上 下
526 / 643
第18章 ニホン観光をしながら生きていこう

353.事なかれ主義者はあんまり知らない

しおりを挟む
 ランチェッタ様は多忙な方なので、クレストラ大陸についての話をしたら早めにお暇した。
 去り際「次はもう少しゆっくりとお話できるように頑張るわ」と言っていたけど、侍女のディアーヌさんが「睡眠時間を削って頑張るのはやめてくださいね」と僕に聞こえる声量で女王様に注意していた。
 僕も睡眠時間を削って仕事をするのは良くないと思う。
 それでも以前よりは仕事量がだいぶ減ったのでちょっとお茶する時間くらいなら作れるとランチェッタ様が主張していたので、今後も定期的に会って話をする事になった。
 屋敷に戻った後はエミリーやシンシーラとお昼ご飯を食べた。
 食事の後はモフモフの尻尾を触りながらあったら便利そうな魔道具を聞きつつ魔道具を作ったんだけど、ノエルに見せたら「潰れてて読み取れないっす」と言われてしまった。うん、自重しますね。
 そのノエルはというと、昨日の今日だったが、ポケットクリーナーと名付けられた魔道具を作る事ができていた。魔法の効果は落ちてしまって取れない汚れはあるけれど、ちょっとした汚れだったらしっかり取る事ができるらしい。
 ただ、ノエルはそれを自慢する事はなく、他の魔道具をじっと眺めていた。
 描いた魔法陣が発動した後の事は興味がないノエルらしい。
 僕はその隣に座ってエイロンやエルヴィスと話をしながら魔道具の案をダンジョン産の紙にまとめて過ごした。今日はファマリーのお世話をする日だったから魔力に余裕がなかったから。

「シズト様、ノエル、お食事の時間です」
「うん、わかった。教えてくれてありがと」

 呼びに来てくれたエミリーには先に食堂に向かってもらう。
 机の上がごちゃごちゃになっていたので一通りアイテムバッグの中に突っ込んでおく
 適当に突っ込んでも取り出す時には念じるだけで簡単に取り出せるって本当に便利だよね。
 リュックの中にあるはず、って中身全部ぶちまけて探す必要がないのはとても楽だ。
 バッグの中に入れた事すら忘れてしまったら一生取り出せなくなるのが悩みどころだけど……まあ、それはメモか何かして対処するしかない。

「ほら、ノエル行くよ」
「今いい所だからほっといて欲しいっす」

 背を向けたままノエルが返事をした。
 これは無理だな。僕の筋力じゃ引っ張っていく事も難しいだろうし、放っておこう。
 魔道具を使えば余裕だけど、ホムラたちに任せてしまおう。
 ノエルの部屋を出て、階段を下りて食堂に向かう。
 道中では誰ともすれ違う事無く、食堂まで辿り着いた。
 扉をくぐって中に入ると、ラオさんとルウさん、それからノエル以外は全員揃っていた。

「ノエルは一緒じゃなかったのですか、マスター」
「もう少し後でくるって」
「……そうですか、マスター」

 無表情のまま一言だけ返すと、ホムラは席を立って食堂から出て行ってしまった。
 ……まあ、そのうちノエルと一緒に戻ってくるでしょ。
 食卓について二人を待っていると、レヴィさんが話しかけてきた。

「結局、ガレオールの問題って何だったのですわ?」
「ドライアドたちが実験農場に突然現れて占拠されてた」
「ファマリアの子たちですわ? ユグドラシルの子たちですわ?」
「それがどっちでもなくて、どうやらクレストラ大陸の世界樹の根元で暮らしてたドライアドたちだったみたい」
「海を越えてやってきたんですかぁ?」

 ジューンさんが不思議そうに首を傾げている。
 最近は、レヴィさんに次いでよくドライアドたちと関わっているから、彼女たちにとって潮風が害である事や緑がない場所はあまり良くない事を知っているからだろう。

「ヤマトの船に自分たちが育てた植物を紛れ込ませてこっちの大陸まで運ばせたんだって。青バラちゃんが道を繋げる時も青いバラを目印にしてるし、そういうものなんだろうね。紛れ込ませた事がバレて捨てられたり、船が魔物に襲われて沈んでしまったりしたらまたやればいいやって思ってたみたいだけど、とんとん拍子に上手くいったらしいよ。ただ、ガレオールについても潮風がやばいから避難先を探してて、屋外で全くそういう塩の影響がない実験農場に逃げ込んだみたい」

 そこまで話したところでノエルの足を掴んで彼女を引き摺って運んできたホムラが食堂に入ってきた。
 二人が席に着いたところで食事前の挨拶をして食事を始める。
 僕は果肉がたっぷり入ったみかんジュースを飲みながら話を続ける。

「安全な場所を探したのは古株の子で、潮風にやられて体調を崩しているらしいんだよね。それで、下の子たちが好き勝手しちゃって、実験農場の中が植えた覚えのない植物でいっぱいになってたよ」
「どこのドライアドも似たようなものなんですわね」
「みたいだねぇ。とりあえず今は仲良く棲み分けしてるみたい。以前からドライアドたちの助力が欲しいってランチェッタ様は思ってたみたいだし、古株の子が元気になったら交渉するつもりみたいだよ。その時は僕も同席するつもり」
「それならぁ、問題なさそうですねぇ」
「そうだね。あとは、世界樹についてだけど……小さい子たちには今すぐにでも世界樹フソウに向かってきてほしいって言われてるんだよね。ただ、こっちにも都合があるから、古株の子と話をしてからねって言って待って貰ってる状態なんだ」

 今日の謎の魔物の肉のステーキを切り分ける事ができたので口に運ぶ。
 香辛料か何かが効いていて、辛いけど美味しい。臭みが全くないのはそういう魔物だからだろうか。それとも香辛料か何かのおかげかなぁ。
 もぐもぐと咀嚼をしていると、壁際に控えていたメイド服を着た黒髪の少女モニカが話しかけてきた。

「ドランの方は特に問題ございませんでした。また、ジュリーニ様から報告があり、もうすぐシガの首都ビワに着くそうです」
「シガにビワってきたら滋賀県が元か。……でっかい湖とか作ってそうだなぁ」
「よくご存じですね」
「マジであんの!?」
「はい。国土の半分ほどを湖にしてしまった過去の勇者たちがいました。そのため水上都市が多い国だそうです。馬車に浮遊の魔法を付けていたおかげで、船を利用せずに当初の予定通りに着きそうとの事でした」
「馬車を引いていた子たちって水の上走れるの?」
「いえ、ペガサスに替えたそうですよ」

 なるほど。それなら水の上を走るって言うか、空を飛べば問題ないもんね。
 そう思っているとジュリウスが話に加わってきた。

「ただ、湖の魔物に襲われてからは世界樹の根元に住み着いたグリフォンに協力を依頼し、馬車を引いてもらいました。それからは問題なく進む事ができているようです」

 ……そんな事にグリフォン使っていいのかな。
 まあ、本人……本グリフォン? が納得しているならいいのか。
 とにかく、点在する水上都市を中継しながら進み、もうすぐ首都に着くとの事だったので明日、明後日には観光する事ができそうだ。
 滋賀県は琵琶湖のイメージしかないけど、他にどんなものがあるのかな……。
 過去の記憶を掘り起こそうとしながらのんびりと食事をしたけど、琵琶湖が邪魔して全然思い出せなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】偽装カップルですが、カップルチャンネルやっています【幼馴染×幼馴染】

彩華
BL
水野圭、21歳。ごくごく普通の大学生活を送る一方で、俗にいう「配信者」としての肩書を持っていた。だがそれは、自分が望んだものでは無く。そもそも、配信者といっても、何を配信しているのか? 圭の投稿は、いわゆる「カップルチャンネル」と言われる恋人で運営しているもので。 「どう? 俺の自慢の彼氏なんだ♡」 なんてことを言っているのは、圭自身。勿論、圭自身も男性だ。それで彼氏がいて、圭は彼女側。だが、それも配信の時だけ。圭たちが配信する番組は、表だっての恋人同士に過ぎず。偽装結婚ならぬ、偽装恋人関係だった。 始まりはいつも突然。久しぶりに再会した幼馴染が、ふとした拍子に言ったのだ。 「なぁ、圭。俺とさ、ネットで番組配信しない?」 「は?」 「あ、ジャンルはカップルチャンネルね。俺と圭は、恋人同士って設定で宜しく」 「は??」 どういうことだ? と理解が追い付かないまま、圭は幼馴染と偽装恋人関係のカップルチャンネルを始めることになり────。 ********* お気軽にコメント頂けると嬉しいです

俺が乳首痴漢におとされるまで

ねこみ
BL
※この作品は痴漢行為を推奨するためのものではありません。痴漢は立派な犯罪です。こういった行為をすればすぐバレますし捕まります。以上を注意して読みたいかただけお願いします。 <あらすじ> 通勤電車時間に何度もしつこく乳首を責められ、どんどん快感の波へと飲まれていくサラリーマンの物語。 完結にしていますが、痴漢の正体や主人公との関係などここでは記載していません。なのでその部分は中途半端なまま終わります。今の所続編を考えていないので完結にしています。

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

【完結】天使がゴーレムになって戻って来ました〜虐げてきた家族とは決別し、私は幸せになります〜

仲村 嘉高
恋愛
家族に虐げられてきたフローラ。 婚約者を姉に奪われた時、本当の母は既に亡くなっており、母だと思っていたのは後妻であり、姉だと思っていたのは異母姉だと知らされた。 失意の中、離れの部屋にこもって泣いていると、にわかに庭が騒がしくなり……?

あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう

まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥ ***** 僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。 僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥

【R18】××に薬を塗ってもらうだけのはずだったのに♡

ちまこ。
BL
⚠︎隠語、あへおほ下品注意です

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?

風見ゆうみ
恋愛
ネイロス伯爵家の次女であるわたしは、幼い頃から変わった子だと言われ続け、家族だけじゃなく、周りの貴族から馬鹿にされ続けてきた。 そんなわたしを公爵である伯父はとても可愛がってくれていた。 ある日、伯父がお医者様から余命を宣告される。 それを聞いたわたしの家族は、子供のいない伯父の財産が父に入ると考えて豪遊し始める。 わたしの婚約者も伯父の遺産を当てにして、姉に乗り換え、姉は姉で伯父が選んでくれた自分の婚約者をわたしに押し付けてきた。 伯父が亡くなったあと、遺言書が公開され、そこには「遺留分以外の財産全てをリウ・ネイロスに、家督はリウ・ネイロスの婚約者に譲る」と書かれていた。 そのことを知った家族たちはわたしのご機嫌伺いを始める。 え……、許してもらえるだなんて本気で思ってるんですか? ※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

処理中です...