483 / 971
第17章 結婚しながら生きていこう
324.事なかれ主義者は戸惑った
しおりを挟む
レヴィさんとセシリアさんと一緒に、屋敷の二階にある談話室と呼んでいる部屋で結婚式について相談する。
披露宴を開いたらわらわらとやってきそうな貴族たちとの繋がりが厄介事になりそうな気がしたので「最小限の人数で式を挙げたい」という僕の我儘を、レヴィさんはすんなりと受け入れてくれた。
「加護のせいで、お友達はいないのですわ。わざわざ出席してほしいと思う人はいないのですわ」
「レヴィア様の数少ない知り合いだったドラコ侯爵も出席はされないでしょう」
「神前式で出席者は私たちだけでも構わないのですわー」
「リヴァイさんたちは式に出席したいんじゃないかなぁ」
「もし出席する場合は、今後の事を考えて非公式で出席するかもしれません」
「国王として来ないって事?」
「はい、そうです。勇者が転移してきた場合、様々な国の異性と婚姻する事が多いです。加護の継承を狙ったいわゆる政略結婚ですね。そうなると問題となってくるのが、御相手側の実家や出身国の力です」
「勇者が考え無しに結婚式を挙げるのは別にいいのですわ。ただ、その裏では国や貴族同士の争いになる事もよくあったのですわ。私やお父様たちは気にしないですけれど、もしエンジェリア帝国の王族の方と結婚した際は私の式と同等かそれ以上の事をしないと向こう側が難癖をつけてくる可能性はあるのですわー」
「めんどくさそう……」
平等に愛していかないといけないって思ってたけど、身分とかでその愛の比率を分ける事も考えなきゃいけないとか本当に厄介だ。
ため息を吐いた僕を見てレヴィさんは口元を綻ばせ「そういう厄介な相手がシズトの婚約者になろうとしていたら教えてあげるのですわ」と言ったのでその時は全力で頼ろう。……いや、これ以上増やすつもりはないんだけどね。
増えるとしたらガレオールの女王陛下であるランチェッタ様くらいだ。
「……もしかして、ランチェッタ様の式は豪華にしなきゃいけないとかあるかな?」
「そうですわね……少なくとも、私と同じ事をしておいた方が向こうの貴族につけ入る隙を与えなくて済むと思うのですわ。どうやらまだ手綱を完全に握っているわけではないみたいですわ」
「武力ではドラゴニアが上ですが、経済的影響力の観点で言えば同じくらいですからね。まあ、向こうの一部貴族などが経済制裁を試みようとしても、ドラゴニアには自国で完結している物が殆どですから大きな影響はないでしょうけど」
「影響なくても争いの種をわざわざ作りたくはないなぁ」
「私は王女で向こうは女王ですわ。多少向こうの方を豪華にした方が良いかもしれないですわね」
「そう言った意味では、レヴィ様との式は神前式だけにしておいて、ランチェッタ様との式では大々的にパレードをする等融通が利くようにしておけばよろしいのではないでしょうか」
「なるほどなぁ……って、まだ結婚するとは決まってないから今気にしてもしょうがないんだけどね!」
いつの間にか結婚前提で話を進めていた事に気付いて慌てて釈明すると、レヴィさんはニコニコしながら「分かっているのですわ」と頷いている。絶対分かってないやつだコレ。
「ランチェッタ様の事はおいといて、レヴィさんやセシリアさんは他の人と少し式の形式とか変えた方が良いの?」
「と、言いますと?」
「ほら、レヴィさんは言わずもがなだけど、セシリアさんも貴族令嬢なんでしょう? 元とはいえ、奴隷だった人もいるし、ほとんどが平民だからちょっと変えた方が良いのかなって」
「特に不要ですね。そういう事を気にする両親ではありませんから。婿の顔を一目見ようと、やってくる可能性はありますが、参加を許可して頂ければ何事も起きないかと」
「……配慮した方が良いのは、エミリーたちの方ですわね。どれだけ言っても私よりも先にするのは気が引けたのか、シズトに手を出さなかったのですわ」
なるほど、誕生日を迎えた後、特に何事もなかったのはそれが理由なのか。
確かにラオさんも結婚を申し込んだ時に順番が違うって怒ってたしな。
どうしたものか、と首を傾げながら考えたがレヴィさんが「式の人数で差をつければいいだけですわ」と言った。
「私たちはジューン含めて三人同時に行って、残りの十人は五人ずつ同時に行えばいいと思うのですわ」
「……同時に式をするの?」
「そうですわ。よくある事ですわ」
……そっか。全然イメージ湧かないんだけど、どういう感じでやるんだろう?
