623 / 1,023
第21章 魔道具を作りながら生きていこう
418.事なかれ主義者は皆に見られて恥ずかしかった
しおりを挟む
ラピスさんにアドバイスをもらいながら新しい魔道具を試作していると、日が暮れ始めた。
ラピスさんは学校の様子が気になるからと言って転移陣を使ってドタウィッチに戻っていき、僕はジュリウスを連れて屋敷へと帰った。
屋敷に戻ると、ドランにある屋敷で来客対応をしていたモニカが戻ってきていて出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、シズト様。まだ皆さんお戻りになっておりませんが、いかがなさいますか?」
「まだちょっと魔力が余ってるから、依頼品でも作って待ってるよ」
「かしこまりました。では、皆さんが揃い次第、ノエルの部屋へと参ります」
「よろしくー。ジュリウスはどうするの?」
「外で周囲の警戒をしております。気配で分かりますので、食事の時には食堂にいるようにします」
「分かった。それじゃあ、また後でね」
ジュリウスと別れて三階のノエルの部屋へと一人で向かう。
屋敷の中であればある程度一人で行動させてもらえるけど、大体誰かと一緒に行動しているから新鮮だ。
初めてこういう状況になった時は、誰も見てないし何でもできる、なんて思っていたけど、狐人族のエミリーや狼人族のシンシーラには筒抜けだし、魔力感知ができる人たちには僕の動きは伝わっていたので、それ以来変な事はしないようにしたんだ。
大人しく普通に階段を上って、階段から一番近い部屋の扉をノックすると、しばらくしてから扉が開かれた。
顔を出したのはエイロンだった。彼は僕を見ると「やっぱりシズト様じゃないっすか」と呟いた。
「勝手に入ってくればいいじゃないですか」
「女性の部屋だよ? 相手が着替え中だったら困るでしょ?」
「全然?」
あ、考え方が異なる人だった。
まあ、エイロンは部屋に入った時に女性が着替え中だったら平気でガン見しそうだよね。
自分の机へと戻っていくエイロンと一緒に部屋の中に入る。
「もういっその事、扉を開けっぱなしにしちまえばいいんじゃないかっ?」
「あー、それもありだな」
エルヴィスの言葉に、エイロンは同意しながら席に座る。
まあ、部屋の主が良いならそれでいいんだけどさ。
この部屋の主であるノエルは二人の会話を気にした様子もなく、背を向けたまま作業……じゃないなこれ。魔道具の観察をしているようだ。
こういう時って周りが騒がしくても集中していて聞こえてないんだよな。
だからホムラに毎回引っ張られて食堂にやってくる事になるんだけど……。
「ノエル、新しい魔道具作ったけど――」
「見るっす!!」
魔道具に関する反応はすごくいいんだよなぁ。
勢いよく立ち上がったせいで大きな音を立てて倒れた椅子を戻してあげて、そこにノエルを座らせてから目の前に魔道具を並べてあげると、爛々と目が輝いている。
これは長くなりそうだ。
ただ、ノエルは説明を求めないし、僕は僕でせっせと依頼品でも作ろう。
依頼品をせっせと作り続けて魔力が切れかけた頃、ノックもせずにモニカがホムラを連れて入ってきた。
「シズト様、全員揃いました」
「ありがと、モニカ。ほら、ノエル! 魔道具見てないでご飯に行くよ」
「邪魔しないで欲しいっす。今いい所っす」
「何度言ってもマスターに対する態度は変わりませんね。体に教え込むしかないようです、マスター」
「ご飯の前だからやめようねー」
「かしこまりました、マスター。では、運びます」
「引き摺って行くのもやめようか。僕が連れてくから大丈夫だよ」
「マスターが……?」
無表情で首を傾げるホムラだけど、見せた方が早いので特に説明はしない。
魔道具化した服のおかげで身体強化を僕も使えるようになった事は見せた方が早いし。
ノエルごと椅子を引いてスペースを開けてから、ノエルの膝の裏と背中に手を回して、ひょいっとお姫様抱っこをするとホムラが「流石です、マスター」と言い、モニカは「それでは参りましょう」とあまり興味なさそうで、ノエルはちょっとしてから「え?」ときょとんとした様子で僕の顔を見た。
至近距離から見たノエルの顔はやっぱりエルフの血が混じっているからか整っていて、エメラルドのように輝く緑色の瞳に見つめられるとちょっと照れる。
でも、魔道具『パワースーツ』のおかげでちょっと意識がそれても力が弱まる事もなく、力の上限が設定されているので強まる事もないので、安定してノエルを運ぶことができる。
ノエルがちょっと抵抗したくらいじゃ離す事もない。まあ、本気で身体強化などを使われたら逃げられちゃうだろうけど。
食堂までノエルを運ぶ事ができたのは良かったんだけど、食堂で待っていた人たちにお姫様抱っこをしている所を見られてしまった。
また今度、皆にお姫様抱っこをする事になってしまったのはちょっとした誤算だったけど、実用性がある事を改めて確認できたし、時間のある時に自分の服に全部付与しておこう。
あ、その前にホムラとユキに釘を刺しておかないと。
「今度からは引き摺らずにああいう感じで運んであげてね」
「前向きに検討させていただきます、マスター」
「善処するわ、ご主人様」
「それ絶対しない言い方だよね?」
どうして二人とも顔を背けるのかな?
