【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
上 下
573 / 1,094
第19章 自衛しながら生きていこう

384.事なかれ主義者は外観を気にしない

しおりを挟む
 ニホン連合の国の一つキョートは、ニホン連合の中でも数少ない宗教の自由が許された国らしい。
 もちろん、主流の宗教はあって、それ以外の宗教は色々制約があったり、国にそれなりのお金を納めたりしなきゃいけないんだけど。
 世界樹の番人の一人であるエルフのジュリーニは、キョートの首都フシミについて街を調査した際にその事を知ったらしい。
 途中の村や街は通過点に過ぎなかったので、速さ優先で行動していたため知らなかったんだとか。
 キョートの国主である京都雅孝様との交渉は主にレヴィさんが担当している。
 僕はそれにうんうんと頷いたり首を振ったり傾げたりするだけ。
 相手の考えを読んだり、妥協点を探したりする力は僕にはないので任せた方がいいし、なにより楽だ。
 身の安全は保障してくれるそうだし、キョートからは手を出さないって明言して貰えたから、さっさと終えて観光したい。
 教会については場所と建物は指定されているけれど、外観さえ弄らなければ好きにしていいと言われているし、最低限したい事はクリアしている。
 今交渉しているのは、転移陣の設置と魔道具店の出店に関わる事だった。
 お店を開く事にわざわざ許可なんて必要ないらしいんだけど、国境を越えて行き来出来てしまう転移陣を設置するとなるといろいろと根回しが必要だから事前にこうして話し合っているんだとか。
 優しく微笑んでいる雅孝様と、交渉する際によく使っている笑顔を張り付けたレヴィさんがしばらくの間、僕を介して話し合っていたけど、なんか他の事考えている間にまとまったようだ。
 雅孝様が席を立ったので、僕たちも席を立つ。
 背中に飛びついてきたクーをおんぶ紐でしっかりと固定してから部屋を後にした。
 城の外まで一緒に歩いている間も、話は基本的にレヴィさんにお任せだ。
 何やら社交界のお誘いをされているようだけど、やる事がみっちり詰まっているのでお断りしてもらった。
 雅孝様も参加するとは思っていなかったようで、あっさりと引き下がって、キョートの観光名所などの話になった。これはしっかり聞いておかないと!
 ジューンさんと一緒に、レヴィさんが聞き取りをする内容を静かに聞いていると、城門まですぐに着いてしまった。

「これからよろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 最後に雅孝様からぺこりとお辞儀をされたので、同じくお辞儀をして挨拶をしてから分かれた。
 城門から一歩出ると、大通りがまっすぐに続いている。
 左右にも通りが続いているけれど、まずはまっすぐ進んだ先に用があるので歩き始めると、隣にレヴィさんがやってきて手を握ってきた。

「疲れたのですわ~」
「お疲れ様。どうだった?」
「……疲れたから、後で話すのですわ~」

 どうやら今はその話をするタイミングじゃないらしい。
 ギュッと手を握ってきたレヴィさんは僕の視線に気づいて、にこっと微笑んだ。
 まあ、国主様の御心をこんな往来で聞くわけには行かないか。
 しばらく歩き続けると、大きな交差点が見えてきた。
 その交差点は今歩いている南北に延びる大通りと、東西に延びる道の交差地点であり、フシミの中心らしい。
 交差点は馬車や人々の往来がたくさんあるが、そのほとんどが南か北に行っている。
 東か西に行く人は少ないし、そのほとんどが徒歩だ。
 右を向いても左を向いても同じ見た目の建物が等間隔にずらりと並んでいる。
 教会通りと名付けられた東西に延びる通りは、文字通り国の許可を得た教会が軒を連ねている通りだった。
 僕の加護を授けてくれた神様たちは新参者なので、この通りの一番端っこの方だ。
 交差点を曲がってひたすら歩き続けていると、いろんな人が近づいて来ようとするけれど、護衛としてついて来たジュリウスやラオさんたちに止められている。
 いつの間にか僕を中心として陣形が組まれていた。

「宗教勧誘がすごいね」
「勧誘をしてもいい区画がそれぞれ決められていて、各々の教会の前の通りまでなのですわ。だから端っこの方まで行こうとするとたくさん勧誘にあって大変なのですわ」
「そうなんですねぇ。信者さんを増やすのはぁ、大変そうですぅ」
「そうですわね。加工の神様であるプロス様は難しいと思うのですわ。まあ、一部熱狂的な信者がつくかもしれないですけれど……。ファマ様の知名度は世界樹のおかげで悪くないですし、少しずつ増えるんじゃないかと思うのですわ。エント様は魔道具店次第ですけれど……こっちも心配はあまり必要ないと思うのですわ」

 ジュリウスを先頭に、勧誘をかき分けて進み続けると真っ白な馬車と、エルフの集団が見えてきた。
 他の神様を祀っている教会に引きずり込まれる事なく、無事に目的地に到着する事ができた。

「クーは馬車で寝てる?」
「………」

 返事がない。眠っているようだ。
 スヤスヤと気持ちよさそうに寝ているらしいので、このまま三柱の教会を見て行こう。
 三柱の教会はこちらの要望で、三軒並んで用意してもらった。
 先に到着していたジュリーニたちが既に何の神様を祀っている教会かを表す看板を設置しているけど、その看板以外は三軒とも全く同じ建物だ。
 この国の国教となっている教会と比べると小さいし地味だ。
 世界樹の番人の中で過激な子たちは不満そうな様子だけど、拠点として使うだけだからそんな目立つような建物じゃなくていいや。
 その後、軽く中を見て回ったけど間取りも何もかも一緒だった。
 内装は自由にしていいという事だったので、また今度時間がある時にしっかり作ろう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!

林檎茶
ファンタジー
 俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?  俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。  成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。  そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。  ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。  明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。  俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。  そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。  魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。  そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。  リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。  その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。  挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果  異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。  実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。  異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。  そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。  だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。  最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

処理中です...