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第18章 ニホン観光をしながら生きていこう
358.事なかれ主義者は憩いの場を作った
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ドライアドたちに協力してもらって、世界樹フソーの根元に転移できた。
転移してまず目に入ったのは巨大な木だ。これが世界樹フソーだろう。今までで一番大きいんじゃないかな?
葉が全て落ちてしまっているけど、これを元通りにするって結構大変そうだ。
世界樹の周辺は、ユグドラシルやトネリコのようにある程度開けた空間があった。
上空から見たらぽっかりと円形に開いたその広場のような場所には、おそらく以前の世界樹の使徒が使っていたであろう建物があったが、人の気配はない。
転移した直後はこの地のドライアドたちにもみくちゃにされたけど、今は一定の距離を保ってくれている。
ドライアドたちとしては世界樹フソーの世話をしてほしいんだろうけど、勝手に世話をしたら何が起こるか分からないから、太陽が三十回昇るまでは待ってほしいとお願いした。
その程度ならまあ……という感じでとりあえず話は落ち着いたはずなんだけど、僕たちを監視しているのか、木陰や草むらの中に隠れてこっちの様子を見ている。
頭隠して尻隠さず、とはいうけどドライアドたちにとっては体隠して花隠さず、と言った所だろうか。
色とりどりの花々がひょこっと現れたり移動したりしている。
「……景色はユグドラシルやトネリコと似てるね」
「そうですね。秘密を秘匿するためにも周囲を禁足地として指定し、世界樹の根元に誰も近づけないようにして世界樹の世話をしていたのでしょう」
僕の護衛のために近くで控えていたジュリウスが答えてくれた。
僕たちは今、二手に分かれて行動している。
僕と僕に背負われてご機嫌なクー、それからジュリウスの三人はここで待機する事になっている。
残りの人たちは全員まとまって禁足地の外へと向かって他国の使者と接触を図っている所だ。
リヴァイさんたちが集めてくれた情報を元に作った地図とレヴィさんたちについていったドライアドの案内を頼りに、とりあえず大国ヤマトの方面へと向かってもらっているんだけど、大丈夫かな?
「ねぇ、クー。ライデンたちに何か変化はない?」
「特にないよ、お兄ちゃん」
上機嫌なクーは、問いかけるとすぐに返事をしてくれた。
空間魔法の使い手である彼女は、この森の外の気配も読めるらしい。
大勢の人間が周囲を取り囲んでいて、今も禁足地と呼ばれていたこの森に侵入しようとしているとか言ってたな。
ただ、この森にはドライアドだけではなく、魔物がいるとの事で、世界樹の根元まで辿り着く事ができた者はいないらしい。
……過剰戦力になるかなぁ?
久しぶりに自重せずに作った物を思い出しながら首を傾げていると、背負われていたクーが「あ」と声をあげた。
「さっきまで立ち止まってたのに、こっちに戻ってくるみたいだよ。歩いてるけど、数人つかず離れず一定の距離で追いかけてるみたい」
「尾行されているのでしょう。世界樹の根元まで辿り着けていないという事でしたし、レヴィア様たちについて行けば根元に行ける、と考えたのではないでしょうか」
「……こっちから合流した方が良いかな?」
「難しい所ですね。世界樹の根元が目的地ではなく、シズト様を狙っていると考える事も出来ます」
「そっか……どうしようかな」
レヴィさんたちから特に連絡はない。
追われている事に気付いていないのかもしれないから、とりあえず連絡を取ろうと左手の薬指に着けていた魔道具に魔力を流す。
脳内にセシリアさんを思い浮かべると、ブラックダイヤモンドが怪しく光を放つ。
点滅していたその光はしばらくすると一定の光を放つようになった。
『セシリアさん、聞こえてる?』
『はい、聞こえてます。どうされましたか?』
心の中で問いかけると、脳内にセシリアさんの声が響く。
指輪に付与した魔法のおかげで、脳内に思い描いた人の心の中に語り掛ける事ができる。
僕が名付けた名前は不採用になってしまったけど、便宜上『伝心の指輪』と呼ばれているこの魔道具は、自分の思考をすべて相手に伝える訳じゃない。伝えたいと思った内容を伝える物だ。
『あまり反応せずにそのまま歩き続けて欲しいんだけど……クーが尾行されているんじゃないかって言ってて大丈夫かなって』
