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第22章 安全第一で生きていこう
幕間の物語219.没落令嬢は言われてから気付いた
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シズトの配偶者であるモニカの朝は早い。
屋敷の二階に用意された専用の部屋で眠っていた彼女は、朝日が昇る前には目を覚まして身支度をし始める。
メイド服に袖を通し、彼女の旦那様が用意した化粧台に腰を下ろすと、軽く化粧をする。
それを終えると、今度は自分の背よりも大きな姿見の前に立ち、いろいろな角度から自分の姿の確認を始めた。
「問題ないですね」
満足そうに呟いたモニカは、部屋を後にした。
階段を下りて正面玄関から外に出ると、地面に体を埋めて眠っているドライアドたちの頭を踏んでしまわないように気を付けながら畑と畑の間の道を歩いて行く。
「にんげんさん?」
「知ってる人間さん?」
「モニカです」
「知ってる人間さんな気がするよ?」
「でもなんか変じゃない?」
「そうかなぁ」
「眠いなぁ」
「だから変な気がするのかも?」
夜の警備をしていたドライアドがふらふらと近づいて来て、モニカを囲った。
いつもの事だからとモニカはじっと時が過ぎ去るのを待つ。
ドライアドたちは何がそんなに気になるのか、モニカの前で「気のせい?」「気のせい!」と話をしていた。
みんなとても眠たそうにしていて、数名まぶたがくっついてしまっている。大きな欠伸をする子もいるし、目をごしごしと擦っている子もいた。
「そろそろよろしいでしょうか?」
「いいよー」
「なんか変だけどー」
「大丈夫じゃない?」
どうやらドライアドたちは変な気がするけどまあいいや、と思ったようだ。
モニカの周りに集まっていたドライアドたちが離れていく。
その様子をフェンリルが起き上がって見ていたが、興味が失せたのかまた丸まって眠り始めた。
モニカは何だかチェックが長かったな、と不思議に思いつつもするべき事を思い出して歩き始めた。
向かった先は、世界樹の根元付近に建てられた祠だ。
格子状で中が見える観音開きの扉を開くと、モニカの夫であるシズトに加護を授けた三柱の像が鎮座している。
中央には生育の神ファマの神像が置かれ、その両隣に付与の神エントと、加工の神プロスの神像がそれぞれある。
神像は魔道具によって後ろから照らされていて、後光が差しているように見えなくもない。
モニカはポケットの中に入れておいた魔石を取り出すと、一言「失礼します」と呟いて、祠の中に手を突っ込んだ。そして、神像の少し後ろの目立たない場所にある魔石を嵌め込む場所まで手を伸ばすと、嵌っていた魔石を抜いて、新しい魔石をそこに入れた。
その後、周囲の掃除と祠に汚れがついていないか確認した後、神像の正面に立ち、手を合わせて目を瞑った。
普段は日々の生活の感謝と、今後の平穏な日常を願っていた彼女だったが、レヴィアが懐妊してからは何事もなく無事に出産ができるように、と祈っていた。
その祈りが通じているのかは不明だが、今の所レヴィアは健康そのものだ。魔道具を使った農作業が捗りすぎて、毎日楽しそうに暮らしている。貴族対応をしなくていいから肩の荷が下りたのかもしれない。
「元々、社交的な方ではなかったですもんね」
社交界に極力出ず、部屋に閉じこもっていた王女様とは思えないほど彼女は変わった。
モニカは元々は貴族令嬢だったので、実際に見た事はなかったが、第一王女についての噂は聞いた事があった。その変化に驚きつつも穏やかに暮らせるように良かったとも思っていた。
「この幸せな日々が続きますように」
いつもの最後の言葉を呟くと、彼女は立ち上がる。
普段は寄って来ないドライアドたちが、なぜか自分の周りにわらわらと集まってきていたので「どうかしましたか?」と尋ねるがドライアドたちは首を傾げるだけで要領を得なかった。眠たそうで反応も鈍い。
