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第19章 自衛しながら生きていこう
396.事なかれ主義者はもうしたくない
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シグニール大陸に戻ってきた翌日には結婚式をする事になった。
前回使ったタキシードを着た僕は今、海洋国家ガレオールに建てた教会に来ている。
既にランチェッタさんとディアーヌさんは教会の中で待っているはずだ。
今回、式を挙げる教会は生育の神ファマ様の教会だ。
人数のバランスを考えてこうなったけど、ガレオールの女王様的には付与の神様とかの方が良かったのかも?
ランチェッタさんだけじゃなくて、ディアーヌさんも特に何も言ってこなかったから別に問題ないんだろうけど……。
んー、と考え事をしていると、教会の中から音楽が流れ始めた。
前回と同じようにスピーカーを作って、別の場所で演奏をしてもらったものを室内に流してもらっている。
待機していたエルフ二人に両開きの扉を開けてもらうと、二人の女性が僕の方を見て待っていた。
二人とも真っ白なドレスを着ているが、小柄な方がランチェッタさんだ。
レヴィさんと同じくらいの大きさの胸が、胸元で深い谷間を作っていて目のやり場に困る。
ドレスはベルラインって言うやつだった気がする。ウエスト位置が高めで、スカートがふんわりと広がっていた。
褐色の肌が真っ白なドレスをより引き立たせているように感じた。
今日は丸眼鏡をしっかりとかけていて、まっすぐに僕の方を見ていた。
その隣に立っているディアーヌさんは上と下が分かれているドレスを着ていた。セパレートドレスだったはず。見れば分かるから名前を覚えやすい。
キュッと引き締まったお腹周りが丸見えでこれはこれで目のやり場に困る。
スカートが短めで、褐色の太ももは健康的な太さだ。貴族の女性って細いイメージがあるし実際ダイエット用魔道具は貴族相手に高値で取引されてるみたいだけど、魅力的だしこのくらいの太さはあっていいと思う。
参列者に見守られながら中央をゆっくりと歩いて行くと彼女たちは左右にずれて人一人分くらいのスペースができた。
その間に入り、神父役をお願いしたホムンクルスのアッシュを真っすぐに見ると、柔和な笑顔を浮かべた老神父風の彼はゆっくりと頷いた。
ファマ様への祈りを捧げた後は問いかけが始まる。
「汝シズトは、ランチェッタ、ディアーヌを妻とし、良き時も悪しき時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が分かつまで愛を誓い、妻たちを平等に愛する事を神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「誓います」
……慣れたとはいえなんかすごく左から視線を感じるからちょっと緊張した。
視線を僕の方に向けていたランチェッタさんは、自分たちの番になると僕からやっと視線を外した。
「汝らランチェッタ、ディアーヌは、シズトを夫とし、良き時も悪しき時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が分かつまで愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「「誓います」」
邪魔者が入ってくる事もなく、誓いの言葉が終わると今度は参列者の前で二人とキスをする事になる。
……よくよく考えたらこんなにたくさんの参列者は初めてかもしれない。
顔が熱くなったのを感じつつも、手早く終わらせようと左を向くとランチェッタさんと目が合った。
灰色の瞳でまっすぐに僕を見上げているランチェッタさんは、今日はヒールの低い靴を履いている。
「……シズト様? 誓いのキスをどうぞ」
ランチェッタさんと見つめ合う形になっていると、アッシュが僕たちだけに聞こえるくらいの小さい声で促してきた。
「わ、分かってる。……ランチェッタさん、目を瞑ってくれるとしやすいんだけど……」
「ダメよ。シズト殿のこの表情は珍しい気がするもの。今日はシズト殿の表情をしっかりと見るために眼鏡をかけてきたのよ? 絶対に目を瞑らないわ」
「シズト様、諦めてキスをしてください。後がつっかえていますので」
「そうね。いつまでもディアーヌを待たせていても申し訳ないわ。……私の方からいった方が良いかしら?」
これ以上躊躇していても進まないし、行動に移されたら焦るのが目に見えていたので自分のタイミングでランチェッタさんの唇に僕の唇を重ねた。
……目を閉じていてもランチェッタさんにガン見されているような気配がする。
唇を離してから目を開くと、口元を綻ばせたランチェッタさんが指で唇に触れていた。
「余韻に浸っていないで、私とも誓いのキスをお願いします」
「わ、分かったから服を引っ張らないで……!」
ディアーヌさんの身長は僕よりも少し低い程度なのでキスをする時に屈んだり背伸びをしてもらう必要はなさそうだった。
……おそらくディアーヌさんのご両親であろう人たちに加えて、ご兄弟の方々に見られながらキスをするのってすごく緊張するんですけど!?
ちょっとの間でいいから出て行ってくれないかなぁ。
「って、ディアーヌさんも目を開いたままするつもりなの!?」
「平等に愛してくださるんでしょう? で、あれば私も同じ事をした方が良いと思いまして」
嘘だ! 絶対僕を揶揄って楽しんでいる顔だこれ!
