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第18章 ニホン観光をしながら生きていこう
343.事なかれ主義者はいつも通りで安心した
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今日もいつもの時間にパチッと目が覚めた。
眠気もなかったので起き上がろうとしたけど、体の上に何やら乗っている事に気付く。
掛布団をそっと退けると、まず見えるのは黒色の髪の毛だ。
ただ、大きさ的にも状況的にもモニカやホムラではない。二人とも基本的に僕よりも起きるのは早く、モニカは僕が目を覚ます時間になるとベッドの傍でいつも控えているし、ホムラは寝転がってボクの寝顔をじっと観察している事が多い。
二人とも今のように僕の体の上に乗って器用に寝る事なんてないのだ。
「ほら、パメラ。朝だから起きて」
ちょんちょん、と剥き出しになった小さな肩に触れると、背中から生えていた黒い翼が震えた。翼の先の方が僕の肌に触れてくすぐったい。
そんな僕の状況を気にした様子もなく、パメラはしばらくもぞもぞとしていたが、パチッと真ん丸の目が開かれた後は早かった。
むくっと起き上がったパメラから慌てて視線を逸らしたが、彼女は気にした様子もなく大きな声で元気よく挨拶をした。
「おはようデス!」
「うん、おはよう。とりあえず服着てもらっていい?」
「朝はしなくていいのデスか?」
「けっこーです!」
「そうデスか。分かったデス! パメラは今日、夜の見張りがあるから自室でもう少し寝てるデス!」
そう言うと、ガウンを羽織った彼女は珍しくトテテテと小さな足を動かして部屋から出て行った。
いつも部屋から移動する時は窓を開けて外に出ているのだが、さすがにガウンを羽織っていると翼を広げる事ができないからだろう。
パメラが扉を閉めたところでホッと一息ついたんだけど、今日の当番が誰かを思い出して慌てて服を着る。
服を着ている最中に、パメラが出て行った扉の反対側の扉からガチャッという音がして誰かが入ってきた。
一言も声をかけて来ない事と、今日の世話係が誰かという事を考えるとおそらくホムラだろう。
靴下などは後回しにして、とりあえず上下の服は着終えた頃にパーテーションの向こう側からとても長い黒髪が特徴的な少女ホムラが姿を現した。
無表情で彼女はずんずんと僕に近づいてきた。
「おはよう、ホムラ」
「おはようございます、マスター。お召し替えは既に終わっていらっしゃいますね。何かお手伝いする事は御座いますか?」
「特にないよ。ほらほら、朝ご飯の時間だからさっさと行くよ」
「かしこまりました」
靴下を履いた後、素直なホムラを引き連れて食堂に向かう。
食堂ではレヴィさんたちが席に着いて何やら話をしている様だった。
ただ、そこまで重要な話ではなかったのか、それとも僕に聞かれると気まずい話だったのかは分からないけど、僕に気付くと話を止めた。何かあればそのうち話してくれるだろう。
一先ず席に座って食事前の挨拶を唱和し、朝ご飯を食べ始める。
朝ご飯を食べている時の話題は、いつも今日の予定の確認から始まる。
メイド服を着た黒髪の女の子モニカと、エルフの男性ジュリウスから話を聞く。
「本日も多数のご来客がある予定ですが、いずれもシズト様に同席して頂く必要はございません。その代わり、レヴィア様にご同席していただきたい方がいらっしゃいますので、お昼過ぎまでにはドレスに着替えておいてください」
「分かっているのですわ~」
レヴィさんは、午前中は農作業をするために長袖長ズボンを着ていた。
ただ、事前に伝えられていたようでモニカからお願いされると元気よく返事をしている。
その後ろに綺麗な姿勢で立っていたセシリアさんもこくりと頷いている。
「念のため、ドーラ様にも護衛としてついていただけますと幸いです」
「ん」
ドーラさんはこくりと頷いただけで食事を止めようとしない。
小柄な体のどこにあれだけの量のご飯が入るのか謎だ。
モニカがジュリウスに目配せをすると、今度はジュリウスが僕の方を向いて話を始めた。
「ジュリーニたちから連絡があり、ヒロシマの首都に到着したようです。予定通り、本日から観光をする、という事でよろしかったでしょうか?」
「うん。ユグドラシルの世話が終わったら行こうかな」
「かしこまりました。それまでに準備しておきます」
「うん、お願い」
準備と言っても、アイテムバッグから変装用の魔道具をいくつか取り出すだけなんだけどね。
それよりも、気になる事があったのでモニカに視線を戻す。
「シンシーラがついてくる予定だけど、大丈夫そうかな? 昨日夜の見張り当番だったんでしょ?」
「昼間の警備担当であるアンディーと事前に話し合い、早めに切り上げて現在仮眠をとっているようです。お戻りになる頃には起きているでしょう」
「無理させなくていいからね?」
「心得ております」
まあ、モニカなら無理をさせる事はないか。
視線を手元に移して食事を再開する。
今日はニホン連合に行くという事で、朝食は洋風にしてもらった。
パンにレモンのマーマレードをせっせと塗っていると、口の中に食事を詰め込んだノエルが「ごちそうさまでしたっす~~」と言いながら競歩のような歩き方で部屋から出て行った。
