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第18章 ニホン観光をしながら生きていこう
344.事なかれ主義者は何とも言えない
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ユグドラシルのお世話は手早く終わらせた。
他の世界樹の世話をする時よりも魔力がだいぶ余っている。
これなら変装用の魔道具を使っても一日観光をする事ができそうだ。
ユグドラシルにある転移陣からファマリーの転移陣に転移すると、既に狼人族のシンシーラが待っていた。今日は護衛としてではなく、使用人としてついて来るためメイド服を着ていた。
いつもと違う格好だからか分からないけど、ドライアドたちに囲まれてじろじろと観察されていたシンシーラだったが、ドライアドたちを気にした様子もない。
僕が転移してきた事に気付くと、尻尾がぶんぶんと元気よく動き回る。
ドライアドたちはそれを待っていたようでじゃれて遊び始めた。
「ごめん、お待たせ」
「気にしなくていいじゃん。今来たところじゃん。すぐに行くじゃん?」
「いや、その前に変装しなくちゃいけないから」
まあ、変装と言っても魔道具に魔力を流すだけなんですけどね。
首から下げていた魔道具に魔力を流すと、自分の見た目が変わる。
視界に時々入っていた黒い髪の毛が金色に代わり、日本人というか黄色人種特有の肌の色も、日に焼けた事のないような真っ白な肌へと変わった。
「……目の前で変わらないとシズト様か分からないじゃん。匂いも変わるのはどうなってるじゃん?」
「それは腰に下げた『体臭袋』のおかげだね」
腰から下げていた小さな袋は魔力を流すとその人の体臭を消し、別の匂いへと置き換える事ができる優れ物だ。
獣人たちのように匂いに敏感な人対策で作ったけど、ちょっと運動して汗臭いかな? って心配な時に使うといい感じになる気がする。
「そこまでやる必要あるじゃん? シズト様の匂いを知っている人なんてそうそういないと思うじゃん」
「どうなんだろうね。異世界転移者特有の匂いが伝わってたらアレかな、って思って作ってみたけど」
「今代の勇者様たちの匂いが分かれば、シズト様と比較する事はできるかもしれないじゃん。今度もし会う事があったら試してみるじゃん?」
「んー……別にいいかな」
明や姫花はまだいいけど、陽太と同じような匂いがするって言われたら何となく嫌だ。
ドライアドたちが転移陣のパーツを埋め込んでいつでも使えるようにしてくれた。
向こうの準備も終わっているようで、魔法陣が淡く光り輝いている。
「とりあえず、向こうに行こうか」
小さなドライアドたちに見送られながら、ヒロシマへと転移した。
転移した先で待っていたのは、空のように青い髪の小柄な女の子クーだ。
彼女もホムラたちと同じホムンクルスだが、結婚はしていない。小さすぎてそういう対象に見れないというかなんというか。
「おにーさん、なんか失礼な事考えてない?」
「ナンデモナイヨ」
夕日に染まった空のような橙色の目が疑わし気に僕を見ている。
ただ、しゃがんでクーに背中を向けると、彼女はため息をついて僕の背中に乗ってきた。
細い腕と足がギュッと僕に絡みついてくる。
ジュリウスがアイテムバッグから取り出した長い布のような物を使ってクーを固定すると、一番最後に馬車を下りた。
「城下町はあまり変わり映えしないんだね」
「どこもかしこもこのような光景らしいぞ」
僕の呟きにいち早く反応したジュリウスが、いつもの丁寧な口調ではなく、部下たちに言うような言い方で教えてくれた。
今の僕は世界樹の番人の内の一人で、クーのお気に入りという事になっているから話し方には気を付けないといけない。
一緒についてきたシンシーラは、クーの世話係という事で普段は着ない服を着ているからかそわそわしている様子だ。
尻尾は元気に暴れているので、まあ特に気にしなくてもいいだろう。
「クー様、まずはどこに向かいましょうか」
「おにーさんのオススメでー」
一応クーにお伺いを立てたけど、クーは考える事を放棄しているようだ。
であれば、最初に向かうのは先程から気になっていた場所にしよう。
「それでは、まずは教会から行きましょう」
「わかった。案内するからついてこい」
そういうとジュリウスはサクサクと歩き始めた。
彼が向かう先には大きな湖と、その真ん中にぽつんと浮かんでいる島が見える。
過去の勇者が意図的にそうしたのだろうか。
真っ赤な鳥居は陸地ではなく、湖のなかに建っていた。
それをくぐるように、多くの小舟が行き交っている。
それを物珍しげに見ていると、僕の肩に顎を乗せていたクーが口を開いた。
「湖も、一つだけポツンとある陸地も全部勇者様が作ったんだって」
「人造湖っていうやつじゃん? 昔は水で困ってたじゃん?」
「勇者一人で湖一つ作るってすごいですね」
やろうと思えば僕もたぶんできるけど、生産系の加護をいくつも持っているからだ。
戦闘系の加護を与えられていたであろう人がこんな大きな湖を作ったのは素直にすごいと思う。
困っている人のために頑張ったんだなぁ、と思っていたけど、クーは首を横に振った。
「単純に、アレが作りたかったから作っただけらしいよ。なんか、『ヒロシマだったらあの神社作らなきゃ!』って言って、空いてたところに勝手に作っちゃったんだって」
「ただの迷惑系転移者じゃん……」
思わず敬語を忘れて呟いてしまった。
まあ、当時は色々あったかもしれないけど、今は観光地になっているから……いいのかな?