「特に用がなければこれで失礼します。仕事がありますから」
ドライアドたちを踏んづけてしまわないように気を付けながら屋敷に続く道を歩いて行く。
その後をふらふらしながらドライアドたちもついて来るが、害はないのでまあ良いだろう、とモニカは気にしなかった。
そんな彼女たちの様子をフェンリルがまた見ていたのだが、モニカと視線が合うと何も言わずに丸まってしまった。
屋敷周辺の点検と、屋内の設備の確認を済ませた彼女は、日の出の時刻になると厨房に向かった。
既に別館で寝泊まりしていた奴隷の少年少女たちが狐人族のエミリーの指示のもと、忙しなく働いている。
「おはようございます」
「「「「おはようございます」」」」
モニカが挨拶をすると、少年少女たちは手を止めて挨拶を返すと、再び作業に戻っていく。
エミリーはチラッとモニカを見たが、すぐに自分の手元に視線を戻した。
「食事の準備はできているわ」
「ありがとうございます」
そう言いながらモニカは厨房に入り、賄い飯を食べるために用意された小さなテーブルへと向かった。
椅子に腰かけて食前の挨拶を済ませると、手早く食事を進めていく。
エミリーは作業が一段落したところでいつものようにモニカと雑談をするために近づいたのだが、ふと足を止めてモニカを凝視した。
今日はよく見られる日ですね、なんてどうでもいい事を考えながら黙々と食事を続けていたモニカだったが、エミリーの言葉で手が止まる。
「モニカ、妊娠してない?」
「…………え?」
「いや、私程度の魔力探知じゃ信用できないわ。ちょっとアンタたち、モニカをしっかり見張ってなさい! 他の人を呼んでくるわ!」
エミリーが指示を出すと朝食の準備をしていた子たちが手を止め、一斉にモニカの顔を見た。それから、一拍遅れてお腹へと視線が向かう。
モニカもその視線を追って自身のお腹を見たのだが、そういえば、ドライアドたちの視線の先はお腹辺りだったな、なんてどうでもいい事を思い出していた。
屋敷の二階に用意された専用の部屋で眠っていた彼女は、朝日が昇る前には目を覚まして身支度をし始める。
メイド服に袖を通し、彼女の旦那様が用意した化粧台に腰を下ろすと、軽く化粧をする。
それを終えると、今度は自分の背よりも大きな姿見の前に立ち、いろいろな角度から自分の姿の確認を始めた。
「問題ないですね」
満足そうに呟いたモニカは、部屋を後にした。
階段を下りて正面玄関から外に出ると、地面に体を埋めて眠っているドライアドたちの頭を踏んでしまわないように気を付けながら畑と畑の間の道を歩いて行く。
「にんげんさん?」
「知ってる人間さん?」
「モニカです」
「知ってる人間さんな気がするよ?」
「でもなんか変じゃない?」
「そうかなぁ」
「眠いなぁ」
「だから変な気がするのかも?」
夜の警備をしていたドライアドがふらふらと近づいて来て、モニカを囲った。
いつもの事だからとモニカはじっと時が過ぎ去るのを待つ。
ドライアドたちは何がそんなに気になるのか、モニカの前で「気のせい?」「気のせい!」と話をしていた。
みんなとても眠たそうにしていて、数名まぶたがくっついてしまっている。大きな欠伸をする子もいるし、目をごしごしと擦っている子もいた。
「そろそろよろしいでしょうか?」
「いいよー」
「なんか変だけどー」
「大丈夫じゃない?」
どうやらドライアドたちは変な気がするけどまあいいや、と思ったようだ。
モニカの周りに集まっていたドライアドたちが離れていく。
その様子をフェンリルが起き上がって見ていたが、興味が失せたのかまた丸まって眠り始めた。
モニカは何だかチェックが長かったな、と不思議に思いつつもするべき事を思い出して歩き始めた。
向かった先は、世界樹の根元付近に建てられた祠だ。
