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第19章 自衛しながら生きていこう
384.事なかれ主義者は外観を気にしない
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ニホン連合の国の一つキョートは、ニホン連合の中でも数少ない宗教の自由が許された国らしい。
もちろん、主流の宗教はあって、それ以外の宗教は色々制約があったり、国にそれなりのお金を納めたりしなきゃいけないんだけど。
世界樹の番人の一人であるエルフのジュリーニは、キョートの首都フシミについて街を調査した際にその事を知ったらしい。
途中の村や街は通過点に過ぎなかったので、速さ優先で行動していたため知らなかったんだとか。
キョートの国主である京都雅孝様との交渉は主にレヴィさんが担当している。
僕はそれにうんうんと頷いたり首を振ったり傾げたりするだけ。
相手の考えを読んだり、妥協点を探したりする力は僕にはないので任せた方がいいし、なにより楽だ。
身の安全は保障してくれるそうだし、キョートからは手を出さないって明言して貰えたから、さっさと終えて観光したい。
教会については場所と建物は指定されているけれど、外観さえ弄らなければ好きにしていいと言われているし、最低限したい事はクリアしている。
今交渉しているのは、転移陣の設置と魔道具店の出店に関わる事だった。
お店を開く事にわざわざ許可なんて必要ないらしいんだけど、国境を越えて行き来出来てしまう転移陣を設置するとなるといろいろと根回しが必要だから事前にこうして話し合っているんだとか。
優しく微笑んでいる雅孝様と、交渉する際によく使っている笑顔を張り付けたレヴィさんがしばらくの間、僕を介して話し合っていたけど、なんか他の事考えている間にまとまったようだ。
雅孝様が席を立ったので、僕たちも席を立つ。
背中に飛びついてきたクーをおんぶ紐でしっかりと固定してから部屋を後にした。
城の外まで一緒に歩いている間も、話は基本的にレヴィさんにお任せだ。
何やら社交界のお誘いをされているようだけど、やる事がみっちり詰まっているのでお断りしてもらった。
雅孝様も参加するとは思っていなかったようで、あっさりと引き下がって、キョートの観光名所などの話になった。これはしっかり聞いておかないと!
ジューンさんと一緒に、レヴィさんが聞き取りをする内容を静かに聞いていると、城門まですぐに着いてしまった。
「これからよろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
最後に雅孝様からぺこりとお辞儀をされたので、同じくお辞儀をして挨拶をしてから分かれた。
城門から一歩出ると、大通りがまっすぐに続いている。
左右にも通りが続いているけれど、まずはまっすぐ進んだ先に用があるので歩き始めると、隣にレヴィさんがやってきて手を握ってきた。
「疲れたのですわ~」
「お疲れ様。どうだった?」
「……疲れたから、後で話すのですわ~」
どうやら今はその話をするタイミングじゃないらしい。
ギュッと手を握ってきたレヴィさんは僕の視線に気づいて、にこっと微笑んだ。
まあ、国主様の御心をこんな往来で聞くわけには行かないか。
しばらく歩き続けると、大きな交差点が見えてきた。
その交差点は今歩いている南北に延びる大通りと、東西に延びる道の交差地点であり、フシミの中心らしい。
交差点は馬車や人々の往来がたくさんあるが、そのほとんどが南か北に行っている。
東か西に行く人は少ないし、そのほとんどが徒歩だ。
右を向いても左を向いても同じ見た目の建物が等間隔にずらりと並んでいる。
教会通りと名付けられた東西に延びる通りは、文字通り国の許可を得た教会が軒を連ねている通りだった。
僕の加護を授けてくれた神様たちは新参者なので、この通りの一番端っこの方だ。
交差点を曲がってひたすら歩き続けていると、いろんな人が近づいて来ようとするけれど、護衛としてついて来たジュリウスやラオさんたちに止められている。
いつの間にか僕を中心として陣形が組まれていた。
「宗教勧誘がすごいね」
「勧誘をしてもいい区画がそれぞれ決められていて、各々の教会の前の通りまでなのですわ。だから端っこの方まで行こうとするとたくさん勧誘にあって大変なのですわ」
「そうなんですねぇ。信者さんを増やすのはぁ、大変そうですぅ」
「そうですわね。加工の神様であるプロス様は難しいと思うのですわ。まあ、一部熱狂的な信者がつくかもしれないですけれど……。ファマ様の知名度は世界樹のおかげで悪くないですし、少しずつ増えるんじゃないかと思うのですわ。エント様は魔道具店次第ですけれど……こっちも心配はあまり必要ないと思うのですわ」
ジュリウスを先頭に、勧誘をかき分けて進み続けると真っ白な馬車と、エルフの集団が見えてきた。
他の神様を祀っている教会に引きずり込まれる事なく、無事に目的地に到着する事ができた。
「クーは馬車で寝てる?」
「………」
返事がない。眠っているようだ。
スヤスヤと気持ちよさそうに寝ているらしいので、このまま三柱の教会を見て行こう。
三柱の教会はこちらの要望で、三軒並んで用意してもらった。
先に到着していたジュリーニたちが既に何の神様を祀っている教会かを表す看板を設置しているけど、その看板以外は三軒とも全く同じ建物だ。
この国の国教となっている教会と比べると小さいし地味だ。