他の世界樹の世話をする時よりも魔力がだいぶ余っている。
これなら変装用の魔道具を使っても一日観光をする事ができそうだ。
ユグドラシルにある転移陣からファマリーの転移陣に転移すると、既に狼人族のシンシーラが待っていた。今日は護衛としてではなく、使用人としてついて来るためメイド服を着ていた。
いつもと違う格好だからか分からないけど、ドライアドたちに囲まれてじろじろと観察されていたシンシーラだったが、ドライアドたちを気にした様子もない。
僕が転移してきた事に気付くと、尻尾がぶんぶんと元気よく動き回る。
ドライアドたちはそれを待っていたようでじゃれて遊び始めた。
「ごめん、お待たせ」
「気にしなくていいじゃん。今来たところじゃん。すぐに行くじゃん?」
「いや、その前に変装しなくちゃいけないから」
まあ、変装と言っても魔道具に魔力を流すだけなんですけどね。
首から下げていた魔道具に魔力を流すと、自分の見た目が変わる。
視界に時々入っていた黒い髪の毛が金色に代わり、日本人というか黄色人種特有の肌の色も、日に焼けた事のないような真っ白な肌へと変わった。
「……目の前で変わらないとシズト様か分からないじゃん。匂いも変わるのはどうなってるじゃん?」
「それは腰に下げた『体臭袋』のおかげだね」
腰から下げていた小さな袋は魔力を流すとその人の体臭を消し、別の匂いへと置き換える事ができる優れ物だ。
獣人たちのように匂いに敏感な人対策で作ったけど、ちょっと運動して汗臭いかな? って心配な時に使うといい感じになる気がする。
「そこまでやる必要あるじゃん? シズト様の匂いを知っている人なんてそうそういないと思うじゃん」
「どうなんだろうね。異世界転移者特有の匂いが伝わってたらアレかな、って思って作ってみたけど」
「今代の勇者様たちの匂いが分かれば、シズト様と比較する事はできるかもしれないじゃん。今度もし会う事があったら試してみるじゃん?」
「んー……別にいいかな」
明や姫花はまだいいけど、陽太と同じような匂いがするって言われたら何となく嫌だ。
ドライアドたちが転移陣のパーツを埋め込んでいつでも使えるようにしてくれた。
向こうの準備も終わっているようで、魔法陣が淡く光り輝いている。
「とりあえず、向こうに行こうか」
小さなドライアドたちに見送られながら、ヒロシマへと転移した。
転移した先で待っていたのは、空のように青い髪の小柄な女の子クーだ。
彼女もホムラたちと同じホムンクルスだが、結婚はしていない。小さすぎてそういう対象に見れないというかなんというか。
「おにーさん、なんか失礼な事考えてない?」
「ナンデモナイヨ」
夕日に染まった空のような橙色の目が疑わし気に僕を見ている。
ただ、しゃがんでクーに背中を向けると、彼女はため息をついて僕の背中に乗ってきた。
細い腕と足がギュッと僕に絡みついてくる。
ジュリウスがアイテムバッグから取り出した長い布のような物を使ってクーを固定すると、一番最後に馬車を下りた。
「城下町はあまり変わり映えしないんだね」
「どこもかしこもこのような光景らしいぞ」
僕の呟きにいち早く反応したジュリウスが、いつもの丁寧な口調ではなく、部下たちに言うような言い方で教えてくれた。
今の僕は世界樹の番人の内の一人で、クーのお気に入りという事になっているから話し方には気を付けないといけない。
一緒についてきたシンシーラは、クーの世話係という事で普段は着ない服を着ているからかそわそわしている様子だ。
尻尾は元気に暴れているので、まあ特に気にしなくてもいいだろう。
「クー様、まずはどこに向かいましょうか」
「おにーさんのオススメでー」
一応クーにお伺いを立てたけど、クーは考える事を放棄しているようだ。
であれば、最初に向かうのは先程から気になっていた場所にしよう。
「それでは、まずは教会から行きましょう」
「わかった。案内するからついてこい」
そういうとジュリウスはサクサクと歩き始めた。
彼が向かう先には大きな湖と、その真ん中にぽつんと浮かんでいる島が見える。
過去の勇者が意図的にそうしたのだろうか。
真っ赤な鳥居は陸地ではなく、湖のなかに建っていた。
それをくぐるように、多くの小舟が行き交っている。
それを物珍しげに見ていると、僕の肩に顎を乗せていたクーが口を開いた。
「湖も、一つだけポツンとある陸地も全部勇者様が作ったんだって」
「人造湖っていうやつじゃん? 昔は水で困ってたじゃん?」
「勇者一人で湖一つ作るってすごいですね」
やろうと思えば僕もたぶんできるけど、生産系の加護をいくつも持っているからだ。
戦闘系の加護を与えられていたであろう人がこんな大きな湖を作ったのは素直にすごいと思う。
困っている人のために頑張ったんだなぁ、と思っていたけど、クーは首を横に振った。
「単純に、アレが作りたかったから作っただけらしいよ。なんか、『ヒロシマだったらあの神社作らなきゃ!』って言って、空いてたところに勝手に作っちゃったんだって」
「ただの迷惑系転移者じゃん……」
思わず敬語を忘れて呟いてしまった。
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