【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第21章 魔道具を作りながら生きていこう

441.事なかれ主義者は釘を刺した

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 邪神の信奉者からの襲撃から数日後、特に変化もなく毎日世界樹フソーのお世話と魔道具の生産を続けている。
 相変わらず転移門は閉じて、ビッグマーケットは開催していない。各国から早期再開の要望が連日届いているそうだけど、とりあえず保留にしておいた。
 敵味方の区別がつかない以上、余計な人の出入りは避けた方が良い、との事だ。
 最初に転移門を設置した四各国は距離が近いという事もあり、転移門を使わずともやって来れるみたいだけど、正直そこまでしてここに来る必要性は今はないだろう。ビッグマーケットがなければ世界樹があるだけの街だ。
 こっちの大陸にいる事に加えて、こんな状況という事もあり、ここ数日はお世話係はない。
 護衛、という事でラオさんとルウさんだけではなく、シンシーラやパメラも僕の近くにいる事が多いけど、パメラは時々「偵察してくるデース!」と言って出かけてしまう。
 てっきり暇つぶしに飛び出して行ってしまったんだろう、と思っていたけど、ちゃんと仕事をしていたようだ。
 バサバサと慌てた様子で飛んできて、窓から室内に入ってきた。

「南の方から数台の馬車がやってくるデスよ! あのペースだったらあと一時間くらいで到着すると思うデス!」
「南、っていう事はヤマトからの使者かな」
「おそらくそうでしょう。確認してまいります。ムサシ、この場を頼みます。パメラ様、案内をお願いします」

 窓から出て行くパメラの後をジュリウスがついて行く。
 やっぱり精霊魔法って便利だよな。僕もあんな風に飛べたらいいんだけど……。

「ヤマトからの使者となると、とりあえずレヴィさんには伝えてもらった方が良いよね?」
「すでにシンシーラが動いているから問題ねぇよ」

 確かに壁際で自分の尻尾の手入れをしていたシンシーラがいつの間にかいない。僕がジュリウスに気を取られている間に扉から出て行ったようだ。
 離れたところで武具の手入れをしていたラオさんが僕の近くに寄ってきて腰を下ろした。
 ルウさんは当たり前のように僕を抱きかかえ込むとギュッと抱きしめてくる。最近の定位置になりつつあるけど誰も止めてくれないし、恥ずかしいだけで嫌ではないので、大人しくされるがままになっている。

「シズトくんは着替えた方が良いかしら?」
「どうだろうな。用件を聞いてから準備させてもいいんじゃないか? ヤマトとの関係的に、待たせたらまずい相手なんていないだろうし……たぶん」
「んー、それもそうね。じゃあ、とりあえずシズトくんは引き続き魔道具作り頑張ってね」
「この格好でするのはちょっと……」

 抗議してみたけど、万が一の時にすぐに逃がす事ができる姿勢だから、と離してもらえなかった。



 ヤマトからの使者が到着した、という連絡があったけど、会う前にとりあえずお昼ご飯を食べる事となった。
 相手を待たせている状況でのんびりご飯を食べるのは気が引けるんだけど、僕が急いで食べたところで、同席するレヴィさんが食べ終わらない事には意味がない。
 それならせっかくエミリーが作ってくれたんだから、と料理に集中する事にした。
 お昼ご飯を食べ終えると、レヴィさんはドレスに着替えた。午前中は邪神の信奉者との戦いの余波で瓦礫の山と化した区画の整理をしていたらしい。

「陽当たりのいい場所を確保したのですわ! 瓦礫撤去が終わったらすぐに耕すのですわ~」
「瓦礫撤去用のゴーレムでも作る?」
「ドライアドたちにも協力してもらっているから大丈夫なのですわ~」
「シズト様は邪神対策に専念してください」

 レヴィさんは農業の事となるとちょっと大変な事があったとしても言わないけど、セシリアさんが問題ないというのならば問題はないのだろう。
 そんな話をしていると、僕たちを目的地へと運んでいた馬車が停まった。
 ヤマトからの使者は迎賓館で待っている。
 セシリアさんの案内で迎賓館の中でも一番広い部屋に移動すると、指定された椅子に座った。

「随分と物々しいね」
「前回は非公式の会談だったのですけれど、今回は公式の会談なのですわ。それに、和平条約を結びに来たという事らしいから、念のため、北部同盟の方々にも同席してもらったのですわ」

 レヴィさんが合図をすると、それまで跪いていた人たちが立ち上がった。
 各国で装備は異なるけど、身に着けている勲章のような物から、錚々たる顔ぶれだという事は分かった。
 挨拶でもするべきだろうか、と思ったけれど隣の椅子に座ったレヴィさんに手で制されたので大人しく座っておく。
 レヴィさんは『加護無しの指輪』を外すと、大きな扉の方へと視線を向けた。
 すると、正面の大きな扉が開かれて、見覚えのある男女が入ってくる。
 その二人組は少し離れたところで立ち止まると、その場で深く礼をした。

「本日は貴重なお時間を頂き、ありがとうございます。ヤマト・メグミです」
「ヤマト・サトリです」
「音無静人です。えっと……この度はご愁傷様でした」
「……え?」
「え??」

 こっちの世界じゃ身内に不幸があってもこの言い方じゃなかったか?
 レヴィさんにチラッと視線を送ったところで、きょとんとした表情だったメグミさんの代わりに、サトリさんが「恐れ入ります!」と返事をしてくれた。あっていたようだ。

「前大王様が生前の頃はいろいろありましたが、平和に向けて前向きな話し合いができたらと思います」
「そうですね。我々もそのように考えております。……姉様」

 サトリさんに小突かれて、ハッとしたメグミさんが口を開いた。

「生前の我が父と、勇者が働いた数々の無礼をお許しいただければと存じます」
「大国ヤマトは和平を求めている、という事であってますか?」
「はい」
「そうですか。では、条件についてですが、僕は正直よく分からないので、レヴィさんと話してもらえますか?」
「承知しました」

 話が一区切りついたので、ホッと胸を撫で下ろす。
 事前に考えていた通りの話の展開に持っていく事ができて良かった。
 後はレヴィさんに任せて、のんびりと座っていよう。

「あ、和平の条件として誰かと婚姻するつもりないからね?」
「分かっているのですわ~」

 これでよし。後はお茶菓子でも出ればいいんだけど……こんな雰囲気の状態だと出ないかな?
 チラッとジュリウスを見たらそっと焼き菓子を差し出してくれたのでお礼を言ってもぐもぐと食べた。
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