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第17章 結婚しながら生きていこう
330.事なかれ主義者も困った
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結婚式は何事もなく終わり、馬車に揺られて屋敷に戻る。
ジューンさんは一足早く帰ってきていて、着替え終えていた。
今はシンプルなデザインの襟元が大きく開いたワンピースを着ている。
腰回りはベルトで縛られていて、大きな胸とエルフ特有の細い腰が強調されている。
あまり視線が下にいかないように気を付けていると、ジューンさんがにっこりと微笑んだ。
「シズトちゃん、お帰りなさぁい」
「ただいま。レヴィさんたちも戻ってきてるの?」
「戻ってきてないですよぉ。レヴィちゃんもぉ、セシリアちゃんもぉ、参列していた方々とお話があるようでしたのでぇ、私だけ一足先に帰ってきましたぁ」
「ラオさんたちは?」
「教会から戻ってきていないですぅ。たぶん着替えに時間がかかっているんじゃないでしょうかぁ。私たちと比べるとぉ、ドレスなんてめったに着ないでしょうからぁ。でもぉ、もうそろそろ帰ってくると思いますよぉ」
「そっか。じゃあ、待っている間に着替えを済ませて、ついでにユグドラシルのお世話も終わらせちゃおうかな」
「一緒に行ってもいいですかぁ?」
「いいけど……何か向こうに用事があるの?」
「特にありませんよぉ。それではぁ、転移陣の前で待っていますからぁ、準備ができたら来てくださいねぇ」
ニコニコしたままジューンさんが離れていく。
後ろで控えていたジュリウスも当然話を聞いていた。
一言「準備をしてきます」とだけ言って別館の方へと向かって行く。
今日は最小限の武装しかしていなかったから、万全の準備を整えてくるのだろう。
ユグドラシルで何かがある可能性は低いけど、油断大敵っていうし、僕も気を引き締めよう。
自室に戻って一人でさっさと動きやすい服装に着替えると、屋敷を出て転移陣の元へと向かった。
転移陣が設置されたウッドデッキに腰かけていたジューンさんは、近くにいたドライアドを膝に乗せて畑の様子を眺めていたが、ドライアドが僕に気付いて身じろぎをすると僕に気が付いた。
「ほんとについて来るの?」
「もちろんですぅ」
「加護を使う事以外に特にやる事ないんだけど……」
「大丈夫ですぅ」
ニコニコしているジューンさんにこれ以上言っても無駄なので、既に到着していたジュリウスを連れてユグドラシルに転移した。
世界樹ユグドラシルの根元に転移すると、どこからともなくドライアドたちがやってくる。
いつもの光景に安心感を感じつつ、彼女たちから差し出される収穫物をアイテムバッグに入れていく。
ジュリウスも手伝ってくれたけど、ジューンさんは世界樹の方をジッと見ていた。
「……何か見えるの?」
「………」
「ジューンさん?」
ちょんちょん、と控えめに彼女の腕をつつくと、ハッとした様子で「何でもないですよぉ」と言った。
いや、なんかある感じな気がするんすけど……。
ジュリウスに視線を向けるが、いつも通りだった。
「何が起こってもシズト様のお命だけはお守り致します。安心して加護をお使いください」
「ジュリウス自身も死なないでよ?」
「かしこまりました。善処します」
「その言い方なんか信用できないなぁ」
でも、僕がジッと世界樹の方を見てもいつもと同じようにしか見えないし、ジュリウスが大丈夫って言うんだったら大丈夫なんだろう。
僕はさっさと加護を使って帰る事にした。
加護を使っている間、思考がちょっと逸れちゃったからかいつもよりも多めに魔力が取られたけど、ファマリーと比べたら可愛いものだ。
用事も終わったので、小さなドライアドたちと別れを告げて、屋敷に戻る。
まだ皆帰ってきていないようだ。
まあ、そんな時間が経ってないから当たり前か。
魔力が有り余ってるけど、何しようかな、と考えるけど、ドライアドたちが纏わりついてきて落ち着いて考える事ができない。
一先ず屋敷に入って、それからやる事を考えよう。
そうと決まれば、頭の上に登ろうとしていたレモンちゃんやら他の小さなドライアドたちを丁寧に下ろしていく。
