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第17章 結婚しながら生きていこう

324.事なかれ主義者は戸惑った

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 レヴィさんとセシリアさんと一緒に、屋敷の二階にある談話室と呼んでいる部屋で結婚式について相談する。
 披露宴を開いたらわらわらとやってきそうな貴族たちとの繋がりが厄介事になりそうな気がしたので「最小限の人数で式を挙げたい」という僕の我儘を、レヴィさんはすんなりと受け入れてくれた。

「加護のせいで、お友達はいないのですわ。わざわざ出席してほしいと思う人はいないのですわ」
「レヴィア様の数少ない知り合いだったドラコ侯爵も出席はされないでしょう」
「神前式で出席者は私たちだけでも構わないのですわー」
「リヴァイさんたちは式に出席したいんじゃないかなぁ」
「もし出席する場合は、今後の事を考えて非公式で出席するかもしれません」
「国王として来ないって事?」
「はい、そうです。勇者が転移してきた場合、様々な国の異性と婚姻する事が多いです。加護の継承を狙ったいわゆる政略結婚ですね。そうなると問題となってくるのが、御相手側の実家や出身国の力です」
「勇者が考え無しに結婚式を挙げるのは別にいいのですわ。ただ、その裏では国や貴族同士の争いになる事もよくあったのですわ。私やお父様たちは気にしないですけれど、もしエンジェリア帝国の王族の方と結婚した際は私の式と同等かそれ以上の事をしないと向こう側が難癖をつけてくる可能性はあるのですわー」
「めんどくさそう……」

 平等に愛していかないといけないって思ってたけど、身分とかでその愛の比率を分ける事も考えなきゃいけないとか本当に厄介だ。
 ため息を吐いた僕を見てレヴィさんは口元を綻ばせ「そういう厄介な相手がシズトの婚約者になろうとしていたら教えてあげるのですわ」と言ったのでその時は全力で頼ろう。……いや、これ以上増やすつもりはないんだけどね。
 増えるとしたらガレオールの女王陛下であるランチェッタ様くらいだ。

「……もしかして、ランチェッタ様の式は豪華にしなきゃいけないとかあるかな?」
「そうですわね……少なくとも、私と同じ事をしておいた方が向こうの貴族につけ入る隙を与えなくて済むと思うのですわ。どうやらまだ手綱を完全に握っているわけではないみたいですわ」
「武力ではドラゴニアが上ですが、経済的影響力の観点で言えば同じくらいですからね。まあ、向こうの一部貴族などが経済制裁を試みようとしても、ドラゴニアには自国で完結している物が殆どですから大きな影響はないでしょうけど」
「影響なくても争いの種をわざわざ作りたくはないなぁ」
「私は王女で向こうは女王ですわ。多少向こうの方を豪華にした方が良いかもしれないですわね」
「そう言った意味では、レヴィ様との式は神前式だけにしておいて、ランチェッタ様との式では大々的にパレードをする等融通が利くようにしておけばよろしいのではないでしょうか」
「なるほどなぁ……って、まだ結婚するとは決まってないから今気にしてもしょうがないんだけどね!」

 いつの間にか結婚前提で話を進めていた事に気付いて慌てて釈明すると、レヴィさんはニコニコしながら「分かっているのですわ」と頷いている。絶対分かってないやつだコレ。

「ランチェッタ様の事はおいといて、レヴィさんやセシリアさんは他の人と少し式の形式とか変えた方が良いの?」
「と、言いますと?」
「ほら、レヴィさんは言わずもがなだけど、セシリアさんも貴族令嬢なんでしょう? 元とはいえ、奴隷だった人もいるし、ほとんどが平民だからちょっと変えた方が良いのかなって」
「特に不要ですね。そういう事を気にする両親ではありませんから。婿の顔を一目見ようと、やってくる可能性はありますが、参加を許可して頂ければ何事も起きないかと」
「……配慮した方が良いのは、エミリーたちの方ですわね。どれだけ言っても私よりも先にするのは気が引けたのか、シズトに手を出さなかったのですわ」

 なるほど、誕生日を迎えた後、特に何事もなかったのはそれが理由なのか。
 確かにラオさんも結婚を申し込んだ時に順番が違うって怒ってたしな。
 どうしたものか、と首を傾げながら考えたがレヴィさんが「式の人数で差をつければいいだけですわ」と言った。

「私たちはジューン含めて三人同時に行って、残りの十人は五人ずつ同時に行えばいいと思うのですわ」
「……同時に式をするの?」
「そうですわ。よくある事ですわ」

 ……そっか。全然イメージ湧かないんだけど、どういう感じでやるんだろう?
 疑問に思ったけど、とりあえず保留にしておいて、具体的に結婚式について確認していく。
 式を挙げる場所は世界樹の麓の町ファマリアに建てた三柱の教会でする事にした。
 以前管理役として作ったホムンクルスのアッシュだけではなく、教会の管理をしているエルフやドワーフの中から一人選んで司式者をやってもらおう。
 実施時期も準備にそこまで時間はかからないからと、近日中にサクッとやるつもりのようだ。

「ちょっとお父様たちに予定の確認をしてくるのですわー」
「ついでに私も実家にどうするか確認を取っておきます」

 走り去っていったレヴィさんの後を追ってセシリアさんが部屋から出て行く。
 残された僕は、とりあえず冷めてしまった紅茶をのんびりと飲んだ。
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