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第19章 自衛しながら生きていこう

381.事なかれ主義者は呼ぶつもりはない

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 昼食を終えて迎賓館に向かうと、リヴァイさんたちは外で待っていた。
 待っていた男性陣は動きやすそうな服を着ていた。
 迎賓館周辺には特に遊び道具などを用意していなかったので遊ぶ予定はなかったんだけど、主にリヴァイさんとラグナさんの熱い要望に応えて独楽で遊ぶ事にした。
 もっと体を動かす系の遊びは人数が足りないと思った事と、三人の男性陣をジト目で見ていた王妃様がドレスを着ているからそういう事になった。パールさんはレヴィさんと同じような、簡易的なドレスで少し動き辛そうだったから。
 単純な独楽遊びであれば勝てるんじゃないか、と思ったけど考えが甘かったようだ。
 男性陣三人は体を動かす事に慣れているからなのか、すぐに独楽を回せるようになって、金属で作った簡易スタジアムで試し投げをしていた。
 ただ、しばらくすると魔力を纏わせて独楽を回し始め、お互いの独楽を弾き出そうと何度もぶつかっていた。
 付与をしてない独楽なのに、回転が終わる気配がない。
 何かにぶつかれば流石に勢いは弱まるけど、それでもくるくると回っている。
 また、何も付与してないのにぶつかる度に火花が散っていた。
 こりゃ普通にやったら勝てないな、と思って独楽に付与をしてみたけど一瞬でバレてしまってレヴィさんに没収されてしまった。

「身体強化が使えないんだから仕方ないと思います!!」
「自分自身の力で勝負した方が楽しいと思うのですわ~」
「加護も自分の力の一つだから! 借り物だけど! レヴィさんだって遊びの時に加護を使うじゃん!」
「………」

 レヴィさんはそっぽを向いて返事をする事はなかったけど、独楽が帰ってくる事はなかった。
 勝つために付与モリモリにしたのが良くなかったかなぁ。
 そんな事を思いながらしばらく普通の独楽で遊んだ。
 独楽を遊んだ後は、町の案内をしてほしいという事で、まずはさらっと外縁部の様子を見てもらった。
 建設途中の建物ばかりで面白い所なんてないと思っていたけど、満足して貰えたようだ。
 今もたくさんの子どもたちが乗っている魔動トロッコを見送りながらリヴァイさんとパールさんが話をしていた。

「やっぱりどうにかして魔動トロッコとやらを実用化できんかな」
「王都内を走らせるのは現実的ではないんじゃないかしら。線路をどこに設置するのかとか、馬車との兼ね合いとか問題が山積みでしょう?」
「そこら辺は何とでもなるだろう」

 リヴァイさんの後ろで控えていた近衛兵たちがぶんぶんと首を横に振っていたけど、リヴァイさんは気にしていないのか気づいていないのか分からないけど無視していた。

「大通りに設置をするだけでも変わるんじゃないか? 一定の速さまでしか出せないようだし、事故は起きにくいだろうしな」
「それでもゼロとは言えないでしょう? トロッコのために回転の魔道具を依頼するより、もっと別の事に使えるか模索するべきじゃないかしら?」
「回転の力を利用する者は色々ありますからね」

 芝刈り機とか魔動散水機とかちょっと回転が入ってるんじゃないかって思ってる。
 それに、船に取り付ければスクリュー代わりになったし、粉を引く時に使う道具にも使えそうだ。あとハンドミキサーとか料理をする時に使う物とか。
 ……そういえば丸鋸? とかいうのもあったなぁ。刃をつければチェーンソーになるんじゃないかな。
 ああ、でもそれに使うのであれば高速回転するレベルじゃないとダメか。
 ゆっくり回る物を考えたらベルトコンベアーとか?
 アレを応用すれば動く歩道とかもできるよな。
 エスカレーターとかエレベーターの仕組みは細かいところまで知らないけど、頑張ればできるのではないだろうか。
 ……まあ、ある場所からある場所への移動を楽にする運だったらそんな物を作るより転移陣を作った方が早いんだけど。

「魔動船や魔動車は回転の力を使っているのですわ?」
「そうだね。前世だとエンジンかなんかで回した力を車輪に伝達させてたはずだけど、細かいパーツが分からなかったから車輪やスクリューに直接付与したんだよ」
「なんとなく意味は分かるのだけれど、魔動船や魔動車って何かしら? 船や馬車を魔道具にして魔力で動かすのかしら?」
「そんな感じです。船は風に関係なくどんどん進みますし、車は馬を必要としないので魔力が続く限りずっと進み続けられます」
「……それは、量産できるのか?」
「今の所僕が付与した物しか実用性はないですね。別館に住んでいるジューロっていうエルフが回転の魔道具の改良案を研究してますけど、報告がないので特に進展はないんだと思います」

 まあ、トロッコくらいのスピードであれば魔動車くらいならもう作れるんだろうけど。
 リヴァイさんとパールさんは何やら考え込んでしまった。
 外縁部は一通り見て回ったので、次はラグナさんが見たいと言ったので西区と北区の間にある研修所に向かう事にした。
 リヴァイとパールさんは、ラグナさんと一緒に少し離れたところからついて来ていて、何やら話をしているようだ。
 二人の代わりに僕の隣に来たのはガントさんだ。
 レヴィさんのお兄さんで、僕の義兄に当たる人だ。
 パールさん譲りの鋭い目つきでちょっと怖い印象があるけど、話してみると普通に優しいお兄ちゃんだった。ただ、ちょっと負けず嫌いな所があるけど。
 ガントさんは心配そうな表情で僕を見下ろしてきた。

「あの三人がドラゴニアに住む事になったが、本当に大丈夫か? エンジェリアの指示だったとはいえ、一度襲ってきた相手だろう?」
「そこは大丈夫ですよ。もう謝罪はしてもらえましたから」
「……そこは?」

 おっと。引っかかるような物言いをしてしまった。

「前の世界での関係性のせいでちょっと思う所はあるので。ただ、あれは僕も悪い所はあったなと思うのでお互い様ですね」
「……そうか。まあ、シズト殿が気にしないのであればいいんだが……何かあったら遠慮せずに呼べ。すぐに駆け付ける」
「ありがとうございます」

 たぶん呼ぶ事はないけど、気持ちだけ受け取っておく。
 流石に子どもの喧嘩に第一王子を呼ぶわけにも行かないしね。
 ガントさんも本気で言ったわけじゃないんだろう。
 その後、勇者の話をガントさんはしてこなかった。
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