【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第22章 安全第一で生きていこう

444.事なかれ主義者は保留にした

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 レヴィさんの父親であるリヴァイさんがやってきたのは、夕暮れ時だった。
 珍しく王冠を被ったまま来たリヴァイさんだったが、パールさんに指摘されていそいそと王冠をアイテムバッグの中にしまっている。

「そうか、ファマ様から加護を授かったのか! 安産は約束されたようなものだが、それまでの警備は倍……いや、少なくとも三倍にしておいた方が良いな。ガント、すぐに手配しろ」
「分かりました」

 リヴァイさんと一緒にやってきたガントさんは窓から出て行って、猛スピードで転移陣に向かった。
 今いる応接室は一階だからそこから出てもガントさんは危なくないんだけど、窓を勢いよく開けたから、窓から覗いていたドライアドたちがひっくり返ってんだよなぁ。パメラも良く窓から出て行くし、危ないから窓に張り付くのは禁止にした方が良いかも。
 っていうか、護衛が今よりも増えるのか。今でも多いと思っていたけど、王女様の護衛として考えるとまだまだ少ないようだ。

「人手が増えるのですわ~」

 なんかレヴィさんが言っているけどそれどころじゃない。
 ガントさんが窓を開けっぱなしにして外に出て行ってしまったからドライアドたちが入ってこようと中を窺っている。
 いや、別に昼間は入られて困る事はないんだけどさ。気が付いたら部屋の中に鉢植えが増えてんな、くらいでその都度外に運べばいいし。
 ただ、今はちょっと身内とはいえ、王族の方々がいらっしゃっているので、ご入場はお断りしておこう。

「閉めちゃうの~」
「うん、閉めるよ。危ないから手をどけてね」
「は~い」

 聞き分けが良くてよろしい。
 ドライアドたちの手や髪の毛がない事を確認してから窓を閉めて、先程まで座っていた席に戻る。
 正面にはリヴァイさんが座っていた。金色の髪は外側にくるくるってなっている。なんか音楽家の人がこんな感じの髪形してたけど、流行りだったんだろうか。
 その隣に腰かけているパールさんは淡い赤色の瞳と髪でレヴィさんとは似ていないけど、髪型はレヴィさんとそっくりだ。ただ、レヴィさんの妹はこの髪型じゃなかったから遺伝ではないらしい。

「名前はもう決まったのか? 執務中にいろいろ考えてきたのだが……」
「何してんですか」

 僕が呆れて呟くと、リヴァイさんはムッとした表情で僕を見た。

「大事な事だろう。ただ、加護を授かっているとなれば考えて来たものではだめだな。やはり男の子の場合と女の子の場合だけではなく、加護を授かっていた場合も考えておくべきだったか。後回しにできた案件が他にもあったし、そうしておくべきだったな」
「名前は二人で決めるから大丈夫なのですわ」
「ダメよ、レヴィ。二人で決めるよりも、三人で決めた方がきっといい名前が思い浮かぶわ。だから、加護を授かった場合につけた方が良いと思う名前を私が考えたから、これを見て頂戴」
「ちょっと待て。三人よりも四人の方が良いだろう。どうしてそこで俺を省く」
「だって普通の名前だけを考えてきたんでしょう?」
「王位継承しても問題ないような名前も考えてきたわ! そうだ、ファフニルなんてどうだ? たまたまだが、ファマ様の名前も入っているぞ?」
「あー……なるほど」

 確かに、と納得していると勝ち誇った表情をしたリヴァイさんがパールさんに睨まれていた。
 仲良く考えてください。ただ、それにするとは限らないけど。
 ファフニルってなんか女の子の名前にはならなさそうだし。

「ねぇ、レヴィさん」
「なんですわ?」
「加護を授かっているって後から分かった場合は名前が変わるとかあるの?」
「そうですわね。貴族の中には、産まれてから加護を授かっているか確認できるまで仮の名にしておいて、授かっている事が分かれば決められた名前を与えられる事があるのですわ。確かユウトがそれだった気がするのですわ」
「ユウト?」
「元婚約者の」
「ああ。……どうやって授かっているか判断するの? 大きくなったら分かるものなの?」
「知識の神から【鑑定】の加護を授かっている神官がいるのですわ。その者にお金を払って見てもらうのですわ。意図せず加護を使ってしまって分かる事もあるみたいですけれど、物によっては似た力を授ける神もいるから、しっかりと把握するために【鑑定】してもらう事が多いのですわ」
「へー。……ところで、レヴィさんはこんな名前を付けたい、っていう考えはあるの?」
「そうですわね。できれば、シズトの故郷の名前を付けてあげて欲しいのですわ」
「別にいいけど、なんで?」
「転移者は呪われにくいって言うのは良く知られているのですわ。その理由が、元の世界の名前の付け方に理由があるのではないか、って考えられているのですわ。ほら、『カンジ』とか『カタカナ』とか『ヒラガナ』とか、同じ発音でも書き方が異なるのですわ? それを付けて貰ったら、呪われ辛いんじゃないかって思うのですわ」
「なるほど? じゃあ、漢字も含めて考えてみるけど……なんかこういうのが良いって言う要望があったら言って欲しいな。優しい子になって欲しいとか」
「もしそれだったらどういう名前になるのですわ?」
「安直に行くなら優子かな」
「ユウコ……ユウトの子どもみたいで嫌ですわ」
「だよね」
「どうせなら生育の加護に関わる名前を付けて欲しいのですわ!」
「龍に関する名前の方が良いんじゃないか?」
「ガントがいるじゃない」
「シズト殿がどこかの国の王になるかもしれないじゃないか」
「エルフの国の王にはすでになっている気がするのですわ」
「だったらやはり龍の名をどこかに入れておいた方が良いんじゃないか?」
「ドラゴニアじゃないから入れなくてもいいと思うのですわ」
「ここはやはり、私が考えるべきね。二人に任せていると話が進みそうにないわ。シズト殿、私に『カンジ』とやらを全て教えて頂戴。それから決めるわ」
「いや、教える所からっていう方が時間かかると思います……」

 全部教える事ができる気がしないし、魔道具でサクッと辞書的な物を作ってみようか、と思ったけど、漢字が知られていないという利点を残すのであればそういうのは作らない方が良いような気もする。
 ちょっとリヴァイさんたちが帰ったらラオさんに相談してみよう。
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