【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第19章 自衛しながら生きていこう

378.事なかれ主義者は子ども扱いされた

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 いつものごとく急に来訪してきたリヴァイさんとラグナさんの王侯貴族コンビは今回、パールさんとガントさんを連れてやってきた。
 連れてやってきた、というよりもついて来てしまったらしいけど、僕としては同じ事だ。
 パールさんはレヴィさんのお母様で、この国の王妃殿下だ。
 ラグナさんたちを「さん付け」で呼んでいるのを聞いて自分もそう呼べと言ってきたけどつい「パール様」とか「パール王妃殿下」と言ってしまうのはその眼光が鋭いからだろうか。
 きつい印象を与える目は髪と同じく淡い赤色だ。
 レヴィさんと似ているのは顔の横ら辺にあるツインドリルくらいだろうか。レヴィさんの規格外な胸は魔道具の影響だから当然と言えば当然なんだけど。
 僕と同じくらいの背丈でスラッと伸びた手足を使ってボウリングの球を投げている。
 転がしておらず、思いっきり、投げている。

「やっぱり両端に残ってしまうわね。下手だから義理の息子にご教授してもらおうかしら」
「僕はもっと下手ですので難しいかと……」
「そんな事ないわ。身体強化を使わず手加減をしてくれているのでしょう?」
「いえ……その身体強化が使えないので……」
「………そう」

 きょとんとしたパールさんは首を傾げて「本当かしら?」なんて呟いているけどマジっす。
 別館に住んでいるピンク髪の幼女であるアンジェラすら使えるけど、僕は使えないんすよ。
 レヴィさんがパールさんに「嘘じゃないですわ」と説明してくれているけど、なんだか複雑な気分だ。
 レーンに魔力を流して傷ついた場所を修復させつつ、吹き飛んでいったピンが並ぶのを待つ。
 複雑な気持ちを込めて投げたボールはちょっと横に行きすぎたのか、全部倒す事は出来なかった。
 夕暮れ時にパールさんと遊んでいるけど、リヴァイさんとラグナさんはいない。
 今頃迎賓館で勇者三人組と今後について話をしている頃だろう。
 リヴァイさんもラグナさんも僕が「気にしない」と言ったら「好きにすればいい」と言っていたけど、パールさんが一睨みすると、すごすごと馬車に乗って迎賓館に向かっていった。明たちも黙って馬車の後をついて行ったので彼らもここにはいない。
 パールさんはツリ目がちで元々怖い印象があるけど、眉間に皺を寄せて睨みつけたあの顔はほんとに怖かったな。
 なんて事を考えながら二投目を投げたら溝に入ってしまった。余計な事を考えてたのが失敗の原因だな。
 レーンの横の溝部分を転がって戻ってきたマイボールを抱えて皆の所に戻ると、パールさんがポンポンと頭を優しく叩いた。
 その顔は先程の怖い顔が嘘のように優しかった。
 あの顔もできるならいつもそうしていてくれればいいのに、なんて思いつつボウリングを楽しんだ。



 リヴァイさんとラグナさんは日が暮れても戻って来なかった。
 その代わり、二人の護衛としてついて行った兵士の内一人が戻ってきて、今日の所は迎賓館に宿泊すると伝えてくれた。
 パールさんとガントさんもそちらに泊まる予定だったらしい。周囲を警備していた兵士たちを引き連れて街に消えていった。
 ガントさんとはほとんど話す事ができなかったけど、また明日やってくるそうだから、その時に話せばいいか。
 少し遅くなってしまったけど、全員待っていてくれたので遅めの夕食を食べてのんびりと過ごした後、お風呂に入る。
 こっちに戻ってきたらお世話係は再開、という事で水着姿のモニカが数歩後ろを歩いていた。
 お風呂の時、モニカはこちらが求めた事だけをしてくれるから安心して身をゆだねる事ができるので、のんびりと明日やるべき事を考える。

「トネリコのお世話は午前中にするとして……リヴァイさんたちと会うのはお昼くらいだっけ」
「はい。昼食を取りながらでもいい、という事でしたがいかがなさいますか?」
「食事はこの屋敷でする感じになるのかな」
「おそらく」
「じゃあエミリーに聞いて問題なかったらお昼食べながらにしようか」
「かしこまりました」

 あっという間に僕の背中と両腕を洗い終えたモニカは、僕の体についた泡を軽く洗い流すと、少し下がってくるりと反対方向に体を向けた。
 それを確認してから僕もササッと体を洗う。
 すぐそばにモニカがいるけど、話をしている途中だとモニカが判断した場合はよくある事だった。

「ランチェッタ様に定期的に会う約束をしてたから、そのお伺いの手紙を今日書いて送るけど、返事が返ってきていたら事前に手紙を確認してもらってもいい? 多分明日は日が暮れるまで読む時間がないだろうから。緊急の用件かもしれないし」
「かしこまりました。お返事を書く準備はしておきますか?」
「んー、そこら辺は自分でするからいいよ」

 便箋と筆記具と封筒を出しておくだけだからすぐに終わるだろうし。
 ランチェッタ様との約束は明確に何かが決まっているわけじゃないから余計に悩むんだよな。
 会う頻度とか、場所とか。
 まあ、そこら辺はまた返事が返ってきてから考えよう。
 向こうから提案があるかもしれないし。
 体を一通り洗い終えたので自分で泡を流し、モニカと肩を並べて電気風呂にのんびりと入った。
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