持ち上げられて下ろされるのが楽しいようで、後から後から登ってくるから、ジューンさんとジュリウスにも手伝ってもらった。
皆は夕食の時間までには戻ってきた。
食卓にいつもと遜色のない食事が並んだのは新しく入った子たちが頑張ったのもあるだろう。
実際は王様たちと一緒についてきた宮廷料理長が助っ人として入り、彼らを指導したのが大きいんだろうけど。
食事が終わるとお風呂の時間だ。
今日はジューンさんがお世話係という事で、一緒に入る。
……もちろん、水着を着てもらった。ジューンさんは文句を言う事もなく、ニコニコしながら僕の背中を優しい手つきで洗っている。
髪も体も洗い終わると、二人でのんびり湯船に浸かり、風呂から上がると、バスローブを身に纏ったジューンさんの精霊魔法でササッと髪を乾かしてもらった。
その後、ジューンさんは髪の手入れなどがあるからと一度自室に戻ったので、僕も自分の部屋へと帰る。
……風呂上りに階段を上るのって汗かきそうで嫌だからやっぱり転移陣を作っちゃおうかな、なんてどうでもいい事を考えながら速達箱の中を確認すると、ライデンとランチェッタ様の手紙に加えて、クーからも手紙が来ていた。
都市国家トネリコから出発した馬車に乗ったクーは、トネリコの領土から出て、ニホン連合の領土に入ったそうだ。明日には小さな町に着く、という事だったので僕も準備をしっかり整えよう。
以前、明に「気をつけろ」って言われたし、変装用の魔道具をある程度準備しておいた方が良いよな。
後は加護を持っているって気づかれないように行動すればいいんだろうけど……そういえば、ドライアドたちは僕が加護持ちだって気づいていたな。
加護無しだと偽装する何か魔道具が思いつけばいいんだけど……。
色々考えてみたけど思いつかなかったので、とりあえず見た目等を変える魔道具をせっせと作っていると、扉がノックされた。
パーテーションの向こうにも聞こえる声量で「開いてるよー」と答えると、扉が開いた。
入ってきたのはバスローブを着たままのジューンさんだった。
一緒に寝るようになってから彼女は露出の少ない寝間着を着てくる事が殆どだったので、違和感を感じて彼女を見る。
どことなくそわそわしていた彼女は、僕と視線が合うとすぐに視線を逸らした。
だが、一度深呼吸した後、今度はしっかりと僕と目を合わせてくる。
「シズトちゃん、まだ起きてるんですかぁ?」
「寝る時間にはまだ早いから、もうちょっと起きてるけど?」
「そうですかぁ。ちょっとお話したい事があるのでぇ、こっちに来てもらえますかぁ?」
ジューンさんがベッドに腰かけて、ポンポンと隣を叩く。
改まって話って何だろう? と疑問に思いつつも彼女の隣に腰かけたが、彼女はなかなか口を開かなかった。
「……ジューンさん?」
「えい!!」
「ジューンさん!?」
ジューンさんがいきなり僕をベッドに押し倒した。
驚いて彼女を見上げると、彼女は耳まで真っ赤になっていた。
馬乗りの態勢になったジューンさんとしばし見つめ合う事数分。
ジューンさんがやっと口を開いた。
「………この後ぉ、どうすればいいんでしょうかぁ」
眉を八の字にして困ったような表情をする彼女は、彼女にしては珍しく早口で「知識としては知ってるんですけど、そこまでの流れと言いますか、どのようにして行為を始めるべきなのかとか曖昧でして。とりあえず押し倒せば後は流れで何とかなると皆さん仰ってましたからとりあえず押し倒してみたんですけど――」等と言い始める。
「ジューンさん」
「え、あ、はい。なんでしょうかぁ」
「とりあえず、明かりを消そうか」
「あ、そ、そうですねぇ。分かりましたぁ」
ジューンさんがあたふたしながら魔道具の明かりを消すと、部屋が真っ暗になった。
ジューンさんは問題なくベッドに戻ってきたけど、僕は魔力探知とかできないのでベッド脇に置いておいたランプを点ける。
ぼんやりとベッドの近くが照らされると、ジューンさんがバスローブを脱いでいた事に気付いた。
エルフ特有の白い肌とは対照的な黒い下着を身に着けた彼女は、僕をまた押し倒すと上に覆いかぶさってくる。
ただ、覆いかぶさってくるだけで何もしてこない。
「………それでぇ、これから何をしてほしいですかぁ?」
……それ、僕に聞く?
