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第17章 結婚しながら生きていこう
幕間の物語156.お嫁さんたちは話し合った
しおりを挟む そう。そうなのだ。つい先程、彼がツラツラと語った通り、俺は繰り返してしまったのだ。あの俺達にとって記念すべき晩でのポンコツムーブを。
バアルさんに話しかけられても、頭の中はお花が咲き乱れていて上の空。あーんしてもらえれば食べこぼし、お返しをすれば彼のお髭や口元をソースでべっとり汚す。毎日お風呂をご一緒させてもらっているくせに、彫刻みたいにカッコいい彼の裸を見た瞬間、腰を抜かしてひっくり返りそうになる。
という、まるで再現VTRか? ってくらいに全く同じ反応とやらかしをしてしまったのだ。因みにその日もバアルさんから心配されて、なおかつ誤解は解けている。単純に俺が浮かれまくっていただけだって。
つまりはだ。バアルさんからしたら丸わかりなのだ。今回も俺が浮かれてしまっているって。久々に彼からたっぷり可愛がってもらえるってことで、彼と愛し合えることで、頭がいっぱいになっているんだって。
なんだか、夫婦になれたからって変わらないな……やっぱり俺ばっかりだ……ドキドキしてるの……
「……仕方ないでしょう? バアルさんのこと、大好きなんですから……まぁ、バアルさんは俺よりずっと大人だから……余裕、なんでしょうけど……」
子供っぽい寂しさが滲み出てしまったからだ。言わなくてもいいことを。
マズいと思う頃には、優しく手を退かされていた。大きな手のひらから後頭部を掴まれて、分厚い胸板に押しつけるように抱き寄せられて。今彼が、どんな顔をしているのか分からない。でも、きっとイヤな想いを。
「聞こえておりますか?」
「え……?」
「私めの心音が」
「あ……はい、聞こえて……いますけど……」
「では、どのように聞こえておりますか?」
どのようにって……そんなの……
普通ですけど、とは言えなかった。だって、明らかに早かったのだ。目を閉じて、耳を押しつけて、集中して聞いてみても変わらない。
忙しなく、ドッ、ドッ、ドッと駆けている命の音は、抱き締めてくれる身体から伝わってくる熱は、もしかしたら俺よりも。
「……ごめんなさい……俺ばっかりって、思っちゃって……余裕だなんて、勝手に決めつけちゃって……」
「ふふ、分かって頂けたのであれば」
一度ぎゅっと強く抱き寄せられてから、再び対面した彼はますますご機嫌そう。風を切るように羽をはためかせ、目尻のシワを深くしている。
それは何よりなのだけれど。優しい視線が、漂う空気が、擽ったくて仕方がない。思わず顔を背けたくなったけれども見逃してくれるハズもなく。
「アオイは周りの方をよく見れて、思いやりに長けている御方ですのに……ことご自身に関しては、よく鈍くなってしまわれますよね? そういうところも好ましく思っておりますが」
捕まってしまった。細長い指に顎を掴まれて、額をくっつけられて、鮮やかな緑の瞳に捉えられてしまった。
「もっと貴方様には、分かって頂く必要があるようですね……私めが、どれほどまでに貴方様に焦がれて止まないのかを……」
「あ……バアルさ……」
絡んだ視線は熱を帯びていて、柔らかな微笑みは艶めいていた。お手柔らかにと、お願いする間もなく奪われていた。言葉も、吐息も、混じって分からなくなっていた。
バアルさんに話しかけられても、頭の中はお花が咲き乱れていて上の空。あーんしてもらえれば食べこぼし、お返しをすれば彼のお髭や口元をソースでべっとり汚す。毎日お風呂をご一緒させてもらっているくせに、彫刻みたいにカッコいい彼の裸を見た瞬間、腰を抜かしてひっくり返りそうになる。
という、まるで再現VTRか? ってくらいに全く同じ反応とやらかしをしてしまったのだ。因みにその日もバアルさんから心配されて、なおかつ誤解は解けている。単純に俺が浮かれまくっていただけだって。
つまりはだ。バアルさんからしたら丸わかりなのだ。今回も俺が浮かれてしまっているって。久々に彼からたっぷり可愛がってもらえるってことで、彼と愛し合えることで、頭がいっぱいになっているんだって。
なんだか、夫婦になれたからって変わらないな……やっぱり俺ばっかりだ……ドキドキしてるの……
「……仕方ないでしょう? バアルさんのこと、大好きなんですから……まぁ、バアルさんは俺よりずっと大人だから……余裕、なんでしょうけど……」
子供っぽい寂しさが滲み出てしまったからだ。言わなくてもいいことを。
マズいと思う頃には、優しく手を退かされていた。大きな手のひらから後頭部を掴まれて、分厚い胸板に押しつけるように抱き寄せられて。今彼が、どんな顔をしているのか分からない。でも、きっとイヤな想いを。
「聞こえておりますか?」
「え……?」
「私めの心音が」
「あ……はい、聞こえて……いますけど……」
「では、どのように聞こえておりますか?」
どのようにって……そんなの……
普通ですけど、とは言えなかった。だって、明らかに早かったのだ。目を閉じて、耳を押しつけて、集中して聞いてみても変わらない。
忙しなく、ドッ、ドッ、ドッと駆けている命の音は、抱き締めてくれる身体から伝わってくる熱は、もしかしたら俺よりも。
「……ごめんなさい……俺ばっかりって、思っちゃって……余裕だなんて、勝手に決めつけちゃって……」
「ふふ、分かって頂けたのであれば」
一度ぎゅっと強く抱き寄せられてから、再び対面した彼はますますご機嫌そう。風を切るように羽をはためかせ、目尻のシワを深くしている。
それは何よりなのだけれど。優しい視線が、漂う空気が、擽ったくて仕方がない。思わず顔を背けたくなったけれども見逃してくれるハズもなく。
「アオイは周りの方をよく見れて、思いやりに長けている御方ですのに……ことご自身に関しては、よく鈍くなってしまわれますよね? そういうところも好ましく思っておりますが」
捕まってしまった。細長い指に顎を掴まれて、額をくっつけられて、鮮やかな緑の瞳に捉えられてしまった。
「もっと貴方様には、分かって頂く必要があるようですね……私めが、どれほどまでに貴方様に焦がれて止まないのかを……」
「あ……バアルさ……」
絡んだ視線は熱を帯びていて、柔らかな微笑みは艶めいていた。お手柔らかにと、お願いする間もなく奪われていた。言葉も、吐息も、混じって分からなくなっていた。
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