【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第18章 ニホン観光をしながら生きていこう

342.事なかれ主義者は根負けした

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 昼食後、リーヴィアたち……というかパメラにねだられて一階にある遊戯室でポーカーをした。
 結果は…………まあ、お察しの通りだ。
 黒い翼をバサバサと動かし、駄々を捏ねているパメラがそこにはいた。

「まだ終わってないデス!!」
「いや、もう賭けるポテチないじゃん」

 今日のおやつはポテトチップスだった。「これならたくさん賭けられるデス!」と意気揚々と勝負を挑んできたパメラだったけど、肝心な所で負けてしまったので無一文だ。
 オールインしなければそれ相応に勝てるのに「たくさん賭けないと楽しくないデス!」と言ってやめようとしない。

「前は服も賭けれたデス!!」
「そういうの無しの賭場なんで」

 っていうか、そういう事だけなんで覚えてるんだろうね。
 失敗した事をしっかり覚えているとか?
 いや、失敗した事を覚えているのなら、毎回オールインして負けているから覚えているはずか。
 んー……謎だ。

「じゃあお小遣いを賭けるデス!」
「ダメだよ、パメラちゃん。お金はダメってお兄ちゃんが言ってたでしょ」
「うん、そうだね。ここの賭場は現金対応してないからね」

 パメラに注意したのはピンク色の髪の毛がトレードマークの幼女アンジェラだ。
 最近、別館の管理のお手伝いをし始めた彼女はメイド服を着ている。
 彼女の前にはポテチの山ができていた。
 大勝負の時に毎回勝っているので運がとてもいいんだろう。その運の良さをパメラに分けてあげて欲しい。

「じゃあ体で支払うデス!!」
「それも駄目ね。他の参加者が同じものを賭ける事ができないじゃない」

 同じ卓に参加していたロリエルフのリーヴィアが呆れた様子でパメラを見ている。
 彼女のポテチの量は、ポーカーを始めた時から大きく変わってない。大きく負ける事もないが大きく勝つ事もなかった。

「……私は別にいいけど……」

 意味深な事を呟きながらこちらをチラッと見てきたアンジェラをスルーする。
 反応したらややこしい事になりそうなので。
 子どもは子ども同士で恋愛してください。『イエス! ロリータ、ノー! タッチ』のつもりでやっているので。
 ……ドーラさんやパメラは見た目が幼いだけなので良しとしている。

「ほらほら、賭け事はこの辺でお開きね。お菓子食べながら新しい遊びでもやろっか」
「お菓子ないデス!」
「自業自得よ。今日は何をするの?」
「今日は、麻雀をします!」

 ニホン連合にあったので。一度やってみたかったんだよね。
 ニホン連合には過去の勇者が伝えた遊びがいくつも残っているようだ。
 カガワで雀荘を見かけて麻雀の事を思い出し、暇を持て余していたジュリーニにやり方など調べてもらっておいたのだ。
 ただ、細かい計算とかは伝わっていなかったらしい。
 役一覧表とざっくりとした点数だけ入手できたので、後は自作した。
 麻雀牌も、点数棒も、全自動……じゃなくて全魔動雀卓も一通り作る事ができた。
 全魔動雀卓に魔力を流すと、机の上にジャラジャラと不規則に置かれていた麻雀牌が全て裏向きになり、勝手に動き出す。
 不規則に動き回っていた麻雀牌だったが、それぞれ十七枚ずつの列を八つ作ると、そのうち四つが浮き上がって残りの四つの上に乗っかった。
 麻雀牌が定位置に移動したところでサイコロを振って親を決め、自分だったからもう一度サイコロを振った。
 それぞれ自分の手持ちの麻雀牌と、ドラを決めたところでルールと役一覧表が書かれた紙を見ながらゲームを始める。
 僕たちが覚束ない手つきでやっている中、リーヴィアは慣れた手つきで迷いなく牌を切っていく。

「やった事あるの?」
「読めばわかるでしょ?」

 当然でしょ? と言った感じで言われても、一度読んだだけじゃ無理っす。
 正面に座っているパメラも僕も、三つずつのセットが分かるように手持ちの牌同士をちょっと開けてる。アンジェラも……って、なんかすごいばらばらだな。
 役一覧が書かれた紙と見比べながら真剣な眼差しで考えている様子だけど、結構牌を引いているのにばらばら過ぎる。
 やっぱりサポートが必要だったかなぁ。
 なんて思っていたら、熟考していたパメラが捨てた真っ白な牌を見て「それ!!」とアンジェラが大きな声を出した。
 一組だけ二個セットがあったからポンだろうか? と思っていたらアンジェラが全部をみんなに見せるように倒した。

「コクシムソー……だよね?」

 ………アンジェラ先輩、ぱねぇっすわ。
 一瞬で持ち点がゼロになってしまったパメラは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。



 その後、仕切り直して遊んだけど一位にはなれなかった。
 運が強いアンジェラと、記憶力がすごくいいリーヴィアのどちらかが一位になっていた。
 アンジェラは仕方ないとして、リーヴィアは混ぜられる前の牌の位置をすべて記憶して、どこに何があるのか覚えていたらしい。
 全魔動雀卓を改良しなきゃ、と思って食後自室でせっせと新しい机を作っていると、今日のお世話係のノエルが僕の肩を叩いた。
 振り向くと、少し頬を紅潮させたノエルがボソボソと喋る。

「……そろそろ、魔力が切れるんじゃないっすか?」
「そうかな。……ノエルはもう魔道具は良いの?」
「大体見たっす」

 彼女が先程までいたベッドの近くには魔道具が散乱していた。
 どうやら一通り見て満足したようだ。

「……とりあえず、片付けようか」
「分かったっす」

 僕も作業を切り上げて、ノエルと一緒に魔道具を片付けた。
 その途中、ふとノエルが思い出したように声をあげた。

「そういえば、勇者様たちの世界では夜に使う魔道具があるらしいっすね。シズト様も知ってるっすか?」
「……まあ、人並みには知ってるよ。僕たちの世界には魔法がないから、魔道具じゃないけど」
「どういう感じの物っすか? 魔道具で再現出来るっすか?」

 ……うん、閃いてしまったから作れるんじゃないかなぁ。実物を見た事がないから本当にそれ通りなのか分からないけど。
 ただ、黙っておいた方が良い気がする。

「………作れるんすね?」
「ソンナコトナイヨ」
「今すぐ作るっす!」
「作れないから無理ですー。っていうか、魔力切れるから無理ですぅ」
「その顔は嘘をついている顔な気がするっす! 魔道具の研究のために作るっす!」
「ちょっと何言ってるか分かんないですぅ」
「作らないなら今日は寝かせないっすよ!」
「魔道具使って寝るからいいですぅ、って安眠カバーを取るのは卑怯じゃないっすか!」
「シズト様が魔道具を作らないから悪いっす!」

 ノエルが安眠カバーの魔法陣に触れないように裏返して、枕をお尻の下敷きにした。
 そうすれば僕が取れないと思ったのか! お尻くらいもう触れるわ!
 って思って近づいたら彼女の思うツボだった。
 身体強化を使ったノエルに僕が押し倒された。

「作るって言うまで寝かせないっすよ」

 顔を真っ赤にしたノエルが明かりを消した。
 その日は今までで一番長い夜だった。
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