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第21章 魔道具を作りながら生きていこう

418.事なかれ主義者は皆に見られて恥ずかしかった

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 ラピスさんにアドバイスをもらいながら新しい魔道具を試作していると、日が暮れ始めた。
 ラピスさんは学校の様子が気になるからと言って転移陣を使ってドタウィッチに戻っていき、僕はジュリウスを連れて屋敷へと帰った。
 屋敷に戻ると、ドランにある屋敷で来客対応をしていたモニカが戻ってきていて出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ、シズト様。まだ皆さんお戻りになっておりませんが、いかがなさいますか?」
「まだちょっと魔力が余ってるから、依頼品でも作って待ってるよ」
「かしこまりました。では、皆さんが揃い次第、ノエルの部屋へと参ります」
「よろしくー。ジュリウスはどうするの?」
「外で周囲の警戒をしております。気配で分かりますので、食事の時には食堂にいるようにします」
「分かった。それじゃあ、また後でね」

 ジュリウスと別れて三階のノエルの部屋へと一人で向かう。
 屋敷の中であればある程度一人で行動させてもらえるけど、大体誰かと一緒に行動しているから新鮮だ。
 初めてこういう状況になった時は、誰も見てないし何でもできる、なんて思っていたけど、狐人族のエミリーや狼人族のシンシーラには筒抜けだし、魔力感知ができる人たちには僕の動きは伝わっていたので、それ以来変な事はしないようにしたんだ。
 大人しく普通に階段を上って、階段から一番近い部屋の扉をノックすると、しばらくしてから扉が開かれた。
 顔を出したのはエイロンだった。彼は僕を見ると「やっぱりシズト様じゃないっすか」と呟いた。

「勝手に入ってくればいいじゃないですか」
「女性の部屋だよ? 相手が着替え中だったら困るでしょ?」
「全然?」

 あ、考え方が異なる人だった。
 まあ、エイロンは部屋に入った時に女性が着替え中だったら平気でガン見しそうだよね。
 自分の机へと戻っていくエイロンと一緒に部屋の中に入る。

「もういっその事、扉を開けっぱなしにしちまえばいいんじゃないかっ?」
「あー、それもありだな」

 エルヴィスの言葉に、エイロンは同意しながら席に座る。
 まあ、部屋の主が良いならそれでいいんだけどさ。
 この部屋の主であるノエルは二人の会話を気にした様子もなく、背を向けたまま作業……じゃないなこれ。魔道具の観察をしているようだ。
 こういう時って周りが騒がしくても集中していて聞こえてないんだよな。
 だからホムラに毎回引っ張られて食堂にやってくる事になるんだけど……。

「ノエル、新しい魔道具作ったけど――」
「見るっす!!」

 魔道具に関する反応はすごくいいんだよなぁ。
 勢いよく立ち上がったせいで大きな音を立てて倒れた椅子を戻してあげて、そこにノエルを座らせてから目の前に魔道具を並べてあげると、爛々と目が輝いている。
 これは長くなりそうだ。
 ただ、ノエルは説明を求めないし、僕は僕でせっせと依頼品でも作ろう。



 依頼品をせっせと作り続けて魔力が切れかけた頃、ノックもせずにモニカがホムラを連れて入ってきた。

「シズト様、全員揃いました」
「ありがと、モニカ。ほら、ノエル! 魔道具見てないでご飯に行くよ」
「邪魔しないで欲しいっす。今いい所っす」
「何度言ってもマスターに対する態度は変わりませんね。体に教え込むしかないようです、マスター」
「ご飯の前だからやめようねー」
「かしこまりました、マスター。では、運びます」
「引き摺って行くのもやめようか。僕が連れてくから大丈夫だよ」
「マスターが……?」

 無表情で首を傾げるホムラだけど、見せた方が早いので特に説明はしない。
 魔道具化した服のおかげで身体強化を僕も使えるようになった事は見せた方が早いし。
 ノエルごと椅子を引いてスペースを開けてから、ノエルの膝の裏と背中に手を回して、ひょいっとお姫様抱っこをするとホムラが「流石です、マスター」と言い、モニカは「それでは参りましょう」とあまり興味なさそうで、ノエルはちょっとしてから「え?」ときょとんとした様子で僕の顔を見た。
 至近距離から見たノエルの顔はやっぱりエルフの血が混じっているからか整っていて、エメラルドのように輝く緑色の瞳に見つめられるとちょっと照れる。
 でも、魔道具『パワースーツ』のおかげでちょっと意識がそれても力が弱まる事もなく、力の上限が設定されているので強まる事もないので、安定してノエルを運ぶことができる。
 ノエルがちょっと抵抗したくらいじゃ離す事もない。まあ、本気で身体強化などを使われたら逃げられちゃうだろうけど。
 食堂までノエルを運ぶ事ができたのは良かったんだけど、食堂で待っていた人たちにお姫様抱っこをしている所を見られてしまった。
 また今度、皆にお姫様抱っこをする事になってしまったのはちょっとした誤算だったけど、実用性がある事を改めて確認できたし、時間のある時に自分の服に全部付与しておこう。
 あ、その前にホムラとユキに釘を刺しておかないと。

「今度からは引き摺らずにああいう感じで運んであげてね」
「前向きに検討させていただきます、マスター」
「善処するわ、ご主人様」
「それ絶対しない言い方だよね?」

 どうして二人とも顔を背けるのかな?

「シズトが呼びに行けば解決すると思うのですわ!」
「確かに?」

 なんかノエルが「恥ずかしいから嫌っす!」とか騒いでいるけど、僕も恥ずかしいからできれば一人で来るようになってほしいなぁ。
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