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第19章 自衛しながら生きていこう

370.事なかれ主義者は置いてけぼり

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 元都市国家フソーの大きな通りを魔動車が進んでいく。
 車体をアダマンタイトで覆ってしまったので、車内からは外の景色を見る事ができないのがこの魔道具の欠点だろう。
 魔道具によって照らされた車内には、僕とレヴィさんが仲良く並んで座っていて、向かい側にお招きした国のお偉いさんが並んで座っている。
 元々ゆったりと過ごす事ができるようにと作られた馬車を魔改造したので車内は広いはずなんだけど、ギュスタン様が乗るとちょっと狭いような気がする。
 端っこに座って極力小さくなるように足を閉じて座っているギュスタン様の隣には足を開いて偉そうに座っているエンゲルト様がいた。そしてその隣に、レスティナ様がいる。
 三人並んでもらっているから結構狭そうだ。
 クーにお願いして空間魔法で広くして貰えばよかったかなぁ。
 そんな事を考えつつ視線をきょろきょろと彷徨わせていると、扉がノックされた。
 しばらく待っていると扉が外から開けられてジュリウスが顔を出した。

「農場に到着しました」
「ありがとジュリウス」

 我先にと下りて行ったレヴィさんの後について降りると、目の前には畑が広がっていた。
 ここ数日でやっていた事の三つ目は、街の改造だ。
 都市国家フソーの北側は既に僕の物となっている。
 住んでいた住人は誰もおらず、ゴーストタウンのようになるくらいなら建物を取り壊して畑にしてしまおう、といくつか古そうな建物を空き地にしたのだ。
 世界樹に集まって作られたフソーの街は、そのほとんどが木造建築だったから【加工】を使えば楽に解体できた。
 解体っていうか、加工して木の板を量産しただけなんだけど。
 加工できない物はジュリウスにアイテムバッグに入れてもらって、跡形もなくなった広い空き地を耕しているんだけど、作業が途中だったのは作業をする様子も見せようかと思ったからだ。

「耕してくるのですわ~~」

 嬉々として魔道具を使っている所を見せようとレヴィさんが放置されていた魔動耕耘機に駆け寄っていく。
 ……え、この人たちの相手してくれないの!? 農作業をする予定だった近衛兵たちも戸惑ってるよ!?
 セシリアさんに視線を向けると、やれやれ、といった感じでレヴィさんの後を追った。
 そういう意図じゃないんですけど!?
 残された僕にとても視線が集まっているのがよく分かる。
 そんな僕に話しかけてきたのは御者席から降りてきたサラディオ様だ。

「いやー、魔動車はとても素晴らしいのう。あれであれば、アダマンタイトと交換でも問題ないじゃろうが……実際どのくらいの量のアダマンタイトと交換をするつもりなんじゃ?」
「えー……とですねぇ……」

 レヴィさんの方を見るけど、彼女はドレス姿だというのにも関わらず嬉々として魔動耕耘機を押して中途半端な所で止まっていた作業を再開していた。

「……ちょっと分からないですね」
「あれは求めたら四ヵ国ともに売ってくださるのかしら?」
「そう、ですね。アダマンタイトと交換であれば……」
「それで、いくら分のアダマンタイトなんだよ、この魔道具は」

 不機嫌そうに尋ねてくるエンゲルト様。それは僕が知りたいっす。
 いったいこれはいくらなのか。
 少なくとも普通の魔道具の相場で売ってはダメだろう。
 こればっかり量産していると他の事ができなくなってしまうから、そこら辺の貴族じゃ手も足も出ないほど高価にした方がこちらとしては都合がいい。というか、そうしないとアダマンタイトなんて手に入らない気がするし。
 四ヵ国の内で一番少ない量の国に合わせるべきかな?
 なんて事を考えていたらレヴィさんが戻ってきた。

「持ってきたアダマンタイト全てですわ」
「……それぞれの国が交渉用として持ってきたアダマンタイトに差があると思うのじゃが?」
「一番多く持ってきた国を基準として、足りない分は現金で払ってもらうのですわ~。もちろん、他の物を求めるのであれば個別で応じるのですわ。ちなみに、このドレスに付与されている魔法は便利なのですわ! こーんなに汚れても魔力を流せばこの通りピッカピカなのですわ! 頻繁に洗う事ができない物に付与すると重宝するのですわ~」
「汚れる前提で行動するのってレヴィさんくらいだから、そこまで需要ないんじゃないかなぁ。それよりも『ポケットクリーナー』の方が良いんじゃない? どこでも使えるし」
「でもそれは魔力をずっと流し続けなくちゃいけないのですわ。全身隈なくきれいにするならば、こっちの魔道具の方が便利なはずですわ!」
「いや、全身泥まみれになるのってレヴィさんくらいじゃないかなぁ」

 レヴィさんの後ろで何度も頷いているセシリアさんに同情する。

「子どもはすぐに服を汚すからありじゃないかしら」
「すぐに成長もするから服よりもポケットクリーナーとやらの方が名前的にいいんじゃないかのう?」
「確かに、一着ずつだと大変そうよね、シズト殿が」

 レスティア様とサラディオ様がレヴィさんを見ながら話している。
 二人とも左手の薬指に指輪をしている所を見ると、結婚していて子どもがいるのだろう。
 お子さんの事を聞いたら藪蛇になるかもしれないから黙っておこう。

「あの魔道具は何というのでしょうか」
「魔動耕耘機なのですわ。どんな土でも簡単に耕せて畑にできるからとても便利なのですわ~」
「それはすごいですね」
「……ギュスタン様も農作業を行った経験があるのですわ?」
「ええ、希少性の高い作物は自分で育てた方が手に入りやすくなりますから……」
「であれば、やはりここにある魔道具も説明しなくちゃいけないのですわ!」

 レヴィさんが何やらセシリアさんにドヤ顔している。
 農作業用の魔道具は不要だろう、的な事を言われたのかもしれない。
 その後、レヴィさんは嬉々としてギュスタン様に農作業用の魔道具について説明し、ギュスタン様は説明されるたびに「便利ですねぇ」と感心していた。
 ………魔動車の試乗はもういいんですかね。
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