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第19章 自衛しながら生きていこう
369.事なかれ主義者はお披露目した
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しばらく迎賓館の一室で話をしているとレスティア様に「実際に見て見ないと何が欲しいか分からないわ」と言われたので、僕たちは部屋を出て迎賓館の案内を始めた。
先行するのは世界樹の番人や、レヴィ様直属の近衛兵たちだ。
その後ろを、レヴィさんと並んで一緒に歩いている。
腕を組まれて当たってしまっている柔らかな感触に意識が持っていかれないように気を付けていると、後ろから声が聞こえてきた。
「貴重な魔道具がこんなにあるなんて素晴らしいですわ。特に脱衣所と浴室にはこだわりを感じますね。やはり勇者様の同郷の方だからでしょうか」
レスティナ様が僕の後をついて歩きながら興奮気味に話しをしているようだ。
話し相手は彼女の隣を歩いていたサラディオ様だ。
彼は室内に目を配りながらゆっくりと歩いていて「そうかもしれないのう」と相槌を打っていた。
この二人は魔道具に興味津々で、その様子を見ているとここ数日迎賓館の魔道具を作り続けた甲斐があったと感じる。
二人のすぐ後ろにはギュスタン様が額の汗を拭きながらついてきていた。ただ、歩いたから汗をかいたわけじゃなくて、汗っかきなんだそうだ。
ギュスタン様から数歩離れた所にはエンゲルト様が歩いているが、前を見ずにそっぽを向いている。
代理で来たって言ってたけど、あんな態度取ってて大丈夫なのかな。
彼の護衛っぽい人たちは顔に手を当てて天を仰いでいる時もあったけど、今は僕たちの後ろをぞろぞろとついて来ていた。
「僕はクリーンルームっていう部屋が気に入りました。個人的に欲しいですね」
「クリーンルームほどの大きな魔道具ですと、作り置きがないのでしばらく待ってもらう事になりますが大丈夫でしょうか?」
「構いませんよ」
「じゃあ金額についてはレヴィさんと話し合ってください。こっちの大陸の相場とか分からないので」
レヴィさんは心を読む事ができるから相手が相場を知っている場合、交渉中に知る事ができる。
相手の思考を意図せず読み取ってしまう厄介な加護だけど、交渉に関しては相手の手札が丸見えだから結構有利だとレヴィさんが嬉しそうに言ってたっけ。
隣を歩くレヴィさんに視線を向けると、バチッと目があった。
僕が作った『加護無しの指輪』という魔道具は現在嵌められておらず、僕の考えを読み取ってしまった様子でこくりと頷かれた。
何とも言えない気持ちになっていると、後ろを歩いていたレスティナ様が話しかけてきた。
「ねぇ、シズト様。あそこに置かれている箱も魔道具かしら?」
「ああ、埃吸い吸い箱の事でしょうか? 室内にある埃だけを吸い込んで集めてくれるんです」
「……そう。お掃除が楽になりそうね」
「家事って大変な事がたくさんありますから、掃除に限らず、炊事も洗濯も全部楽になるように魔道具を作ってるんですよ。使用人用の場所に入らないとないと思うのでお見せ出来ませんけど」
「どういうものがあるんじゃ?」
「食器を洗ったり乾燥させたりしてくれる物とか、単純に食品を冷やしたり凍らしたりしてくれる物とか……あとはミキサー……容器に入れた物を自動で細かく刻んでくれる物とか、泡立て器とか?」
「そんな事使用人にやらせればいいから必要ねぇだろ」
エンゲルト様には鼻で笑われたけど、レスティナ様もサラディオ様も今ひとつピンと来てないようだ。
ただ、ギュスタン様は「それはとても便利ですね。調理が楽になるのならばそれもぜひ欲しいです」と言ってくれた。社交辞令だろうか。
冷蔵庫や冷凍庫はダンジョン産の魔道具でもあるらしいから何となく伝わるんだろうけど、その他は家事をしないと便利さは伝わり辛いだろう。
っていうか、アダマンタイトと交換でそういう魔道具を求められてもちょっと困る。
魔道具の価値もそこそこあるみたいだけど、アダマンタイトと比べたら負けちゃうだろう。生活に関する魔道具だしね。
迎賓館内の案内が終わったので外に向かう。
「あとはランプとか、勝手に開くドアとか……浮いて移動できるワゴンとか?」
「アイテムバッグは作ってないのかしら?」
「作ってますよ? いくつか作って家族共有の物にしてます」
「シズトのアイテムバッグはダンジョン産のアイテムバッグと違って、他の物と中身を共有できるのがすごいのですわ!」
「それは距離関係なくできるのですか?」
「試してみた事がないのでどこまで使えるかは分かりませんが、少なくとも国をいくつか超えても使えましたよ」
ギュスタン様の問いかけに答えたところで、迎賓館の玄関についた。
扉の近くで警備をしてくれていた兵士が開けてくれた先には、金色に輝く馬車が待機していた。
窓がないその馬車を見て、不思議そうに首を傾げるレスティア様たちを代表して口を開いたのはギュスタン様だ。
「これがヤマトの首都まで昼夜問わず走り続けた不思議な乗り物、ですか」
「そうです。皆さんの兵士から報告があった金色の箱みたいな物がこれです。魔力で動く馬車だから、魔動車と呼んでます」
四ヵ国が交渉の席に着いたのはこの魔動車の影響が大きいらしい。
まあ、そりゃ魔物の血を引いた馬を昼夜問わず走らせても数日では絶対に着かないらしいヤマトの首都まで移動した方法を知りたがるよね。
隠すつもりはないので「試しに乗ってみますか?」と提案したら態度の悪かったエンゲルト様までも大人しくついて来たほどだ。
皆で仲良く車内……に乗ると外の風景が見えないので、御者席に代わる代わる乗ってもらう事になった。
操縦をするのは万が一何かしようとしても対応できるようにジュリウスがする事になった。
車体の上にはクーが寝転がっていて、馬車に並走するようにライデンが近くに控えている。
街中では爆走するわけにも行かないので駆け足程度の速さで走ってもらう予定だ。
今回の交渉の目玉商品であるこれにどれだけ食いつくか……ちょっと不安だけど楽しみだ。
先行するのは世界樹の番人や、レヴィ様直属の近衛兵たちだ。
その後ろを、レヴィさんと並んで一緒に歩いている。
腕を組まれて当たってしまっている柔らかな感触に意識が持っていかれないように気を付けていると、後ろから声が聞こえてきた。
「貴重な魔道具がこんなにあるなんて素晴らしいですわ。特に脱衣所と浴室にはこだわりを感じますね。やはり勇者様の同郷の方だからでしょうか」
レスティナ様が僕の後をついて歩きながら興奮気味に話しをしているようだ。
話し相手は彼女の隣を歩いていたサラディオ様だ。
彼は室内に目を配りながらゆっくりと歩いていて「そうかもしれないのう」と相槌を打っていた。
この二人は魔道具に興味津々で、その様子を見ているとここ数日迎賓館の魔道具を作り続けた甲斐があったと感じる。
二人のすぐ後ろにはギュスタン様が額の汗を拭きながらついてきていた。ただ、歩いたから汗をかいたわけじゃなくて、汗っかきなんだそうだ。
ギュスタン様から数歩離れた所にはエンゲルト様が歩いているが、前を見ずにそっぽを向いている。
代理で来たって言ってたけど、あんな態度取ってて大丈夫なのかな。
彼の護衛っぽい人たちは顔に手を当てて天を仰いでいる時もあったけど、今は僕たちの後ろをぞろぞろとついて来ていた。
「僕はクリーンルームっていう部屋が気に入りました。個人的に欲しいですね」
「クリーンルームほどの大きな魔道具ですと、作り置きがないのでしばらく待ってもらう事になりますが大丈夫でしょうか?」
「構いませんよ」
「じゃあ金額についてはレヴィさんと話し合ってください。こっちの大陸の相場とか分からないので」
レヴィさんは心を読む事ができるから相手が相場を知っている場合、交渉中に知る事ができる。