今まではされるがままだったけれど、今日はそうではないようだ。
どうしようか、と一緒に悩み、ジューンさんとしばらく見つめ合っていた。
ジューンさんは一足早く帰ってきていて、着替え終えていた。
今はシンプルなデザインの襟元が大きく開いたワンピースを着ている。
腰回りはベルトで縛られていて、大きな胸とエルフ特有の細い腰が強調されている。
あまり視線が下にいかないように気を付けていると、ジューンさんがにっこりと微笑んだ。
「シズトちゃん、お帰りなさぁい」
「ただいま。レヴィさんたちも戻ってきてるの?」
「戻ってきてないですよぉ。レヴィちゃんもぉ、セシリアちゃんもぉ、参列していた方々とお話があるようでしたのでぇ、私だけ一足先に帰ってきましたぁ」
「ラオさんたちは?」
「教会から戻ってきていないですぅ。たぶん着替えに時間がかかっているんじゃないでしょうかぁ。私たちと比べるとぉ、ドレスなんてめったに着ないでしょうからぁ。でもぉ、もうそろそろ帰ってくると思いますよぉ」
「そっか。じゃあ、待っている間に着替えを済ませて、ついでにユグドラシルのお世話も終わらせちゃおうかな」
「一緒に行ってもいいですかぁ?」
「いいけど……何か向こうに用事があるの?」
「特にありませんよぉ。それではぁ、転移陣の前で待っていますからぁ、準備ができたら来てくださいねぇ」
ニコニコしたままジューンさんが離れていく。
後ろで控えていたジュリウスも当然話を聞いていた。
一言「準備をしてきます」とだけ言って別館の方へと向かって行く。
今日は最小限の武装しかしていなかったから、万全の準備を整えてくるのだろう。
ユグドラシルで何かがある可能性は低いけど、油断大敵っていうし、僕も気を引き締めよう。
自室に戻って一人でさっさと動きやすい服装に着替えると、屋敷を出て転移陣の元へと向かった。
転移陣が設置されたウッドデッキに腰かけていたジューンさんは、近くにいたドライアドを膝に乗せて畑の様子を眺めていたが、ドライアドが僕に気付いて身じろぎをすると僕に気が付いた。
「ほんとについて来るの?」
「もちろんですぅ」
「加護を使う事以外に特にやる事ないんだけど……」
「大丈夫ですぅ」
ニコニコしているジューンさんにこれ以上言っても無駄なので、既に到着していたジュリウスを連れてユグドラシルに転移した。
世界樹ユグドラシルの根元に転移すると、どこからともなくドライアドたちがやってくる。
いつもの光景に安心感を感じつつ、彼女たちから差し出される収穫物をアイテムバッグに入れていく。
ジュリウスも手伝ってくれたけど、ジューンさんは世界樹の方をジッと見ていた。
「……何か見えるの?」
「………」
「ジューンさん?」
ちょんちょん、と控えめに彼女の腕をつつくと、ハッとした様子で「何でもないですよぉ」と言った。
いや、なんかある感じな気がするんすけど……。
ジュリウスに視線を向けるが、いつも通りだった。
「何が起こってもシズト様のお命だけはお守り致します。安心して加護をお使いください」
「ジュリウス自身も死なないでよ?」
「かしこまりました。善処します」
「その言い方なんか信用できないなぁ」
でも、僕がジッと世界樹の方を見てもいつもと同じようにしか見えないし、ジュリウスが大丈夫って言うんだったら大丈夫なんだろう。
僕はさっさと加護を使って帰る事にした。
加護を使っている間、思考がちょっと逸れちゃったからかいつもよりも多めに魔力が取られたけど、ファマリーと比べたら可愛いものだ。
用事も終わったので、小さなドライアドたちと別れを告げて、屋敷に戻る。
まだ皆帰ってきていないようだ。
まあ、そんな時間が経ってないから当たり前か。
魔力が有り余ってるけど、何しようかな、と考えるけど、ドライアドたちが纏わりついてきて落ち着いて考える事ができない。
一先ず屋敷に入って、それからやる事を考えよう。
そうと決まれば、頭の上に登ろうとしていたレモンちゃんやら他の小さなドライアドたちを丁寧に下ろしていく。
持ち上げられて下ろされるのが楽しいようで、後から後から登ってくるから、ジューンさんとジュリウスにも手伝ってもらった。
皆は夕食の時間までには戻ってきた。
食卓にいつもと遜色のない食事が並んだのは新しく入った子たちが頑張ったのもあるだろう。
実際は王様たちと一緒についてきた宮廷料理長が助っ人として入り、彼らを指導したのが大きいんだろうけど。
食事が終わるとお風呂の時間だ。
今日はジューンさんがお世話係という事で、一緒に入る。
……もちろん、水着を着てもらった。ジューンさんは文句を言う事もなく、ニコニコしながら僕の背中を優しい手つきで洗っている。
髪も体も洗い終わると、二人でのんびり湯船に浸かり、風呂から上がると、バスローブを身に纏ったジューンさんの精霊魔法でササッと髪を乾かしてもらった。
その後、ジューンさんは髪の手入れなどがあるからと一度自室に戻ったので、僕も自分の部屋へと帰る。
……風呂上りに階段を上るのって汗かきそうで嫌だからやっぱり転移陣を作っちゃおうかな、なんてどうでもいい事を考えながら速達箱の中を確認すると、ライデンとランチェッタ様の手紙に加えて、クーからも手紙が来ていた。
都市国家トネリコから出発した馬車に乗ったクーは、トネリコの領土から出て、ニホン連合の領土に入ったそうだ。明日には小さな町に着く、という事だったので僕も準備をしっかり整えよう。
以前、明に「気をつけろ」って言われたし、変装用の魔道具をある程度準備しておいた方が良いよな。
後は加護を持っているって気づかれないように行動すればいいんだろうけど……そういえば、ドライアドたちは僕が加護持ちだって気づいていたな。
加護無しだと偽装する何か魔道具が思いつけばいいんだけど……。
色々考えてみたけど思いつかなかったので、とりあえず見た目等を変える魔道具をせっせと作っていると、扉がノックされた。
パーテーションの向こうにも聞こえる声量で「開いてるよー」と答えると、扉が開いた。
入ってきたのはバスローブを着たままのジューンさんだった。
一緒に寝るようになってから彼女は露出の少ない寝間着を着てくる事が殆どだったので、違和感を感じて彼女を見る。
どことなくそわそわしていた彼女は、僕と視線が合うとすぐに視線を逸らした。
だが、一度深呼吸した後、今度はしっかりと僕と目を合わせてくる。
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ジューンさんがやっと口を開いた。
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眉を八の字にして困ったような表情をする彼女は、彼女にしては珍しく早口で「知識としては知ってるんですけど、そこまでの流れと言いますか、どのようにして行為を始めるべきなのかとか曖昧でして。とりあえず押し倒せば後は流れで何とかなると皆さん仰ってましたからとりあえず押し倒してみたんですけど――」等と言い始める。
「ジューンさん」
「え、あ、はい。なんでしょうかぁ」
「とりあえず、明かりを消そうか」
「あ、そ、そうですねぇ。分かりましたぁ」
ジューンさんがあたふたしながら魔道具の明かりを消すと、部屋が真っ暗になった。
ジューンさんは問題なくベッドに戻ってきたけど、僕は魔力探知とかできないのでベッド脇に置いておいたランプを点ける。
ぼんやりとベッドの近くが照らされると、ジューンさんがバスローブを脱いでいた事に気付いた。
エルフ特有の白い肌とは対照的な黒い下着を身に着けた彼女は、僕をまた押し倒すと上に覆いかぶさってくる。
ただ、覆いかぶさってくるだけで何もしてこない。
「………それでぇ、これから何をしてほしいですかぁ?」
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