『大丈夫ですよ。レヴィア様やライデン様がお気づきになられてますから』
『今の所何もない?』
『ええ。一定の距離を保ったままついて来ているだけの様です。こちらから接触して何か言いがかりをつけられると面倒ですから一先ず様子を見ようという事になりました』
『分かった。気を付けてね』
魔道具に魔力を流すのをやめると、ジュリウスが「どうでしたか?」と尋ねてきた。
「セシリアさんたちも気づいてたみたいだけど、あまり刺激せずに様子を見ようって事になってるみたい」
「なるほど。護衛対象が一カ所に集まっていた方が守りやすいですし、それでよろしいかと」
「……あーしたちが何かする必要はないみたいだよ」
「どういう事?」
ギュッと僕にしがみ付いていたクーが耳元で囁く。
「どーやら、ここの子たちはあーしたち以外は入れるつもりがないみたい」
「……ああ、ドライアドか」
「それだけじゃないよぉ。トレントとか植物系の魔物もいるみたいだねぇ。それにぃ、めちゃくちゃ強そうなやつが一体いるみたいだしぃ」
「レヴィさんたちは襲われてないの?」
「案内のドライアドがいるから襲われていないんじゃない? 知らないけどー」
「レヴィさんたちが戻ってくるまでどのくらいかかりそう?」
「んー、一時間とかそこら辺じゃない?」
「そっか。……やっぱりこっちから出向いた方が良いんじゃないかなぁ」
「他国の者と接触した時の内容が分かりませんから、この場にいればよろしいかと」
んー……まあ、話し合いが上手くいかなくて、とりあえずヤマトには行かないという事になるかもしれないし、それがいいか。
ただ、待っているだけだと手持無沙汰だし、何かして時間を潰そう。
キョロキョロと視線を彷徨わせると、一軒の建物が目に入ったので、そちらに向かう。
「シズト様、何をされるのですか?」
「ちょっとあの建物の探検でもしようかなって。ついでに掃除しておけば活動拠点にもなるでしょ?」
「……あの建物に何が仕掛けられているのか分かりませんし、もしかしたら抜け道が隠されているかもしれません。何者かが潜んでいる可能性もあるので、後日調査させておきますから、本日はあの中に入るのは諦めてください」
「あ、はい」
ジュリウスに止められては仕方ない。
建物を探検するのは諦めて、休憩場所を自作する事にした。
構造が難しい建物はできないけど、東屋くらいなら作れるし、転移陣の近くに作っておこう。
建設途中、勝手に土地に建物を作っているからか分からないけど、ドライアドたちがわらわらと集まってきた。
けど、彼女たちは抗議とかせずに長いすで遊んでいるからまあいいでしょう……たぶん。
転移してまず目に入ったのは巨大な木だ。これが世界樹フソーだろう。今までで一番大きいんじゃないかな?
葉が全て落ちてしまっているけど、これを元通りにするって結構大変そうだ。
世界樹の周辺は、ユグドラシルやトネリコのようにある程度開けた空間があった。
上空から見たらぽっかりと円形に開いたその広場のような場所には、おそらく以前の世界樹の使徒が使っていたであろう建物があったが、人の気配はない。
転移した直後はこの地のドライアドたちにもみくちゃにされたけど、今は一定の距離を保ってくれている。
ドライアドたちとしては世界樹フソーの世話をしてほしいんだろうけど、勝手に世話をしたら何が起こるか分からないから、太陽が三十回昇るまでは待ってほしいとお願いした。
その程度ならまあ……という感じでとりあえず話は落ち着いたはずなんだけど、僕たちを監視しているのか、木陰や草むらの中に隠れてこっちの様子を見ている。
頭隠して尻隠さず、とはいうけどドライアドたちにとっては体隠して花隠さず、と言った所だろうか。
色とりどりの花々がひょこっと現れたり移動したりしている。
「……景色はユグドラシルやトネリコと似てるね」
「そうですね。秘密を秘匿するためにも周囲を禁足地として指定し、世界樹の根元に誰も近づけないようにして世界樹の世話をしていたのでしょう」
僕の護衛のために近くで控えていたジュリウスが答えてくれた。
僕たちは今、二手に分かれて行動している。
僕と僕に背負われてご機嫌なクー、それからジュリウスの三人はここで待機する事になっている。
残りの人たちは全員まとまって禁足地の外へと向かって他国の使者と接触を図っている所だ。
リヴァイさんたちが集めてくれた情報を元に作った地図とレヴィさんたちについていったドライアドの案内を頼りに、とりあえず大国ヤマトの方面へと向かってもらっているんだけど、大丈夫かな?