最近ちょっと元気ないように見えたけど、あれなら問題なさそうだ。
僕も早く食べ終えて世界樹の世話をしないと、と思いせっせと口に食べ物を運ぶのだった。
眠気もなかったので起き上がろうとしたけど、体の上に何やら乗っている事に気付く。
掛布団をそっと退けると、まず見えるのは黒色の髪の毛だ。
ただ、大きさ的にも状況的にもモニカやホムラではない。二人とも基本的に僕よりも起きるのは早く、モニカは僕が目を覚ます時間になるとベッドの傍でいつも控えているし、ホムラは寝転がってボクの寝顔をじっと観察している事が多い。
二人とも今のように僕の体の上に乗って器用に寝る事なんてないのだ。
「ほら、パメラ。朝だから起きて」
ちょんちょん、と剥き出しになった小さな肩に触れると、背中から生えていた黒い翼が震えた。翼の先の方が僕の肌に触れてくすぐったい。
そんな僕の状況を気にした様子もなく、パメラはしばらくもぞもぞとしていたが、パチッと真ん丸の目が開かれた後は早かった。
むくっと起き上がったパメラから慌てて視線を逸らしたが、彼女は気にした様子もなく大きな声で元気よく挨拶をした。
「おはようデス!」
「うん、おはよう。とりあえず服着てもらっていい?」
「朝はしなくていいのデスか?」
「けっこーです!」
「そうデスか。分かったデス! パメラは今日、夜の見張りがあるから自室でもう少し寝てるデス!」
そう言うと、ガウンを羽織った彼女は珍しくトテテテと小さな足を動かして部屋から出て行った。
いつも部屋から移動する時は窓を開けて外に出ているのだが、さすがにガウンを羽織っていると翼を広げる事ができないからだろう。
パメラが扉を閉めたところでホッと一息ついたんだけど、今日の当番が誰かを思い出して慌てて服を着る。
服を着ている最中に、パメラが出て行った扉の反対側の扉からガチャッという音がして誰かが入ってきた。
一言も声をかけて来ない事と、今日の世話係が誰かという事を考えるとおそらくホムラだろう。
靴下などは後回しにして、とりあえず上下の服は着終えた頃にパーテーションの向こう側からとても長い黒髪が特徴的な少女ホムラが姿を現した。
無表情で彼女はずんずんと僕に近づいてきた。
「おはよう、ホムラ」
「おはようございます、マスター。お召し替えは既に終わっていらっしゃいますね。何かお手伝いする事は御座いますか?」
「特にないよ。ほらほら、朝ご飯の時間だからさっさと行くよ」
「かしこまりました」
靴下を履いた後、素直なホムラを引き連れて食堂に向かう。
食堂ではレヴィさんたちが席に着いて何やら話をしている様だった。
ただ、そこまで重要な話ではなかったのか、それとも僕に聞かれると気まずい話だったのかは分からないけど、僕に気付くと話を止めた。何かあればそのうち話してくれるだろう。
一先ず席に座って食事前の挨拶を唱和し、朝ご飯を食べ始める。
朝ご飯を食べている時の話題は、いつも今日の予定の確認から始まる。
メイド服を着た黒髪の女の子モニカと、エルフの男性ジュリウスから話を聞く。
「本日も多数のご来客がある予定ですが、いずれもシズト様に同席して頂く必要はございません。その代わり、レヴィア様にご同席していただきたい方がいらっしゃいますので、お昼過ぎまでにはドレスに着替えておいてください」
「分かっているのですわ~」
レヴィさんは、午前中は農作業をするために長袖長ズボンを着ていた。
ただ、事前に伝えられていたようでモニカからお願いされると元気よく返事をしている。
その後ろに綺麗な姿勢で立っていたセシリアさんもこくりと頷いている。
「念のため、ドーラ様にも護衛としてついていただけますと幸いです」
「ん」
ドーラさんはこくりと頷いただけで食事を止めようとしない。
小柄な体のどこにあれだけの量のご飯が入るのか謎だ。
モニカがジュリウスに目配せをすると、今度はジュリウスが僕の方を向いて話を始めた。
「ジュリーニたちから連絡があり、ヒロシマの首都に到着したようです。予定通り、本日から観光をする、という事でよろしかったでしょうか?」
「うん。ユグドラシルの世話が終わったら行こうかな」
「かしこまりました。それまでに準備しておきます」
「うん、お願い」
準備と言っても、アイテムバッグから変装用の魔道具をいくつか取り出すだけなんだけどね。
それよりも、気になる事があったのでモニカに視線を戻す。
「シンシーラがついてくる予定だけど、大丈夫そうかな? 昨日夜の見張り当番だったんでしょ?」
「昼間の警備担当であるアンディーと事前に話し合い、早めに切り上げて現在仮眠をとっているようです。お戻りになる頃には起きているでしょう」
「無理させなくていいからね?」
「心得ております」
まあ、モニカなら無理をさせる事はないか。
視線を手元に移して食事を再開する。
今日はニホン連合に行くという事で、朝食は洋風にしてもらった。
パンにレモンのマーマレードをせっせと塗っていると、口の中に食事を詰め込んだノエルが「ごちそうさまでしたっす~~」と言いながら競歩のような歩き方で部屋から出て行った。
最近ちょっと元気ないように見えたけど、あれなら問題なさそうだ。
僕も早く食べ終えて世界樹の世話をしないと、と思いせっせと口に食べ物を運ぶのだった。
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