543 / 1,094
第18章 ニホン観光をしながら生きていこう
364.事なかれ主義者は先を見据えて考えた
しおりを挟む
ファマリーに戻ってきた翌朝。
昨日は夜遅くまで起きていたのに『安眠カバー』のおかげで今日も目覚めはばっちりだ。
でも、目が覚めても身動きが取れない状態になっていた。
ルウさんが僕の体を抱き枕代わりにしていて、長い手足が僕に絡みついているからだ。
色々もがいてみたけれど、結局今日のお世話係であるジューンさんが来るまで脱出する事は出来なかった。
「シズトくん、ごめんね? 苦しくなかった?」
「今回は苦しくなかったけど、次から気を付けてね」
「今度から寝坊しないように頑張るわ」
「そこじゃないんだけどなぁ」
ガウンを羽織ったルウさんは申し訳なさそうにしながらジューンさんと一緒に部屋から出て行った。
僕は落ち着いたのを見計らってからベッドから立ち上がり、着替えを済ませる。
昨日はファマリーのお世話をしたので、今日はユグドラシルかな。
世界樹の中では消費魔力が少ないので、いろいろとできそうだ。
特にやる事がなかったらニホン連合のシガの観光でもしようかな?
着替えをさっさと済ませて部屋から出ると、ジューンさんが待ってくれていた。
今日も世界樹の使徒の代理人として働くのか、エルフたちの正装である真っ白な布地の服を着ていた。
長いスカートの裾の方から胸の下くらいまで金色の刺繍がされているその服を着用する事が増えてきている気がするけど、特に僕に話は回って来ないから問題ないんだろう……たぶん。
食堂に向かうと、すでに皆揃っていた。
ルウさんはラオさんと同じような白いタンクトップを着ている。袖が短く、ズボンの裾も付け根付近までしかないからさっきまで絡みついていた柔らかい手足がよく見える。
思い出さないように視線をちょっとルウさんから逸らして席に着くとクーの姿が見えない事に気付いた。
昨日は別館で寝泊まりしていたし、今頃アンジェラと一緒にご飯を食べているんだと思う。
別館に顔を出さないと文句を言いそうだから食べ終わったら迎えに行こうかな。
食事前の挨拶を唱和して、食事を始めるとラオさんとルウさんはすぐに食べ終わってしまった。
寝不足気味な様子のルウさんは「ちょっと寝てくるわ」と言って自室へと戻っていき、その様子をラオさんが横目で見ていた。
……皆の視線が何か言いたげな気がするけど、反応せずに食事を続ける。
黙々と食事を続けていると、ノエルが嵐のように去っていった。
ノエルは本当に魔道具の事しか興味なさそうだな。
普段通りのノエルのおかげで、皆の雰囲気もいつも通りになったような気もする。……たぶん。
食事を一通りし終えたレヴィさんに視線を向けると、彼女はドレスを着ていなかった。
「レヴィさんは今日どこで作業するの?」
「最近全く自分の畑の手入れをする事ができてなかったから見に行くのですわ。留守中は町の子たちとドライアドに任せていたから大丈夫だとは思うのですけれど、やっぱり自分の目で確かめないと安心できないのですわ」
「なるほど。それで、セシリアさんとドーラさんはその付き添い、と」
「左様でございます」
「ん。あと実験」
セシリアさんはいつも通りメイド服をしっかり着こなしていた。
ドーラさんは全身鎧を身に着けておらず、小柄で人形のように整った顔立ちが露になっている。
三人の恰好から今日の過ごし方は見当ついていたけど、確認って大事だよね。
「ラオさんは今日はどうするの?」
「ルウがあんな調子だから、アタシものんびり過ごすかな」
「それなら一緒に畑の手入れをするのですわ!」
「まあ、いいけどよ。のんびりって言葉の意味知ってっか?」
「レヴィさん的にはのんびりするって事は畑作業をするって事なんじゃないかな。ホムラとユキは店番?」
「そうね、ご主人様。奴隷の子たちに任せっきりでもいいけど、流石に身分の高い者の接客はした方が良いでしょ?」
「エルフを適当に見繕い、従事させることも検討中です、マスター」
「まあ、彼らなら裏切る心配なさそうだもんね」
ただちょっと一部のエルフが狂信的な感じがするだけで。
壁際で静かに控えていたジュリウスに視線を向けると、こくりと頷いて部屋から出て行った。
きっといい人材を見繕ってくれるだろう。
「私はぁ、特に予定がありませんからぁ、厨房の子たちに料理とか色々教えてこようかなぁ、って思いますぅ。できる事が増えればぁ、その分エミリーちゃんもシズトちゃんとの時間が増えますからぁ」
「あ、ありがとうございます……」
照れ隠しをする事無く、エミリーがはにかみながらお礼を言うと、ジューンさんは「どういたしましてぇ」と微笑んでいた。
「シズトは今日何をするのですわ?」
「ジュリーニたちにシガで待機してもらってるし、いい加減観光しに行こうかなって。順番的に一緒に観光するのはパメラだった気がするけど、予定は空いてるかな?」
「昨日は夜勤明けのためしばらく寝て過ごしていましたが、今日は大丈夫でしょう。パメラに事前に声をかけておきましょうか?」
「うん、お願い」
「かしこまりました」
ぺこりと頭を下げると、モニカも部屋から出て行った。
パメラは朝ご飯が終わるまでに声をかけないと遊びに出かけちゃうからね。
それにしても……やっぱり二人で夜勤を回してもらいつつ何かをしてもらうのは難しいよな。
仕事は続けたい、って特にシンシーラが言っていたし取り上げるつもりはないけど……何事もなければその内妊娠するだろうし、その時に備えるという理由でもう少し人数を増やそうかな。
昨日は夜遅くまで起きていたのに『安眠カバー』のおかげで今日も目覚めはばっちりだ。
でも、目が覚めても身動きが取れない状態になっていた。
ルウさんが僕の体を抱き枕代わりにしていて、長い手足が僕に絡みついているからだ。
色々もがいてみたけれど、結局今日のお世話係であるジューンさんが来るまで脱出する事は出来なかった。
「シズトくん、ごめんね? 苦しくなかった?」
「今回は苦しくなかったけど、次から気を付けてね」
「今度から寝坊しないように頑張るわ」
「そこじゃないんだけどなぁ」
ガウンを羽織ったルウさんは申し訳なさそうにしながらジューンさんと一緒に部屋から出て行った。
僕は落ち着いたのを見計らってからベッドから立ち上がり、着替えを済ませる。
昨日はファマリーのお世話をしたので、今日はユグドラシルかな。
世界樹の中では消費魔力が少ないので、いろいろとできそうだ。
特にやる事がなかったらニホン連合のシガの観光でもしようかな?
