問題ないかと」
じゃあいいか。
青バラちゃんは気が済んだら向こうに帰るって言ってたし、放っておいても大丈夫だろう。
……っていうか、大陸間を渡る事ができる精霊の道ってチートじゃね?
クーが寝ているテントまで出迎えに行き、背中に負ぶさってきたクーを背負って外に出ると、既に皆揃っていた。
「とりあえず、朝ごはん食べようか」
「エミリーちゃんがすでに準備してくれていると思うわ」
「早速並べるじゃん」
ルウさんとシンシーラが昨夜も使った机の上に料理を並べていく。
パメラは手伝っているふりをしつつ、つまみ食いをしていた。注意する者がいないから調子に乗っていろいろつまんでいる。
僕たちについて来たジュリーニやジュリエッタさんなどの世界樹の使徒の面々は周辺の警戒をしつつ、グリルで大きな肉塊を焼いてはドラゴンに与えていた。万が一の時のために友好関係を築いておきたいらしい。
『ふむ。………………塩が一番美味だな』
大きな肉塊のはずなのに、ドラゴンの口の中に入ると小さく感じる不思議。
朝から分厚い肉を食べる気は湧かなかったので、僕たちはエミリーとジューンさんが用意してくれたであろう朝食に舌鼓を打った。
「今日はどうするつもりなんだ?」
すぐに自分の分の食事を終えてしまったラオさんが、僕の方を見て問いかけてきた。
今日も魔物の素材を利用して作ったであろう黒い防具を身に着け、拳にはグローブが嵌められていた。
「そうだね。世界樹の世話を済ませたら特にやる事もないしな……」
「一つ、よろしいでしょうか?」
考え込んでいる時に、控えめに話しかけてきたのはイルミンスールのエルフであるキラリーさんだ。
彼女は一通の手紙を僕に差し出してきたが、それを受け取ったのはジュリウスだ。
何やら封筒を確認した彼は、問題ないと判断したようで僕の方を見た。
「確認しちゃっていいよ」
「かしこまりました」
「差出人は誰だったの?」
ジュリウスが手紙を読んでいる間にキラリーさんに問いかけると、彼女は「知の勇者、タカノリ様です」と答えた。
勇者からの手紙か。面倒事な予感しかしないな。
僕の嫌そうな表情を見て慌てた様子のキラリーさんだったけど、ラオさんが「気にすんな」と言った後は落ち着いた様子で僕をジッと見てくる。
手紙を読み終えたであろうジュリウスに視線を向けると、彼は話し始めた。
「一度ご挨拶をしたい、という事でした」
「それだけで終わる気がしないなぁ」
「街の方にはまだ邪神の信奉者が潜んでいる可能性があります。その事を理由に、断るのも可能だと思います」
「なるほど?」
勇者と会うため、って言う理由がなくても街に行きたくないかもしれない。
何をするにしても、まずは周辺の安全確保が第一だ。
「邪神の信奉者の件については、知の勇者様が協力してくださっているのですが、どうしても機動力に欠けるので見つける前に逃げられてしまっているのだと思います。街のエルフたちは未だに呪われる時があるので、少なくとも一人は潜んでいると思うのですが……」
キラリーさんの様子からしてうまくいっていないのだろう。
「人海戦術をすればいいんじゃない?」
提案してみたけど、彼女はゆっくりと首を横に振った。
「邪神の加護を授かっているかどうか見極める事ができる知の勇者様は、一人しかいらっしゃってません。街のエルフたちも疑心暗鬼の状態で協力をするつもりもないようです。シズト様から協力するように伝えて欲しい、というのが話の内容かもしれません」
なるほどなぁ。世界樹を育てる事ができるから、エルフたちからしてみれば僕が世界樹の使徒……つまり王様になるから、その王様の命令だったら言う事を聞かせられるんじゃないかって事か。
そうすれば一カ所に集まるように指示を出す事だってできるし、効率よく探す事もできるかも……って感じかな。
ただ、そんな事をしなくてもやっぱり人海戦術でいいような気もする。
「ねぇ、ジュリウス」
「なんでしょうか」
「『鑑定眼鏡』を使って邪神の信奉者を炙り出したら知の勇者様とやらに睨まれるかな? アイデンティティを奪われた、的な」
「何とも言えませんね。知識の神を祀っている教会からは睨まれる可能性はありますが、現場で仕事をしている鑑定の加護持ちには感謝されるかもしれません。邪神の信奉者を探すという事は、それだけ危険が伴う事ですから」
「事前に聞いたらどうかしら? 丁度お呼ばれしてるんでしょう?」
「それが無難だろうな」
確かにこっちが勝手にこうだろう、と思ってするよりはルウさんの言う通りお伺いを立てた方が面倒事にはなり辛いだろう。
ただ、今代の勇者って今の所あんまりいい印象がないんだよなぁ。
知の勇者であるタカノリさんが友好的な人である事を祈ろう。
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