分かっていてもキスをしないわけにも行かず、目を閉じてサッと唇を重ねて終わろうとしたけど、ディアーヌさんに顔を掴まれてすぐに離れる事ができなかった。
「……揶揄うのはほどほどにしておきなさいよ」
「そういう事は口元を引き締めてから言った方が良いと思いますよ」
クスクスと笑っている二人に挟まれながら、結婚式はもうしたくないな、と思うのだった。
前回使ったタキシードを着た僕は今、海洋国家ガレオールに建てた教会に来ている。
既にランチェッタさんとディアーヌさんは教会の中で待っているはずだ。
今回、式を挙げる教会は生育の神ファマ様の教会だ。
人数のバランスを考えてこうなったけど、ガレオールの女王様的には付与の神様とかの方が良かったのかも?
ランチェッタさんだけじゃなくて、ディアーヌさんも特に何も言ってこなかったから別に問題ないんだろうけど……。
んー、と考え事をしていると、教会の中から音楽が流れ始めた。
前回と同じようにスピーカーを作って、別の場所で演奏をしてもらったものを室内に流してもらっている。
待機していたエルフ二人に両開きの扉を開けてもらうと、二人の女性が僕の方を見て待っていた。
二人とも真っ白なドレスを着ているが、小柄な方がランチェッタさんだ。
レヴィさんと同じくらいの大きさの胸が、胸元で深い谷間を作っていて目のやり場に困る。
ドレスはベルラインって言うやつだった気がする。ウエスト位置が高めで、スカートがふんわりと広がっていた。
褐色の肌が真っ白なドレスをより引き立たせているように感じた。
今日は丸眼鏡をしっかりとかけていて、まっすぐに僕の方を見ていた。
その隣に立っているディアーヌさんは上と下が分かれているドレスを着ていた。セパレートドレスだったはず。見れば分かるから名前を覚えやすい。
キュッと引き締まったお腹周りが丸見えでこれはこれで目のやり場に困る。
スカートが短めで、褐色の太ももは健康的な太さだ。貴族の女性って細いイメージがあるし実際ダイエット用魔道具は貴族相手に高値で取引されてるみたいだけど、魅力的だしこのくらいの太さはあっていいと思う。
参列者に見守られながら中央をゆっくりと歩いて行くと彼女たちは左右にずれて人一人分くらいのスペースができた。
その間に入り、神父役をお願いしたホムンクルスのアッシュを真っすぐに見ると、柔和な笑顔を浮かべた老神父風の彼はゆっくりと頷いた。
ファマ様への祈りを捧げた後は問いかけが始まる。
「汝シズトは、ランチェッタ、ディアーヌを妻とし、良き時も悪しき時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が分かつまで愛を誓い、妻たちを平等に愛する事を神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「誓います」
……慣れたとはいえなんかすごく左から視線を感じるからちょっと緊張した。
視線を僕の方に向けていたランチェッタさんは、自分たちの番になると僕からやっと視線を外した。
「汝らランチェッタ、ディアーヌは、シズトを夫とし、良き時も悪しき時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が分かつまで愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「「誓います」」
邪魔者が入ってくる事もなく、誓いの言葉が終わると今度は参列者の前で二人とキスをする事になる。
……よくよく考えたらこんなにたくさんの参列者は初めてかもしれない。
顔が熱くなったのを感じつつも、手早く終わらせようと左を向くとランチェッタさんと目が合った。
灰色の瞳でまっすぐに僕を見上げているランチェッタさんは、今日はヒールの低い靴を履いている。
「……シズト様? 誓いのキスをどうぞ」
ランチェッタさんと見つめ合う形になっていると、アッシュが僕たちだけに聞こえるくらいの小さい声で促してきた。
「わ、分かってる。……ランチェッタさん、目を瞑ってくれるとしやすいんだけど……」
「ダメよ。シズト殿のこの表情は珍しい気がするもの。今日はシズト殿の表情をしっかりと見るために眼鏡をかけてきたのよ? 絶対に目を瞑らないわ」
「シズト様、諦めてキスをしてください。後がつっかえていますので」
「そうね。いつまでもディアーヌを待たせていても申し訳ないわ。……私の方からいった方が良いかしら?」
これ以上躊躇していても進まないし、行動に移されたら焦るのが目に見えていたので自分のタイミングでランチェッタさんの唇に僕の唇を重ねた。
……目を閉じていてもランチェッタさんにガン見されているような気配がする。
唇を離してから目を開くと、口元を綻ばせたランチェッタさんが指で唇に触れていた。
「余韻に浸っていないで、私とも誓いのキスをお願いします」
「わ、分かったから服を引っ張らないで……!」
ディアーヌさんの身長は僕よりも少し低い程度なのでキスをする時に屈んだり背伸びをしてもらう必要はなさそうだった。
……おそらくディアーヌさんのご両親であろう人たちに加えて、ご兄弟の方々に見られながらキスをするのってすごく緊張するんですけど!?
ちょっとの間でいいから出て行ってくれないかなぁ。
「って、ディアーヌさんも目を開いたままするつもりなの!?」
「平等に愛してくださるんでしょう? で、あれば私も同じ事をした方が良いと思いまして」
嘘だ! 絶対僕を揶揄って楽しんでいる顔だこれ!
分かっていてもキスをしないわけにも行かず、目を閉じてサッと唇を重ねて終わろうとしたけど、ディアーヌさんに顔を掴まれてすぐに離れる事ができなかった。
「……揶揄うのはほどほどにしておきなさいよ」
「そういう事は口元を引き締めてから言った方が良いと思いますよ」
クスクスと笑っている二人に挟まれながら、結婚式はもうしたくないな、と思うのだった。
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