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第21章 魔道具を作りながら生きていこう
幕間の物語215.エルフは捕まえる事ができなかった
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フェンリルの側にいるようにシズトにお願いをした後、ジュリウスは世界樹フソーの根元に転移していた。
彼を出迎えたのムサシというホムンクルスだ。
普段はのほほんとした雰囲気を醸し出している彼だったが、今は表情は険しく、眉間には深く皺が刻まれていた。
ムサシの感情に呼応するかのように体からは大量の魔力が溢れ出ていて、彼の黒い髪が溢れ出る魔力に煽られて揺れている。
「状況は?」
「主殿の姿が見えなくなった後、下手人はすぐに加護を使う事を止めたようでござるが、居場所は既に分かっているでござる」
「流石だな。周囲の者たちはどうなった?」
「幸いの事に、職人たちには大きな被害はなさそうでござる。呪いにも何かしらの制約があるのかもしれないでござる。今は北部同盟の兵が周囲の警戒をしつつ、職人たちの保護と監視をしているはずでござる」
「同盟軍の兵士が手引きしている可能性は?」
「それは分からんでござるよ。一先ず、世界樹の上の方で日向ぼっこをしていた梟と古株のドライアドに頼んで空から偵察をしてもらっている状況でござる」
「分かった。……シズト様がいらっしゃらないから上から行くしかないか」
「そうでござるな。手を貸すでござるか?」
「あのくらいの高さであれば自力で飛べる」
ジュリウスは風の精霊を呼び出すと、精霊の力を借りて上空に空いたスペースからアダマンタイト製の檻から外に出た。その後をムサシが空中を蹴って追う。
「地上はヒトが多すぎる。上空で始末したいが、隙を作れるか?」
「加減できるかは分からぬが……やってみるでござる」
ムサシはジュリウスよりも数メートル前に出ると、グッと空中で踏み込んだ。
ムサシからただ放出されていた膨大な魔力が彼の体を包み、眩く輝く。
「行くでござる。エアロ・インパクト!」
ムサシが風の魔法を唱えた次の瞬間には、彼の体は目標の建物へと突っ込んでいた。
建物の中に潜んでいた者は間一髪という所で外に飛び出していたが、ムサシの魔法によって生み出された暴風によって吹き飛ばされる。
人払いをしていたおかげで、周辺の被害は少なそうだ、とムサシがホッとしている間にジュリウスが精霊魔法を使って、地面を鞠のように転がっていた不審者を上空に巻き上げた。
破れたローブを脱ぎ捨てて露になったのは、顔まで不気味な文様が刻まれた中年の男だった。
男は懐から取り出した笛を口に咥えたが、地上から迫っていたムサシが魔法を放つ。
「エアロ・ハンマー」
いくつもの空気の塊が生み出され、男を襲う。
さらに上へと弾き飛ばされた男を追いながら、ジュリウスはムサシに向けて言葉を放った。
「肉片が落ちるような魔法は使うな! 『呪躰』の加護を持っているかもしれん」
「合点承知!」
その後は一方的な展開となった。
ムサシとジュリウスが入れ代わりに攻撃を仕掛け、攻撃していない方はアイテムバッグから魔道具『身代わりのお守り』を取り出して呪い対策を怠らない。
その際、新しい魔道具がバッグの中に追加されている事に気付くとすぐに装備していた。
呪音の加護が効かないと悟った男は、肉弾戦に持ち込もうとしたが空中では思うように身動きができず、遠距離からひたすら魔法を当てられ続けた。それでも死ななかったのは男の異常な再生能力の結果だ。
ジュリウスはその再生の様子を見た記憶があった。
「やはり呪躰の加護もあるか」
何が目的で、仲間はどこにいるのか等聞きたかったジュリウスだったが、加減をした魔法では再生してしまっていた。ただ、その再生も際限なくできる訳がない。
加護にせよ、魔法にせよ、魔力が尽きれば後はどうとでもなる。
共闘しているムサシに視線を向けると、彼も鷹揚に頷いた。
その後、身動きが取れない空中に敵を留め続け、再生できなくなるまでひたすら魔法を当て続けた二人だったが、男を生きたまま捕える事は出来なかった。
「やはり自死を選ぶ、か」
「ジュリウス殿。この後はどうするでござるか?」
「他にも敵が潜伏している可能性もある。一人一人の素性を確認し、怪しい者は送り返す。今回の襲撃の際、北部同盟軍の中に手を貸していた者がいるかもしれない。そちらの確認も必要だな」
「で、あれば北部同盟の面々には顔が利く拙者が聞いてくるでござる。ジュリウス殿は不審者の捜索を頼むでござる」
「分かった。と言っても、加護を使うまでは分からんから厄介なんだがな……」
「主殿が随分前に作って忘れている魔道具があるはずでござる。名前は、付けられていないみたいでござるが、勇者の加護をそれで判別してたでござるよ。邪神から加護を授けられているのであればそれで分かるかもしれないでござる。確かアイテムバッグに………………あった、この眼鏡だったはずでござるよ。加護の内容を知っても呪われるかもしれないでござる。これを使うでござるよ。あと、身代わりのお守りと呪術報知鈴は必ず身に着けておくでござるよ? ジュリウス殿に何かあったら主殿は悲しむでござるからな」
「分かっている」
