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第22章 安全第一で生きていこう
457.事なかれ主義者は改名させたい
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おっかなびっくり話しかけると、ドラゴンはのんびりと返事をした。
フェンリルと同じく人語を理解し、念話で意思を伝えてくるタイプの魔物だった。
『好きにするといい。儂はここにいるだけだ』
「祠とかも建てたいんですけど……」
『回答は変わらん。儂がいるスペースさえあればそれでいい』
なるほど。これはあれだ。僕たちみたいなちっぽけな存在が周りで何をしていようと気にしない感じのアレだ。
ドライアドたちも日向ぼっこゾーンとして活用しているし、割と寛容なのかもしれない。
っていうか、寛容じゃないと、フリーダムなドライアドたちと一緒に暮らすのは無理なのかも?
フェンリルも魔物にしては割と周りで何が起ころうと知った事じゃないって感じで放置してる事が多いし。
『お互い、譲り合って生活できるならそれに越した事はない』
そう言ったっきり、目を瞑って寝息を立て始めたドラゴンは置いておいて、テントの設営が始まった。
ついて来ていた世界樹の番人たちが慣れた様子でテキパキと魔法を使いながら設営をしていく。どうやらこんな時もあるかもしれない、と練習をしていたらしい。
一際大きなテントは僕専用という事らしい。その近くには護衛の面々用のテントが設営されていた。
世界樹の番人たちは複数人で一つを使うみたいだ。ぶっちゃけあんなに大きくなくていいから、あの大きなテントを皆で使えばいいのに、なんて思わなくもない。
ジュリウスに促されて、出来上がったテントの中に入る。靴は脱いで、床部分に敷き詰められたふかふかの敷物の上を歩く。
「テントの中にテントがある」
「シズト様は大部屋よりもこういう狭いお部屋をお好みのようでしたので準備させました」
「流石ジュリウス。分かってるじゃん!」
「お兄ちゃん、クーはどこで寝ればいいの?」
ぺたぺたとテント内を散策していたクーが戻ってきて、首を傾げて聞いてきたけど、傾げたいのは僕の方だ。
「いや、クーも別のテントで寝るんじゃないの?」
「何言ってるの。一緒のテントで寝泊まりするに決まってるじゃん」
何当たり前のことを言ってんの? と心底不思議そうに首を傾げられた。
ジュリウスに視線を向けると、彼は分かっております、と言った感じでゆっくりと頷いた。
「そう仰るかと思いまして、クー様用のテントも準備しております」
「なんで!?」
「シズト様の安全を考えた際に、最適解でしたので」
「さすがウスウス! 分かってるじゃーん」
「お褒めに預かり光栄です」
頭を下げたジュリウスの頭を撫でているクーは満足そうな顔だ。
それを見ながら、まあ、クーだけならいいかな? と考えていたらそれを見たジュリウスが「防音の魔道具を設置してありますから、音漏れの心配はございませんよ」と言ってきた。
「心配しているのはそこじゃない!」
夕食はテントの外で食べる事になった。
日が暮れてしまったので辺りは暗く、星が綺麗に瞬いていた。
即席で机と椅子を【加工】して作って、その上にシグニール大陸に残してきたエミリーとジューンさんが作ったであろう料理を並べていく。
中身を共有しているアイテムバッグは時間を止める機能はないけど、どうやらシンシーラが食事の大まかな時間を伝えておいてくれたようだ。出来立てほやほやでとても美味しかった。
サイコロステーキの匂いに釣られてか、ドラゴンがにゅっとこちらに顔を近づけて来た時はびっくりしたけど、流石に僕たちが食べている食事はドラゴンの巨体には小さすぎるので、なけなしの魔力を使って、大きなグリルっぽい物をサクッと作り、イルミンスールのエルフたちにお肉を取ってきてもらった。
僕たちの食事が終わる頃に用意された大量のお肉をエルフたちに分担してもらって焼き、献上したらドラゴンはすべてぺろりと平らげた。
『いろいろな味があるのだな。生でもよかったが、これはこれで美味だ』
草食っぽい見た目をしているけど、がっつりお肉も食べる事ができるようだ。
ドラゴンが「礼だ」と呟くと、僕たちの机の上にいくつか謎の木の実っぽい物が置かれた。
僕の頭よりも大きなそれは、所々刺々しているような見た目の真っ赤な果実だ。
「これって食べられるの?」
『儂らは食べる。お前たちは……食べる事ができるんじゃないか? 同族の者たちは、これを狙って愚かな人族共が戦いを挑みに来た事があったと言っておったからな』
「何て名前の果物なの? っていうかこれ、果物だよね?」
『果物かどうかも知らんし、名前も知らん。儂の背に生っていた物をとっただけだ』
ドラゴンの言葉に周囲にいたイルミンスールのエルフたちがざわっとした。
口々に「ドラゴンフルーツだ……」なんてことを言っている。
いや、あんまり見た事も食べた事もないけど、これはドラゴンフルーツ的な見た目じゃないと思うんだけど……また過去の勇者の仕業か?
キラリーさん曰く、食べる事ができるらしいので、とりあえず一個をカットしてもらって食べて見る事にした。
皮は固くて食べる事は出来ないけど、中身はスプーンですくって普通に食べれた。とっても甘くておいしい。これを求めてドラゴンに挑むのも納得だ。
ただ、大きさが大きさだったので、食べきれなかった僕の分は、ラオさんとルウさんに食べてもらった。
……残ったドラゴンフルーツは今日中に食べ切るのは無理だ。ラオさんとルウさんはまだまだ食べる事ができそうだけど、二人とも僕が食べないなら食べない、という事だったので、とりあえずアイテムバッグの中に入れておいた。
フェンリルと同じく人語を理解し、念話で意思を伝えてくるタイプの魔物だった。
『好きにするといい。儂はここにいるだけだ』
「祠とかも建てたいんですけど……」
『回答は変わらん。儂がいるスペースさえあればそれでいい』
なるほど。これはあれだ。僕たちみたいなちっぽけな存在が周りで何をしていようと気にしない感じのアレだ。
ドライアドたちも日向ぼっこゾーンとして活用しているし、割と寛容なのかもしれない。
っていうか、寛容じゃないと、フリーダムなドライアドたちと一緒に暮らすのは無理なのかも?
フェンリルも魔物にしては割と周りで何が起ころうと知った事じゃないって感じで放置してる事が多いし。
『お互い、譲り合って生活できるならそれに越した事はない』
そう言ったっきり、目を瞑って寝息を立て始めたドラゴンは置いておいて、テントの設営が始まった。
ついて来ていた世界樹の番人たちが慣れた様子でテキパキと魔法を使いながら設営をしていく。どうやらこんな時もあるかもしれない、と練習をしていたらしい。
一際大きなテントは僕専用という事らしい。その近くには護衛の面々用のテントが設営されていた。
世界樹の番人たちは複数人で一つを使うみたいだ。ぶっちゃけあんなに大きくなくていいから、あの大きなテントを皆で使えばいいのに、なんて思わなくもない。
ジュリウスに促されて、出来上がったテントの中に入る。靴は脱いで、床部分に敷き詰められたふかふかの敷物の上を歩く。
「テントの中にテントがある」
「シズト様は大部屋よりもこういう狭いお部屋をお好みのようでしたので準備させました」
「流石ジュリウス。分かってるじゃん!」
「お兄ちゃん、クーはどこで寝ればいいの?」
ぺたぺたとテント内を散策していたクーが戻ってきて、首を傾げて聞いてきたけど、傾げたいのは僕の方だ。
「いや、クーも別のテントで寝るんじゃないの?」
「何言ってるの。一緒のテントで寝泊まりするに決まってるじゃん」
何当たり前のことを言ってんの? と心底不思議そうに首を傾げられた。
ジュリウスに視線を向けると、彼は分かっております、と言った感じでゆっくりと頷いた。
「そう仰るかと思いまして、クー様用のテントも準備しております」
「なんで!?」
「シズト様の安全を考えた際に、最適解でしたので」
「さすがウスウス! 分かってるじゃーん」
「お褒めに預かり光栄です」
頭を下げたジュリウスの頭を撫でているクーは満足そうな顔だ。
それを見ながら、まあ、クーだけならいいかな? と考えていたらそれを見たジュリウスが「防音の魔道具を設置してありますから、音漏れの心配はございませんよ」と言ってきた。
「心配しているのはそこじゃない!」
夕食はテントの外で食べる事になった。
日が暮れてしまったので辺りは暗く、星が綺麗に瞬いていた。
即席で机と椅子を【加工】して作って、その上にシグニール大陸に残してきたエミリーとジューンさんが作ったであろう料理を並べていく。
中身を共有しているアイテムバッグは時間を止める機能はないけど、どうやらシンシーラが食事の大まかな時間を伝えておいてくれたようだ。出来立てほやほやでとても美味しかった。
サイコロステーキの匂いに釣られてか、ドラゴンがにゅっとこちらに顔を近づけて来た時はびっくりしたけど、流石に僕たちが食べている食事はドラゴンの巨体には小さすぎるので、なけなしの魔力を使って、大きなグリルっぽい物をサクッと作り、イルミンスールのエルフたちにお肉を取ってきてもらった。
僕たちの食事が終わる頃に用意された大量のお肉をエルフたちに分担してもらって焼き、献上したらドラゴンはすべてぺろりと平らげた。
『いろいろな味があるのだな。生でもよかったが、これはこれで美味だ』
草食っぽい見た目をしているけど、がっつりお肉も食べる事ができるようだ。
ドラゴンが「礼だ」と呟くと、僕たちの机の上にいくつか謎の木の実っぽい物が置かれた。
僕の頭よりも大きなそれは、所々刺々しているような見た目の真っ赤な果実だ。
「これって食べられるの?」
『儂らは食べる。お前たちは……食べる事ができるんじゃないか? 同族の者たちは、これを狙って愚かな人族共が戦いを挑みに来た事があったと言っておったからな』
「何て名前の果物なの? っていうかこれ、果物だよね?」
『果物かどうかも知らんし、名前も知らん。儂の背に生っていた物をとっただけだ』
ドラゴンの言葉に周囲にいたイルミンスールのエルフたちがざわっとした。
口々に「ドラゴンフルーツだ……」なんてことを言っている。
いや、あんまり見た事も食べた事もないけど、これはドラゴンフルーツ的な見た目じゃないと思うんだけど……また過去の勇者の仕業か?
キラリーさん曰く、食べる事ができるらしいので、とりあえず一個をカットしてもらって食べて見る事にした。
皮は固くて食べる事は出来ないけど、中身はスプーンですくって普通に食べれた。とっても甘くておいしい。これを求めてドラゴンに挑むのも納得だ。
ただ、大きさが大きさだったので、食べきれなかった僕の分は、ラオさんとルウさんに食べてもらった。
……残ったドラゴンフルーツは今日中に食べ切るのは無理だ。ラオさんとルウさんはまだまだ食べる事ができそうだけど、二人とも僕が食べないなら食べない、という事だったので、とりあえずアイテムバッグの中に入れておいた。
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