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第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう
309.事なかれ主義者はあんまり祝われた事がない
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明たちと挨拶を交わした後、お礼兼僕の誕生日プレゼントを受け取った後、座布団に座る。
机を挟んで正面に明が座り、その隣には姫花が足を組みながら腰かけていて、退屈そうに爪を弄っていた。
レヴィさんは隣に座ろうとしたけどドレス姿のまま来ていたのでセシリアさんに止められ、広縁にあった椅子に腰かけてこちらの様子を見ている。
危害を加えようと考えていない限りはそのまま待っていてもらおう。
僕と目が合ったレヴィさんはこくりと頷いた。
その様子を見ていた明が小さくため息を吐いた。
「それにしても、静人は上手い事やっているようですね」
「何が?」
「そちらの御方はドラゴニア王国の第一王女様なのでしょう? いろいろ他国を巡ってみましたが、ドラゴニアが一番ちょっかいをかけて来なかったので、僕もいつかドラゴニアで住む事ができたらなと思っていたんですよ」
「そうなの? 姫花聞いてないんですけど!」
「言う必要がありませんから」
ムキーッと怒っている姫花を軽くあしらって、明は話を続けた。
「婚約をしたのは王女殿下とですか?」
「うん、そうだよ。……いや、王女殿下とも、かな」
「……ハニートラップに引っかかったんですか」
呆れた様子で僕を見てくる明と、「陽太と一緒じゃん、気持ち悪い」と嫌悪感をあらわにする姫花。
いや、僕も考え方の違いにギャップを感じる今日この頃だけど、訂正するべきところは訂正しよう。
「ハニートラップには引っかかってはいない、とは思うよ。そういう目的の人たちとは関わりたくないし。護衛をしてもらっていた人や、ダイエットのお手伝いをした人と結果的にそうなっちゃったわけだけど、元々そういう目的で近づいて来てはいないって今なら断言できる」
「そうですか。その判断をするために婚約という形に留まっていたんですね」
「そういう訳じゃないけど……単純によく知りもしない人とすぐに結婚はできないから」
「でもどうせ陽太みたいに『体の相性を知ってからだ!』とか言って、手当たり次第に手を出してるんでしょ!」
「陽太って、そんなにひどいの?」
「手当たり次第に手を出しまくって、面倒な事にはなってますね。子種が欲しいだけの者たちもいたので、手を出した者たちの中でトラブルに発展したのはそこまで多くはないですけど」
なんだか明が遠い目をしている。お疲れ様です。
ただ、僕からは手を出してはいないつもりだけど、一緒に入浴とかしてるから全く何もない訳でもないから姫花の追及はスルーしておこう。
「結婚自体はいつ頃考えているんですか? 祝いの品を用意したいのですが」
「いつ頃って言われても……ほら、まだ僕たち結婚が許される年齢じゃないし?」
「あと数日で許される年齢になりますよ」
そうなんだよなぁ。
これを機にいい加減、という考え方もあるけど、知り合って一年くらいで結婚するってどうなんだろう。
んー、分からん。
首を傾げて考えていると、明が気になっていた事を聞いてきた。
「それはそうと、婚約者が複数人いるという事でしたが、何人いるんですか? 祝いの品をそれだけ用意した方がきっといいでしょう?」
それはそうかも……?
えーっと……ラオさんにルウさんにホムラ、ユキ、レヴィさん、セシリアさん――と、指折り数えていると、明と姫花が何とも言えない顔で僕を見ていた。
「……やっぱりハニトラに引っかかってるんじゃないんですか?」
「陽太と一緒じゃん」
「まだ誰にも手を出してないから!」
「それはそれでどうなのよ」
あー言えばこー言う姫花はもう放っておいた方が良いだろうか。
っていうか、もう用はないんだったら帰ってしまおう。
席を立とうとすると、明が手で制してきた。
「まだ具体的な人数を聞いてません」
「あ、はい」
……ランチェッタ様は頭数に入れるべきなのだろうか。
しばらく考えたけれど、振られない限りはそういう事になる可能性が高いのでとりあえず入れておいた。
明たちと別れ、転移陣でファマリーに戻ると、レヴィさんが「皆に伝えてくるのですわ~」と言って走り去ってしまった。その後をセシリアさんが諦めた様子で追いかけ、ドーラさんは何も言わずについて行く。
僕は別れ際の明の発言がちょっと気になり、考え事がしたかったので自室へと戻る。
「『ニホン連合は気を付けてください』……か。のんびり観光してみたかったんだけどなぁ。ジュリウス、どう思う?」
「そうですね、あの者たちが言うには加護持ちというだけでも狙われるという事ですから、三つも加護をお持ちのシズト様だとトラブルに巻き込まれやすいかと」
「だよねぇ。観光したいんだけど……なんかいい方法ないかなぁ」
んー、とベッドに寝転がりながら考え事をしていると、いきなり部屋の扉が開いて、パーテーションの向こう側から赤い髪を靡かせた女性が入ってきた。
武装をしたままやってきたのはルウさんだ。
大柄な彼女は魔物由来の露出の多い防具を身に着けている。
僕が寝転がっているベッドに走り込んできて、そのまま飛びつかれるかも、と一瞬身構えたけどルウさんはベッドに手をついただけで飛び込んでくる事はなかった。
前屈みになると大きなお胸が強調されるのでついつい視線が下に行きそうになる。
「シズトくん、お誕生日おめでとう! お姉ちゃん、お祝いのために帰ってきちゃった!」
「……誕生日、まだだよ。あと数日後らしいよ」