相手の思考を意図せず読み取ってしまう厄介な加護だけど、交渉に関しては相手の手札が丸見えだから結構有利だとレヴィさんが嬉しそうに言ってたっけ。
隣を歩くレヴィさんに視線を向けると、バチッと目があった。
僕が作った『加護無しの指輪』という魔道具は現在嵌められておらず、僕の考えを読み取ってしまった様子でこくりと頷かれた。
何とも言えない気持ちになっていると、後ろを歩いていたレスティナ様が話しかけてきた。
「ねぇ、シズト様。あそこに置かれている箱も魔道具かしら?」
「ああ、埃吸い吸い箱の事でしょうか? 室内にある埃だけを吸い込んで集めてくれるんです」
「……そう。お掃除が楽になりそうね」
「家事って大変な事がたくさんありますから、掃除に限らず、炊事も洗濯も全部楽になるように魔道具を作ってるんですよ。使用人用の場所に入らないとないと思うのでお見せ出来ませんけど」
「どういうものがあるんじゃ?」
「食器を洗ったり乾燥させたりしてくれる物とか、単純に食品を冷やしたり凍らしたりしてくれる物とか……あとはミキサー……容器に入れた物を自動で細かく刻んでくれる物とか、泡立て器とか?」
「そんな事使用人にやらせればいいから必要ねぇだろ」
エンゲルト様には鼻で笑われたけど、レスティナ様もサラディオ様も今ひとつピンと来てないようだ。
ただ、ギュスタン様は「それはとても便利ですね。調理が楽になるのならばそれもぜひ欲しいです」と言ってくれた。社交辞令だろうか。
冷蔵庫や冷凍庫はダンジョン産の魔道具でもあるらしいから何となく伝わるんだろうけど、その他は家事をしないと便利さは伝わり辛いだろう。
っていうか、アダマンタイトと交換でそういう魔道具を求められてもちょっと困る。
魔道具の価値もそこそこあるみたいだけど、アダマンタイトと比べたら負けちゃうだろう。生活に関する魔道具だしね。
迎賓館内の案内が終わったので外に向かう。
「あとはランプとか、勝手に開くドアとか……浮いて移動できるワゴンとか?」
「アイテムバッグは作ってないのかしら?」
「作ってますよ? いくつか作って家族共有の物にしてます」
「シズトのアイテムバッグはダンジョン産のアイテムバッグと違って、他の物と中身を共有できるのがすごいのですわ!」
「それは距離関係なくできるのですか?」
「試してみた事がないのでどこまで使えるかは分かりませんが、少なくとも国をいくつか超えても使えましたよ」
ギュスタン様の問いかけに答えたところで、迎賓館の玄関についた。
扉の近くで警備をしてくれていた兵士が開けてくれた先には、金色に輝く馬車が待機していた。
窓がないその馬車を見て、不思議そうに首を傾げるレスティア様たちを代表して口を開いたのはギュスタン様だ。
「これがヤマトの首都まで昼夜問わず走り続けた不思議な乗り物、ですか」
「そうです。皆さんの兵士から報告があった金色の箱みたいな物がこれです。魔力で動く馬車だから、魔動車と呼んでます」
四ヵ国が交渉の席に着いたのはこの魔動車の影響が大きいらしい。
まあ、そりゃ魔物の血を引いた馬を昼夜問わず走らせても数日では絶対に着かないらしいヤマトの首都まで移動した方法を知りたがるよね。
隠すつもりはないので「試しに乗ってみますか?」と提案したら態度の悪かったエンゲルト様までも大人しくついて来たほどだ。
皆で仲良く車内……に乗ると外の風景が見えないので、御者席に代わる代わる乗ってもらう事になった。
操縦をするのは万が一何かしようとしても対応できるようにジュリウスがする事になった。
車体の上にはクーが寝転がっていて、馬車に並走するようにライデンが近くに控えている。
街中では爆走するわけにも行かないので駆け足程度の速さで走ってもらう予定だ。
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