【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
上 下
622 / 1,094
第21章 魔道具を作りながら生きていこう

417.事なかれ主義者は身体強化を使いたい

しおりを挟む
 ノエルの部屋でせっせと依頼品を作る。その様子をラピスさんが記録していた。
 スケッチは数枚書けば十分だからか、僕が作っている物を一つ一つ聞いてくる。

「これはなんですか?」
「除塩杭だね。地面に打ち込むと、周辺の塩を集めて、塩の結晶を作ってくれるんだよ」
「なるほど。塩害対策もできて、なおかつ集めた塩も活用できるんですね。海沿いの国々に求められそうですね」
「そうだね。ガレオールから大量に依頼が来たけど、ほとんどこれだったんだよね。魚人国との関係が悪化してるから国内の島同士を繋ぐために転移陣もいくつか依頼来てたけど」
「なるほど。……さきほど作っていたこれは?」
「魔力マシマシ飴だね。口の中に含んで魔力を流すと、甘みを感じるものだね」
「……何の意味があるのですか?」
「レヴィさんは甘味を我慢できたみたいだよ」
「なるほど。……こちらは女性物の下着ですが……」
「別に変な趣味とかないからね! 『育乳ブラ』っていう魔道具にするために用意された下着なだけだから!」

 義妹に下着集めが趣味とか思われたら致命的なのでしっかりと主張する。
 ただ、ラピスさんはレヴィさんと違って目つきが鋭いので睨まれたら結構怖かった。
 ラピスさんは「まあ、そういう事にしておきましょう」と言って他の魔道具に視線を向けたが、どれも見た事がある物だったらしく、質問タイムは終わった。
 隣で作業をしているノエルに視線を向けると、彼女はまだまだノルマがあるようだ。まあ、まだ日が暮れるには時間があるもんね。

「同じもの作るの飽きてきたから新しい魔道具作りたいんだけど……また今度にした方が良いかなぁ」
「実験でしたら、私が付き合いましょうか?」
「ラピスさんが?」
「ええ。これのお礼もありますし」

 ラピスさんがアイテムバッグから取り出したのは、依頼品を作る前にパパッと作った魔道具『ビデオカメラ』だ。名前は思いつかなかったので安直にそのままにした。
 うろ覚えの知識で作ったにしては、良い感じに見た目はできていると思う。中身は記録するための魔石を入れる空洞があるだけで何も詰まってないけど。
 記録した映像は専用の魔道具『プロジェクター』にセットして、壁やスクリーンに映す事で見る事ができる。
 以前、大国ヤマトの大王様に会いに行く時に使った記録用魔道具をもう一度作っても良かったんだけど、隠れて撮る事が目的ではないので、カメラのレンズを通して映った物しか記録しないようにしておいた。

「このような魔道具はダンジョンで見た事がありませんから一体いくらになるのか分かりませんけど、貰ってばかりだと申し訳ないですし、私からも何かできたらと思いまして」
「なるほど。どう思う? ノエル」
「別にいいんじゃないっすか。庭で実験するならわざわざ頼まなくてもジュリウスやレヴィに頼ればいいと思うっすし、わざわざラピス様にしてもらう必要はないっすけどね」
「……確かに?」
「ただまあ、ボクたちにない視点からアドバイスが貰えるかもしれないっすし、ジュリウスやレヴィが止めないんだったらいいんじゃないっすか?」
「なるほど。じゃあちょっと聞いてくるわ」
「新しい魔道具ができたらボクにも見せるっすよ」
「はいはい」

 そうと決まればとりあえずレヴィさんの所に行くか。ジュリウスは僕が屋敷を出たらついて来るだろうし。
 ラピスさんを連れてノエルの部屋を出ると、背中から「絶対見せるっすよ!」と声をかけられたので「分かってるよ」と振り返らずに答え、玄関へと向かった。



「別にいいと思うのですわ」
「ですわ~」
「ですわ!!」

 ドライアドたちと一緒に農作業をしていたレヴィさんに聞いたら「むしろ何か問題あるのですわ?」とでも言いたそうに首を傾げながら了承された。
 近くにいたドライアドたちは「ですわですわ」言っていて賑やかだ。
 メイド服姿のままレヴィさんと一緒に農作業をしていたセシリアさんに視線を向けても頷かれたし、僕の護衛としていつの間にか側にいたジュリウスに至っては「シズト様の御心のままに」としか言わないのでラピスさんと一緒に魔道具の実験をする事になった。
 レヴィさんとセシリアさんは草むしりと水やりを再開して、ドライアドたちも今は仕事モードなのか僕に寄ってきていた子たちも離れて行って植物の様子を見ている。
 ジュリウスは僕が求めたものをいつでも出せるようにアイテムバッグを準備していた。

「それで、どの様な物を作るのですか?」
「特に決めてないよ。同じ物ばっかり作ってると飽きてくるからちょっと気分転換で何か作ろうかなって」
「なるほど。……どの様な物を作る事ができるのかは分かりませんが、とりあえず人気の高い水を生み出す魔道具や、アイテムバッグを作ってはいかがでしょうか?」
「んー、どっちももう作った事があるんだよね。アイテムバッグは今も依頼として時々来るし、水を生成する魔道具はアクスファースから依頼が来てるし……除塩杭が一段落したらガレオールからも来るんじゃないかな」
「なるほど。では、魔剣はいかがですか?」
「それ作ったら怒られたし全部没収されたからなぁ。自分用に作っておいたお喋りの相手にもなってくれて、身体強化もしてくれる『トークソード』っていうのがあったんだけど、使用者の代わりに体を動かしてくれる機能つけたらそれも没収されたんだよね」
「……なるほど」
「いつ襲われるか分かんないし、自衛する程度の力は身に着けたいんだけどね」
「身体強化を使えるようになりたいのはそういうわけですか」
「そういうわけなんです」

 ふむ、と腕を組んで少しの間考え事をしていたラピスさんは「では、こういうのはどうでしょう」と魔道具の案を出してくれた。

「身体強化の機能だけに絞って魔道具を作るんです。他に追加で付与した物がまずかったのか、魔剣がまずかったのか分かりませんので、剣という形にこだわりがなければ身に着ける服とかにすればいいと思います。アクセサリーなどは場所によっては預かられてしまう事もありますが、服を没収される事態なんてそうそうありませんから」
「なるほど、パワードスーツみたいな感じか」

 以前、似たようなものを手袋で作ったけど、アレは腕力だけしか上がらなかったから、全体的に力が増すイメージで作ってみよう。
 とりあえずテスターとなるラピスさんが着ていた制服に【付与】をして、使用者の魔力に比例して力の補助をする魔道具にしてみた。
 ラピスさんが試しに跳躍した。とても高く飛んだ。しばらく上を見上げていると、ラピスさんが転移魔法で地上に戻ってきた。

「身体強化に慣れていないシズトは使わない方が良いと思います」
「やっぱり?」

 僕も力の加減ができなくてものを壊す未来しか見えない。
 ただ、それでもパワードスーツ的な物というか、身体強化は諦めきれないのでだいぶ効果を弱めてラピスさんと近くで見ていたジュリウスからオッケーが出るまで試作を続けるのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果  異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。  実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。  異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。  そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。  だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。  最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

処理中です...