上 下
519 / 1,023
第18章 ニホン観光をしながら生きていこう

348.事なかれ主義者は不自由してない

しおりを挟む
 世界樹トネリコのお世話は問題なく終わった。
 お世話が終わると、今日は褐色肌のドライアドたちが集まってきて大量の収穫物を貰う事にはなった。
 まだファマリーやユグドラシルに生息しているドライアドたちと比べたら可愛い物だけど、そのうち体に巻きついて来るのかなぁ。
 ……いや、向こうの子たちは最初の方から結構距離が近かった気がするし地域性? みたいなものかも。
 ジューンさんはエルフ同士の話し合いがあるからこの場にはおらず、護衛としてついて来ていたジュリウスと二人でわらわらと集まってきたドライアドたちのお裾分けをひたすらアイテムバッグに入れ続けた。
 もうお裾分けはこちらへ、って感じでアイテムバッグを置いておくのもありかもしれない、なんて事を考えながら一人一人ドライアドにお礼を言って頭を撫でては受け取り続けた。

「戻りますか?」
「そうだね。手伝ってくれてありがとね、ジュリウス」

 最後の一人から受け取ったら早々に退散する事にした。
 長居したらまたドライアドたちのプレゼント攻撃が始まりそうだったので。
 まあ、食べ物に関しては町の子たちの分の食料と考えれば有難いんだけど。
 転移陣でファマリーに戻り、こっちのドライアドたちが集まってくる前にそそくさと屋敷へと戻る。
 昨日作った遊具にはちらほらとドライアドたちがいたけれど、遊んでいるというよりは遊具の上でのんびりと過ごしている、という感じだった。

「あ、やべ」

 ジャングルジムのてっぺんでボーッと過ごしていたドライアドに気付かれた。
 幸いそこそこ距離があったので急いだら追いつかれる事はなかったし、急いでいる様子が伝わったのかブンブンと手を振ってくるだけで近づいて来なかったけど。
 手を振り返して屋敷の中へと戻る。
 屋敷の中では護衛は不要だからとジュリウスとは別行動だ。
 三階まで階段を上り、すぐ近くの部屋をノックするとしばらくして中から扉が開けられた。

「なんだシズト様かっ。ノックが聞こえたから何事かと思ったぞっ」
「流石に女性の部屋にノックも無しに入らないよ」
「女性は女性だけど師匠だからなっ。入っても問題ないと思うぞっ」

 元気溌溂な小柄な少女はエルヴィスだ。
 見た目からはそうは思えないけど、僕より年上の女性だ。
 ドワーフの女性の見た目は大体こんな感じらしい。
 年老いてもその美貌というか、若々しさはあまり変わらないんだとか。
 ドワーフの国で合法ロリやロリババァがわらわらいると考えると、ロリコンにとっての天国なのかなぁ、なんてどうでもいい事を思った。
 ……そういえばドライアドたちも長生きだけど見た目幼女が多いな。この世界ってもしかしてロリコンの天国なのでは?

「入らないのかっ? 魔道具を作りに来たんだろっ?」
「ごめんごめん。ちょっとどうでもいい事考えてた」

 室内に入ると、扉を閉めたエルヴィスが彼女用の作業机と戻っていった。その隣では僕が入ってきたのにも反応せずに男性が必死に作業をしている。
 僕の視線に気づいた様子で、エルヴィスがポコッと彼の頭を叩いた。

「エイロン、挨拶くらいしたらどうなんだっ」
「いってぇな! 何すんだよ!」
「だから、シズト様に挨拶をしろって言ってんだっ」
「いてっ! だから、そんなポコポコ叩くんじゃねぇよ! あ、シズト様。ち~っす」
「ち~っす」
「もっとちゃんと挨拶しろっ」
「いてっ! シズト様が何とも言わなかったんだからいいだろ!」

 先程まで静かだった室内が途端に賑やかになった。
 邪魔しちゃってごめんね、と思いつつ僕も作業をしようと室内を見渡す。
 ノエルの部屋にしては整理整頓されている。きっと僕が作業をすると聞いたモニカが手を回したんだろう。
 窓際の一際大きな机では金色の髪の女の子がせっせと作業を続けている。髪の毛の間からニョキッと尖った耳が飛び出ている彼女はノエル。この部屋の主だ。
 エイロンとエルヴィスの口論を気にした様子もなく、作業を続けている彼女の隣に真新しい椅子が一つ置かれていた。

「シズト様はその席だってノエル様が言ってたぞっ」
「教えてくれてありがと」

 エルヴィスに言われた通り、ノエルの隣に腰かける。
 一人用だった作業机を二人分並べただけの場所だけど、作業する分にはこれで十分だ。
 僕が使わない時は大体魔道具が机の上にゴチャゴチャと散乱しているらしいけど、今日は机一つ分だけに留めている様だった。
 ノエルの机の端の方には魔法を付与し終わった魔石が山となっていて、今にもこちら側に崩れてきそうだ。……いつまでもつかな、この山。
 また一つ山に魔石が加わった。
 ノエルを横から見ると、真剣な表情で魔石に魔法を付与しているようだった。
 こうして黙って作業をしている横顔はすごい綺麗だ。エルフの血が混じっているから顔立ちが整っているのか、そういう家系なのかは謎だ。

「いつまでもこうしているわけにもいかないか。……暮らしが便利になる魔道具ってどんなのがいいかなぁ。……よくよく考えたら、ドランの屋敷に住むようになってからは自分の身の回りの事をほとんど人に任せてるし、何が大変かよく分かんないんだよな。とりあえず前世にあった家電とか参考に魔道具を作っていけばいいかな?」

 うーん……分からん。
 分からんけど、何もしないのはあれだからとりあえずお昼ごはんの時間まで考えながら魔道具を作ってみよう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

処理中です...