世界樹の番人の中で過激な子たちは不満そうな様子だけど、拠点として使うだけだからそんな目立つような建物じゃなくていいや。
その後、軽く中を見て回ったけど間取りも何もかも一緒だった。
内装は自由にしていいという事だったので、また今度時間がある時にしっかり作ろう。
もちろん、主流の宗教はあって、それ以外の宗教は色々制約があったり、国にそれなりのお金を納めたりしなきゃいけないんだけど。
世界樹の番人の一人であるエルフのジュリーニは、キョートの首都フシミについて街を調査した際にその事を知ったらしい。
途中の村や街は通過点に過ぎなかったので、速さ優先で行動していたため知らなかったんだとか。
キョートの国主である京都雅孝様との交渉は主にレヴィさんが担当している。
僕はそれにうんうんと頷いたり首を振ったり傾げたりするだけ。
相手の考えを読んだり、妥協点を探したりする力は僕にはないので任せた方がいいし、なにより楽だ。
身の安全は保障してくれるそうだし、キョートからは手を出さないって明言して貰えたから、さっさと終えて観光したい。
教会については場所と建物は指定されているけれど、外観さえ弄らなければ好きにしていいと言われているし、最低限したい事はクリアしている。
今交渉しているのは、転移陣の設置と魔道具店の出店に関わる事だった。
お店を開く事にわざわざ許可なんて必要ないらしいんだけど、国境を越えて行き来出来てしまう転移陣を設置するとなるといろいろと根回しが必要だから事前にこうして話し合っているんだとか。
優しく微笑んでいる雅孝様と、交渉する際によく使っている笑顔を張り付けたレヴィさんがしばらくの間、僕を介して話し合っていたけど、なんか他の事考えている間にまとまったようだ。
雅孝様が席を立ったので、僕たちも席を立つ。
背中に飛びついてきたクーをおんぶ紐でしっかりと固定してから部屋を後にした。
城の外まで一緒に歩いている間も、話は基本的にレヴィさんにお任せだ。
何やら社交界のお誘いをされているようだけど、やる事がみっちり詰まっているのでお断りしてもらった。
雅孝様も参加するとは思っていなかったようで、あっさりと引き下がって、キョートの観光名所などの話になった。これはしっかり聞いておかないと!
ジューンさんと一緒に、レヴィさんが聞き取りをする内容を静かに聞いていると、城門まですぐに着いてしまった。
「これからよろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
最後に雅孝様からぺこりとお辞儀をされたので、同じくお辞儀をして挨拶をしてから分かれた。
城門から一歩出ると、大通りがまっすぐに続いている。
左右にも通りが続いているけれど、まずはまっすぐ進んだ先に用があるので歩き始めると、隣にレヴィさんがやってきて手を握ってきた。
「疲れたのですわ~」
「お疲れ様。どうだった?」
「……疲れたから、後で話すのですわ~」
どうやら今はその話をするタイミングじゃないらしい。
ギュッと手を握ってきたレヴィさんは僕の視線に気づいて、にこっと微笑んだ。
まあ、国主様の御心をこんな往来で聞くわけには行かないか。
しばらく歩き続けると、大きな交差点が見えてきた。
その交差点は今歩いている南北に延びる大通りと、東西に延びる道の交差地点であり、フシミの中心らしい。
交差点は馬車や人々の往来がたくさんあるが、そのほとんどが南か北に行っている。
東か西に行く人は少ないし、そのほとんどが徒歩だ。
右を向いても左を向いても同じ見た目の建物が等間隔にずらりと並んでいる。
教会通りと名付けられた東西に延びる通りは、文字通り国の許可を得た教会が軒を連ねている通りだった。
僕の加護を授けてくれた神様たちは新参者なので、この通りの一番端っこの方だ。
交差点を曲がってひたすら歩き続けていると、いろんな人が近づいて来ようとするけれど、護衛としてついて来たジュリウスやラオさんたちに止められている。
いつの間にか僕を中心として陣形が組まれていた。
「宗教勧誘がすごいね」
「勧誘をしてもいい区画がそれぞれ決められていて、各々の教会の前の通りまでなのですわ。だから端っこの方まで行こうとするとたくさん勧誘にあって大変なのですわ」
「そうなんですねぇ。信者さんを増やすのはぁ、大変そうですぅ」
「そうですわね。加工の神様であるプロス様は難しいと思うのですわ。まあ、一部熱狂的な信者がつくかもしれないですけれど……。ファマ様の知名度は世界樹のおかげで悪くないですし、少しずつ増えるんじゃないかと思うのですわ。エント様は魔道具店次第ですけれど……こっちも心配はあまり必要ないと思うのですわ」
ジュリウスを先頭に、勧誘をかき分けて進み続けると真っ白な馬車と、エルフの集団が見えてきた。
他の神様を祀っている教会に引きずり込まれる事なく、無事に目的地に到着する事ができた。
「クーは馬車で寝てる?」
「………」
返事がない。眠っているようだ。
スヤスヤと気持ちよさそうに寝ているらしいので、このまま三柱の教会を見て行こう。
三柱の教会はこちらの要望で、三軒並んで用意してもらった。
先に到着していたジュリーニたちが既に何の神様を祀っている教会かを表す看板を設置しているけど、その看板以外は三軒とも全く同じ建物だ。
この国の国教となっている教会と比べると小さいし地味だ。
世界樹の番人の中で過激な子たちは不満そうな様子だけど、拠点として使うだけだからそんな目立つような建物じゃなくていいや。
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