着替えをさっさと済ませて部屋から出ると、ジューンさんが待ってくれていた。
今日も世界樹の使徒の代理人として働くのか、エルフたちの正装である真っ白な布地の服を着ていた。
長いスカートの裾の方から胸の下くらいまで金色の刺繍がされているその服を着用する事が増えてきている気がするけど、特に僕に話は回って来ないから問題ないんだろう……たぶん。
食堂に向かうと、すでに皆揃っていた。
ルウさんはラオさんと同じような白いタンクトップを着ている。袖が短く、ズボンの裾も付け根付近までしかないからさっきまで絡みついていた柔らかい手足がよく見える。
思い出さないように視線をちょっとルウさんから逸らして席に着くとクーの姿が見えない事に気付いた。
昨日は別館で寝泊まりしていたし、今頃アンジェラと一緒にご飯を食べているんだと思う。
別館に顔を出さないと文句を言いそうだから食べ終わったら迎えに行こうかな。
食事前の挨拶を唱和して、食事を始めるとラオさんとルウさんはすぐに食べ終わってしまった。
寝不足気味な様子のルウさんは「ちょっと寝てくるわ」と言って自室へと戻っていき、その様子をラオさんが横目で見ていた。
……皆の視線が何か言いたげな気がするけど、反応せずに食事を続ける。
黙々と食事を続けていると、ノエルが嵐のように去っていった。
ノエルは本当に魔道具の事しか興味なさそうだな。
普段通りのノエルのおかげで、皆の雰囲気もいつも通りになったような気もする。……たぶん。
食事を一通りし終えたレヴィさんに視線を向けると、彼女はドレスを着ていなかった。
「レヴィさんは今日どこで作業するの?」
「最近全く自分の畑の手入れをする事ができてなかったから見に行くのですわ。留守中は町の子たちとドライアドに任せていたから大丈夫だとは思うのですけれど、やっぱり自分の目で確かめないと安心できないのですわ」
「なるほど。それで、セシリアさんとドーラさんはその付き添い、と」
「左様でございます」
「ん。あと実験」
セシリアさんはいつも通りメイド服をしっかり着こなしていた。
ドーラさんは全身鎧を身に着けておらず、小柄で人形のように整った顔立ちが露になっている。
三人の恰好から今日の過ごし方は見当ついていたけど、確認って大事だよね。
「ラオさんは今日はどうするの?」
「ルウがあんな調子だから、アタシものんびり過ごすかな」
「それなら一緒に畑の手入れをするのですわ!」
「まあ、いいけどよ。のんびりって言葉の意味知ってっか?」
「レヴィさん的にはのんびりするって事は畑作業をするって事なんじゃないかな。ホムラとユキは店番?」
「そうね、ご主人様。奴隷の子たちに任せっきりでもいいけど、流石に身分の高い者の接客はした方が良いでしょ?」
「エルフを適当に見繕い、従事させることも検討中です、マスター」
「まあ、彼らなら裏切る心配なさそうだもんね」
ただちょっと一部のエルフが狂信的な感じがするだけで。
壁際で静かに控えていたジュリウスに視線を向けると、こくりと頷いて部屋から出て行った。
きっといい人材を見繕ってくれるだろう。
「私はぁ、特に予定がありませんからぁ、厨房の子たちに料理とか色々教えてこようかなぁ、って思いますぅ。できる事が増えればぁ、その分エミリーちゃんもシズトちゃんとの時間が増えますからぁ」
「あ、ありがとうございます……」
照れ隠しをする事無く、エミリーがはにかみながらお礼を言うと、ジューンさんは「どういたしましてぇ」と微笑んでいた。
「シズトは今日何をするのですわ?」
「ジュリーニたちにシガで待機してもらってるし、いい加減観光しに行こうかなって。順番的に一緒に観光するのはパメラだった気がするけど、予定は空いてるかな?」
「昨日は夜勤明けのためしばらく寝て過ごしていましたが、今日は大丈夫でしょう。パメラに事前に声をかけておきましょうか?」
「うん、お願い」
「かしこまりました」
ぺこりと頭を下げると、モニカも部屋から出て行った。
パメラは朝ご飯が終わるまでに声をかけないと遊びに出かけちゃうからね。
それにしても……やっぱり二人で夜勤を回してもらいつつ何かをしてもらうのは難しいよな。
仕事は続けたい、って特にシンシーラが言っていたし取り上げるつもりはないけど……何事もなければその内妊娠するだろうし、その時に備えるという理由でもう少し人数を増やそうかな。
68
お気に入りに追加
454
あなたにおすすめの小説

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』
ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。
誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!
林檎茶
ファンタジー
俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?
俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。
成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。
そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。
ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。
明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。
俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。
そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。
魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。
そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。
リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。
その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。
挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる