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第18章 ニホン観光をしながら生きていこう
幕間の物語171.異大陸のドライアドたちは密輸した
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シズトたちが転移した大陸シグニールから海を渡って西へ向かうと南北に長いクレストラ大陸がある。
その大陸には、シグニール大陸とは異なり世界樹はたった一本しかなかった。
遥か昔からその世界樹を守り育ててきたエルフたちだったが、他の大陸が見つかって世界樹の素材が独占販売できなくなるまで随分と強気な外交を続けてきていた。
世界樹の素材が独占できなくなると、多少は他国に配慮するようになったが、長い年月で形成された傲慢な性格は変わらなかった。
他の大陸からの世界樹の素材は、商船が海の魔物や海賊に襲われる事もあり、安定的な供給もできなかったのも変わらなかった理由の一つだろう。
生育の神ファマがエルフたちの所業に我慢できなくなり、彼らに託した加護を剥奪した後も、エルフの国の上層部は変わらなかった。
世界樹に異変が起こると流石にこのままではまずいのではないか、と一部のエルフは思うようになったのだが、少数派だった。
遥か昔から供給量を制限して蓄え続けた世界樹の素材のストックがあったからだ。
それまでと変わらず、エルフたちの国の上層部は強気な外交を続けていたのだが、シグニール大陸から世界樹の真実が伝わると「傲慢なエルフに鉄槌を!」と立ち上がった近隣諸国の連合軍によって滅ぼされてしまった。
クレストラ大陸唯一の世界樹がある都市国家フソウは既に滅び、そこに住んでいたエルフたちは殺されるか奴隷にされた。
世界樹フソウ周辺は現在様々な国が分割して統治しているのだが、そんな事は世界樹の根元に住む者たちにとってはどうでもいい事だった。
「今日もいっぱい畑荒らし来た!」
「捕まえた?」
「捕まえたよー。ぐるぐる巻きにしたの」
「とっても強い人間さんたちはフクちゃんが後ろからズバッとしてたよー」
「殺しちゃってよかったの~?」
「フソーちゃんを切ろうとしてた人たちだから仕方ないんだよ」
「フソーちゃんは大丈夫だったの?」
「ぐっすりすやすやなの~」
世界樹の根元に広がる森の中に、小さな人影が多数あった。
頭に色とりどりの一輪の花を咲かせた彼女たちはドライアド。
世界樹フソウの根元で暮らしている精霊に近い存在の者たちだった。
肌の色は真っ白でも褐色でもなく、日本人である勇者たちのように若干黄色っぽい。
元々ドライアドは小柄な種族だが、まとめ役であるドライアドは一回り大きい事が多かった。だが、クレストラ大陸のドライアドたちは全員小さかった。
まとめ役がいないという訳ではなく、単純にまとめ役も含めて小柄だった。
「最近エルフさんも来なくなっちゃったね」
「フソーちゃんをほっといて、どこかにいっちゃったエルフさんも帰って来ないねー」
「あのエルフさん、もうフソーちゃんにとっていらない人だったから別にいいんじゃないかな」
「人間さんたちの話だと、海を越えてず~っと東の方に行ったところに、フソーちゃんを育てられる人間さんがいるんだって」
「そうなんだー」
「海の向こうはちょっと難しいなぁ」
「フクちゃんにお願いして連れてきてもらう?」
「フクちゃんがいなくなっちゃったら強い人間さんが来た時に、フソーちゃんが切られちゃうんじゃない?」
「そうだね~。私たちも捕まっちゃうかも~」
「人間さんの船に、『道』を繋げちゃったらどう?」
「人間さんに協力してもらわないと、枯れちゃうんじゃないかなぁ」
「数日で別の大陸に着くわけじゃないらしいよー」
「……水があんまりいらない子だったら行ける??」
「紛れ込ませちゃう?」
「やるだけやってみる??」
「植木鉢取ってくる~」
わらわらと散っていくドライアドたちを見送るのは、他のドライアドたちよりも大きな花を咲かせたドライアドたちだ。
「……でも、道を繋げたとしても、船が向こうに着いたか分からないよね」
「そうだねー。それに、向こうに行けても、育てられる人に会うのは難しいよね」
「会えたとしても、人間さんが道を通るのは危ないもんね」
「落っこちたら戻って来れないもんねー」
「でも~、とりあえずやらせてみてもいいんじゃないかなぁ」
「紛れ込ませる方法はどうするの?」
「フクちゃん、こっそり動くの得意だからお任せしちゃう?」
「そうだねー。フクちゃんさがそ~」
「フクちゃん隠れるの上手だから見つけられるかなぁ~」
そう言うと残っていたドライアドたちも散り散りに分かれていった。
そんな感じのドライアドたちの話があってから数日後、大国ヤマトから海洋国家ガレオールに向けて出発した船の積み荷の中に、植木鉢に入った多肉植物などしばらく水やりをしなくても問題ない植物がいくつか置かれていた。
一番最初に気付いたのは、ガレオールに向かっていた大国ヤマトの勇者である大和修一だったが、彼はきれいに並べられている植物を見て、誰かが珍しい植物を売りに行こうとしているんだろう、と思って放っておいた。
その様子を船員が見ていたため、勇者の私物だと勘違いし、植物たちは無事にガレオールまで処分される事なく運ばれたのだった。
その大陸には、シグニール大陸とは異なり世界樹はたった一本しかなかった。
遥か昔からその世界樹を守り育ててきたエルフたちだったが、他の大陸が見つかって世界樹の素材が独占販売できなくなるまで随分と強気な外交を続けてきていた。
世界樹の素材が独占できなくなると、多少は他国に配慮するようになったが、長い年月で形成された傲慢な性格は変わらなかった。
他の大陸からの世界樹の素材は、商船が海の魔物や海賊に襲われる事もあり、安定的な供給もできなかったのも変わらなかった理由の一つだろう。
生育の神ファマがエルフたちの所業に我慢できなくなり、彼らに託した加護を剥奪した後も、エルフの国の上層部は変わらなかった。
世界樹に異変が起こると流石にこのままではまずいのではないか、と一部のエルフは思うようになったのだが、少数派だった。
遥か昔から供給量を制限して蓄え続けた世界樹の素材のストックがあったからだ。
それまでと変わらず、エルフたちの国の上層部は強気な外交を続けていたのだが、シグニール大陸から世界樹の真実が伝わると「傲慢なエルフに鉄槌を!」と立ち上がった近隣諸国の連合軍によって滅ぼされてしまった。
クレストラ大陸唯一の世界樹がある都市国家フソウは既に滅び、そこに住んでいたエルフたちは殺されるか奴隷にされた。
世界樹フソウ周辺は現在様々な国が分割して統治しているのだが、そんな事は世界樹の根元に住む者たちにとってはどうでもいい事だった。
「今日もいっぱい畑荒らし来た!」
「捕まえた?」
「捕まえたよー。ぐるぐる巻きにしたの」
「とっても強い人間さんたちはフクちゃんが後ろからズバッとしてたよー」
「殺しちゃってよかったの~?」
「フソーちゃんを切ろうとしてた人たちだから仕方ないんだよ」
「フソーちゃんは大丈夫だったの?」
「ぐっすりすやすやなの~」
世界樹の根元に広がる森の中に、小さな人影が多数あった。
頭に色とりどりの一輪の花を咲かせた彼女たちはドライアド。
世界樹フソウの根元で暮らしている精霊に近い存在の者たちだった。
肌の色は真っ白でも褐色でもなく、日本人である勇者たちのように若干黄色っぽい。
元々ドライアドは小柄な種族だが、まとめ役であるドライアドは一回り大きい事が多かった。だが、クレストラ大陸のドライアドたちは全員小さかった。
まとめ役がいないという訳ではなく、単純にまとめ役も含めて小柄だった。
「最近エルフさんも来なくなっちゃったね」
「フソーちゃんをほっといて、どこかにいっちゃったエルフさんも帰って来ないねー」
「あのエルフさん、もうフソーちゃんにとっていらない人だったから別にいいんじゃないかな」
「人間さんたちの話だと、海を越えてず~っと東の方に行ったところに、フソーちゃんを育てられる人間さんがいるんだって」
「そうなんだー」
「海の向こうはちょっと難しいなぁ」
「フクちゃんにお願いして連れてきてもらう?」
「フクちゃんがいなくなっちゃったら強い人間さんが来た時に、フソーちゃんが切られちゃうんじゃない?」
「そうだね~。私たちも捕まっちゃうかも~」
「人間さんの船に、『道』を繋げちゃったらどう?」
「人間さんに協力してもらわないと、枯れちゃうんじゃないかなぁ」
「数日で別の大陸に着くわけじゃないらしいよー」
「……水があんまりいらない子だったら行ける??」
「紛れ込ませちゃう?」
「やるだけやってみる??」
「植木鉢取ってくる~」
わらわらと散っていくドライアドたちを見送るのは、他のドライアドたちよりも大きな花を咲かせたドライアドたちだ。
「……でも、道を繋げたとしても、船が向こうに着いたか分からないよね」
「そうだねー。それに、向こうに行けても、育てられる人に会うのは難しいよね」
「会えたとしても、人間さんが道を通るのは危ないもんね」
「落っこちたら戻って来れないもんねー」
「でも~、とりあえずやらせてみてもいいんじゃないかなぁ」
「紛れ込ませる方法はどうするの?」
「フクちゃん、こっそり動くの得意だからお任せしちゃう?」
「そうだねー。フクちゃんさがそ~」
「フクちゃん隠れるの上手だから見つけられるかなぁ~」
そう言うと残っていたドライアドたちも散り散りに分かれていった。
そんな感じのドライアドたちの話があってから数日後、大国ヤマトから海洋国家ガレオールに向けて出発した船の積み荷の中に、植木鉢に入った多肉植物などしばらく水やりをしなくても問題ない植物がいくつか置かれていた。
一番最初に気付いたのは、ガレオールに向かっていた大国ヤマトの勇者である大和修一だったが、彼はきれいに並べられている植物を見て、誰かが珍しい植物を売りに行こうとしているんだろう、と思って放っておいた。
その様子を船員が見ていたため、勇者の私物だと勘違いし、植物たちは無事にガレオールまで処分される事なく運ばれたのだった。
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