格子状で中が見える観音開きの扉を開くと、モニカの夫であるシズトに加護を授けた三柱の像が鎮座している。
中央には生育の神ファマの神像が置かれ、その両隣に付与の神エントと、加工の神プロスの神像がそれぞれある。
神像は魔道具によって後ろから照らされていて、後光が差しているように見えなくもない。
モニカはポケットの中に入れておいた魔石を取り出すと、一言「失礼します」と呟いて、祠の中に手を突っ込んだ。そして、神像の少し後ろの目立たない場所にある魔石を嵌め込む場所まで手を伸ばすと、嵌っていた魔石を抜いて、新しい魔石をそこに入れた。
その後、周囲の掃除と祠に汚れがついていないか確認した後、神像の正面に立ち、手を合わせて目を瞑った。
普段は日々の生活の感謝と、今後の平穏な日常を願っていた彼女だったが、レヴィアが懐妊してからは何事もなく無事に出産ができるように、と祈っていた。
その祈りが通じているのかは不明だが、今の所レヴィアは健康そのものだ。魔道具を使った農作業が捗りすぎて、毎日楽しそうに暮らしている。貴族対応をしなくていいから肩の荷が下りたのかもしれない。
「元々、社交的な方ではなかったですもんね」
社交界に極力出ず、部屋に閉じこもっていた王女様とは思えないほど彼女は変わった。
モニカは元々は貴族令嬢だったので、実際に見た事はなかったが、第一王女についての噂は聞いた事があった。その変化に驚きつつも穏やかに暮らせるように良かったとも思っていた。
「この幸せな日々が続きますように」
いつもの最後の言葉を呟くと、彼女は立ち上がる。
普段は寄って来ないドライアドたちが、なぜか自分の周りにわらわらと集まってきていたので「どうかしましたか?」と尋ねるがドライアドたちは首を傾げるだけで要領を得なかった。眠たそうで反応も鈍い。
「特に用がなければこれで失礼します。仕事がありますから」
ドライアドたちを踏んづけてしまわないように気を付けながら屋敷に続く道を歩いて行く。
その後をふらふらしながらドライアドたちもついて来るが、害はないのでまあ良いだろう、とモニカは気にしなかった。
そんな彼女たちの様子をフェンリルがまた見ていたのだが、モニカと視線が合うと何も言わずに丸まってしまった。
屋敷周辺の点検と、屋内の設備の確認を済ませた彼女は、日の出の時刻になると厨房に向かった。
既に別館で寝泊まりしていた奴隷の少年少女たちが狐人族のエミリーの指示のもと、忙しなく働いている。
「おはようございます」
「「「「おはようございます」」」」
モニカが挨拶をすると、少年少女たちは手を止めて挨拶を返すと、再び作業に戻っていく。
エミリーはチラッとモニカを見たが、すぐに自分の手元に視線を戻した。
「食事の準備はできているわ」
「ありがとうございます」
そう言いながらモニカは厨房に入り、賄い飯を食べるために用意された小さなテーブルへと向かった。
椅子に腰かけて食前の挨拶を済ませると、手早く食事を進めていく。
エミリーは作業が一段落したところでいつものようにモニカと雑談をするために近づいたのだが、ふと足を止めてモニカを凝視した。
今日はよく見られる日ですね、なんてどうでもいい事を考えながら黙々と食事を続けていたモニカだったが、エミリーの言葉で手が止まる。
「モニカ、妊娠してない?」
「…………え?」
「いや、私程度の魔力探知じゃ信用できないわ。ちょっとアンタたち、モニカをしっかり見張ってなさい! 他の人を呼んでくるわ!」
エミリーが指示を出すと朝食の準備をしていた子たちが手を止め、一斉にモニカの顔を見た。それから、一拍遅れてお腹へと視線が向かう。
モニカもその視線を追って自身のお腹を見たのだが、そういえば、ドライアドたちの視線の先はお腹辺りだったな、なんてどうでもいい事を思い出していた。
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