「シズトが呼びに行けば解決すると思うのですわ!」
「確かに?」
なんかノエルが「恥ずかしいから嫌っす!」とか騒いでいるけど、僕も恥ずかしいからできれば一人で来るようになってほしいなぁ。
ラピスさんは学校の様子が気になるからと言って転移陣を使ってドタウィッチに戻っていき、僕はジュリウスを連れて屋敷へと帰った。
屋敷に戻ると、ドランにある屋敷で来客対応をしていたモニカが戻ってきていて出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、シズト様。まだ皆さんお戻りになっておりませんが、いかがなさいますか?」
「まだちょっと魔力が余ってるから、依頼品でも作って待ってるよ」
「かしこまりました。では、皆さんが揃い次第、ノエルの部屋へと参ります」
「よろしくー。ジュリウスはどうするの?」
「外で周囲の警戒をしております。気配で分かりますので、食事の時には食堂にいるようにします」
「分かった。それじゃあ、また後でね」
ジュリウスと別れて三階のノエルの部屋へと一人で向かう。
屋敷の中であればある程度一人で行動させてもらえるけど、大体誰かと一緒に行動しているから新鮮だ。
初めてこういう状況になった時は、誰も見てないし何でもできる、なんて思っていたけど、狐人族のエミリーや狼人族のシンシーラには筒抜けだし、魔力感知ができる人たちには僕の動きは伝わっていたので、それ以来変な事はしないようにしたんだ。
大人しく普通に階段を上って、階段から一番近い部屋の扉をノックすると、しばらくしてから扉が開かれた。
顔を出したのはエイロンだった。彼は僕を見ると「やっぱりシズト様じゃないっすか」と呟いた。
「勝手に入ってくればいいじゃないですか」
「女性の部屋だよ? 相手が着替え中だったら困るでしょ?」
「全然?」
あ、考え方が異なる人だった。
まあ、エイロンは部屋に入った時に女性が着替え中だったら平気でガン見しそうだよね。
自分の机へと戻っていくエイロンと一緒に部屋の中に入る。
「もういっその事、扉を開けっぱなしにしちまえばいいんじゃないかっ?」
「あー、それもありだな」
エルヴィスの言葉に、エイロンは同意しながら席に座る。
まあ、部屋の主が良いならそれでいいんだけどさ。
この部屋の主であるノエルは二人の会話を気にした様子もなく、背を向けたまま作業……じゃないなこれ。魔道具の観察をしているようだ。
こういう時って周りが騒がしくても集中していて聞こえてないんだよな。
だからホムラに毎回引っ張られて食堂にやってくる事になるんだけど……。
「ノエル、新しい魔道具作ったけど――」
「見るっす!!」
魔道具に関する反応はすごくいいんだよなぁ。
勢いよく立ち上がったせいで大きな音を立てて倒れた椅子を戻してあげて、そこにノエルを座らせてから目の前に魔道具を並べてあげると、爛々と目が輝いている。
これは長くなりそうだ。
ただ、ノエルは説明を求めないし、僕は僕でせっせと依頼品でも作ろう。
依頼品をせっせと作り続けて魔力が切れかけた頃、ノックもせずにモニカがホムラを連れて入ってきた。
「シズト様、全員揃いました」
「ありがと、モニカ。ほら、ノエル! 魔道具見てないでご飯に行くよ」
「邪魔しないで欲しいっす。今いい所っす」
「何度言ってもマスターに対する態度は変わりませんね。体に教え込むしかないようです、マスター」
「ご飯の前だからやめようねー」
「かしこまりました、マスター。では、運びます」
「引き摺って行くのもやめようか。僕が連れてくから大丈夫だよ」
「マスターが……?」
無表情で首を傾げるホムラだけど、見せた方が早いので特に説明はしない。
魔道具化した服のおかげで身体強化を僕も使えるようになった事は見せた方が早いし。
ノエルごと椅子を引いてスペースを開けてから、ノエルの膝の裏と背中に手を回して、ひょいっとお姫様抱っこをするとホムラが「流石です、マスター」と言い、モニカは「それでは参りましょう」とあまり興味なさそうで、ノエルはちょっとしてから「え?」ときょとんとした様子で僕の顔を見た。
至近距離から見たノエルの顔はやっぱりエルフの血が混じっているからか整っていて、エメラルドのように輝く緑色の瞳に見つめられるとちょっと照れる。
でも、魔道具『パワースーツ』のおかげでちょっと意識がそれても力が弱まる事もなく、力の上限が設定されているので強まる事もないので、安定してノエルを運ぶことができる。
ノエルがちょっと抵抗したくらいじゃ離す事もない。まあ、本気で身体強化などを使われたら逃げられちゃうだろうけど。
食堂までノエルを運ぶ事ができたのは良かったんだけど、食堂で待っていた人たちにお姫様抱っこをしている所を見られてしまった。
また今度、皆にお姫様抱っこをする事になってしまったのはちょっとした誤算だったけど、実用性がある事を改めて確認できたし、時間のある時に自分の服に全部付与しておこう。
あ、その前にホムラとユキに釘を刺しておかないと。
「今度からは引き摺らずにああいう感じで運んであげてね」
「前向きに検討させていただきます、マスター」
「善処するわ、ご主人様」
「それ絶対しない言い方だよね?」
どうして二人とも顔を背けるのかな?
「シズトが呼びに行けば解決すると思うのですわ!」
「確かに?」
なんかノエルが「恥ずかしいから嫌っす!」とか騒いでいるけど、僕も恥ずかしいからできれば一人で来るようになってほしいなぁ。
48
お気に入りに追加
417
あなたにおすすめの小説
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました
ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。
会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。
タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる