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第22章 安全第一で生きていこう

幕間の物語220.ちびっこ神様ズは吟味した

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 加工の神プロスは悩んでいた。
 友達の二柱は、既に転移者の子どもに加護を授けている。
 だが、プロスはまだ授けるほどの神力を貯め込む事が出来ていない。
 日々、節約しながら一緒に生活していたのだが、この差は何なのか。
 プロスは考えた。考えた結果、当たり前の事に気付いた。
 信仰が足りてない。
 いつもぼーっとしている生育の神ファマには、熱狂的に信仰しているエルフがいる。また、世界樹の素材を求める者たちも、ファマに祈りを捧げる事が増えてきた。それを商う商人たちもそうだ。
 いつも仲良くお喋りをしている付与の神エントには、ファマのように熱狂的に信仰している者はいない。ただ、浅く広く信仰が広まっている。魔道具店ができればできるほど、魔道具の利便性が広まり、付与の神であるエントの名前も同じく伝わっている。
 自分はどうだろうか、とプロスは意識を集中してみる。
 ドワーフたちは祈りを捧げてくれるが、彼らには元々信仰している鍛冶の神がいる。その神と比べると、信仰は少ないだろう、とプロスは感じていた。
 他にもシズトが作った町で暮らしている奴隷たちや、シズトと結婚した者たちも祈りを捧げてくれているが、それは等しく三柱に分配されている。

「あと少しだけ待てば大丈夫だよ……?」
「でも、その間に生まれちゃうかもしれないでしょ!」
「だ、大丈夫なんだな。ひ、ヒト種はそこまで生まれるの早くないんだな」
「でも、生まれる前に他の神が加護を授けちゃうかもしれないでしょ!」
「と、とりあえずシズトに事情を説明するんだな? え、エントが加護を授けた事はもう伝えたからしばらく必要ないと思っていたけど、少しだけ伝える程度ならできると思うんだな」
「そうだね……? とにかく、プロスちゃんには節約してもらって、代わりに私たちの力で様子を見る……?」
「し、仕方がないんだなぁ」

 早速、とたくさんの荷物が詰め込まれた籠の中から水晶玉を取り出すと、ファマはそれに手を翳してシズトの様子を映した。周りで遊んでいた小さな神々が集まってくるが、三柱は特に気にしない。
 水晶を覗き込むと、シズトたちはどうやら朝ご飯を食べ終えて、のんびりと雑談をしている様だった。

「お、王女様は今日も無事みたいなんだな。あ、安心なんだな」
「モニカちゃんもいつも通りみたいだね……? プロスちゃんは、三人の内の誰に加護を授けるか決めてるの……?」
「……まだ。ファマたちみたいに、出来た子に授けるつもりだったから」
「こ、この機会にゆっくり考えてもいいと思うんだな」
「シズトくんにもお願いしやすくなるんじゃないかな……?」
「…………確かに。そうだよね!」

 拗ねていたプロスだったが、気を取り直すのは早かった。
 水晶玉をジッと覗き込む。その様子を見たファマとエントがホッと胸を撫で下ろした。

「ファマ、あの小さい人映して!」
「わ、分かったんだな」
「モリモリ食べてるね……?」
「ほ、他の神様の加護を二つも授かっているから競争率は高いかもしれないんだな」

 水晶玉に映されたのはドーラという小柄な少女だった。
 動きやすいように短く切り揃えられた金色の髪に、いつも眠たそうな印象を与える青い目が特徴的な少女だ。

「ど、ドワーフ受けは良さそうなんだな。こ、子どもが生まれても女の子だったらドワーフと付き合う可能性が一番高いかもしれないんだな」
「そうなんだよ。だから、この子が一番だったら一番いいんだけど、この子からはいろいろな神様との縁を感じるから……」
「偉い人の血縁者なんだろうね……? 小柄な子だったら、パメラちゃんはどうかな……?」
「あの子はエントの教会で結婚式挙げたでしょ?」
「私は気にしないよ……?」
「プロスが気にするのー!」

 他の神を信仰している者の子どもに、加護を授ける神は確かにいる。
 特に、神が気まぐれに加護を授けたらたまたま他の神を信仰している家系だった、というのはよくある事だった。
 プロスたちが加護を授けたシズトの周りにいる女性だと、レヴィアがそうだ。
 ただ、家族が柔軟に受け入れるような家庭だったら問題ないのだが、そうでない家庭もある。
 他の神の加護を授かっている事を公にせず、生涯隠して生きる者も一定数いた。
 そういうデメリットはシズトたちの家庭には起こり得ない事だろうが、信者たちからの評判は悪くなってしまうかもしれない。
 自身の教会で結婚式を挙げた花嫁がいるのに、他の教会で式を挙げた者の子どもに加護を授けたとなれば、信仰していても意味がないのでは? という風に考えるヒト種も出てくるだろう。
 だからプロスはそれだけは避けようと考えていた。例え、式を挙げた五人の内、二人が子どもができない体だったとしても。

「とりあえず事情を説明して三人には待ってもらう……?」
「お、オイラは水晶で神力を使っちゃったから、エントから伝えて欲しいんだな……」
「いいよ……?」

 そんな話を二人がしていたが、プロスは集中して水晶を覗き込んでいた。
 その周囲では、まだ体が小さい他の神たちも覗き込んでいたのだが、いつもの事だったので三柱とも気にせずに放っておいて、授けるならだれの子どもが良いのか話し合うのだった。
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