その後、北部同盟軍の兵士に協力してもらい、フソーにいた者たちに魔道具を使って確認し続けたジュリウスは、呪いの加護持ちを見つける度に捕えようと試みたが、あと少しという所で自決され、結局一人も捕まえる事は出来なかった。
彼を出迎えたのムサシというホムンクルスだ。
普段はのほほんとした雰囲気を醸し出している彼だったが、今は表情は険しく、眉間には深く皺が刻まれていた。
ムサシの感情に呼応するかのように体からは大量の魔力が溢れ出ていて、彼の黒い髪が溢れ出る魔力に煽られて揺れている。
「状況は?」
「主殿の姿が見えなくなった後、下手人はすぐに加護を使う事を止めたようでござるが、居場所は既に分かっているでござる」
「流石だな。周囲の者たちはどうなった?」
「幸いの事に、職人たちには大きな被害はなさそうでござる。呪いにも何かしらの制約があるのかもしれないでござる。今は北部同盟の兵が周囲の警戒をしつつ、職人たちの保護と監視をしているはずでござる」
「同盟軍の兵士が手引きしている可能性は?」
「それは分からんでござるよ。一先ず、世界樹の上の方で日向ぼっこをしていた梟と古株のドライアドに頼んで空から偵察をしてもらっている状況でござる」
「分かった。……シズト様がいらっしゃらないから上から行くしかないか」
「そうでござるな。手を貸すでござるか?」
「あのくらいの高さであれば自力で飛べる」
ジュリウスは風の精霊を呼び出すと、精霊の力を借りて上空に空いたスペースからアダマンタイト製の檻から外に出た。その後をムサシが空中を蹴って追う。
「地上はヒトが多すぎる。上空で始末したいが、隙を作れるか?」
「加減できるかは分からぬが……やってみるでござる」
ムサシはジュリウスよりも数メートル前に出ると、グッと空中で踏み込んだ。
ムサシからただ放出されていた膨大な魔力が彼の体を包み、眩く輝く。
「行くでござる。エアロ・インパクト!」
ムサシが風の魔法を唱えた次の瞬間には、彼の体は目標の建物へと突っ込んでいた。
建物の中に潜んでいた者は間一髪という所で外に飛び出していたが、ムサシの魔法によって生み出された暴風によって吹き飛ばされる。
人払いをしていたおかげで、周辺の被害は少なそうだ、とムサシがホッとしている間にジュリウスが精霊魔法を使って、地面を鞠のように転がっていた不審者を上空に巻き上げた。
破れたローブを脱ぎ捨てて露になったのは、顔まで不気味な文様が刻まれた中年の男だった。
男は懐から取り出した笛を口に咥えたが、地上から迫っていたムサシが魔法を放つ。
「エアロ・ハンマー」
いくつもの空気の塊が生み出され、男を襲う。
さらに上へと弾き飛ばされた男を追いながら、ジュリウスはムサシに向けて言葉を放った。
「肉片が落ちるような魔法は使うな! 『呪躰』の加護を持っているかもしれん」
「合点承知!」
その後は一方的な展開となった。
ムサシとジュリウスが入れ代わりに攻撃を仕掛け、攻撃していない方はアイテムバッグから魔道具『身代わりのお守り』を取り出して呪い対策を怠らない。
その際、新しい魔道具がバッグの中に追加されている事に気付くとすぐに装備していた。
呪音の加護が効かないと悟った男は、肉弾戦に持ち込もうとしたが空中では思うように身動きができず、遠距離からひたすら魔法を当てられ続けた。それでも死ななかったのは男の異常な再生能力の結果だ。
ジュリウスはその再生の様子を見た記憶があった。
「やはり呪躰の加護もあるか」
何が目的で、仲間はどこにいるのか等聞きたかったジュリウスだったが、加減をした魔法では再生してしまっていた。ただ、その再生も際限なくできる訳がない。
加護にせよ、魔法にせよ、魔力が尽きれば後はどうとでもなる。
共闘しているムサシに視線を向けると、彼も鷹揚に頷いた。
その後、身動きが取れない空中に敵を留め続け、再生できなくなるまでひたすら魔法を当て続けた二人だったが、男を生きたまま捕える事は出来なかった。
「やはり自死を選ぶ、か」
「ジュリウス殿。この後はどうするでござるか?」
「他にも敵が潜伏している可能性もある。一人一人の素性を確認し、怪しい者は送り返す。今回の襲撃の際、北部同盟軍の中に手を貸していた者がいるかもしれない。そちらの確認も必要だな」
「で、あれば北部同盟の面々には顔が利く拙者が聞いてくるでござる。ジュリウス殿は不審者の捜索を頼むでござる」
「分かった。と言っても、加護を使うまでは分からんから厄介なんだがな……」
「主殿が随分前に作って忘れている魔道具があるはずでござる。名前は、付けられていないみたいでござるが、勇者の加護をそれで判別してたでござるよ。邪神から加護を授けられているのであればそれで分かるかもしれないでござる。確かアイテムバッグに………………あった、この眼鏡だったはずでござるよ。加護の内容を知っても呪われるかもしれないでござる。これを使うでござるよ。あと、身代わりのお守りと呪術報知鈴は必ず身に着けておくでござるよ? ジュリウス殿に何かあったら主殿は悲しむでござるからな」
「分かっている」
その後、北部同盟軍の兵士に協力してもらい、フソーにいた者たちに魔道具を使って確認し続けたジュリウスは、呪いの加護持ちを見つける度に捕えようと試みたが、あと少しという所で自決され、結局一人も捕まえる事は出来なかった。
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