疑問に思ったけど、とりあえず保留にしておいて、具体的に結婚式について確認していく。
式を挙げる場所は世界樹の麓の町ファマリアに建てた三柱の教会でする事にした。
以前管理役として作ったホムンクルスのアッシュだけではなく、教会の管理をしているエルフやドワーフの中から一人選んで司式者をやってもらおう。
実施時期も準備にそこまで時間はかからないからと、近日中にサクッとやるつもりのようだ。
「ちょっとお父様たちに予定の確認をしてくるのですわー」
「ついでに私も実家にどうするか確認を取っておきます」
走り去っていったレヴィさんの後を追ってセシリアさんが部屋から出て行く。
残された僕は、とりあえず冷めてしまった紅茶をのんびりと飲んだ。
披露宴を開いたらわらわらとやってきそうな貴族たちとの繋がりが厄介事になりそうな気がしたので「最小限の人数で式を挙げたい」という僕の我儘を、レヴィさんはすんなりと受け入れてくれた。
「加護のせいで、お友達はいないのですわ。わざわざ出席してほしいと思う人はいないのですわ」
「レヴィア様の数少ない知り合いだったドラコ侯爵も出席はされないでしょう」
「神前式で出席者は私たちだけでも構わないのですわー」
「リヴァイさんたちは式に出席したいんじゃないかなぁ」
「もし出席する場合は、今後の事を考えて非公式で出席するかもしれません」
「国王として来ないって事?」
「はい、そうです。勇者が転移してきた場合、様々な国の異性と婚姻する事が多いです。加護の継承を狙ったいわゆる政略結婚ですね。そうなると問題となってくるのが、御相手側の実家や出身国の力です」
「勇者が考え無しに結婚式を挙げるのは別にいいのですわ。ただ、その裏では国や貴族同士の争いになる事もよくあったのですわ。私やお父様たちは気にしないですけれど、もしエンジェリア帝国の王族の方と結婚した際は私の式と同等かそれ以上の事をしないと向こう側が難癖をつけてくる可能性はあるのですわー」
「めんどくさそう……」
平等に愛していかないといけないって思ってたけど、身分とかでその愛の比率を分ける事も考えなきゃいけないとか本当に厄介だ。
ため息を吐いた僕を見てレヴィさんは口元を綻ばせ「そういう厄介な相手がシズトの婚約者になろうとしていたら教えてあげるのですわ」と言ったのでその時は全力で頼ろう。……いや、これ以上増やすつもりはないんだけどね。
増えるとしたらガレオールの女王陛下であるランチェッタ様くらいだ。
「……もしかして、ランチェッタ様の式は豪華にしなきゃいけないとかあるかな?」
「そうですわね……少なくとも、私と同じ事をしておいた方が向こうの貴族につけ入る隙を与えなくて済むと思うのですわ。どうやらまだ手綱を完全に握っているわけではないみたいですわ」
「武力ではドラゴニアが上ですが、経済的影響力の観点で言えば同じくらいですからね。まあ、向こうの一部貴族などが経済制裁を試みようとしても、ドラゴニアには自国で完結している物が殆どですから大きな影響はないでしょうけど」
「影響なくても争いの種をわざわざ作りたくはないなぁ」
「私は王女で向こうは女王ですわ。多少向こうの方を豪華にした方が良いかもしれないですわね」
「そう言った意味では、レヴィ様との式は神前式だけにしておいて、ランチェッタ様との式では大々的にパレードをする等融通が利くようにしておけばよろしいのではないでしょうか」
「なるほどなぁ……って、まだ結婚するとは決まってないから今気にしてもしょうがないんだけどね!」
いつの間にか結婚前提で話を進めていた事に気付いて慌てて釈明すると、レヴィさんはニコニコしながら「分かっているのですわ」と頷いている。絶対分かってないやつだコレ。
「ランチェッタ様の事はおいといて、レヴィさんやセシリアさんは他の人と少し式の形式とか変えた方が良いの?」
「と、言いますと?」
「ほら、レヴィさんは言わずもがなだけど、セシリアさんも貴族令嬢なんでしょう? 元とはいえ、奴隷だった人もいるし、ほとんどが平民だからちょっと変えた方が良いのかなって」