「じゃあそれまでにお祝いの準備をするわ! 楽しみにしててね!」
別にケーキだけでいいんだけどなぁ。
そんな事を思いながら「とりあえず着替えてくるわ!」と言って、嵐のように去っていくルウさんを見送った。
机を挟んで正面に明が座り、その隣には姫花が足を組みながら腰かけていて、退屈そうに爪を弄っていた。
レヴィさんは隣に座ろうとしたけどドレス姿のまま来ていたのでセシリアさんに止められ、広縁にあった椅子に腰かけてこちらの様子を見ている。
危害を加えようと考えていない限りはそのまま待っていてもらおう。
僕と目が合ったレヴィさんはこくりと頷いた。
その様子を見ていた明が小さくため息を吐いた。
「それにしても、静人は上手い事やっているようですね」
「何が?」
「そちらの御方はドラゴニア王国の第一王女様なのでしょう? いろいろ他国を巡ってみましたが、ドラゴニアが一番ちょっかいをかけて来なかったので、僕もいつかドラゴニアで住む事ができたらなと思っていたんですよ」
「そうなの? 姫花聞いてないんですけど!」
「言う必要がありませんから」
ムキーッと怒っている姫花を軽くあしらって、明は話を続けた。
「婚約をしたのは王女殿下とですか?」
「うん、そうだよ。……いや、王女殿下とも、かな」
「……ハニートラップに引っかかったんですか」
呆れた様子で僕を見てくる明と、「陽太と一緒じゃん、気持ち悪い」と嫌悪感をあらわにする姫花。
いや、僕も考え方の違いにギャップを感じる今日この頃だけど、訂正するべきところは訂正しよう。
「ハニートラップには引っかかってはいない、とは思うよ。そういう目的の人たちとは関わりたくないし。護衛をしてもらっていた人や、ダイエットのお手伝いをした人と結果的にそうなっちゃったわけだけど、元々そういう目的で近づいて来てはいないって今なら断言できる」
「そうですか。その判断をするために婚約という形に留まっていたんですね」
「そういう訳じゃないけど……単純によく知りもしない人とすぐに結婚はできないから」
「でもどうせ陽太みたいに『体の相性を知ってからだ!』とか言って、手当たり次第に手を出してるんでしょ!」
「陽太って、そんなにひどいの?」
「手当たり次第に手を出しまくって、面倒な事にはなってますね。子種が欲しいだけの者たちもいたので、手を出した者たちの中でトラブルに発展したのはそこまで多くはないですけど」
なんだか明が遠い目をしている。お疲れ様です。
ただ、僕からは手を出してはいないつもりだけど、一緒に入浴とかしてるから全く何もない訳でもないから姫花の追及はスルーしておこう。
「結婚自体はいつ頃考えているんですか? 祝いの品を用意したいのですが」
「いつ頃って言われても……ほら、まだ僕たち結婚が許される年齢じゃないし?」
「あと数日で許される年齢になりますよ」
そうなんだよなぁ。
これを機にいい加減、という考え方もあるけど、知り合って一年くらいで結婚するってどうなんだろう。
んー、分からん。
首を傾げて考えていると、明が気になっていた事を聞いてきた。
「それはそうと、婚約者が複数人いるという事でしたが、何人いるんですか? 祝いの品をそれだけ用意した方がきっといいでしょう?」
それはそうかも……?
えーっと……ラオさんにルウさんにホムラ、ユキ、レヴィさん、セシリアさん――と、指折り数えていると、明と姫花が何とも言えない顔で僕を見ていた。
「……やっぱりハニトラに引っかかってるんじゃないんですか?」
「陽太と一緒じゃん」
「まだ誰にも手を出してないから!」
「それはそれでどうなのよ」
あー言えばこー言う姫花はもう放っておいた方が良いだろうか。
っていうか、もう用はないんだったら帰ってしまおう。
席を立とうとすると、明が手で制してきた。
「まだ具体的な人数を聞いてません」
「あ、はい」
……ランチェッタ様は頭数に入れるべきなのだろうか。
しばらく考えたけれど、振られない限りはそういう事になる可能性が高いのでとりあえず入れておいた。
明たちと別れ、転移陣でファマリーに戻ると、レヴィさんが「皆に伝えてくるのですわ~」と言って走り去ってしまった。その後をセシリアさんが諦めた様子で追いかけ、ドーラさんは何も言わずについて行く。
僕は別れ際の明の発言がちょっと気になり、考え事がしたかったので自室へと戻る。
「『ニホン連合は気を付けてください』……か。のんびり観光してみたかったんだけどなぁ。ジュリウス、どう思う?」
「そうですね、あの者たちが言うには加護持ちというだけでも狙われるという事ですから、三つも加護をお持ちのシズト様だとトラブルに巻き込まれやすいかと」
「だよねぇ。観光したいんだけど……なんかいい方法ないかなぁ」
んー、とベッドに寝転がりながら考え事をしていると、いきなり部屋の扉が開いて、パーテーションの向こう側から赤い髪を靡かせた女性が入ってきた。
武装をしたままやってきたのはルウさんだ。
大柄な彼女は魔物由来の露出の多い防具を身に着けている。
僕が寝転がっているベッドに走り込んできて、そのまま飛びつかれるかも、と一瞬身構えたけどルウさんはベッドに手をついただけで飛び込んでくる事はなかった。
前屈みになると大きなお胸が強調されるのでついつい視線が下に行きそうになる。
「シズトくん、お誕生日おめでとう! お姉ちゃん、お祝いのために帰ってきちゃった!」
「……誕生日、まだだよ。あと数日後らしいよ」
「じゃあそれまでにお祝いの準備をするわ! 楽しみにしててね!」
別にケーキだけでいいんだけどなぁ。
そんな事を思いながら「とりあえず着替えてくるわ!」と言って、嵐のように去っていくルウさんを見送った。
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