「ねぇ、クー。ライデンたちに何か変化はない?」
「特にないよ、お兄ちゃん」
上機嫌なクーは、問いかけるとすぐに返事をしてくれた。
空間魔法の使い手である彼女は、この森の外の気配も読めるらしい。
大勢の人間が周囲を取り囲んでいて、今も禁足地と呼ばれていたこの森に侵入しようとしているとか言ってたな。
ただ、この森にはドライアドだけではなく、魔物がいるとの事で、世界樹の根元まで辿り着く事ができた者はいないらしい。
……過剰戦力になるかなぁ?
久しぶりに自重せずに作った物を思い出しながら首を傾げていると、背負われていたクーが「あ」と声をあげた。
「さっきまで立ち止まってたのに、こっちに戻ってくるみたいだよ。歩いてるけど、数人つかず離れず一定の距離で追いかけてるみたい」
「尾行されているのでしょう。世界樹の根元まで辿り着けていないという事でしたし、レヴィア様たちについて行けば根元に行ける、と考えたのではないでしょうか」
「……こっちから合流した方が良いかな?」
「難しい所ですね。世界樹の根元が目的地ではなく、シズト様を狙っていると考える事も出来ます」
「そっか……どうしようかな」
レヴィさんたちから特に連絡はない。
追われている事に気付いていないのかもしれないから、とりあえず連絡を取ろうと左手の薬指に着けていた魔道具に魔力を流す。
脳内にセシリアさんを思い浮かべると、ブラックダイヤモンドが怪しく光を放つ。
点滅していたその光はしばらくすると一定の光を放つようになった。
『セシリアさん、聞こえてる?』
『はい、聞こえてます。どうされましたか?』
心の中で問いかけると、脳内にセシリアさんの声が響く。
指輪に付与した魔法のおかげで、脳内に思い描いた人の心の中に語り掛ける事ができる。
僕が名付けた名前は不採用になってしまったけど、便宜上『伝心の指輪』と呼ばれているこの魔道具は、自分の思考をすべて相手に伝える訳じゃない。伝えたいと思った内容を伝える物だ。
『あまり反応せずにそのまま歩き続けて欲しいんだけど……クーが尾行されているんじゃないかって言ってて大丈夫かなって』
『大丈夫ですよ。レヴィア様やライデン様がお気づきになられてますから』
『今の所何もない?』
『ええ。一定の距離を保ったままついて来ているだけの様です。こちらから接触して何か言いがかりをつけられると面倒ですから一先ず様子を見ようという事になりました』
『分かった。気を付けてね』
魔道具に魔力を流すのをやめると、ジュリウスが「どうでしたか?」と尋ねてきた。
「セシリアさんたちも気づいてたみたいだけど、あまり刺激せずに様子を見ようって事になってるみたい」
「なるほど。護衛対象が一カ所に集まっていた方が守りやすいですし、それでよろしいかと」
「……あーしたちが何かする必要はないみたいだよ」
「どういう事?」
ギュッと僕にしがみ付いていたクーが耳元で囁く。
「どーやら、ここの子たちはあーしたち以外は入れるつもりがないみたい」
「……ああ、ドライアドか」
「それだけじゃないよぉ。トレントとか植物系の魔物もいるみたいだねぇ。それにぃ、めちゃくちゃ強そうなやつが一体いるみたいだしぃ」
「レヴィさんたちは襲われてないの?」
「案内のドライアドがいるから襲われていないんじゃない? 知らないけどー」
「レヴィさんたちが戻ってくるまでどのくらいかかりそう?」
「んー、一時間とかそこら辺じゃない?」
「そっか。……やっぱりこっちから出向いた方が良いんじゃないかなぁ」
「他国の者と接触した時の内容が分かりませんから、この場にいればよろしいかと」
んー……まあ、話し合いが上手くいかなくて、とりあえずヤマトには行かないという事になるかもしれないし、それがいいか。
ただ、待っているだけだと手持無沙汰だし、何かして時間を潰そう。
キョロキョロと視線を彷徨わせると、一軒の建物が目に入ったので、そちらに向かう。
「シズト様、何をされるのですか?」
「ちょっとあの建物の探検でもしようかなって。ついでに掃除しておけば活動拠点にもなるでしょ?」
「……あの建物に何が仕掛けられているのか分かりませんし、もしかしたら抜け道が隠されているかもしれません。何者かが潜んでいる可能性もあるので、後日調査させておきますから、本日はあの中に入るのは諦めてください」
「あ、はい」
ジュリウスに止められては仕方ない。
建物を探検するのは諦めて、休憩場所を自作する事にした。
構造が難しい建物はできないけど、東屋くらいなら作れるし、転移陣の近くに作っておこう。
建設途中、勝手に土地に建物を作っているからか分からないけど、ドライアドたちがわらわらと集まってきた。
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