「特に不要ですね。そういう事を気にする両親ではありませんから。婿の顔を一目見ようと、やってくる可能性はありますが、参加を許可して頂ければ何事も起きないかと」
「……配慮した方が良いのは、エミリーたちの方ですわね。どれだけ言っても私よりも先にするのは気が引けたのか、シズトに手を出さなかったのですわ」
なるほど、誕生日を迎えた後、特に何事もなかったのはそれが理由なのか。
確かにラオさんも結婚を申し込んだ時に順番が違うって怒ってたしな。
どうしたものか、と首を傾げながら考えたがレヴィさんが「式の人数で差をつければいいだけですわ」と言った。
「私たちはジューン含めて三人同時に行って、残りの十人は五人ずつ同時に行えばいいと思うのですわ」
「……同時に式をするの?」
「そうですわ。よくある事ですわ」
……そっか。全然イメージ湧かないんだけど、どういう感じでやるんだろう?
疑問に思ったけど、とりあえず保留にしておいて、具体的に結婚式について確認していく。
式を挙げる場所は世界樹の麓の町ファマリアに建てた三柱の教会でする事にした。
以前管理役として作ったホムンクルスのアッシュだけではなく、教会の管理をしているエルフやドワーフの中から一人選んで司式者をやってもらおう。
実施時期も準備にそこまで時間はかからないからと、近日中にサクッとやるつもりのようだ。
「ちょっとお父様たちに予定の確認をしてくるのですわー」
「ついでに私も実家にどうするか確認を取っておきます」
走り去っていったレヴィさんの後を追ってセシリアさんが部屋から出て行く。
残された僕は、とりあえず冷めてしまった紅茶をのんびりと飲んだ。
55
お気に入りに追加
414
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~
暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。
しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。
もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。
加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ
犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。
僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。
僕の夢……どこいった?
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
このステータスプレート壊れてないですか?~壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活~
夢幻の翼
ファンタジー
典型的な社畜・ブラックバイトに翻弄される人生を送っていたラノベ好きの男が銀行強盗から女性行員を庇って撃たれた。
男は夢にまで見た異世界転生を果たしたが、ラノベのテンプレである神様からのお告げも貰えない状態に戸惑う。
それでも気を取り直して強く生きようと決めた矢先の事、国の方針により『ステータスプレート』を作成した際に数値異常となり改ざん容疑で捕縛され奴隷へ落とされる事になる。運の悪い男だったがチート能力により移送中に脱走し隣国へと逃れた。
一時は途方にくれた少年だったが神父に言われた『冒険者はステータスに関係なく出来る唯一の職業である』を胸に冒険者を目指す事にした。
持ち前の運の悪さもチート能力で回避し、自分の思う生き方を実現させる社畜転生者と自らも助けられ、少年に思いを寄せる美少女との恋愛、襲い来る盗賊の殲滅、新たな商売の開拓と現実では出来なかった夢を異世界で実現させる自由気ままな異世界生活が始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる